会社売却(株式譲渡)で利益が出た場合、翌年2月16日〜3月15日の確定申告期限までに申告・納税する義務があります。税率は原則 一律20.315%(申告分離課税)ですが、売却スキームや株式の取得経緯によって手続きと税負担が大きく変わります。
この記事では、以下の内容を出典付きで解説します。
- スキーム別の税負担の違い(株式譲渡・事業譲渡の比較)
- 譲渡所得の計算方法と具体的な税額シミュレーション
- 確定申告の4ステップと必要書類一覧
- 手取りを増やすための節税方法と注意点
- 2026年度税制改正(ミニマムタックス見直し)の最新情報
会社売却を完了したオーナー経営者、またはM&Aを検討中で「売却後の手取りがいくらになるか」を知りたい方に向けた内容です。
重要: 本記事は一般的な税務の概要を解説するものです。実際の税務判断は個々の状況によって異なります。個別の申告内容については必ず税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。
会社売却後に確定申告が必要なケース・不要なケース

会社売却後に確定申告が必要かどうかは、売却スキームと株式の保有形態によって異なります。中小企業オーナーが自社の非上場株式をM&Aで売却するケースでは、ほぼ必ず確定申告が必要です。
確定申告が必要なケース
ケース | 補足 |
|---|---|
非上場株式を譲渡して利益が出た | オーナー経営者が自社株式をM&Aで売却した場合。最も多いパターン。必ず確定申告が必要 |
上場株式を一般口座で譲渡した | 証券会社の一般口座経由の場合は源泉徴収されないため申告が必要 |
特定口座(源泉徴収あり)で損益通算・繰越控除を使いたい | 原則不要だが、他口座との通算や繰越控除を活用する場合は申告が必要 |
前年以前の上場株式の譲渡損失を繰り越している | 損失の繰越控除を使う場合は申告が必要(最大3年間) |
譲渡損失と配当所得を損益通算したい | 申告が必要 |
確定申告が不要なケース
- 特定口座(源泉徴収あり)で取引が完結しており、損益通算・繰越控除を利用しない場合
- NISA口座内の取引(非課税)
- 売却益がなく損失のみの場合(繰越控除を使わないなら不要)
「特定口座で自動処理される」という感覚は非上場株式には当てはまりません。 会社売却後は翌年の確定申告手続きを必ず確認してください。
スキーム別:売却後の税負担の違い
M&Aの売却スキームによって、税の種類・税率・申告義務者が異なります。会社売却を検討する際は、スキームの違いによる税負担を事前に把握することが重要です。
売却スキーム | 主な課税対象者 | 税の種類 | 税率の目安 |
|---|---|---|---|
株式譲渡(個人株主) | 売却したオーナー個人 | 申告分離課税(譲渡所得) | 20.315% |
株式譲渡(法人株主) | 売却法人 | 法人税等 | 約29〜34%(実効税率) |
事業譲渡(法人) | 譲渡法人 | 法人税等+消費税 | 法人税約30〜34%+消費税10% |
事業譲渡(個人事業主) | 事業主個人 | 総合課税(譲渡所得)+消費税 | 所得額に応じた累進税率 |
個人株主による株式譲渡が最もシンプル
日本のM&Aで最も多いのは株式譲渡(個人株主)です。オーナーが個人として保有する自社株式を買い手に譲渡するスキームで、売却益は「株式等の譲渡所得」として申告分離課税の対象になります。
税率は一律20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)。売却益の金額にかかわらず税率が一定なため、計算がシンプルです。
出典: 国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」(確認日: 2026-05-02)
事業譲渡(法人)はいったん法人に課税される
事業譲渡の場合、売却代金は会社(法人)に入ります。法人税等(実効税率約30〜34%)を差し引いた残余財産を個人オーナーが受け取る際にも配当課税が生じるため、二重課税になる点が株式譲渡との大きな違いです。
みなし配当には要注意
発行会社が自己株式として取得する場合(自社買い)は、売却代金の一部が「みなし配当」として扱われる場合があります。みなし配当部分は総合課税の対象となり、所得金額によっては最大55%(所得税45%+住民税10%)の税率になります。
通常のM&A(第三者への株式譲渡)ではみなし配当は発生しませんが、TOBへの応募・会社解散・減資等が絡む特殊なスキームでは確認が必要です。
譲渡所得の計算方法と税額シミュレーション
基本の計算式
譲渡所得 = 譲渡価額(売却代金)
− 取得費(株式の取得にかかった費用)
− 譲渡費用(M&A仲介会社の成功報酬等)
税額 = 譲渡所得 × 20.315%項目 | 内容 | 主な該当費用 |
|---|---|---|
