親族内承継とM&A(第三者承継)のどちらを選ぶべきかは、「後継者候補の有無」「税負担の大きさ」「承継までの時間的余裕」の3つで判断できます。 親族に経営意欲と適性を持つ後継者がいて、5〜10年の準備期間を確保できるなら親族内承継が有力。後継者不在、または短期間で承継を完了させたい場合はM&Aが現実的な選択肢になります。
この記事でわかること
- 親族内承継とM&Aの10項目にわたる違い(税金・費用・期間・リスクなど)
- 株式評価額1億円のケースでの税金シミュレーション比較
- 2026年最新の事業承継税制(特例措置)と補助金の活用法
- 「自分の会社はどちらを選ぶべきか」がわかる判断フローチャート
この記事の対象読者
- 事業承継を検討し始めた中小企業のオーナー経営者
- 親族に後継者候補がいるが、M&Aも視野に入れている方
- 税金・費用面でどちらが有利か知りたい方
事業承継の3つの方法 — 親族内承継・従業員承継・M&Aの基本を整理

事業承継の方法は、大きく分けて「親族内承継」「従業員承継(親族外承継)」「M&A(第三者承継)」の3つです。まずはそれぞれの基本を押さえておきましょう。
承継方法 | 後継者 | 概要 |
|---|---|---|
親族内承継 | 子ども・配偶者・兄弟姉妹など | 経営者の親族に、相続・贈与・売買で経営権を引き継ぐ |
従業員承継 | 社内の役員・従業員 | 社内の人材に株式を買い取ってもらい承継する |
M&A(第三者承継) | 社外の企業・個人 | 株式譲渡や事業譲渡で社外の第三者に会社を引き継ぐ |
(出典: 中小企業庁 事業承継ガイドライン第3版(令和4年3月改訂))
親族内承継とは
親族内承継は、経営者の子どもや配偶者、兄弟姉妹など親族に経営権を引き継ぐ方法です。日本では最も伝統的な承継手法であり、株式や事業資産の移転方法は「相続(遺言)」「生前贈与」「売買(株式譲渡)」の3つに分かれます。
後継者の育成に5〜10年の準備期間が必要とされるため、早い段階からの計画が求められます。
M&A(第三者承継)とは
M&Aによる事業承継は、親族・従業員以外の社外の第三者に会社・事業を譲渡する方法です。株式譲渡や事業譲渡を通じて、外部の企業や個人に経営を引き継ぎます。
近年、後継者不在問題の解決策として急増しており、一般的に半年〜2年程度で承継が完了します。
従業員承継とは
社内の役員・従業員に経営を引き継ぐ方法です。事業や業界への理解が深い人材に承継できる一方、後継者が株式取得のための資金を用意できるかが最大の課題となります。
本記事では、特にニーズの高い「親族内承継 vs M&A」の比較を中心に解説しますが、従業員承継を含めた3方向の比較表も後述します。
事業承継の全体像について詳しくは「事業承継とは?基本から流れ・費用まで解説」もあわせてご覧ください。
親族内承継 vs M&A — 10項目の比較表
親族内承継とM&Aの違いを、経営者が判断するうえで重要な10項目で比較します。
比較項目 | 親族内承継 | M&A(第三者承継) |
|---|---|---|
後継者の選定 | 親族の中から選定・育成 | 外部から広くマッチングで探す |
準備期間の目安 | 5〜10年程度 | 半年〜2年程度 |
株式の移転方法 | 生前贈与・遺言相続・売買 | 株式譲渡・事業譲渡 |
主な税金 | 相続税・贈与税(税率10〜55%) | 譲渡所得税(個人: 一律20.315%) |
税制優遇 | 事業承継税制で100%納税猶予可能 | 対象外 |
外部コスト | 税理士・弁護士費用のみ(数十万〜数百万円) | 仲介手数料+DD費用+専門家費用(数百万〜数千万円) |
売り手の手取り | 納税資金の持ち出しが必要 | 売却対価を受領できる(創業者利益) |
経営理念の継続性 | 価値観を共有しやすい | 買い手の方針により変化の可能性あり |
従業員・取引先の反応 | 理解を得やすい | 不安を持たれることがある |
経営能力 | 親族に適性があるとは限らない | 経営実績のある買い手を選べる |
(出典: M&Aキャピタルパートナーズ 親族内承継と第三者承継の比較、確認日: 2026-04-15)
