人材派遣・紹介・採用支援業のM&Aを検討しているなら、業態に精通した仲介会社を選ぶことが最重要だ。許認可の引き継ぎ、競業避止義務、登録スタッフの個人情報など、人材業界固有の複雑な問題を理解していない仲介会社では、後から想定外のトラブルが起きやすい。
この記事では、以下を2026年6月時点の公式情報をもとに解説する。
- 業態別(派遣・紹介・採用支援・HRテック)に向いている仲介会社
- 主要7社の手数料・対象規模・特徴の比較表
- 人材業界M&Aで必ず知っておくべき注意点(許認可・競業避止・個人情報)
- よくある疑問への回答
対象読者: 人材・派遣・採用支援業の会社売却を検討している中小企業のオーナー経営者
主要7社を一覧比較:人材・派遣・採用支援業のM&A仲介会社

以下は、2026年6月時点に公式サイトで確認できた情報をもとにまとめた比較表である。手数料体系は改定される場合があるため、必ず各社に最新情報を確認すること。
仲介会社 | 業界特化度 | 着手金 | 成功報酬(売り手側) | 最低報酬 | 向いている企業規模 |
|---|---|---|---|---|---|
KIKARI | ◎ 人材派遣特化 | 無料 | 4億円未満500万円固定 / 4億円以上3〜5% | 500万円 | 年商3〜30億円程度 |
MAポート | ◎ 人材業界専門 | 無料(完全成功報酬) | 7%(1億円以下)〜段階的 | 150万円 | 年商1,000万〜10億円 |
レバレジーズM&Aアドバイザリー | ○ 人材業界知識あり | 無料 | 5%(5億円以下)〜1%(段階的) | 未公開 | 中小企業中心 |
M&A総合研究所 | △ 全業種対応 | 無料 | 完全成功報酬(詳細非公開) | 未確認 | 中小〜幅広 |
日本M&Aセンター | ○ 業界専門チームあり | 非公開 | レーマン方式(個別対応) | 未確認 | 中小〜中堅 |
バトンズ | △ 全業種プラットフォーム | 無料 | 売り手無料 | 買い手:成約額2.2%(最低38.5万円) | スモール〜ミドル |
ウィルゲートM&A | △ IT・Web特化 | 無料 | 完全成功報酬(詳細非公開) | 200万円 | IT系採用支援・HRテック |
※ 各社の手数料情報は各社公式サイトより確認(2026年6月20日時点)。改定の可能性あり。実際の契約前に必ず各社へ確認のこと。
人材業界のM&A市場動向:なぜ今、活発化しているのか
有料職業紹介事業の年間手数料収入は約8,362億円(2023年度、前年度比8.6%増・過去最高水準)に達し、人材ビジネス市場全体では2024年度に初めて10兆円を超える見込みだ(出典:厚生労働省「令和5年度職業紹介事業報告書の集計結果」2025年3月公表)。
市場が拡大する一方で、有料職業紹介事業の登録数は27,899事業者(2023年度時点)に上り、競争は激しくなっている。こうした環境下で人材業界のM&Aが増えている背景には、次の要因がある。
M&A増加の4つの背景
- 後継者不在・経営者の高齢化 — オーナー経営者が60〜70代に差し掛かり、引退後の事業の行き先を探している
- 労働力不足の深刻化 — 少子高齢化による人材不足が続き、派遣・紹介会社の事業価値が高まっている
- 大手による業界再編 — IT化・DX対応でスケールメリットが必要となり、中小企業が大手の傘下に入るケースが増えている
- 専門領域特化への需要集中 — 介護、IT、医療など専門職特化の人材会社が特に高い評価を受けている
各社詳細:人材・派遣・採用支援業に強いM&A仲介会社7社
① KIKARI(キカリ)— 人材派遣業界に特化した専門仲介

KIKARIは、人材派遣業に特化したM&A仲介会社として、業界に精通した専門スタッフが売却から成約まで対応する。
会社情報(出典:kikari.co.jp、2026年6月20日確認)
- 所在地:東京都千代田区麹町3-3-8 麹町センタープレイス5階
