個人事業主・フリーランスの事業売却 完全ガイド|方法・相場・税金・相談先を徹底解説【2026年版】
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個人事業主・フリーランスの事業売却 完全ガイド|方法・相場・税金・相談先を徹底解説【2026年版】

個人事業主・フリーランスでも事業は売れます。事業譲渡の方法・売却相場・税金(譲渡所得・消費税)・規模別の相談先・2026年最新の補助金まで、売り手目線で実務的に解説します。

M&A比較レビュー編集部2026/5/129分で読める

結論からいうと、個人事業主・フリーランスでも事業は売れます。 法人のような「株式譲渡」は使えませんが、事業そのもの(設備・在庫・顧客リスト・営業権・サイト等の無形資産)を切り出して第三者に譲り渡す「事業譲渡」スキームを使えば、数十万円〜数千万円規模の案件まで日常的に成立しています。

ただし、価格の決まり方・税金の計算・相談先の選び方は法人M&Aと大きく異なります。本記事では、店舗型の個人事業(飲食・治療院・美容など)からフリーランスのWeb事業(サイト・ブログ・SaaS・コンサル)まで、売り手目線で「いくらで売れて、何を払い、どこへ相談するか」を実務レベルで整理します。

この記事でわかること

  • 個人事業の売却スキーム(贈与・相続・M&A)と選び方
  • 売却までの流れと所要期間(6〜12ヶ月)
  • 店舗型/無形デジタル型の売却相場の考え方
  • 譲渡所得・消費税の仕組みと手取りシミュレーション
  • 規模別の最適な相談先(プラットフォーム/支援センター/仲介会社)
  • 2026年最新の補助金・税制優遇

こんな方におすすめ

  • 廃業を検討しているが「売れるなら売りたい」個人事業主
  • 次のステージへ進むためにフリーランス事業をイグジットしたい方
  • 後継者不在・体力的な限界で店舗を畳もうとしている経営者
  • サイト・ブログ・SaaSなど無形デジタル資産の売却を考えるクリエイター

1. 個人事業主・フリーランスでも事業は売れる

個人事業主・フリーランスの事業売却は、M&Aプラットフォームを中心に毎月数百件規模で成約しています。TRANBIやバトンズなどの公開データを見ると、譲渡価格1,000万円以下のスモールM&Aが多数を占め、500万円以下の案件もオンラインで日常的に取引されています(出典: TRANBI/バトンズ/ラッコM&A、確認日 2026-05-13)。

特に近年は次の3つの追い風があります。

  1. 後継者不在の社会課題化 — 黒字でも畳まれる「黒字廃業」が問題視され、国が第三者承継・M&Aを政策的に後押し
  2. マッチングプラットフォームの成熟 — 売り手手数料を無料化したサービスが増え、個人でも参入のハードルが下がっている
  3. 無形デジタル資産の譲渡ニーズ拡大 — Webサイト、ブログ、YouTubeチャンネル、SaaS、ECショップなど、フリーランス時代の事業が売買対象として定着

廃業を選ぶ前に、まず「自分の事業に値段はつくのか」を確かめる価値があります。

2. 「事業譲渡」とは何か:個人事業に株式譲渡がない理由

個人事業主・フリーランスには「株式」が存在しないため、法人M&Aで一般的な株式譲渡スキームは使えません。代わりに使われるのが事業譲渡です。

事業譲渡とは、事業に関する資産(設備・在庫・知的財産・顧客リスト・営業権/のれんなど)、負債、契約関係を、事業単位で切り分けて買い手に売却する手法です(出典: M&Aキャピタルパートナーズ「個人事業主の事業譲渡とは?」更新 2026-02-13、確認日 2026-05-13)。

株式譲渡と事業譲渡の違い

項目

株式譲渡(法人)

事業譲渡(個人事業・法人)

譲渡対象

会社の株式(=会社全体)

事業に関する資産・契約を個別に指定

契約・許認可

原則そのまま承継

個別に巻き直し・再取得が必要

売り手の税金

譲渡所得(分離課税)約20.315%

譲渡所得(総合課税ほか)最大約55%

個人事業主が使えるか

× 使えない

○ 個人事業はこちらが基本

個人事業の譲渡対象になる主なもの

  • 店舗内の什器・設備・機械
  • 在庫・原材料
  • 顧客リスト・会員データ
  • 取引先との契約(要同意)
  • 営業権(のれん)
  • Webサイト・ブログ・SNSアカウント・SaaSサブスク等の無形デジタル資産

