卸売業・商社のM&A仲介会社おすすめ7社|手数料の算定基準・卸に強い会社の見分け方を比較【2026年版】
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卸売業・商社のM&A仲介会社おすすめ7社|手数料の算定基準・卸に強い会社の見分け方を比較【2026年版】

卸売業・商社の売却で相談すべきM&A仲介会社7社を、公式の手数料(着手金・算定基準・最低報酬)と卸売業の実績で比較。在庫・売掛金が大きい卸ならではの手数料の差や、仕入先契約を守る進め方まで売り手目線で解説します。

M&A比較レビュー編集部2026/10/149分で読める

卸売業・商社の売却では、「卸売業の成約実績があるか」「手数料が総資産と株式価値のどちらで計算されるか」「仕入先・得意先との取引を守りながら進められるか」の3点で仲介会社を選ぶのが基本です。 卸売業は在庫・売掛金で総資産が大きくなる業種なので、同じ「成功報酬5%」でも計算の基準が違うだけで手数料が数千万円変わることがあります。

この記事でわかること

  • 卸売業・商社の売却で候補になる7社(M&A仲介会社6社+マッチングサイト1社)の手数料・特徴の比較(各社公式サイト、2026年10月15日確認)
  • 「時価総資産ベース」と「株式価値ベース」で手数料がどれだけ変わるかの試算
  • 卸売業の実績がある仲介会社の見分け方と、譲渡価格の規模に合わせた相談先
  • 代理店契約・帳合、在庫・売掛金など、卸売業ならではの売却前の準備

こんな方に向けた記事です

  • 年商数億〜数十億円規模の専門商社・地方卸のオーナー経営者
  • 後継者がいない、または業界再編や物流コストの上昇を受けて売却を考え始めた方
  • 仲介会社に相談する前に、手数料と選び方の基準を押さえておきたい方

卸売業・商社のM&Aは今どうなっているか

卸売業の中分類別の後継者不在率(帝国データバンク2025年調査)

卸売業の後継者不在率は46.8%で、約2社に1社が後継者を決められていません。 改善傾向ではあるものの、全業種平均(50.1%)との差は小さく、第三者への売却(M&A)で会社を引き継ぐ選択肢が広がっています。

卸売業の後継者不在率(2025年)

帝国データバンクの2025年調査では、卸売業全体の後継者不在率は前年から2.0ポイント下がりました。ただし中分類で見ると、5割を超える分野も残っています。

区分

2024年

2025年

前年比

卸売業(全体)

48.8%

46.8%

△2.0pt

全国(全業種)

52.1%

50.1%

△2.0pt

自動車・付属品卸売

55.9%

52.9%

△3.0pt

貴金属製品卸売

54.1%

54.6%

+0.5pt(卸売で唯一上昇)

家具・建具・什器卸売

50.9%

50.3%

△0.6pt

繊維・衣服・繊維製品卸売

50.0%

49.7%

△0.3pt

機械器具卸売

51.9%

49.0%

△2.9pt

各種商品卸売

48.3%

46.0%

△2.3pt

木材・建築材料卸売

46.9%

44.9%

△2.0pt

飲食料品卸売

46.1%

44.2%

△1.9pt

出典:帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2025年)(2025年11月21日公表、確認日 2026年10月15日)

同じ調査では、全業種で社長交代のうち「M&Aほか」による承継が20.6%(2025年速報値)を占めています。中小企業の第三者承継も増えており、公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターの令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の第三者承継の成約は2,265件と、過去最多でした(出典:中小機構 プレスリリース、2026年5月29日公表、確認日 2026年10月12日)。

卸売業で再編が進む背景

日本M&Aセンターの業界ページでは、卸売業のM&Aが進む背景として次のような点が挙げられています。

  • 利益率の低さ:食品卸は経常利益率1%未満とされ、規模を広げて仕入れ・物流の効率を上げる必要がある
  • 小売側の変化:ドラッグストアやディスカウント店が食品を強化し、卸の競争が厳しくなっている
  • 人手不足:若い人材を確保できる買い手と統合することがメリットになる

出典:日本M&Aセンター 食品卸業界、総合・その他専門卸業界(確認日 2026年10月15日)

卸売業・商社の主な買い手

卸売業の買い手は同業だけではありません。仲介会社によって得意な買い手が違うため、自社に合う買い手を想定しておくと相談先を絞りやすくなります。

買い手のタイプ

主な目的

同業の卸(地域・商材の違う会社)