譲渡価額 | 株式の売却代金 | M&Aの売却価格 |
取得費 | 株式を取得したときに払った費用 | 設立時の出資額・増資時の払込額・購入代金・購入手数料等 |
譲渡費用 | 売却に直接かかった費用 | M&A仲介会社の成功報酬・弁護士費用等 |
取得費が不明な場合は、売却代金の5%を概算取得費として使用できます(国税庁「No.1464」)。ただし、後述するように実際の取得費が5%を超えている場合は損をします。
シミュレーション例1:基本的なケース
- 売却代金: 1億円
- 取得費(設立時の出資額など): 500万円
- 譲渡費用(仲介成功報酬): 2,000万円
譲渡所得 = 1億円 − 500万円 − 2,000万円 = 7,500万円
税額 = 7,500万円 × 20.315% ≒ 1,524万円手取り概算: 1億円 − 2,000万円(仲介費用)− 1,524万円(税金)≒ 6,476万円
シミュレーション例2:概算取得費5%を使うと損をするケース
- 売却代金: 1億円
- 実際の取得費: 3,000万円(増資を重ねており書類があった場合)
- 書類が見つからない場合の概算取得費5%: 500万円
実際の取得費(3,000万円)を使う | 概算取得費5%(500万円)を使う | |
|---|---|---|
取得費 | 3,000万円 | 500万円 |
譲渡所得 | 7,000万円 | 9,500万円 |
税額(20.315%) | 約1,422万円 | 約1,930万円 |
差額(損失) | — | 約508万円の余分な納税 |
取得費の書類は、古い通帳・株主名簿・増資時の払込証明書・会社の確定申告書(株主資本等変動計算書)など、売却決定前に徹底的に探してください。5%の概算取得費は「書類がどうしても見つからない最終手段」です。
出典: 国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」(確認日: 2026-05-02)
確定申告の4ステップ:手順と必要書類

個人株主が非上場株式を譲渡した場合の確定申告手順を解説します。
STEP 1:必要書類を準備する
必要書類 | 内容・入手先 |
|---|---|
確定申告書 第一表・第二表 | 確定申告書の基本書類。税務署・e-Taxで入手 |
確定申告書 第三表(分離課税用) | 株式等の譲渡所得を申告するために必須 |
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書 | 譲渡所得の計算を記載する。国税庁HP・e-Taxで入手 |
株式取得に関する証拠書類 | 購入時の契約書・株主名簿・増資の記録・払込証明書等 |
M&Aの株式譲渡契約書(SPA) | 売却代金の証明。クロージング時に受け取る書類 |
M&A仲介会社の請求書・領収書 | 成功報酬の証明(譲渡費用として控除) |
マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類) | 本人確認 |
STEP 2:譲渡所得を計算する
前述の計算式に当てはめて譲渡所得を算出します。
- 複数の株式をまとめて保有していた場合: 「総平均法に準ずる方法」(1株あたりの平均取得価額)で取得費を計算します
- 取得費が一部不明な場合: 不明部分のみ概算5%を使う方法も考えられますが、実態に応じた判断が必要です
- 譲渡費用の範囲: M&A仲介会社への成功報酬は「会社売却に直接要した費用」として含められる可能性が高いですが、費用の性質・内容によって税務当局の判断が異なることもあります。税理士への確認を推奨します
STEP 3:申告書を作成・提出する
e-Tax(電子申告)が推奨です。国税庁「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に沿って入力するだけで申告書が自動作成できます。
- スマートフォンからも対応
- マイナポータルと連携すると特定口座情報の一部を自動入力可能
- 申告期限: 売却した翌年の2月16日〜3月15日
書面申告の場合は税務署窓口への持参または郵送で提出します。「株式を売却したのが2026年」なら「2027年2月16日〜3月15日」が申告期限です。
STEP 4:納税する(所得税と住民税は別タイミング)
税金の支払いは2段階になる点に注意が必要です。
税金 | 割合 | 納付時期 | 納付方法 |
|---|---|---|---|
所得税+復興特別所得税 | 15.315% | 申告期限(翌年3月15日)まで | e-Tax / 口座振替 / コンビニ等 |
住民税 | 5% | 翌年6月以降に分割納付 | 市区町村からの通知書(普通徴収)に基づき支払い |