- TEL:03-6272-6752
KIKARIが特徴的なのは「稼働譲渡型M&A」だ。売り手が抱えている稼働中のスタッフを、複数の買い手に分割譲渡できるという仕組みで、一般的な仲介会社にはないサービスになっている。また、派遣会社向けの収益改善コンサルティングと組み合わせ、「磨き上げ後のM&A」で売却価格を高めるアプローチも取っている。
手数料体系(公式確認済み)
種別 | 金額・条件 |
|---|---|
着手金 | 無料(基本合意書締結まで費用発生なし) |
基本合意報酬 | 10億円未満:100万円 / 10〜50億円未満:200万円 / 50億円以上:300万円 |
成約報酬(売り手) | 4億円未満:500万円(固定) / 4〜5億円:5% / 5〜10億円:4% / 10〜50億円:3% |
成約報酬(買い手) | 4億円未満:1,500万円(固定) / 4〜5億円:5% / 5〜10億円:4% / 10〜50億円:3% |
強み
- 派遣業の経営・マネジメント・ビジネス構造を熟知した専門スタッフ
- 収益改善支援と連携した「磨き上げ後M&A」が可能
- 最短2ヶ月成約の実績(公称)
注意点
- 実績件数が限定的(公称:クライアント11社・事業所11拠点)
- 大型案件(50億円超)への実績は少ない
- 人材紹介・採用支援には特化していない
→ 人材派遣会社(年商3〜30億円程度)で業界に特化したサポートを受けたい場合に向いている。
② MAポート — 人材業界(派遣・紹介・採用支援)専門の完全成功報酬
MAポートは、人材業界全般(派遣・紹介・採用支援)に専門特化したM&A仲介会社だ。元リクルートのMVP獲得者を含む営業力の強いチームが特徴で、年商1,000万円〜10億円程度のスモール〜ミドル案件に強い。
会社情報(出典:maport.jp、2026年6月20日確認)
- 旧社名:株式会社ブレイクスルー
手数料体系(公式確認済み)
譲渡金額 | 成功報酬(売り手) |
|---|---|
〜1,000万円 | 150万円 |
1,000〜3,000万円 | 250万円 |
5,000万〜1億円 | 7% |
1〜3億円 | 6% |
着手金は無料(完全成功報酬型)。
強み
- 人材業界特化のため、買い手ネットワークが業界内に集中しており、マッチングが速い
- 最低報酬150万円はスモール案件でも比較的リーズナブル
- 最短21日の成約実例(公称)
注意点
- 「成約率93%」は公称値であり、算出根拠・分母の定義は未公表のため、数字そのものより担当者の説明内容で判断すること
- 大規模案件(10億円超)の実績は限定的と推測される
→ 年商1,000万〜10億円規模の人材派遣・紹介・採用支援会社でスピード重視の売却を検討している場合に向いている。
③ レバレジーズM&Aアドバイザリー — 人材グループの知見を活かす

レバレジーズM&Aアドバイザリーは、親会社レバレジーズが人材関連サービス50以上を展開しているグループ会社だ。レバテック(ITエンジニア派遣・紹介)、レバウェル(医療・介護)、ハタラクティブ(若手転職)など多様な人材サービスの知見・顧客基盤を活かしたM&Aが強みになっている。
会社情報(出典:leveragesma.jp、2026年6月20日確認)
- 設立:2020年4月
- 資本金:5,000万円
- 拠点:東京本社・名古屋・大阪・福岡
手数料体系(公式確認済み・売り手側)
譲渡金額 | 成功報酬(完全成功報酬制) |
|---|---|
5億円以下 | 5% |
5〜10億円 | 4% |
10〜50億円 | 3% |
50〜100億円 | 2% |
100億円超 | 1% |
強み
- 約30,000社の独自顧客データベースを活用したマッチング
- 人材業界の事業価値評価に精通(定性的資産:人材・スキル・社風を正しく評価できる)
- 売却前の採用支援で評価額向上を支援するという人材業界M&A特有の付加価値サービスがある