取扱商品や営業エリアの拡大、仕入れの共同化

メーカー

販売網を自社で持つ(川下への進出)

物流会社

倉庫・配送網と荷主の獲得

上場商社・大手卸

専門分野の取り込み、地方の販路確保

投資ファンド

同じ業界の会社を複数まとめて価値を上げる

異業種

新規事業への参入(M&Aキャピタルパートナーズの公開事例では内航海運・不動産・仏具販売なども)

メーカーが買い手になるケースは「製造業に強いM&A仲介会社」、物流会社との統合は「運送・物流業のM&A仲介会社」もあわせてご覧ください。同業の卸に売る場合の情報管理は「同業他社への会社売却」で解説しています。


卸売業・商社の売却で候補になるM&A仲介会社7社の比較表

卸売業・商社の売却で候補になるM&A仲介会社7社の公式サイト画像

卸売業向けの特別料金を出している会社は確認できず、手数料はどの会社も全業種共通の体系です。 そのため、比較では「卸売業の実績を公開しているか」と「成功報酬を何に対して計算するか」を重視してください。なお、7社のうちバトンズは仲介会社ではなく、売り手と買い手が直接つながるマッチングサイトです。小規模な卸の選択肢として並べています。

手数料の比較(各社公式、税別)

会社

着手金

中間金

成功報酬の計算基準

料率

最低報酬

日本M&Aセンター

あり(金額は料金ページに記載なし)

料金ページに記載なし

時価総資産

5億円以下5%/5〜10億円4%/10〜50億円3%/50〜100億円2%/100億円超1%

料金ページに記載なし

M&Aキャピタルパートナーズ

無料

報酬総額の約10%

株式価額

5%/4%/3%/2%/1%(同じ区分)

料金ページに記載なし

ストライク

無料

基本合意時に100万〜300万円(資産総額による)

オーナー受取額(株式の譲渡対価に、オーナーの貸付金返済・役員退職金などを含む)

4億円以下の部分は一律2,000万円/4〜5億円5%/5〜10億円4%/10〜50億円3%/50〜100億円2%/100億円超1%

金額の記載なし

M&A総合研究所

無料

無料

譲渡価格

5%/4%/3%/2%/1%

2,500万円

fundbook

無料

原則無料(合意により中間報酬がある契約形態も)

譲渡対象資産額(営業権を含む時価総資産)

5億円以下の部分2,500万円/5〜10億円4%/10〜50億円3%/50〜100億円2%/100億円超1%

記載なし(5億円以下の部分は2,500万円と表示)

インテグループ

無料

無料

株式価値

5%/4%/3%/2%/1%

1,500万円

バトンズ(マッチング型)

売り手は基本無料

—

譲渡価格(サポートを付ける場合)

サポート:500万円未満は50万円〜、4,000万円以上は5%/プレミアムサポート(株式譲渡では必須):1,000万円未満は200万円〜、3億円以上は5%

オプション料金表による

出典(いずれも確認日 2026年10月15日):日本M&Aセンター 料金体系/M&Aキャピタルパートナーズ 料金体系/ストライク 料金体系/M&A総合研究所 料金/fundbook 手数料/インテグループ 料金/バトンズ 料金体系

※料率の区分はレーマン方式(金額の段階ごとに料率を変える計算方法)です。手数料は改定されることがあり、最低報酬や算定方法の細かい条件は公式ページに載っていない場合もあります。契約前に必ず見積書で確認してください。

卸売業との関わり・サポート体制の比較

会社

上場区分

卸売業との関わり(公式で確認できた範囲)

主な特徴

日本M&Aセンター

東証プライム(日本M&AセンターHD)

食品卸・医薬品卸・総合・その他専門卸の業界別ページあり。食品業界専門グループが食品卸を担当し、直近の成約一覧も公開

累計成約10,000件超(業界ページ表記)。地方銀行・信用金庫・会計事務所との提携網

M&Aキャピタルパートナーズ

東証プライム

成約実績ページで化学品卸・食品原材料卸・化粧品卸・医療機器卸・穀類卸・日用品雑貨卸・輸入建材卸・酒類卸などの事例を公開

着手金無料。株式価額ベースの成功報酬。買い手に上場商社・ファンド・異業種の事例

ストライク

東証プライム

卸売業の専門ページ・業種別件数は確認できず

着手金無料。案件情報をネットで公開する「SMART」を運営。2025年9月期の成約は275組(東洋経済オンライン報道)