注意: 建物賃貸借契約、許認可(飲食店営業許可、古物商、宅建業免許など)、雇用契約は事業譲渡で自動承継されません。譲渡先で再契約・再取得が必要です(出典: M&Aキャピタルパートナーズ、確認日 2026-05-13)。

関連記事: 株式譲渡 vs 事業譲渡 どっちがいい?比較ガイド

3. 個人事業の売却方法3つ:贈与・相続・M&Aの選び方

個人事業を引き継がせる方法は大きく3つに分かれます。それぞれ税金と適用シーンが異なるため、目的に合わせて選びます。

方法

こんな場合に

課税対象者と税金

贈与

親族・従業員に生前に引き継ぐ

受贈者に贈与税10〜55%(基礎控除110万円)

相続

事業主の死亡時に親族が承継

相続人に相続税10〜55%(基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人数)

M&A(事業譲渡)

第三者(法人・個人)に有償譲渡

売り手に所得税(譲渡所得 等)+消費税

(出典: M&Aキャピタルパートナーズ/レバレジーズM&Aアドバイザリー、確認日 2026-05-13)

第三者にお金を受け取って譲り渡したい場合はM&A(事業譲渡)を選びます。本記事はこのケースを中心に解説します。

なお、贈与・相続には「個人版事業承継税制」という贈与税・相続税の納税猶予・免除制度があります(後述)。M&A(有償譲渡)には適用されない点に注意してください。

4. 売却までの流れ:相談から契約締結まで6〜12ヶ月のロードマップ

個人事業の事業譲渡における相談から契約締結までの流れ

個人事業の事業譲渡は、相談開始から最終契約まで6ヶ月〜1年程度かかるのが一般的です(出典: M&Aキャピタルパートナーズ/よくわかるM&A/レバレジーズM&Aアドバイザリー、確認日 2026-05-13)。

標準的な7ステップ

  1. 売却戦略の策定(売却理由・希望価格・従業員処遇・引継ぎ期間を整理)
  2. 相談先・支援機関の選定(仲介会社/プラットフォーム/事業承継・引継ぎ支援センター 等)
  3. マッチング(ノンネームシートを公開し買い手候補を絞り込む)
  4. 秘密保持契約(NDA)の締結・初期交渉
  5. 基本合意書(LOI)の締結
  6. デューデリジェンス(買い手による財務・税務・法務調査)
  7. 最終交渉・事業譲渡契約締結・クロージング

売り手側の行政手続き(譲渡実行後)

  • 個人事業の廃業届出書を事業廃止から1ヶ月以内に所轄税務署へ提出
  • 青色申告の取りやめ届出書(青色申告者の場合)
  • 事業廃止届出書(消費税課税事業者の場合)
  • 所得税の予定納税額の減額申請書(必要に応じて)

買い手側の手続き

  • 個人で引き継ぐ場合: 開業届を1ヶ月以内に提出、必要に応じて青色申告承認申請書を提出
  • 法人で引き継ぐ場合: 事業譲渡契約書に基づき資産・契約を個別承継
  • 業種によっては許認可の再取得が必要

関連記事: M&A 売却にかかる期間・タイムラインM&A 売却の流れ完全版

5. いくらで売れる?個人事業・フリーランスの売却相場の考え方

個人事業の売却相場と算定モデルのイメージ

個人事業の売却に「絶対の相場」は存在しません。買い手のシナジー、業種、立地、属人性、譲渡対象の範囲で価格は大きく変動します。一方で、実務上の目安として広く使われる算定式があるため、これを起点に交渉していくのが現実的です。

主要な算定モデル

算定モデル

計算式

主な使用シーン

年買法(時価純資産+営業権)

時価純資産+営業利益の2〜5年分

店舗型・サービス業全般

公的ツール式(個人事業向け)