- 最短39日成約実績(公称)
注意点
- 設立から約6年(2026年時点)でまだ実績の積み上げ中。大手と比べた成約件数は非公開
- 人材派遣業の許認可問題への対応力は個別に確認が必要
→ 採用支援・HRテック・IT人材特化型の紹介会社で、グループシナジーを期待してM&Aを検討している場合に特に向いている。
④ M&A総合研究所 — 売り手完全無料の上場会社
M&A総合研究所は、売り手側に完全成功報酬制(着手金・中間金なし)を採用する上場M&A仲介会社だ。クオンツ総研ホールディングス(東証プライム)の子会社で、AIマッチングシステムとデータベースを活用した効率的な案件進行が特徴。
手数料体系(公式確認済み)
- 売り手(譲渡企業):成約まで完全無料
- 買い手(譲受企業):中間金あり(詳細非公開)
実績・対応体制
- 最短43日、平均7.2ヶ月での成約(2025年9月期・公称)
- 全国対応
公式には「人材紹介業界におけるM&Aの経験が豊富なM&Aアドバイザーが、相談時からクロージングまで案件をフルサポート」と記載されている(出典:masouken.com、2026年6月20日確認)。ただし、人材業界の成約件数は非公開のため、担当者の業界経験は初回面談で確認すること。
強み
- 売り手の費用リスクがゼロ(完全成功報酬)
- 上場企業グループのコンプライアンス体制
- AIマッチングによるスピード
注意点
- 人材業界の専門実績件数は未公表
- 担当者が業界に精通しているかは個別に確認が必要
→ 費用リスクを抑えて相談したい場合や、仲介会社の選定を複数社で比較検討したい場合に、初回相談先として向いている。
⑤ 日本M&Aセンター — 業界最大手の実績と業種専門チーム
日本M&Aセンターは、M&A成約件数でギネス世界記録(5年連続)を保有する国内最大手の仲介会社だ。1991年設立・東証プライム上場で、業界専門チームを設けており、人材派遣・紹介業界にも対応している(出典:nihon-ma.co.jp、2026年6月20日確認)。
実績・対応体制
- 累計成約件数:1万件以上(2024年3月時点)
- 専任コンサルタント:600名超
- 業種専門担当制を採用
手数料体系
公式ウェブサイト上での具体的な手数料開示はなく、個別相談ベースの対応。一般的にレーマン方式(5億円以下:5%など)が採用されているが、最低報酬額も含め個別に確認が必要。
強み
- 圧倒的な成約実績・ネットワーク・ブランド力
- 業界別専門担当制で許認可対応の知見あり
- 大手企業・金融機関との買い手ネットワーク
注意点
- スモール案件(譲渡額1億円以下)は最低報酬額の関係で割高になる傾向がある
- 手数料の具体的な数値は個別相談でないと確認できない
→ 中堅規模以上(年商5億円超)の人材会社で、買い手ネットワークの広さと実績を重視する場合に向いている。
⑥ バトンズ(BATONZ)— スモール案件の売り手完全無料プラットフォーム
バトンズは、M&Aマッチングプラットフォームとして業界最低水準の手数料(買い手側)と売り手完全無料が特徴だ。日本M&Aセンターグループ、2026年4月に東証グロース上場(2026年6月現在)。
人材業界の掲載案件数(2026年6月時点)
- 人材派遣(技術者・専門職):341件
- 人材紹介:210件
手数料体系(公式確認済み)
- 売り手:無料
- 買い手:成約額の2.2%(最低38.5万円)
実績
- 累計成約件数:3万件以上(プラットフォーム全体・全業種)
- 平均成約期間:3.5ヶ月(公称)
強み
- 売り手の費用がゼロで気軽に相談できる
- 案件掲載数が多く、業界内の買い手候補を幅広く探せる
- 個人事業主〜小規模法人にも対応
注意点
- マッチング中心のプラットフォームのため、対面での伴走サポートは限定的
- 人材業界特有の問題(許認可・個人情報管理・競業避止義務)への専門サポートは、別途専門家に相談が必要