M&A総合研究所

親会社のクオンツ総研HDが東証プライム

食品卸・建材卸・医療機器卸・燃料卸・化学品卸などの業界解説と、卸売業の成約事例ページあり

着手金・中間金無料の完全成功報酬。譲渡価格ベース

fundbook

非上場(チェンジHDの完全子会社)

卸売業の専門チームは確認できず

着手金・中間金原則無料。時価総資産ベース

インテグループ

東証グロース

卸売業の業種別実績は確認できず

完全成功報酬、株式価値ベース、最低報酬1,500万円

バトンズ

東証グロース

小規模な卸売事業(譲渡価格数千万円以下)の受け皿

売り手は基本無料。株式譲渡ではプレミアムサポートが必須

出典(いずれも確認日 2026年10月15日):日本M&Aセンター 食品卸業界・総合・その他専門卸業界/M&Aキャピタルパートナーズ 成約実績/各社公式サイト

※各社とも、卸売業に限った累計成約件数は公表していません。そのため本記事では成約件数のランキングは作らず、「業界ページ・専門グループの有無」「卸売業の成約事例の公開」で卸売業との関わりを整理しています。

全業種を含めた各社の比較は「売り手向けM&A仲介会社おすすめ比較」でまとめています。


卸売業は「手数料の計算基準」で数千万円の差が出る

卸売会社の売却で手数料の計算基準による成功報酬の差を示した試算図

卸売業・商社の売却では、料率よりも「何に料率を掛けるか」を先に確認してください。 卸売業は売掛金・在庫・買掛金が大きいため総資産が膨らみやすい一方、利益率が低く株式価値は小さくなりがちです。時価総資産ベースの会社と株式価値ベースの会社では、同じ5%でも手数料が大きく変わります。

試算:総資産20億円・株式の譲渡価格3億円の卸売会社の場合

前提:時価総資産20億円(売掛金・在庫が大きい)、株式の譲渡価格3億円、オーナー借入金や役員退職金はなし、とします。各社の公式料金表をそのまま当てはめた単純な試算です。

計算基準

該当する会社(公式表記)

計算

成功報酬の目安

時価総資産

日本M&Aセンター、fundbook

5億×5%(fundbookは2,500万円)+5億×4%+10億×3%

約7,500万円(日本M&Aセンターは別途着手金)

株式価値・株式価額

M&Aキャピタルパートナーズ、インテグループ

3億×5%=1,500万円

1,500万円(インテグループは最低報酬1,500万円と同額。M&Aキャピタルパートナーズは最低報酬の有無を要確認)

譲渡価格

M&A総合研究所

3億×5%=1,500万円 → 最低報酬2,500万円を下回る

2,500万円

オーナー受取額

ストライク

4億円以下の部分は一律2,000万円

2,000万円(別途、基本合意報酬)

※本試算は2026年10月15日に確認した公式料金表から機械的に計算した目安です。「時価総資産」「譲渡対象資産額」の具体的な範囲(どの資産・負債を含めるか)や割引、最低報酬の扱いは各社の契約内容で決まります。実際の金額は必ず各社の見積書で確認してください。

この試算から言えるのは次の2点です。

  • 総資産が大きく利益が薄い卸ほど、株式価値・譲渡価格ベースのほうが有利になりやすい
  • 譲渡価格が数億円以下なら、料率より最低報酬が実際の手数料になりやすい(M&A総合研究所2,500万円、インテグループ1,500万円、ストライクは4億円以下の部分が一律2,000万円)

一方、時価総資産ベースの会社にも、全国の金融機関ネットワークや業界専門チームといった強みがあります。手数料だけで決めず、「手数料の差に見合う買い手探しの力があるか」を比べることが大切です。

計算方法の詳細は「M&A成功報酬の比較」「M&A仲介会社の手数料比較」、手数料と税金を引いた手取り額は「M&A売却の手取り額シミュレーション」で確認できます。

見積もりは「計算基準・最低報酬・返金の有無」を書面で確認する

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」(第3版)では、仲介会社などが契約前に、最低報酬を含む手数料の体系を依頼者に説明することが求められています。見積もりを依頼するときは、「どの金額に料率を掛けるか」「最低報酬はいくらか」「着手金・中間金は成約しなくても返ってこないか」を書面でもらいましょう。計算基準の交渉については「M&A仲介手数料は値引き交渉できるか」も参考になります。