事業用資産−負債+(事業所得+減価償却費)×1年分

日本政策金融公庫の譲渡価格算出ツール

EBITDAマルチプル

月間営業利益 × 12〜24ヶ月

サイト・ブログ・SaaS・サブスク事業

(出典: 信金キャピタル/M&A総合研究所/日本政策金融公庫/ラッコM&A、確認日 2026-05-13)

5-1. 店舗型個人事業(飲食・治療院・美容など)の目安

店舗型では「時価純資産+営業利益の2〜5年分」が一つの目安です。立地が良く常連客がついている店舗ほど営業権(のれん)の評価が高くなり、譲渡価格は数百万円〜数千万円のレンジに収まる事例が多く見られます。

5-2. フリーランス・無形事業(Webサイト・ブログ・SaaS)の目安

サイト・ブログ売買では「月間営業利益 × 平均約18ヶ月」がベンチマークです。ラッコM&Aが2024年に公開した1,050件の成約事例分析によると、月間営業利益10,000円以上のサイトは営業利益の約17.8ヶ月分で成約しており、雑記ブログ約15ヶ月、特化ブログ約23ヶ月と、特化度が高いほどマルチプルが伸びる傾向があります(出典: ラッコ株式会社プレスリリース、確認日 2026-05-13)。

モデルケース(飲食店): 時価純資産200万円・年間営業利益300万円なら、200万円+300万円×3年=約1,100万円が交渉のスタートライン

モデルケース(特化ブログ): 月間営業利益10万円なら、10万円×23ヶ月=約230万円が目安

※あくまで参考値であり、最終価格は買い手との交渉で決まります。

関連記事: M&A 費用相場・手数料ガイドM&A バリュエーション手法比較

6. 税金と手取り:譲渡所得の計算と概算シミュレーション

個人事業譲渡にかかる税金と手取り計算のイメージ

個人事業主の事業譲渡は、譲渡対象ごとに所得区分が変わるため、単純な「成約価格×税率」では税額が出ません。ここが法人の株式譲渡(一律約20.315%)と最も違うところです。

所得区分の整理

譲渡対象

所得区分

課税方式

税率(目安)

土地・建物

譲渡所得

分離課税

長期(5年超)約20%/短期 約39%

機械・車両・備品など事業用固定資産

譲渡所得

総合課税

他の所得と合算し最大約55%

営業権(のれん)

譲渡所得

総合課税

最大約55%

棚卸資産(在庫)

事業所得

総合課税

最大約55%

売掛金・受取手形

譲渡所得

総合課税

最大約55%

(出典: 国税庁 No.3105・No.3152/レバレジーズM&Aアドバイザリー/友野会計事務所、確認日 2026-05-13)

譲渡所得(総合課税)の計算式

譲渡所得の金額 = 譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除50万円
  • 長期譲渡所得(所有期間5年超)は計算後の金額の2分の1を他の所得と合算
  • 短期譲渡所得(5年以内)は全額を合算
  • 特別控除50万円は年間の譲渡益合計に対するもので、短期譲渡益から先に差し引きます

(出典: 国税庁「No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」、確認日 2026-05-13)

消費税(課税事業者の場合)

個人事業主が課税事業者の場合、課税資産の譲渡には消費税10%が課されます。

  • 課税対象: 建物、機械設備、棚卸資産、営業権(のれん)など
  • 非課税対象: 土地、有価証券、債権

インボイス制度下では、買い手が課税事業者の場合に適格請求書発行の有無が論点になりやすいため、譲渡契約前に確認しておきましょう。

手取りのモデルケース(営業権1,000万円・所有期間5年超を想定)

前提: 他の所得との合算後の所得税・住民税率を概ね30%、特別控除50万円、取得費・譲渡費用は単純化のため考慮しない仮定

  • 課税対象額:(1,000万円 − 50万円) × 1/2 = 475万円
  • 概算税額:475万円 × 30% = 約143万円
  • 概算手取り:1,000万円 − 143万円 = 約857万円

※あくまで簡略化したモデル試算です。実際は他所得との合算で税率が変動し、消費税の影響、各種控除、青色申告特別控除との関係などで結果が変わります。個別の試算は必ず税理士にご相談ください。