住民税は会社員のように給与から天引きされず、翌年6月頃に市区町村から「住民税の決定通知書(納税通知書)」が届き、自分で支払います(普通徴収)。売却から1年以上後に数百万〜数千万円規模の住民税が来るため、売却代金の5%分の納税資金をあらかじめ確保しておくことが非常に重要です。
出典: 国税庁「令和6年分株式等の譲渡所得等の申告のしかた」(確認日: 2026-05-02)
手取りを増やすための節税方法
⚠️ 以下の節税手法は売却前の設計が必要なものが多く、クロージング後では使えないものもあります。売却の意思決定段階から税理士と連携することを強く推奨します。
1. 役員退職金の活用(効果が大きい手法)
売却前に会社からオーナーへ役員退職金を支給することで、法人の課税所得を圧縮できます。受け取るオーナー側も「退職所得」として優遇税制が適用されます。
退職所得 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2退職所得控除は勤続年数に応じて最大数千万円に達し、かつ控除後の金額の1/2のみが課税対象になるため、通常の給与所得と比べて税率が大幅に低くなります。長年会社を経営してきたオーナーほど節税効果が高い手法です。
注意点:
- 退職金の額が「功績・報酬水準に照らして不相当に高額」と判断された場合、超過分が損金不算入となり法人に税負担が生じます
- 税務調査の対象になりやすいため、金額の設定根拠(在任年数・最終報酬月額・功績倍率)を明確にする必要があります
- 売却前に実際に退職の実態があることが求められます
2. 前年以前の上場株式の譲渡損失との通算
上場株式等の譲渡損失は3年間繰り越すことができます。過去3年以内に他の株式売却で損失が出ていた場合、今回の売却益と通算して課税対象の譲渡所得を減らせます。
この通算には確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)の場合でも、損益通算を行うなら申告を選択してください。
3. 取得費加算の特例(相続で取得した株式の場合)
相続で取得した株式を相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に売却する場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。
これにより譲渡所得を大幅に圧縮できる可能性があります。「親から事業を引き継いで自社株式を保有し、M&Aで売却する」というケースでは特に有効です。
出典: 国税庁「No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例」
節税余地が大きい経営者の特徴
- 在任期間が長い(10年以上など): 役員退職金の金額が大きくなりやすく、節税効果が高い
- 設立から年数が経つ会社を売却する: 取得費(出資額)に対して売却益が大きくなりやすい
- 相続で株式を取得した: 取得費加算の特例の活用余地がある
- 過去3年以内に株式売却の損失がある: 繰越損失との通算が使える
節税余地が限られる経営者の特徴
- 設立直後または短期間での売却: 在任年数が短く退職金の額が限られる
- すでに退職金を受け取っている: 二重の退職金受領は税務リスクがある
- 売却スキームが決定済み・クロージング後: 多くの節税手法は事前設計が前提
見落としがちな申告ミス・注意点

注意1:概算取得費5%を安易に使う
取得費の書類を探さずに概算5%を適用すると、実際の取得費が5%を上回っている場合に余分な税金を払う結果になります。シミュレーション例2で示した通り、差額が500万円を超えることも珍しくありません。
確認すべき書類の例:古い通帳・株主名簿・増資時の払込証明書・税務申告書の添付書類・登記事項証明書(資本金変更履歴)
注意2:住民税の普通徴収を見落とす
所得税・復興特別所得税は翌年3月15日までに申告と同時に納税しますが、住民税は翌年6月以降に自治体から請求が来ます。クロージングから1年以上後に大きな税金が来ることを見落とし、「税金の支払いはもう終わった」と思って売却代金を使い込んでしまうケースがあります。必ず売却代金の5%分を住民税として手元に確保してください。
注意3:申告年度の取り違え(年末跨ぎのクロージング)
株式譲渡の課税はクロージング日(株式の引渡しと代金支払いが完了した日)が属する年の所得となります。基本合意書・最終契約書の締結日ではなく、実際の株式・代金の受け渡し日が基準です。12月にSPA署名・翌年1月にクロージングの場合は「翌年の所得」になります。どの年の申告になるかを税理士と確認してください。
注意4:みなし配当の見落とし
通常の第三者へのM&Aではみなし配当は発生しません。しかし発行会社による自己株式取得・会社の解散・清算・特殊な組織再編が絡む取引では、売却代金の一部がみなし配当として総合課税の対象になることがあります。スキームに複雑な要素が含まれている場合は、必ず税理士に確認してください。
注意5:住民税の課税方式統一(令和6年度改正・適用済み)