ポイント: 親族内承継は「時間をかけて会社の価値観を守る承継」、M&Aは「短期間で後継者問題を解決し、創業者利益を得られる承継」という性格の違いがあります。どちらが優れているという話ではなく、会社の状況によって最適解が変わります。
3方向比較 — 親族内承継・従業員承継・M&Aを横並びで比較
多くの記事では親族内承継とM&Aの二択で書かれていますが、実際には従業員承継も有力な選択肢です。3つの方法を横並びで比較します。
比較項目 | 親族内承継 | 従業員承継 | M&A(第三者承継) |
|---|---|---|---|
後継者の範囲 | 親族のみ | 社内の役員・従業員 | 社外の企業・個人 |
準備期間 | 5〜10年 | 3〜7年 | 半年〜2年 |
後継者の資金負担 | なし(相続・贈与)or 低い | 株式買取資金が必要 | なし(買い手が支払) |
売り手の手取り | なし or 低い | 株式売却代金 | 売却対価(創業者利益) |
経営理念の継続 | 高い | やや高い | 変化の可能性あり |
経営能力の保証 | 不確実 | 実務経験あり | 経営実績で選べる |
税金 | 相続税・贈与税(10〜55%) | 譲渡所得税(20.315%) | 譲渡所得税(20.315%) |
事業承継税制 | 活用可能 | 活用可能 | 対象外 |
外部コスト | 低い | 低い | 仲介手数料等が発生 |
情報漏洩リスク | 低い | やや低い | 管理が必要 |
注目すべき違い: 従業員承継は、経営理念の継続性と経営能力のバランスが取れた方法ですが、後継者の株式買取資金の確保がハードルとなるケースが多くあります。
親族内承継のメリット・デメリット
親族内承継の4つのメリット
1. 柔軟な承継スケジュールが組める
親族であれば、早い段階から後継者を選定し、承継の時期や準備期間を社内事情に合わせて柔軟に調整できます。「来年度から取締役に入れて経験を積ませる」といった段階的な育成計画を立てやすい点は、他の方法にない強みです。
2. 従業員・取引先から理解を得やすい
「社長の息子さんが継ぐ」という形は、日本の中小企業では馴染みのある承継パターンです。従業員や取引先が安心感を持ちやすく、承継後の事業運営がスムーズに進みやすいとされています。
3. 経営理念・企業文化を引き継ぎやすい
幼少期から経営者の背中を見て育った親族は、創業の理念や会社の価値観を肌感覚で理解しています。「この会社が大事にしてきたもの」を次世代に残しやすいのは、親族承継ならではの利点です。
4. 外部コストを抑えやすい
M&A仲介手数料やDD費用が不要なため、承継プロセスの外部コストは税理士・弁護士費用に限られます。さらに、事業承継税制の特例措置を活用すれば、贈与税・相続税の納税猶予も受けられます。
(出典: M&Aキャピタルパートナーズ 親族内承継とは、確認日: 2026-04-15)
親族内承継の4つのデメリット
1. 後継者の経営適性・意欲が不確実
親族に経営者としての適性や意欲を持つ人物がいるとは限りません。「息子に継がせたいが、本人にその気がない」というケースは現実に多く、帝国データバンクの2025年調査では同族承継の割合は32.3%まで低下しています。
2. 相続トラブルのリスク
株式が相続財産の大部分を占める場合、他の相続人から遺留分の主張がなされ、親族間紛争に発展するリスクがあります。特に経営に関与していない兄弟姉妹がいる場合は要注意です。
3. 経営の硬直化リスク
親族関係が経営判断に影響し、必要な改革や新戦略が進めにくくなる可能性があります。「先代のやり方を変えられない」「親族だから解任できない」といった問題は、会社の成長を阻害する要因になり得ます。
4. 後継者育成に長い準備期間が必要
後継者を一人前の経営者に育てるには、一般的に5〜10年の準備期間が必要とされます。社内各部門のローテーション、外部企業での勤務経験、経営幹部としての実績づくりなど、計画的な育成が欠かせません。経営者が高齢の場合、この準備期間を確保できないケースもあります。
M&A(第三者承継)のメリット・デメリット