→ 小規模な人材紹介・派遣会社(個人事業主〜年商3億円未満)で、まず候補となる買い手を探したい場合に向いている。
⑦ ウィルゲートM&A — 採用テック・HRテック(SaaS)向け
ウィルゲートM&Aは、IT・Web領域特化の仲介会社で、SaaS型の採用管理ツールやHRテック企業のM&Aに相性が良い。一般的な人材派遣・紹介会社には向いていないが、採用テック・ダイレクトリクルーティングSaaS・RPO(採用代行)などIT色の強い事業では有力な選択肢になる。
手数料体系(公式確認済み)
- 完全成功報酬制、着手金・中間手数料なし
- 最低報酬:200万円
実績(2026年6月時点)
- 累計成約件数:83件
- 最短1.5ヶ月成約実績
- 17,400社以上の経営者ネットワーク、評価額40億円以上の実績あり
注意点
- IT・Web領域特化のため、一般的な人材派遣・紹介会社のM&Aには買い手ネットワークが限定的
- 人材業界の許認可・労務問題への対応力は別途確認が必要
→ 採用テック・HRテックSaaS・RPOなどIT色の強い採用支援会社に向いている。人材派遣・一般的な紹介会社には向かない。
業態別の選び方:派遣・紹介・採用支援・HRテックで変わる最適解

人材派遣会社のM&Aを検討している場合
人材派遣会社のM&Aでは、「労働者派遣事業許可」の扱いが最大の論点になる。株式譲渡なら既存の許可を継続利用できるが、事業譲渡では買い手が新規取得(2〜3ヶ月かかる)しなければならない。この点に精通した仲介会社を選ぶことが重要だ。
おすすめの優先順位
- KIKARI — 派遣業特化で許認可問題・稼働スタッフ管理の実務に精通。まず相談すべき最有力候補
- MAポート — 人材業界全般専門で派遣案件の実績あり。スモール案件に強い
- 日本M&Aセンター — 業界専門チームがある。中堅規模(年商5億円超)では特に有力
人材紹介会社のM&Aを検討している場合
人材紹介会社では、「有料職業紹介事業許可」と求職者・企業の個人情報・顧客データが主な論点になる。顧客データベースの評価とデータ移転の手続きを理解している仲介会社が望ましい。
おすすめの優先順位
- MAポート — 人材紹介案件の専門知識が豊富。スモール〜ミドル案件に対応
- レバレジーズM&Aアドバイザリー — グループの人材業界知見を活かした企業価値評価に強み
- M&A総合研究所 — 売り手完全無料で費用リスクなし。担当者の業界経験を初回で確認すること
採用支援・HRテック(SaaS)のM&Aを検討している場合
採用代行(RPO)、ダイレクトリクルーティング、採用管理SaaSなどは、評価指標がARR・解約率・NRRなど、一般的な人材会社と大きく異なる。これらの指標を正確に評価できる仲介会社を選ばないと、本来の事業価値が正しく伝わらない。
おすすめの優先順位
- レバレジーズM&Aアドバイザリー — グループで採用支援事業を複数展開。業界の評価軸を理解している可能性が最も高い
- ウィルゲートM&A — IT・SaaS事業の評価に精通。採用テック・HRテックSaaSに特に向いている
- バトンズ — 小規模なRPO・採用支援会社で手軽に売却候補を探したい場合に
売却相場の目安(2026年版)
人材会社の売却価格は業態によって評価倍率が異なる。以下は参考相場であり、実際の価格は財務内容・成長性・顧客基盤・契約条件によって大きく変動する。実際の価格査定は必ず専門家(仲介会社・M&Aアドバイザー)に依頼すること。
業態 | 目安となるEBITDA倍率 | 参考相場(規模別) |
|---|---|---|
人材派遣(一般) | 3〜6倍 | 売上1億円以下:3,000万〜1億円程度 |
人材紹介(総合) | 4〜8倍 | 売上1〜5億円:5,000万〜3億円程度 |
IT人材特化型紹介 | 5〜10倍 | 売上5〜20億円:2〜10億円程度 |
採用支援SaaS(HRテック) | 個別評価が必要 | ARR・解約率・NRRによる |