節税の一般論

「個人 → 法人成り → 株式譲渡」のルートを選ぶと、株式譲渡は分離課税で約20.315%のため手取りが増えるケースがあります。ただし法人成りには登記コスト・社会保険加入・税務処理の負担増といったデメリットもあり、繁忙期や買い手のスケジュールとも噛み合わない場合があります。スキーム選定は税理士・M&A専門家と早期に検討するのが望ましいでしょう。

関連記事: 事業承継 税金 節税の完全ガイド事業承継税制とは(特例措置の期限・要件)

7. 相談先の選び方フローチャート:規模・事業種別の早見表

個人事業の売却で失敗を避ける最大のコツは、事業規模と事業種別に合った相談先を選ぶことです。中堅以上を対象とする大手M&A仲介会社に小規模事業を持ち込むと、最低報酬額(数百万〜2,000万円)が成約価格を上回ってしまうこともあります。

規模・事業種別の早見表

想定譲渡額

事業の種類

おすすめ相談先

~500万円

サイト・ブログ・SaaS

ラッコM&A/TRANBI

500万~3,000万円

店舗型・サービス業

バトンズ/TRANBI/事業承継・引継ぎ支援センター

3,000万~1億円

中規模店舗・複数店舗

バトンズ+顧問税理士/中堅M&A仲介会社

1億円以上

法人化済みの事業

大手M&A仲介会社(日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所)

1. 公的支援(無料・最優先)

事業承継・引継ぎ支援センター
全国47都道府県に設置された国(中小企業庁)の公的相談窓口。個人事業主・小規模事業者も無料・秘密厳守で利用可能です。後継者不在企業と買い手のマッチング、M&A仲介機関の紹介、譲渡価格・スキームの一次相談まで対応します(出典: 中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎポータル」、確認日 2026-05-13)。

日本政策金融公庫 事業承継マッチング支援
譲渡価格算出ツール(個人企業対応)を無料公開しており、価格感を掴む第一歩として有用です。

2. M&Aマッチング・プラットフォーム(オンライン中心)

サービス

個人事業主向けの特徴

売り手手数料

BATONZ(バトンズ)

国内最大級。スモールM&A・事業承継案件が豊富

公式サイト要確認(複数体系)

TRANBI(トランビ)

累計会員20万人超/案件常時3,300件以上。売り手は登録料・掲載料無料

売り手成約手数料無料(公式記載)

M&Aサクシード

完全審査制、法人向け案件中心

公式要確認

ラッコM&A

Webサイト・ブログ売買特化。フリーランス向け案件多数

売却手数料無料(買い手側に手数料)

サイトキャッチャー

2005年開始の日本初サイト売買サービス。累計成約1,200件超

公式要確認

※ 2026年5月時点の情報です。プラットフォームの手数料は変動するため、必ず各公式ページで最新の体系を確認してください。

3. M&A仲介会社・FA(中堅以上の規模で)

中堅以上のM&A仲介会社は譲渡価格1億円以上の案件が中心で、最低報酬額の壁に注意が必要です。

関連記事: M&A仲介会社 おすすめ比較ランキングバトンズとは(M&Aマッチング)M&A 相談 無料の活用法

4. 顧問税理士・弁護士

既存の顧問税理士は財務情報を把握しているため、譲渡価格算定・税務スキーム検討の一次窓口に最適です。事業譲渡契約書のリーガルレビューは弁護士へ依頼するのが安全です。

8. 2026年最新:使える公的制度・補助金

個人事業の譲渡に関連する2026年時点の主な制度を整理します。

個人版事業承継税制(贈与・相続向け/M&Aには不適用)

個人事業主の事業用資産にかかる贈与税・相続税が全額納税猶予され、最終的に免除される制度です。

  • 適用期間: 2019年1月1日〜2028年12月31日の贈与・相続
  • 個人事業承継計画の提出期限: 2026年3月31日まで(都道府県知事へ提出、認定経営革新等支援機関の指導が要件)
  • 有償譲渡(M&A)には適用されない点に注意

(出典: 中小企業庁「個人版事業承継税制の前提となる認定」/国税庁「個人版事業承継税制」、確認日 2026-05-13)

事業承継・M&A補助金(2026年 第14次公募)