M&Aの5つのメリット
1. 後継者不在問題を確実に解決できる
親族にも社内にも後継者がいない場合でも、M&Aなら外部の広い範囲から買い手を探すことができます。廃業を避け、事業を存続させる有力な手段です。
2. 創業者利益を得られる
株式売却によりまとまった資金を受け取れます。引退後の生活資金や新たな事業への投資に充てられるため、「長年の経営努力が経済的にも報われる」という実感を持つ経営者は少なくありません。
3. 従業員の雇用を守れる
廃業すれば全従業員が職を失いますが、M&Aなら事業の買い手が従業員を引き継ぐため、雇用が維持されます。買い手にとっても人材確保は大きな目的の一つであり、雇用維持は売り手・買い手双方にメリットがあります。
4. シナジー効果で事業が成長する可能性
買い手企業の販路・技術・資金力との統合により、自社だけでは実現できなかった事業成長が期待できます。「自分が経営するよりも、会社がさらに発展する」可能性があるのはM&Aならではです。
5. 短期間で承継が完了する
M&Aによる事業承継は一般的に半年〜2年程度で完了します。「経営者の健康上の理由で早期に承継を完了させたい」「後継者育成の時間が取れない」といったケースに対応できます。
(出典: M&Aキャピタルパートナーズ 事業承継におけるM&A、確認日: 2026-04-15)
M&Aの5つのデメリット
1. 希望条件に合う買い手が見つかるとは限らない
事業内容・売却価格・雇用維持・経営方針など、すべての希望条件を満たす買い手が現れる保証はありません。地方の業種や小規模企業の場合、マッチングに時間がかかることがあります。
2. 情報漏洩のリスクがある
M&Aの検討が外部に漏れると、従業員の動揺や退職、取引先の離反といった深刻な問題が生じる可能性があります。秘密保持契約(NDA)の締結と徹底した情報管理が不可欠です。
3. 経営方針・企業文化が変わる可能性
買い手企業の方針により、これまでの経営スタイルや社風が変化する可能性があります。「創業以来大事にしてきたものが失われる」ことへの懸念は、売り手経営者にとって大きな判断材料です。
4. 手続きが複雑で専門家の支援が必要
企業価値算定、デューデリジェンス(DD)、契約交渉、PMI(経営統合プロセス)など、多段階の手続きが必要です。M&Aの経験がない経営者にとっては、専門のアドバイザーの支援なしに進めるのは現実的ではありません。
5. 仲介手数料等のコストが発生する
M&A仲介会社への手数料(着手金・中間金・成功報酬)やDD費用など、数百万円〜数千万円の外部コストが発生します。ただし、事業承継・M&A補助金を活用すれば、これらの費用の一部を補助金でカバーできる場合があります。
(出典: 税理士法人レガシィ 事業承継のM&Aとは?、確認日: 2026-04-15)
税金はどちらが有利?株式評価額1億円でシミュレーション比較
事業承継の方法を選ぶうえで、税金の負担は大きな判断材料です。ここでは株式評価額1億円のケースを想定し、親族内承継とM&Aの税負担を具体的に比較します。
親族内承継の場合(相続税・贈与税)
親族に株式を移転する際は、相続税または贈与税が課税されます。
移転方法 | 税率 | 概算税額(株式1億円の場合) |
|---|---|---|
相続(法定相続人1人) | 累進税率10〜55% | 約1,220万円(基礎控除3,600万円適用後) |
暦年贈与(一括) | 累進税率10〜55% | 約4,800万円(基礎控除110万円適用後) |
相続時精算課税制度 | 一律20% | 約2,000万円(特別控除2,500万円適用後) |
事業承継税制(特例措置) | 100%猶予 | 0円(要件を満たし続ける限り) |
注意: 上記の税額はあくまで参考値です。実際の税額は他の資産の有無、法定相続人の数、各種控除の適用状況によって大きく変わります。正確な試算は税理士にご相談ください。
M&Aの場合(譲渡所得税)
M&Aで株式を第三者に売却した場合、譲渡所得税が課税されます。
項目 | 内容 |
|---|---|