出典:M&A Capital Design「人材派遣・人材紹介会社のM&A売却相場と成功ポイント【2026年版】」(ma-capital-design.com)、ウィルゲートM&Aコラム(willgate.co.jp)
売却価格の簡易算出式(一般的な目安):時価純資産額 +(営業利益 + 役員報酬)× 2〜5年分
この計算式はあくまで目安であり、個別の案件では大きく異なる。実際の価格査定は複数の仲介会社に無料相談し、比較することを強くおすすめする。
人材業界M&Aで必ず知っておくべき注意点

人材業界のM&Aには、他の業界にない固有のリスクが存在する。以下の4点は、仲介会社を選ぶ前に必ず理解しておくこと。
① 許認可の引き継ぎ問題(最重要)
人材派遣業・人材紹介業の許認可(「労働者派遣事業許可」「有料職業紹介事業許可」)は、事業譲渡では買い手に引き継げない。
- 株式譲渡(会社ごと売却) → 既存の許可をそのまま継続利用できる(最も一般的な選択)
- 事業譲渡(事業のみを売却) → 買い手が許可を新規取得する必要があり、2〜3ヶ月かかる。その間は事業が止まるリスクがある
実際の手続きは案件ごとに異なり、法令改正もあり得るため、必ず管轄の労働局および専門家(行政書士・弁護士)に事前確認すること。
② 競業避止義務(最大20年・交渉で短縮可能)
会社法第21条により、事業譲渡後は同一地域での同一事業を最大20年間禁止される原則がある。ただし、これは当事者間の交渉により期間・地域の限定が可能で、実務上は5年程度に短縮されることも多い。
売却後に引き続き別の人材会社を設立・経営したい場合は、契約交渉の段階で期間・対象業種・対象地域の条件を明確に取り決めること。この点の交渉経験がある仲介会社を選ぶことが重要だ。具体的な条件については弁護士にご相談ください。
③ 登録スタッフ・求職者の個人情報保護
人材会社は大量の個人情報(登録スタッフ・求職者の氏名・住所・マイナンバー等)を保有している。デューデリジェンス(DD)の際に買い手へこれらの情報を開示する場合、個人情報保護法上の適切な手続きが必要となる。
- NDA(秘密保持契約)の範囲に個人情報の取り扱いを明記する
- 開示情報はデータの匿名化・統計化を検討する
- 買い手への情報移転手順は、事前に専門家(弁護士・個人情報保護士)に確認すること
④ 社会保険・労務コンプライアンス
派遣会社では、社会保険未加入・未払い賃金などの労務問題が潜在していることがある。これは必ずDDで調査される項目であり、問題が発見されると価格交渉や契約破棄につながる可能性がある。
健康保険・厚生年金の遡及請求期間は2年間のため、少なくとも直近2年分の労務書類を整理しておくことが売却準備として重要だ。
こんな企業に向いている / こんな企業はよく考えてから
人材・派遣・採用支援業のM&Aに向いている企業
- 後継者が不在または後継者候補がいない
- 事業は好調だが、競争激化や業界再編の波に一人で対応するのが難しくなってきた
- 特定の専門領域(IT・医療・介護)に強みがあり、大手のネットワークを活かせる見込みがある
- 創業者が60代以上で、引退後の雇用維持や事業の継続を考えている
- 労働力不足の追い風を受けて業績が拡大しており、売却価格が高くなりやすいタイミングにある
よく考えてから判断すべき企業
- 社会保険未加入・労務コンプライアンスに大きな問題がある — まず専門家と改善してからM&Aを進める方が有利
- 売却後に同業の事業を続けたい — 競業避止義務の交渉が複雑になり、条件によっては売却後の活動が制限される
- 登録スタッフや従業員が売却情報に敏感 — 情報漏洩防止の秘密保持体制を徹底しないと事業価値が下がるリスクがある
- 人材の重要性が高く、M&A後のPMIに懸念がある — M&A後の雇用維持・組織統合の方針を事前にすり合わせてから進めること
よくある質問(FAQ)
Q1. 人材派遣会社を売却する場合、「労働者派遣事業許可」はどうなりますか?