また、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)では仲介手数料の一部が補助対象になる場合があります。対象は中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録された支援機関による支援に限られ、補助率・上限額・申請期間は公募回ごとに変わります。相談先が登録済みかどうかとあわせて、最新の公募要領で確認してください(詳しくは「専門家活用枠の売り手向け活用ガイド」)。


卸売業・商社に強い仲介会社の選び方(5つの比較ポイント)

卸売業の売却で仲介会社を選ぶときは、業界実績・買い手ネットワーク・手数料の計算基準・情報管理・担当者の業界理解の5点を比べます。 「大手だから安心」「手数料が安いから得」と一つの要素だけで決めると、取引先を失ったり、手取りが想定より減ったりするおそれがあります。

1. 卸売業の成約実績を公開しているか

「卸に強い」と言える根拠は、公式に確認できる情報で判断しましょう。目安は次の3つです。

  • 卸売業(食品卸・専門卸など)の業界別ページや専門グループがあるか
  • 卸売業の成約事例を、商材や地域がわかる形で公開しているか
  • 自社と近い商材(食品、建材、化学品、医療機器など)の事例があるか

面談では「当社と同じ商材の卸で、直近どのような買い手と成約しましたか」と聞くと、担当者の経験の深さがわかります。

2. 想定する買い手につながっているか

同業の卸に売りたいのか、メーカーや物流会社、上場商社まで広げたいのかで、相性のよい仲介会社は変わります。地方の卸であれば、地方銀行・信用金庫との提携網がある会社は地域内の買い手を探しやすい傾向があります。

3. 手数料の計算基準と最低報酬

前の章で見たとおり、卸売業は計算基準の違いが手数料に直結します。少なくとも2〜3社から、自社の数字を使った見積もりを取って比べてください。

4. 取引先に知られない進め方ができるか

卸売業は、仕入先メーカーや得意先に売却の話が早く伝わると、取引条件の見直しや取引停止につながるおそれがあります。匿名の案件概要(ノンネームシート)の書き方、買い手候補への打診の範囲、秘密保持契約の結び方を事前に確認しましょう。詳しくは「取引先へ売却を伝えるタイミング」で解説しています。

5. 担当者が卸の商慣習を理解しているか

帳合(商品の流れの中で、どの卸を通すかという取引の位置づけ)、リベート、代理店・特約店契約、在庫の評価方法といった卸売業の話が通じるかどうかは、初回面談でほぼわかります。用語を説明しなくても話が進む担当者かどうかを確かめてください。

仲介会社の選び方全般は「M&A仲介会社の選び方ガイド」、専任契約にするかどうかは「専任契約と非専任契約の違い」をご覧ください。


譲渡価格の規模別:卸売会社はどこに相談すべきか

卸売会社の譲渡価格の規模別に相談先を選ぶチャート

相談先は、会社の規模より「想定される譲渡価格」と「総資産と株式価値の差」で決めるのが実務的です。 卸売業は年商が大きくても譲渡価格が小さいことがあるため、年商だけで判断しないようにしましょう。

想定される譲渡価格

主な相談先のタイプ

候補になる会社の例

考え方

数千万円以下(小規模な卸・個人商店)

マッチング型、公的窓口

バトンズ、事業承継・引継ぎ支援センター

最低報酬が1,500万〜2,500万円の仲介会社では、手数料が売却額の大半を占めるおそれがある

数千万〜数億円(中小の専門卸・地方卸)

株式価値・譲渡価格ベースの仲介会社、大手仲介

インテグループ、M&A総合研究所、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ

最低報酬が実際の手数料になりやすい。最低報酬の金額で比べる

10億円超(中堅商社・広域卸)

大手仲介会社、FA(売り手だけの助言者)

日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、fundbook

上場商社・ファンドを含む広い買い手探しと、交渉力を重視。計算基準による手数料の差も大きくなる

※会社名は、公式の手数料体系と卸売業との関わりから見た一例です。対応の可否や条件は各社に確認してください。

売却価格の目安は、中小M&Aの実務では「時価純資産+営業利益の2〜5年分」(年買法)がよく使われます。ただし卸売業は利益率が低いため、営業利益の部分は小さく、在庫・売掛金の実態の価値(純資産)が価格を大きく左右します。卸売業専用の倍率を示す公的な統計は確認できていないため、あくまで目安として扱ってください。詳しくは「会社の売却価格の算定方法」「バリュエーション手法の比較」をご覧ください。