令和6年度(令和5年分の確定申告)から、上場株式等の譲渡所得・配当所得について所得税と住民税で異なる課税方式を選択できなくなりました(課税方式の統一)。
これ以前は「所得税で申告→住民税では申告しない(分離)」という選択が可能でしたが、現在は所得税で申告すると住民税でも申告したものとして扱われます。株式譲渡所得が国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料の算定基礎に算入されるため、翌年の保険料が増加する可能性があります。国民健康保険加入者の方は特に注意が必要です。
出典: 総務省「令和5年度税制改正に伴う個人住民税の改正について」(確認日: 2026-05-02)
【最新情報】2026年度税制改正:高所得者への追加課税強化
売却益が億円規模になる場合は、令和8年度(2026年度)税制改正のミニマムタックス見直しへの注意が必要です。
改正のポイント
令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日与党公表・令和7年12月26日閣議決定)において、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化(ミニマムタックス)」の見直しが決定されました。
項目 | 現行(2026年分まで) | 改正後(2027年分以後) |
|---|---|---|
特別控除額 | 3.3億円 | 1.65億円 |
乗ずる税率 | 22.5% | 30% |
追加課税が発動する売却益の目安 | 約10.3億円超 | 約3.4億円超 |
適用開始: 令和9年(2027年)分以後の所得税
実務上の影響:2026年中のクロージングで旧制度が適用される可能性
売却(クロージング)が2026年中に完了すれば「2026年分の確定申告」となり、現行の制度が適用される可能性があります。一方、2027年1月以降のクロージングでは、特別控除額の縮小(3.3億円→1.65億円)と税率の引き上げ(22.5%→30%)が適用されます。
目安として、売却益が3〜4億円以上になる見込みの取引を検討しているオーナー経営者は、クロージングのタイミングが税負担に直結するため、今すぐ税理士に相談することをおすすめします。
⚠️ 本改正は国会での税制改正法成立をもって確定します。記事執筆時点(2026年5月)では閣議決定済みですが、成立前の情報です。最終的な適用要件・税率は必ず最新の法令または税理士にご確認ください。
出典:
- 財務省「令和8年度税制改正大綱の概要」(確認日: 2026-05-02)
- 日本経済新聞「超高所得者の課税強化 最低でも所得1.65億円超過分の30%に」(確認日: 2026-05-02)
- マクサス・コーポレートアドバイザリー「2026年度税制改正速報ミニマムタックス見直し」(確認日: 2026-05-02)
自分で申告できる?税理士に依頼すべき?チェックリスト
会社売却後の確定申告は、通常の給与所得の申告よりも書類が多く、判断が難しい部分があります。以下のチェックリストで自分の状況を確認してください。
税理士への依頼を強く推奨するケース
以下のうち1つでも当てはまる場合、税理士への依頼を前向きに検討してください。
- 売却代金が1億円を超える — 取得費の算定や節税設計の効果が大きい
- 取得費の書類が不足または不明 — 概算5%を使うかどうかの判断が専門家向き
- 退職金との組み合わせを検討している — 功績倍率・不相当高額の判断は専門知識が必要
- 相続で取得した株式を売却した — 取得費加算の特例の計算が複雑
- 売却スキームに複数の要素が含まれる(事業譲渡・自己株式取得の組み合わせ等)
- 売却益が3億円以上になる見込みがある — 2026年度税制改正の影響を精査する必要がある
- みなし配当が発生している可能性がある
- 前年以前の繰越損失がある — 最適な通算方法の検討が必要
比較的シンプルに申告できる可能性があるケース
- 売却代金が数千万円以下の比較的小規模な取引
- 設立時の出資額が明確に記録されている
- 取得費・譲渡費用の書類がすべて揃っている
- 退職金・特例等は一切使わないシンプルなケース
- 特定口座(源泉徴収あり)で完結する上場株式の売却
ただし、M&Aによる非上場株式の売却は年に1度あるかないかの特殊な申告です。税理士費用は数十万円〜が目安ですが、申告ミスや節税機会の損失と比べれば費用対効果は高いことがほとんどです。また、税理士報酬が「直接関係する費用」に当たる場合は譲渡費用として控除できる可能性もあります(判断は税理士へ要確認)。
M&A全体フローと仲介会社について
会社売却の税務は、売却プロセス全体の一部です。実際の会社売却では、仲介会社のサポートを受けながら進めることが一般的です。仲介会社の選び方・費用感については、以下の記事で詳しく解説しています。
