M&A 用語集|中小企業オーナーが知るべき重要用語35選をわかりやすく解説
この記事でわかること
「M&Aを検討しているけれど、専門用語が多くて何が何だかわからない」——そう感じている中小企業の経営者は少なくありません。
この記事では、M&Aを初めて検討する経営者の方に向けて、知っておくべき重要用語35選をカテゴリ別にわかりやすく解説します。
- M&Aの基本用語(仲介・FA・NDAなど)
- M&Aのプロセスで登場する用語(LOI・DD・クロージングなど)
- M&Aの手法(スキーム)の種類と違い
- 企業価値評価(バリュエーション)に関する用語
- 最終契約で登場する法律・契約用語
M&Aの流れに沿って用語を整理していますので、初めての方でも理解しやすい構成になっています。ぜひ手元に置いてご活用ください。
M&Aの基本用語
M&A(エムアンドエー)
英語の「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略称です。広い意味では、株式譲渡・事業譲渡・資本提携など、企業間のさまざまな取引全般を指します。近年は中小企業の事業承継手段として急速に普及しており、「後継者がいないため会社を売却する」といったケースでも一般的に使われる言葉です。
仲介(M&A仲介)
売り手(会社を売りたいオーナー)と買い手(会社を買いたい企業)の双方の間に立ち、中立的な立場でM&Aを支援する会社・サービスのことです。日本の中小企業M&Aでは最も一般的なサポート形態であり、売り手・買い手の両方から手数料を受け取る「両手取引」の形式が主流です。
FA(ファイナンシャルアドバイザー)
Financial Advisorの略です。M&A仲介が売り手・買い手の間に立つのに対し、FAは依頼者(売り手または買い手のどちらか一方)の利益を最大化するために動くアドバイザーです。大企業のM&Aでは一般的ですが、中小企業M&Aでは仲介を利用するケースが多い傾向にあります。
NDA(秘密保持契約)
Non-Disclosure Agreementの略で、Confidentiality Agreement(CA)とも呼ばれます。M&A交渉の初期段階で、企業の財務情報や顧客情報などを開示する前に売り手・買い手の双方が締結する契約です。情報の漏洩や不正利用を法的に防ぐための重要な契約であり、M&Aの第一歩として必ず締結されます。
M&Aのプロセス用語
IM(インフォメーション・メモランダム)
Information Memorandumの略です。売り手企業の概要(事業内容・財務情報・強み・課題等)をまとめた資料で、NDA締結後に買い手候補へ開示されます。「企業概要書」とも呼ばれ、買い手がM&Aを検討する際の重要な判断材料になります。
トップ面談
売り手企業と買い手企業の経営トップ同士が直接会って話し合う場のことです。お互いの人柄・経営方針・M&Aへの考え方を確認し合う重要なプロセスで、この面談が「一緒にやっていけるか」を判断する大きな分岐点になります。
LOI(意向表明書)
Letter of Intentの略です。買い手が売り手に対して「御社を買いたい」という意思と、おおまかな条件(価格・スキームなど)を示す文書です。一般的に法的拘束力はありませんが、交渉が本格化する重要な節目となります。
MOU(基本合意書)
Memorandum of Understandingの略で、LOIと同義で使われることもあります。売り手・買い手が主要な条件(価格・スキーム・スケジュール・経営者の処遇など)を確認・合意する文書です。独占交渉権の付与や秘密保持義務が盛り込まれることが多く、この締結後に本格的なデューデリジェンスが始まります。
独占交渉権
基本合意(MOU)締結後に、一定期間(一般的には1〜3ヶ月)買い手が売り手と独占的に交渉できる権利です。この期間中、売り手は他の買い手候補と交渉することができません。買い手がデューデリジェンスに安心して費用と時間をかけられるよう設けられます。
DD(デューデリジェンス)
Due Diligenceの略で「買収監査」とも呼ばれます。基本合意後に、買い手が売り手企業の実態を詳細に調査するプロセスです。財務DD・法務DD・ビジネスDDなど複数の視点から行われます。DDで発見された問題はクロージング条件や最終価格の調整に反映されるため、売り手にとっても重要なプロセスです。