複数の仲介会社を比べる進め方は「M&A仲介会社を複数比較する方法」で解説しています。


卸売業・商社が売却前に準備しておくこと

卸売業・商社が売却前に確認すべきチェックリスト

卸売業の売却で価格が下がったり交渉が止まったりする原因の多くは、取引先との契約、在庫・売掛金、特定の取引先への依存の3つです。 仲介会社に相談する前から確認しておくと、査定の精度が上がり、買い手の不安も減らせます。

卸売業の売却前チェックリスト

確認項目

何を確認するか

価格・交渉への影響

仕入先との代理店・特約店契約

チェンジ・オブ・コントロール条項(株主が変わると解除・再交渉できる条項)の有無、契約期間、更新条件

主要メーカーとの契約が切れると事業価値が大きく下がる

帳合・商流

誰から仕入れて誰に売っているか、口頭の取り決めがないか

契約書のない取引は買い手が評価しにくい

最低購入数量などの特約

年間の購入義務、リベート条件

買い手にとって想定外の固定負担になり得る

在庫

滞留在庫・不良在庫の量、帳簿と実際の差

帳簿より価値が低ければ純資産が減額され、価格調整や表明保証の論点になる

売掛金

回収が遅れている債権、与信管理の状況

回収できない債権は純資産から差し引かれる

運転資本

売掛金+在庫−買掛金の通常の水準

クロージング時の価格調整の対象になりやすい

取引先への依存度

上位数社の売上・仕入の割合

集中しすぎると評価を下げやすい。買い手によってはシナジーとして評価される

オーナー個人の関係

社長個人の信頼で続いている取引があるか

引継ぎ期間や顧問としての関与を条件にされることが多い

許認可

酒類販売業免許、医薬品卸の許可、食品関係の営業許可など

事業譲渡では取り直しが必要な場合がある

物流

自社倉庫・車両・ドライバーの有無、外部委託の条件

物流コストの上昇が続くなか、評価が分かれやすい

労務・社会保険

未払い残業代、社会保険の加入状況

隠れた負債として価格が下がる

日本M&Aセンターの卸売業ページでも、在庫の管理・評価、得意先・仕入先との関係、許認可の承継、人事労務、コンプライアンスが注意点として挙げられています(総合・その他専門卸業界、確認日 2026年10月15日)。運転資本による価格調整の仕組みは「M&A価格調整(純有利子負債・運転資本調整)の仕組み」で解説しています。

株式譲渡と事業譲渡で、取引先契約の扱いが変わる

一般的に、株式譲渡では会社そのものは変わらないため、仕入先・得意先との契約もそのまま続きます。ただし契約にチェンジ・オブ・コントロール条項があれば、相手先が解除や条件の見直しを求めることができます。事業譲渡では、契約を買い手に移すために相手先一社ずつの同意が必要です。取引先との契約が多い卸売業では、この違いがスキーム選びの大きな判断材料になります。

条項の読み方は「チェンジ・オブ・コントロール条項とは」、売却前の財務の整理は「売却前の財務クリーニング」で詳しく解説しています。

ご注意: 契約の解除リスク、許認可の承継、表明保証の範囲、売却時の税金は、会社ごとの契約内容や状況によって判断が変わります。実際の判断は弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。


こんな卸売会社におすすめ・おすすめしない相談先

大手の仲介会社が合うのは、譲渡価格がある程度大きく、広い範囲の買い手と比べたい卸です。小規模な卸や、手数料を抑えたい卸は、計算基準と最低報酬を見て相談先を選んでください。

大手仲介会社(日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク等)が向いている卸

  • 譲渡価格が数億円以上見込め、上場商社・大手卸・ファンドまで買い手候補を広げたい
  • 食品卸のように業界ページ・専門グループがある分野で、同じ商材の成約事例を重視したい
  • 地方の卸で、地元の金融機関経由の買い手紹介も期待したい(日本M&Aセンター等)

大手仲介会社をおすすめしない卸

  • 譲渡価格が数千万円程度で、最低報酬を払うと手取りがほとんど残らない
  • 総資産が大きく株式価値が小さい卸で、時価総資産ベースの手数料だと負担が重くなる(この場合は株式価値・譲渡価格ベースの会社と見積もりを比べる)