税率 | 一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%) |
課税対象 | 譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用 = 譲渡所得 |
概算税額(取得費を考慮しない最大ケース) | 約2,032万円 |
概算税額(取得費1,000万円の場合) | 約1,828万円 |
注意: 2025年分の所得税から「極めて高い水準の所得に対する課税強化」が施行されています。M&A売却益が高額になる場合、実質税率が20.315%を超える可能性があります。詳細は税理士にご確認ください。
(出典: 三菱UFJ銀行 M&Aによる株式や事業譲渡に関する税金、ストライク 株式譲渡にかかる税金、確認日: 2026-04-15)
税金面の結論
判断ポイント | 親族内承継 | M&A |
|---|---|---|
事業承継税制を活用できる場合 | 税負担ゼロ(猶予要件を満たし続ける前提) | 約1,800〜2,000万円 |
事業承継税制を活用しない場合 | 約1,200万円〜4,800万円 | 約1,800〜2,000万円 |
売り手の手取り | 税を払って株式を渡す | 売却代金から税を引いた額が残る |
税金だけで見れば、事業承継税制を使える親族内承継が最も有利です。 ただし、M&Aでは「売却対価を受け取れる」点が大きく異なります。親族内承継では株式を渡す側(先代経営者)が税金を負担するか、後継者が相続税・贈与税を納めるのに対し、M&Aでは売却代金を手にしたうえで税金を払う形になります。
さらに、M&Aの場合は役員退職金スキームを活用することで、退職所得控除の適用により税負担を軽減できる場合もあります。
実際の税額や最適なスキームの選択は、必ず税理士にご相談ください。 上記はあくまで概算であり、個別の事情によって大きく異なります。
費用の全体像 — 親族内承継とM&Aにかかるコストの違い
税金以外にも、それぞれの承継方法には固有のコストが発生します。
親族内承継にかかる主な費用
費用項目 | 概要 | 金額の目安 |
|---|---|---|
相続税・贈与税 | 株式等の移転時に課税 | 評価額・税率による(前述のシミュレーション参照) |
税理士・弁護士費用 | 税務申告書作成、法務相談 | 数十万〜数百万円程度 |
登録免許税 | 不動産がある場合 | 固定資産評価額の2% |
不動産取得税 | 生前贈与で不動産を移転する場合 | 土地・住宅3%、非住宅4% |
後継者育成コスト | 研修・教育・外部勤務等 | 間接的コスト(期間: 5〜10年) |
M&Aにかかる主な費用
費用項目 | 概要 | 金額の目安 |
|---|---|---|
譲渡所得税 | 株式売却益に対する課税 | 一律20.315%(前述参照) |
M&A仲介手数料 | 着手金・中間金・成功報酬 | 成功報酬はレーマン方式で譲渡額の1〜5%が目安 |
DD費用 | 財務・法務・税務の調査 | 各項目15万円程度〜(規模により数百万円) |
弁護士・会計士費用 | 契約書作成・税務アドバイス | 数十万〜数百万円程度 |
(出典: fundbook 事業承継にはどれくらいの費用がかかる?、確認日: 2026-04-15)
コスト面の大きな違い: 親族内承継は「税金の支払い」が主要コストであり、事業承継税制を使えればコストをほぼゼロにできます。一方、M&Aは仲介手数料等の外部コストが発生しますが、売却対価を受け取れるため実質的にはプラスになるケースがほとんどです。
M&A仲介手数料の詳細については「M&A仲介手数料の相場と比較」で各社の料金体系を比較しています。
事業承継税制(特例措置)— 2026年時点の最新情報

親族内承継を検討するうえで、事業承継税制の活用は避けて通れません。現時点の最新情報を整理します。
制度の概要
事業承継税制(特例措置)は、非上場株式を贈与・相続で承継する場合に、贈与税・相続税を100%納税猶予する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