中小企業庁・中小企業基盤整備機構による補助金で、個人事業主を含む中小企業・小規模事業者が対象です。

  • 構成枠: ①事業承継促進枠、②専門家活用枠(M&A専門家への支払いを補助)、③廃業・再チャレンジ枠、④PMI推進枠
  • 専門家活用枠には売り手支援類型(Ⅱ型)があり、仲介手数料・FA報酬・デューデリジェンス費用などが対象
  • 14次公募期間: 2026年2月27日(金)〜2026年4月3日(金)17:00
  • 補助上限額は枠により異なり、最大2,000万円規模

(出典: 中小企業庁「事業承継・M&A補助金(十四次公募)公募要領」、確認日 2026-05-13)

注意: 14次公募の応募締切は2026年4月3日です。15次以降の公募スケジュールが告知される可能性があるため、必ず事業承継・M&A補助金 公式サイトで最新情報を確認してください。

関連記事: 事業承継・M&A補助金(2026年最新)

9. 廃業と事業譲渡、どちらが得か:経済合理性の比較

廃業を考えている個人事業主にとって、「事業譲渡のほうが本当に得なのか」は最大の関心事です。

廃業の場合の典型的なコスト

  • 在庫・土地は「清算価格」で約半値、建物・機械はゼロ評価になることが多い(出典: 日本M&Aセンター「廃業とは」、確認日 2026-05-13)
  • 原状回復費用、設備処分費、賃貸借契約の中途解約違約金
  • 従業員への解雇予告手当・退職金
  • これまで築いた顧客リスト・営業権の経済価値は基本的にゼロ

事業譲渡の場合

  • 在庫・設備に清算ではなく事業価値ベースの値段がつく
  • 営業権(のれん)が評価され、現金化できる
  • 従業員の雇用が継続する可能性がある(譲渡先での再雇用)
  • 取引先・顧客への影響を最小化できる

黒字でも後継者不在で廃業する「黒字廃業」が社会課題化しており、第三者承継・M&Aの活用は政策的にも推奨されています。「畳むしかない」と思った段階で一度、事業承継・引継ぎ支援センターで無料相談してみる価値があります。

10. 失敗しないためのチェックリスト:売却前6ヶ月でやること

成約率を高めるため、売却活動を始める前の6ヶ月で次の準備を進めてください。

財務・書類の整備

  • 直近3期分の確定申告書・青色申告決算書を整理
  • 預金通帳・売上台帳・領収書を月別に整理
  • 棚卸資産のリストアップと評価
  • 固定資産台帳の更新(簿外資産がないかチェック)
  • 売掛金・買掛金の確定と回収見込みの整理

契約・権利関係の整理

  • 取引先との契約書のコピーを揃える
  • 賃貸借契約(店舗・事務所)の譲渡可否を貸主に事前確認
  • 業務上の許認可・登録の確認(飲食店営業許可、古物商等)
  • 知的財産(商標、ドメイン、SNSアカウント)の所有名義確認

属人性の可視化(特にフリーランス事業で重要)

  • 業務マニュアル化(オペレーション、顧客対応、納品プロセス)
  • 主要顧客との関係性をドキュメント化
  • 売上の集中度(特定顧客への依存度)を整理

コミュニケーション設計

  • 従業員への伝え方とタイミングを検討
  • 主要取引先への引継ぎプランを準備
  • 競業避止義務・引継ぎ期間の希望を整理

専門家への接触

  • 顧問税理士に売却意向を共有し、スキーム検討を開始
  • 事業承継・引継ぎ支援センターへ初回相談
  • 複数のプラットフォーム・仲介会社の話を比較

関連記事: M&A DD 売り手の準備チェックリスト

11. こんな方におすすめ/おすすめしない方

個人事業の売却が向いている方

  • 後継者不在で廃業を検討しているオーナー — 廃業よりも経済合理性が高くなる可能性が大きい
  • 黒字経営だが体力的・年齢的に引退を考えている方 — 営業権(のれん)に値がつきやすい
  • 複数事業を運営しており、一部を切り出したいフリーランス — サイト・ブログなど無形資産の単体譲渡が容易
  • 本業に集中するため副業事業をイグジットしたい方 — プラットフォーム経由で短期間に成約しやすい
  • 事業を畳む前提でも従業員・取引先の継続を望む方 — 事業譲渡なら雇用と取引が引き継がれる可能性