データルーム
デューデリジェンスで買い手が参照する機密書類(財務諸表・契約書・許認可書類等)を格納・共有するためのシステムです。現在はオンラインのバーチャルデータルームが主流で、誰がどの書類を閲覧したかを管理することができます。
クロージング
M&A取引の最終完了を指します。最終契約書の締結後、実際に株式と代金の受け渡しが行われ、経営権が移転する瞬間のことです。クロージングの前提条件(許認可の取得、重要契約の同意取得など)がすべて満たされて初めて実行されます。
PMI(統合後プロセス)
Post Merger Integrationの略です。M&A成立後に、売り手企業と買い手企業の組織・システム・文化等を統合していくプロセスを指します。M&Aの成否はクロージング後のPMIにかかっているとも言われ、戦略統合・管理体制の整備・組織文化の融合が主な課題です。
シナジー
M&A後に両社が合わさることで生まれる相乗効果のことです。売上シナジー(顧客基盤の拡大・販売チャネルの相互活用など)とコストシナジー(重複コストの削減・規模の経済の活用など)の2種類があります。M&Aの目的として語られることが多い概念です。
M&Aのスキーム(手法)
株式譲渡
売り手企業の株主が保有する株式を、買い手に譲渡する手法です。日本の中小企業M&Aで最も多く使われており(全体の約40%)、手続きが比較的シンプルなのが特徴です。許認可や雇用契約がそのまま引き継がれるため、会社の実態を維持しやすい点も選ばれる理由のひとつです。
事業譲渡
会社の事業の一部または全部を、別の会社に譲渡する手法です。株式譲渡と並んで中小企業M&Aでよく使われます(全体の約40%)。譲渡する対象を個別に選択できるため、買い手が不要な資産や簿外債務を引き受けずに済む点が特徴ですが、許認可の再取得や従業員との個別契約が必要になるなど手続きはやや複雑です。
合併(吸収合併)
複数の会社が法的に一つの会社に統合される手法です。「吸収合併」(存続する会社が消滅する会社を吸収する)と「新設合併」(新しい会社を設立して統合する)がありますが、実務では吸収合併がほとんどです。消滅会社の資産・負債・権利義務がすべて包括的に引き継がれます。
会社分割
会社が持つ事業の権利義務の全部または一部を、別の会社(既存会社または新設会社)に包括的に引き継がせる手法です。「吸収分割」(既存の会社への承継)と「新設分割」(新しい会社を設立して承継)があります。特定の事業部門だけを切り出して売却したい場合などに活用されます。
株式交換
買い手企業の株式を対価として、売り手企業の全株式を取得し100%子会社にする手法です。買い手は現金を用意せずにM&Aができる点が特徴で、買い手の資金力に制約がある場合などに選ばれます。
MBO(マネジメント・バイアウト)
Management Buy-Outの略です。会社の経営陣が、投資ファンドなどと協力して自社を買収する手法を指します。オーナー経営者からの事業承継や、親会社から独立して独自経営を行いたい場合などに用いられます。
企業価値評価(バリュエーション)の用語
バリュエーション(企業価値評価)
M&Aにおける売買価格の基礎となる、企業価値の算定プロセスです。コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチの3つの方法があり、実務では複数の手法を組み合わせて総合的に判断します。「自社はいくらで売れるか」を知るための重要なステップです。
EV(企業価値)
Enterprise Valueの略で、企業全体の価値を表す指標です。計算式は「株式時価総額+有利子負債-現預金」で、M&Aの取引価格の基準として広く使われます。EVからさらに有利子負債を差し引いたものが「株式価値」となり、売り手オーナーが実際に受け取る対価に近い概念です。
EBITDA(イービッダー)
Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略です。「利払前・税引前・減価償却前の利益」を指し、計算式は「営業利益+減価償却費」です。国や会計基準が異なる企業同士の収益力を比較する際に使われます。M&Aの売買価格の目安として「EBITDAの○倍」という表現が使われることが多く、中小企業M&Aでの全業界平均はEBITDAの約5.4倍とされます。
DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
Discounted Cash Flow法の略です。将来生み出すと予測されるキャッシュフローを、現在の価値に換算して(割り引いて)企業価値を算定する方法です。将来の成長性を価値に織り込める点が特徴で、成長企業の評価に適しています。割引率(WACC等)の設定が評価結果に大きく影響します。
時価純資産法
会社が保有する資産と負債をすべて時価に換算し、資産から負債を差し引いて株式価値を算定する方法です。計算がシンプルで客観性が高い反面、将来の収益性や成長性を価値に反映しにくいという特性があります。不動産・設備など資産が多い会社の評価に適しています。
類似会社比準法(マルチプル法)
自社と事業が似た上場企業のEV/EBITDAなどの倍率(マルチプル)を参考にして企業価値を算定する方法です。市場の実勢価格を反映できるため客観性が高く、他の手法と組み合わせて使われることが多い手法です。
レーマン方式
M&A仲介会社やアドバイザーへの成功報酬を計算する方法のひとつです。取引金額(譲渡価格)に一定の料率を掛けて算定しますが、取引金額が大きくなるほど料率が低くなる「逓減方式」が特徴です。仲介会社によって計算の基準(株式方式・企業価値方式など)や料率が異なります。会社選びの際は成功報酬の計算方式を必ず確認しましょう。
M&A仲介会社の手数料体系を比較したい方は、M&A仲介会社ランキングもご参考ください。
契約・法律用語
DA(最終契約書)
Definitive Agreementの略です。M&Aの最終段階で締結される法的拘束力のある契約書を指します。株式譲渡の場合は「SPA(株式譲渡契約書)」、事業譲渡の場合は「APA(事業譲渡契約書)」とも呼ばれます。これまでの交渉で合意したすべての内容が盛り込まれ、クロージングの前提条件となります。
表明保証(レップ・アンド・ワランティ)
Representations and Warranties(レプリゼンテーションズ・アンド・ワランティーズ)の略称です。最終契約書に定められる重要条項のひとつで、売り手・買い手が「契約締結時点において、会社の財務・法務・税務・労務・事業内容などに関する特定の事実が真実かつ正確である」と相手方に対して保証するものです。表明保証に違反した場合は損害賠償請求の対象となるため、売り手・買い手の双方にとって重要な条項です。
誓約事項(コベナンツ)
Covenantsの略です。最終契約書の締結後からクロージングまでの期間に、当事者が守るべき約束・行動規範のことを指します。一般的には「通常通りの事業運営を継続する」「重要な契約を無断で変更しない」「大きな資産を処分しない」といった内容が規定されます。
ロックアップ
M&A成立後も、売り手側の経営者やキーマン(重要な従業員)が一定期間(一般的には1〜3年)会社に残ることを義務付ける契約条件です。買い手が事業の安定継続や技術・顧客関係の引継ぎを確保するために設定します。売り手オーナーとしてはM&A後の身の振り方に直結する条件のため、交渉の重要ポイントになります。
まとめ
この記事では、M&A初心者の中小企業経営者向けに、知っておくべき重要用語35選をカテゴリ別に解説しました。
- 基本用語: M&A・仲介・FA・NDA
- プロセス用語: IM・LOI・MOU・DD・クロージング・PMI・シナジー
- スキーム: 株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割・株式交換・MBO
- バリュエーション: EV・EBITDA・DCF法・時価純資産法・類似会社比準法・レーマン方式
- 契約・法律: DA/SPA・表明保証・誓約事項・ロックアップ・独占交渉権
M&Aは専門用語が多く、初めて検討する経営者にとって難しく感じるのは当然です。しかし、これらの基本用語を理解していれば、仲介会社との打ち合わせや契約交渉の場でも安心して臨むことができます。
まずは信頼できるM&A仲介会社に相談し、自社の状況に合ったアドバイスを受けることが大切です。
M&A仲介会社を探している方は、M&A仲介会社ランキングもご覧ください。