対象 | 非上場の中小企業(資産管理会社・風俗営業会社は除外) |
猶予割合 | 全株式の100% |
後継者の人数 | 最大3人まで |
後継者の要件 | 贈与時18歳以上、代表者に就任、贈与直前に役員であること |
雇用要件 | 実質緩和(未達成でも都道府県知事への報告のみで猶予継続) |
2026年時点の期限(要注意)
期限 | 日付 | 備考 |
|---|---|---|
特例承継計画の提出期限 | 2027年9月30日(延長済み) | 当初は2026年3月31日が期限だったが、1年6ヶ月延長 |
贈与の承継期限 | 2027年12月31日 | この日までに贈与を完了する必要がある |
(出典: 中小企業庁 法人版事業承継税制(特例措置)、確認日: 2026-04-15)
重要: 特例承継計画の提出期限は2027年9月30日まで延長されましたが、贈与による承継自体は2027年12月31日までに行う必要があります。 親族内承継を検討中の経営者は、すみやかに税理士や認定支援機関に相談することをおすすめします。
一般措置との違い
特例措置の期限後は「一般措置」のみ利用可能になりますが、条件が厳しくなります。
比較項目 | 特例措置 | 一般措置 |
|---|---|---|
対象株式数 | 全株式 | 発行済株式総数の2/3まで |
猶予割合 | 贈与100%・相続100% | 贈与100%・相続80% |
後継者人数 | 最大3人 | 1人のみ |
雇用要件 | 実質緩和 | 5年平均80%維持が必要 |
承継計画の事前提出 | 必要 | 不要 |
特例措置を使えるうちに使うかどうかが、親族内承継の費用面を大きく左右します。
事業承継・M&A補助金の活用法【2026年最新】
親族内承継でもM&Aでも、国の補助金制度を活用すれば費用負担を軽減できます。
事業承継・M&A補助金(第14次公募の概要)
申請枠 | 対象 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
事業承継促進枠 | 5年以内に親族内・従業員承継を計画する企業 | 最大800万円(賃上げ実施で1,000万円) | 1/2〜2/3 |
専門家活用枠 | M&Aに伴うDD・FA・仲介費用 | 最大2,000万円 | 1/2〜2/3 |
PMI推進枠 | M&A後の経営統合(PMI)費用 | 枠に応じて異なる | 1/2〜2/3 |
廃業・再チャレンジ枠 | 事業承継・M&Aに伴う廃業費用 | 最大150万円 | ― |
(出典: 中小企業庁 事業承継・M&A補助金(第14次公募)、確認日: 2026-04-15)
親族内承継の場合: 事業承継促進枠を活用すれば、承継に伴う設備投資や販路開拓費用の補助を受けられます。
M&Aの場合: 専門家活用枠を活用すれば、仲介手数料やDD費用の最大2/3(上限2,000万円)が補助されます。M&Aの外部コストが大きい場合は、この補助金の活用を検討する価値があります。
補助金の詳細については「事業承継・M&A補助金とは?申請方法から対象費用まで解説」をご覧ください。
あなたの会社はどちらを選ぶべき? — 判断フローチャート

「自分の会社にはどちらが合っているのか」を判断するために、以下のフローで考えてみてください。
ステップ1: 後継者候補の確認
- 親族の中に、経営を引き継ぐ意欲と適性を持つ人物がいるか?
- 「はい」→ ステップ2へ
- 「いいえ」→ M&A(第三者承継)を検討
ステップ2: 準備期間の確認
- 後継者を育成する5〜10年の時間的余裕はあるか?
- 「はい」→ ステップ3へ
- 「いいえ」→ M&Aを検討(経営者の年齢・健康状態も考慮)
ステップ3: 税制メリットの確認
- 事業承継税制(特例措置)の要件を満たせるか?期限(2027年12月末)に間に合うか?
- 「はい」→ 親族内承継が有力(税負担を大幅に軽減できる)
- 「いいえ」→ 税負担と売却対価を比較して判断 → ステップ4へ
ステップ4: 経営者の意向確認
- 引退後にまとまった資金を得たいか?(創業者利益の確保)
- 会社の経営方針や文化を守ることを最優先にしたいか?