おすすめしない方

  • 直近で自己破産を予定している方 — 譲渡が財産隠匿とみなされ否認される恐れあり(出典: M&Aキャピタルパートナーズ)
  • 属人性が極端に高く、本人がいなくなると価値が消える事業 — 顧問契約・指名業務など個人の信用に紐づく事業は譲渡が難しい
  • 事業実態が乏しく、財務記録が整っていない方 — まず1年以上かけて記録を整備してから売却活動を始めるほうが評価額が伸びる
  • すぐ現金が必要で交渉期間を確保できない方 — 成約まで通常6〜12ヶ月かかるため、短期資金調達には不向き

12. よくある質問(FAQ)

Q1. フリーランスでも事業譲渡できますか?

A. はい。フリーランスは個人事業主に該当するため、同じ事業譲渡スキームを利用できます。Webサイト・ブログ・SNSアカウント・顧客リスト・取引契約などが譲渡対象になり、ラッコM&AやTRANBIなどのプラットフォームで日常的に成約しています。

Q2. 売却すると消費税はかかりますか?

A. 個人事業主が課税事業者(基準期間の課税売上1,000万円超など)に該当する場合、課税資産の譲渡部分(建物・機械・棚卸資産・営業権など)に消費税10%が課されます。土地・有価証券・債権は非課税です。免税事業者の場合は原則として消費税はかかりません。

Q3. 借入金や保証はどうなりますか?

A. 個人事業主が金融機関から借りている事業性借入は、原則として譲渡では当然には引き継がれません。譲渡対価で返済するか、買い手との契約で承継について別途取り決める必要があります。個人保証についても解除に向けた交渉が必要です。詳しくは個人保証・連帯保証 解除方法ガイドをご覧ください。

Q4. 個人版事業承継税制を使えば税金ゼロで売れますか?

A. いいえ。個人版事業承継税制は贈与・相続向けの制度で、第三者へのM&A(有償譲渡)には適用されません。M&Aで売却対価を受け取る場合は通常通り譲渡所得・消費税が課税されます。

Q5. 廃業届はいつ出すべきですか?

A. 事業譲渡で事業を停止した日から1ヶ月以内に廃業届を所轄税務署へ提出します。青色申告者は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」、消費税課税事業者は「事業廃止届出書」の提出も必要です。

Q6. 仲介手数料の最低報酬額に気をつけるべき理由は?

A. 中堅以上のM&A仲介会社は最低報酬額(数百万〜2,000万円程度)を設定していることが多く、譲渡価格が小さいと手数料が成約価格を上回ることがあります。譲渡額が1億円未満の場合は、まずプラットフォームや事業承継・引継ぎ支援センターを起点に検討するのが現実的です。

Q7. 契約締結後にすぐ次の事業を始めても問題ありませんか?

A. 事業譲渡契約には「競業避止義務条項」が含まれることが一般的です。同一エリア・同一業種で一定期間(多くは3〜5年)の事業再開が制限されます。違反すると損害賠償の対象となり得るため、契約締結前に範囲・期間を弁護士と確認しましょう。

13. まとめ:まず無料相談から始める

個人事業主・フリーランスでも、事業は売れます。ただし事業譲渡スキームは法人M&Aと税務・契約の仕組みが大きく異なるため、自己流で進めると評価額・手取り・契約条件のいずれでも損をしやすい領域です。

最初の一歩としておすすめなのは次の3つです。

  1. 事業承継・引継ぎ支援センター(無料・秘密厳守)で価格感とスキームの一次相談
  2. 日本政策金融公庫の譲渡価格算出ツールで自分の事業の数値感を掴む
  3. 顧問税理士に売却意向を共有し、税務スキームの検討を早めに開始

そのうえで、想定譲渡額と事業の種類に合わせて、プラットフォーム(バトンズ/TRANBI/ラッコM&A)またはM&A仲介会社を比較検討していきます。

重要: 本記事は公開情報に基づく一般解説です。税務スキーム・契約条件は個別事情で大きく異なります。実際の判断は必ず税理士・弁護士・M&A専門家にご相談ください。

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