完全成功報酬型(M&A総合研究所、インテグループ等)が向いている卸

  • 着手金・中間金を払わず、成約したときだけ費用を払いたい
  • 譲渡価格が数千万〜数億円で、最低報酬(1,500万〜2,500万円)を払っても手取りに見合う

完全成功報酬型をおすすめしない卸

  • 譲渡価格が数千万円以下で、最低報酬が売却額の大半を占めてしまう
  • 業界専門グループや地域の金融機関ネットワークを通じた買い手探しを最優先したい

マッチング型(バトンズ等)が向いている卸

  • 個人商店や小規模な卸で、譲渡価格が数千万円以下
  • 買い手とのやり取りをある程度自分で進められる

マッチング型をおすすめしない卸

  • 主要メーカーとの代理店契約や許認可の調整など、交渉が複雑になりそうな案件
  • 取引先に知られないよう、打診先を慎重に絞りたい

どの会社が合うか迷う場合は、2〜3社に同じ資料(直近3期の決算書、主要取引先の一覧、在庫の内訳)で相談し、見積もりと提案内容を並べて比べるのがおすすめです。


よくある質問

Q. 仕入先メーカーにいつ売却を伝えればよいですか?

一般的には、買い手がほぼ決まり、基本合意を結んだ後から最終契約の前後に伝えることが多いです。ただし代理店契約にチェンジ・オブ・コントロール条項がある場合や、メーカーの承諾が取引継続の条件になる場合は、最終契約の前に了解を得ておく必要があります。伝える順番と時期は、仲介会社・弁護士と相談して決めてください。

Q. 赤字や債務超過の卸売会社でも売却できますか?

売却できる可能性はあります。卸売業の買い手は、利益よりも取引口座(仕入先・得意先との取引関係)、商圏、倉庫、人材に価値を見いだすことがあるためです。ただし譲渡価格が小さくなると、最低報酬のある仲介会社では手数料の負担が重くなります。最低報酬のないマッチング型や公的な相談窓口もあわせて検討しましょう。進め方は「赤字・債務超過会社の売却ガイド」で解説しています。

Q. 在庫はどのように評価されますか?

買い手のデューデリジェンス(買収前の調査)で、帳簿上の在庫が実際に売れる状態かを確認され、滞留在庫や不良在庫は評価を下げられるのが一般的です。売却前に棚卸しをして、処分すべき在庫を整理しておくと、交渉の途中で価格を下げられるリスクを減らせます。在庫の評価損や廃棄の税務上の処理は、税理士に確認してください。

Q. 会社の借入金の個人保証は外れますか?

株式譲渡では、買い手が保証を引き継ぐか、金融機関と交渉して保証を外すことを最終契約の条件にするのが一般的です。卸売業は運転資金の借入が多いため、早めに仲介会社へ伝えておきましょう。具体的な進め方は「会社売却時の個人保証の解除方法」を参考にしつつ、取引のある金融機関や弁護士にご相談ください。

Q. 複数の仲介会社に同時に相談してもよいですか?

面談や見積もりの段階であれば、複数社に相談して問題ありません。ただし正式に依頼するときに「専任契約」を結ぶと、契約期間中は他社に依頼できないのが一般的です。また契約終了後も一定期間、紹介を受けた買い手との成約で報酬が発生する「テール条項」が付くことがあるため、契約書を確認してから署名してください。


まとめ:卸売業・商社の売却は「計算基準」と「取引先を守る進め方」で選ぶ

  • 卸売業の後継者不在率は46.8%(2025年)で、第三者への売却は現実的な選択肢になっている
  • 卸売業向けの特別料金はなく、手数料は全業種共通。時価総資産ベースか株式価値・譲渡価格ベースかで、手数料が数千万円変わることがある
  • 譲渡価格が数億円以下なら、最低報酬が実際の手数料になりやすい
  • 「卸に強い」かどうかは、業界ページ・専門グループの有無と、近い商材の成約事例で判断する
  • 代理店契約のチェンジ・オブ・コントロール条項、在庫・売掛金、取引先への依存度は、相談前から確認しておく

まずは自社の数字(総資産・純資産・営業利益)を手元に用意し、計算基準の違う2〜3社から見積もりを取って比べるところから始めてください。各社の詳細は、日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所、fundbook、バトンズの各記事で解説しています。食品卸の方は「食品業界に強いM&A仲介会社」もあわせてご覧ください。

※本記事の手数料・統計は、各公式サイト・公表資料で2026年10月15日に確認した内容です。手数料は改定されることがあるため、依頼前に各社の最新の料金ページと見積書で確認してください。税務・法務の判断は税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。

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