- M&A仲介会社の選び方・おすすめ比較 — 手数料体系・対応規模・強みを比較
- M&A費用・手数料の相場ガイド — 仲介手数料の計算方法と手取りへの影響を解説
- 株式譲渡と事業譲渡の違い・どっちがいい? — スキーム選択と税負担の違いを比較
- 会社売却の流れ・タイムライン — 相談から成約まで何ヶ月かかるか、各フェーズを解説
よくある質問
Q. 確定申告の期限はいつですか?
会社(株式)を売却した翌年の2月16日〜3月15日が申告期限です。例えば2026年中にクロージングが完了した場合は、2027年2月16日〜3月15日が申告期限となります。
Q. 仲介会社への成功報酬は税金計算でどう扱われますか?
会社売却に直接要した費用として「譲渡費用」に計上し、課税対象の譲渡所得から控除できる可能性があります。仲介手数料が高額なほど課税所得が減るため、請求書・領収書は必ず保管してください。ただし「直接関係する費用」の範囲については税務当局の解釈もあるため、税理士への確認を推奨します。
Q. 住民税の支払い時期を忘れていました。どうすればいいですか?
住民税は翌年6月以降に市区町村から「住民税の決定通知書(納税通知書)」が届きます。延納すると延滞金が発生するため、通知書が届いたら速やかに納付してください。翌年の住民税は売却益×5%の金額になります。
Q. 取得費の書類が何もない場合、どうすればいいですか?
まず設立時・増資時の古い通帳、株主名簿、税務署への届出書類(法人の確定申告書の添付資料等)を徹底的に探してください。どうしても見つからない場合は、売却代金の5%を概算取得費として使用できます(国税庁「No.1464」)。ただし実際の取得費が5%を上回っている場合は損になるため最終手段と考えてください。
Q. 会社が赤字のままM&Aで売却した場合でも確定申告が必要ですか?
会社の業績(黒字・赤字)と株式の売却益は別の話です。株式の売却代金が「取得費+譲渡費用」を上回っていれば、会社の業績にかかわらず譲渡所得が生じ、確定申告が必要です。業績が厳しくても事業の将来性・資産・顧客基盤などに価値があれば、高い売却価格がつくことがあります。
Q. M&Aの契約締結とクロージングが年をまたいだ場合、どちらの年の申告になりますか?
株式譲渡の所得はクロージング日(株式の引渡しと代金の支払いが完了した日)が属する年の所得となります。基本合意書・最終契約書の締結日ではなく、実際に株式と代金が受け渡された日が基準です。12月にSPA署名・翌年1月にクロージングの場合は「翌年の申告」になります。
まとめ:会社売却後の確定申告で押さえるべきポイント
確認ポイント | 内容 |
|---|---|
税率 | 申告分離課税 20.315%(住民税5%は翌年6月以降に別途普通徴収) |
申告期限 | 売却翌年の2月16日〜3月15日 |
計算式 | 譲渡所得 = 売却代金 − 取得費 − 譲渡費用 |
取得費が不明な場合 | 売却代金×5%が使えるが、実額が5%超なら損。書類を探すことが先決 |
住民税 | 翌年6月以降に普通徴収で後払い。売却代金の5%分を事前に確保 |
節税の主な手法 | 役員退職金・繰越損失通算・取得費加算の特例(いずれも事前設計が必要) |
2026年度税制改正 | 2027年分以後、売却益3.4億円超で追加課税が強化(閣議決定済み) |
専門家への相談 | 売却代金1億円超・取得費不明・退職金活用・相続株の売却は税理士が必須 |
会社売却は人生で最も大きな財務的イベントのひとつです。税務申告のミスや節税機会の見落としは、数百万〜数千万円規模の損失につながりかねません。売却の意思決定段階から税理士と連携し、売却スキームと税務戦略を一体で考えることを強くおすすめします。
M&Aの費用全体(仲介手数料+税金)の見積もりや仲介会社選びについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。税制は改正されることがあり、実際の税務判断は個々の状況によって異なります。確定申告にあたっては、国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp)の確認と、税理士・公認会計士等の専門家へのご相談をおすすめします。