株式譲渡(会社ごと売却)の場合は、既存の許可が買い手企業にそのまま引き継がれます。一方、事業譲渡の場合は買い手が許可を新規取得する必要があり、申請から取得まで2〜3ヶ月かかる場合があります。どちらの方法が最適かは案件の状況によって異なるため、管轄の労働局および専門家に事前に確認することをおすすめします。
Q2. 売却後に別の人材紹介会社を立ち上げることはできますか?
事業譲渡を選んだ場合、会社法第21条により同一地域・同一業種での事業が一定期間禁止される可能性があります。ただし、契約交渉で期間・対象地域・業種の範囲を限定することは可能です(実務上は5年程度に短縮されるケースも多い)。具体的な条件については、必ず弁護士にご相談ください。
Q3. 登録スタッフの個人情報はどのように扱われますか?
デューデリジェンスの段階では、個人情報保護法の適切な手続きに従って情報を開示する必要があります。実務上は、個人が特定できない形式(統計化・匿名化)で開示し、NDAの範囲に個人情報保護の条件を明記することが一般的です。具体的な手順については、事前に弁護士または個人情報保護の専門家に相談することをおすすめします。
Q4. 人材紹介会社の売却相場はどのくらいですか?
業態・規模・専門領域によって大きく異なりますが、一般的に「時価純資産額+(営業利益+役員報酬)×2〜5年分」が目安とされています。IT人材特化型の紹介会社ではEBITDA倍率が5〜10倍になるケースもあります。正確な相場は、複数の仲介会社に無料相談して査定を比較することをおすすめします。
Q5. 人材業界に精通した仲介会社を選ぶにはどうすれば良いですか?
初回面談で以下を確認することをおすすめします。
- 担当者の人材業界(派遣・紹介)への過去の成約実績(件数・業種)
- 許認可(労働者派遣事業許可・有料職業紹介事業許可)の引き継ぎ対応の経験
- 売却後の競業避止義務交渉の経験
- 買い手候補のネットワーク(業界内か業界外か)
業界特化の仲介会社(KIKARIやMAポート)は専門性が高い一方、大手(日本M&Aセンター)は実績と買い手ネットワークが広い。複数社に相談して比較することが最善策です。
まとめ:人材・派遣・採用支援業のM&A仲介会社の選び方
人材業界のM&Aで仲介会社を選ぶ際の最大のポイントは「業態への精通度」だ。許認可引き継ぎ・競業避止義務・個人情報管理という業界固有の複雑な論点を理解していない仲介会社では、後から問題が生じやすい。
業態別のおすすめまとめ
業態 | 最優先候補 | 次点 |
|---|---|---|
人材派遣会社 | KIKARI(業界特化) | MAポート、日本M&Aセンター |
人材紹介会社 | MAポート(業界専門) | レバレジーズ、M&A総合研究所 |
採用支援・HRテック | レバレジーズ(グループ知見) | ウィルゲートM&A |
小規模・スモール案件 | バトンズ(売り手無料) | MAポート |
まずは複数社に無料相談し、担当者の業界経験と買い手ネットワークを直接確認することを強くおすすめする。
M&Aの全体的な流れや費用の目安は、M&A費用・手数料の相場ガイドも参考にしてほしい。また、M&Aの基本的な仕組みから理解したい方はM&Aとは?仕組み・流れ・種類を徹底解説をご覧ください。
本記事の情報について: 本記事に掲載した手数料・実績データは、各社公式サイトをもとに2026年6月20日時点で確認した情報です。手数料体系は改定される可能性があるため、実際の契約前には必ず各社に最新情報をご確認ください。また、許認可・競業避止義務・税務に関する事項は、必ず弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。