- 前者が重要 → M&Aを検討
- 後者が重要 → 親族内承継を検討(ただし税負担を事前に試算)
こんな企業には親族内承継がおすすめ
以下の条件に当てはまる企業は、親族内承継が適している可能性が高いです。
- 親族の中に経営意欲があり、社内外から信頼されている後継者候補がいる
- 後継者育成のために5年以上の準備期間を確保できる
- 創業家の理念・企業文化を次世代にも引き継ぎたい
- 事業承継税制(特例措置)の要件を満たせる見込みがあり、税負担を抑えたい
- 株式が分散しておらず、相続トラブルのリスクが低い
こんな企業にはM&Aがおすすめ
以下の条件に当てはまる企業は、M&Aによる事業承継が現実的です。
- 親族にも社内にも後継者候補がいない(または候補はいるが本人に意欲がない)
- 経営者の年齢・健康上の理由で、数年以内に承継を完了させたい
- 引退後の生活資金として売却対価(創業者利益)を確保したい
- 買い手企業のリソースを活用して事業をさらに成長させたい
- 廃業を避け、従業員の雇用を守りたい
M&A仲介会社の選び方については「M&A仲介会社おすすめ比較ランキング」で詳しく解説しています。
安易に決めない方がよいケース
どちらの方法にもリスクがあります。以下のような状況では、判断を急がず専門家に相談することをおすすめします。
- 後継者候補がいるが、経営適性に不安がある場合 — 「親族だから」という理由だけで承継を進めると、承継後の経営悪化リスクがあります。客観的な経営力評価が必要です
- 株式が相続人間で分散する可能性がある場合 — 遺留分の問題で親族間トラブルに発展するリスクがあります。事前の遺言書作成や生前贈与の計画が重要です
- M&Aの売却価格が期待と大きく乖離する場合 — 企業価値算定は複数の手法があり、結果が異なることがあります。「思ったより安い」と感じたら、複数の仲介会社にセカンドオピニオンを求めましょう
- 従業員の反発が予想される場合 — M&Aでも親族内承継でも、従業員への説明とケアが不十分だと人材流出を招きます。承継方法の決定前に、従業員コミュニケーションの計画を立てることが重要です
承継方法を決めたあとのネクストステップ
承継の方向性が固まったら、次に何をすべきかを整理します。
親族内承継を選ぶ場合
ステップ | やること | 相談先 |
|---|---|---|
1 | 後継者と経営権移行のスケジュールを協議 | 家族・後継者本人 |
2 | 税理士に相談し、事業承継税制の適用可否を確認 | 税理士・認定支援機関 |
3 | 特例承継計画を策定・都道府県知事に提出(期限: 2027年9月30日) | 税理士・認定支援機関 |
4 | 株式の評価額を算定し、移転方法(贈与・相続・売買)を決定 | 税理士 |
5 | 遺言書の作成など、他の相続人への対策を実施 | 弁護士 |
6 | 後継者の育成計画を策定・実行 | 社内・外部研修機関 |
M&Aを選ぶ場合
ステップ | やること | 相談先 |
|---|---|---|
1 | 自社の企業価値を概算で把握する | 公認会計士・M&Aアドバイザー |
2 | 複数のM&A仲介会社に相談し、比較検討する | M&A仲介会社(複数社) |
3 | 仲介会社と契約、買い手企業の探索を開始 | M&A仲介会社 |
4 | 候補先とのトップ面談・条件交渉 | M&A仲介会社・弁護士 |
5 | デューデリジェンス(DD)の実施 | 公認会計士・弁護士 |
6 | 最終契約の締結・クロージング | M&A仲介会社・弁護士 |
M&Aの全体的な流れについては「M&A売却の流れ・手順を解説」で詳しく解説しています。
統計データから見る — 承継方法のトレンド変化
事業承継の方法は、ここ数年で大きく変化しています。判断の参考として、最新の統計データを確認しておきましょう。
承継方法別の割合推移
年 | 同族承継 | 内部昇格 | M&Aほか | 外部招聘 |
|---|---|---|---|---|
2020年頃 | 約40% | 約30% | 約15% | ― |
2024年 | 32.2% | 36.4% | 19.2% | ― |
2025年 | 32.3% | 36.1% | 20.6% | 7.6% |
(出典: 帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2025年)、分析対象: 約13.8万社、確認日: 2026-04-15)
注目すべきトレンド:
- 2024年に初めて「内部昇格」が「同族承継」を上回り、2025年もその傾向が定着
- M&Aを含む「第三者承継」は約20%で、年々増加を続けている
- 同族承継は2020年の約40%から2025年の32.3%に低下 — いわゆる「脱ファミリー化」が進行中
後継者不在率の推移
- 2017年: 66.5%
- 2024年: 52.1%(過去最低を更新)
- 2025年: 50.1%(初の50%台突入、7年連続低下)
- 小規模企業: 57.3%(依然として高水準)
事業承継問題への対策が進んだ結果、後継者不在率は改善傾向にありますが、小規模企業を中心に約半数がいまだ後継者未定という状況は続いています。
事業引継ぎ支援センターの実績
公的な事業承継支援の実績も伸びています。
- 2024年度の第三者承継成約件数: 2,132件(過去最高を更新)
- 累計成約件数: 12,306件
- 相談者数: 23,000者超
(出典: 中小企業基盤整備機構 令和6年度実績、確認日: 2026-04-15)
後継者が不在の場合、まず無料で相談できる事業引継ぎ支援センターに相談するのも選択肢の一つです。各都道府県に設置されています。
よくある質問(FAQ)
Q. 親族内承継とM&A、どちらが費用面で有利ですか?
事業承継税制(特例措置)を活用できる場合は、親族内承継の方が税負担を大幅に抑えられます(最大100%猶予)。ただし、M&Aでは株式の売却対価を受け取れるため、「コスト」ではなく「経済的な結果」で考えると、M&Aの方が経営者の手元に資金が残るケースも多くあります。どちらが有利かは、株式評価額・税制の適用可否・売却価格によって異なるため、税理士に具体的な試算を依頼することをおすすめします。
Q. 事業承継税制の特例措置はいつまで使えますか?
特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、贈与による承継期限は2027年12月31日です(2026年4月時点の最新情報)。当初は2026年3月末が計画提出期限でしたが、1年6ヶ月延長されました。ただし、今後さらに延長される保証はないため、親族内承継を検討中の方は早めの準備をおすすめします。
Q. 親族内承継を進めていたが、うまくいかない場合にM&Aに切り替えられますか?
切り替えは可能です。実際に、後継者候補の辞退や経営適性の問題から、途中でM&Aに方針転換するケースは珍しくありません。ただし、方針転換にはそれなりの時間がかかるため、「親族内承継がうまくいかなかったときの代替案」として、早い段階からM&Aの可能性も視野に入れておくことが重要です。
Q. M&Aの場合、従業員の雇用は守られますか?
M&Aの契約交渉では、雇用維持を条件に含めることが一般的です。買い手にとっても、事業を運営するうえで既存の従業員は重要な経営資源であるため、基本的には雇用維持の方向で交渉が進みます。ただし、契約で明確に定めておかないと、承継後に雇用条件が変わるリスクがあるため、契約書に雇用維持の条項を盛り込むことが重要です。
Q. 従業員承継と親族内承継、どちらが良いですか?
一概には言えませんが、親族内承継は「価値観の共有」や「ステークホルダーの理解の得やすさ」で優れ、従業員承継は「経営能力の実績がある人材に任せられる」点で優れています。従業員承継の最大のハードルは後継者の株式取得資金の確保です。MBOファイナンスやLBO(レバレッジド・バイアウト)を活用する方法もありますが、規模の大きい会社では資金調達が難しくなる傾向があります。
Q. 事業承継はいつから準備すべきですか?
中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、経営者が概ね60歳になったら事業承継の準備に着手することを推奨しています。親族内承継では5〜10年の育成期間が必要であり、M&Aでも半年〜2年の期間がかかります。早い段階から専門家に相談し、選択肢を把握しておくことが、スムーズな承継の第一歩です。
まとめ
親族内承継とM&Aは、それぞれ異なる強みとリスクを持つ事業承継の方法です。
判断基準 | 親族内承継が有力 | M&Aが有力 |
|---|---|---|
後継者候補 | 親族に適任者がいる | 不在 |
準備期間 | 5年以上確保できる | 早期に完了したい |
税負担 | 事業承継税制で軽減可能 | 譲渡所得税20.315% |
経済的メリット | 会社を家族に残せる | 創業者利益を得られる |
経営の継続性 | 理念・文化を守りやすい | 変化の可能性あり |
最も重要なのは、「どちらが正解か」ではなく「自分の会社と家族にとって最善の選択はどれか」を見極めることです。 どちらの方法にも専門家の支援が不可欠ですので、まずは税理士やM&Aアドバイザーに相談することから始めてみてください。
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