年商1億円以下の企業がM&Aを検討する場合、大手仲介会社の最低報酬(1,500万〜2,500万円)は取引規模に対して高すぎるのが現実です。売り手手数料が無料のマッチングプラットフォームや、最低報酬100万〜150万円の小規模特化型仲介会社を選ぶことで、譲渡価格に見合ったコストでM&Aを進められます。
この記事でわかること:
- 年商1億円以下のM&Aに対応する仲介会社・プラットフォーム9社の手数料比較
- 譲渡価格1,000万円・3,000万円・5,000万円の手数料シミュレーション
- プラットフォーム型と仲介型のどちらを選ぶべきかの判断基準
- 事業承継・M&A補助金を活用した手数料負担の軽減方法
この記事の対象読者: 会社の売却や事業譲渡を検討している年商1億円以下の中小企業オーナー・個人事業主の方
年商1億円以下向けM&A支援サービス|全9社の比較表

年商1億円以下のM&Aに対応するサービスは、大きく「マッチングプラットフォーム型」「小規模特化の仲介会社・FA」「公的支援機関」の3タイプに分かれます。まずは全体像を比較表で把握してください。
会社名/サービス | タイプ | 売り手費用 | 買い手費用 | 最低報酬 | 着手金 | 対象規模の目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|
バトンズ | プラットフォーム | 無料 | 成約額の2% | なし | なし | 小規模〜マイクロM&A |
TRANBI(トランビ) | プラットフォーム | 無料 | 月額3,980〜19,800円 | なし | なし | 小規模〜中規模 |
M&Aナビ | プラットフォーム | 無料 | 成約時手数料あり | 非公開 | なし | 中小企業 |
M&Aサクシード | プラットフォーム | 無料 | 成約額の1.5〜2.0% | 150〜200万円 | なし | 中小〜中堅(法人限定) |
ブティックス | 仲介(業種特化) | 成功報酬 | 成功報酬 | 100万円〜 | なし | 小規模〜中規模 |
ヒルストン | 仲介(小規模特化) | 成功報酬 | — | 150万円〜 | なし | 年商1億円以下 |
たからだFP事務所 | FA(個人事務所) | 成功報酬 | — | 100万円〜 | なし | 小規模・個人事業 |
かえでFA | 仲介(独立系) | 成功報酬 | — | 500万円 | なし | 売上1億円前後 |
日本事業承継支援機構 | 仲介(事業承継特化) | 成功報酬 | — | 500万円 | なし | 売上1億円以下・赤字企業も可 |
出典: 各社公式サイト(2026年4月確認)。手数料は改定される場合があるため、最新情報は各社公式サイトでご確認ください。
大手仲介会社の最低報酬との比較
参考として、大手M&A仲介会社の最低報酬を掲載します。年商1億円以下の企業では、手数料が譲渡価格に対して過大になるケースがほとんどです。
大手仲介会社 | 最低報酬 |
|---|---|
日本M&Aセンター | 2,500万円 |
M&Aキャピタルパートナーズ | 2,500万円 |
fundbook | 2,500万円 |
ストライク | 2,000万円 |
M&A総合研究所 | 1,500万円 |
出典: 各社公式サイトおよびM&A総合研究所「M&Aの手数料相場」(2026年4月確認)。最低報酬額は案件内容や交渉により変動する場合があります。
マッチングプラットフォーム型4社の特徴

マッチングプラットフォームは、売り手が自分で買い手候補を探し、オンラインで交渉を進める仕組みです。売り手の手数料が無料〜低価格に設定されていることが最大のメリットですが、交渉や契約手続きのサポートは限定的です。
バトンズ(BATONZ)
日本M&Aセンターグループの子会社として2018年に設立され、2026年4月に東証グロース市場へ上場予定の注目サービスです。ユーザー数・案件数・成約件数で5年連続No.1(2021〜2025年度)を公表しています。
- 売り手費用: 無料
- 買い手費用: 成約額の2%(最低報酬なし)
- 登録案件数: 10,000件超
- 買い手登録数: 30万人超
- 特徴: 専門家パートナー制度あり。飲食・小売・サービス業の小規模案件に強い
- 注意点: プラットフォーム型のため、仲介会社のような手厚い交渉サポートは基本的にない。別途専門家の利用を検討する必要がある
出典: バトンズ公式サイト(https://batonz.jp/)、確認日2026-04-06
TRANBI(トランビ)
2011年設立のM&Aプラットフォームで、成約手数料が全プラン無料という独自の料金体系を採用しています。買い手は月額制で利用する仕組みで、売り手は完全無料です。
- 売り手費用: 無料(成約手数料も無料)
- 買い手費用: 月額プラン制
- ベーシック: 月額3,980円(税込4,378円)/案件規模〜500万円
- ビジネス: 月額9,800円(税込10,780円)/案件規模〜3,000万円
- エンタープライズ: 月額19,800円(税込21,780円)/案件規模上限なし
- 会員数: 20万人超
- オプション: 交渉サポート30万円/案件、交渉代行5万円/月
- 注意点: セルフサービス型のため、M&A経験のない売り手はオプションの交渉サポートの利用を検討した方がよい
出典: TRANBI公式料金ページ(https://www.tranbi.com/about/price/)、確認日2026-04-06
M&Aナビ
2018年設立の中小企業特化型プラットフォームです。売り手は完全無料で利用でき、AIマッチング機能を搭載している点が特徴です。
- 売り手費用: 無料
- 買い手費用: 買収対価に応じた成約手数料(詳細料率は公式サイトで要確認)
- 着手金・中間金: なし
- 特徴: 完全成功報酬型で売り手の参入障壁が低い
出典: M&Aナビ公式FAQ(https://ma-navigator.com/columns/faq/cat9/078)、確認日2026-04-06
M&Aサクシード
ビズリーチを運営するビジョナル株式会社(東証プライム上場)のグループサービスです。法人限定のプラットフォームで、質の高い買い手企業が集まりやすいという特徴があります。
- 売り手費用: 無料(月額費用なし)
- 買い手費用:
- 無料プラン: 成約時手数料2.0%(最低200万円)
- 有料プラン: 成約時手数料1.5%(最低150万円)
- 登録企業数: 累計15,000社超
- 注意点: 法人限定のため個人事業主は利用不可。買い手の最低報酬が150〜200万円のため、譲渡価格が低い場合は買い手が見つかりにくい可能性がある
出典: M&Aサクシード公式サイト、確認日2026-04-06
小規模特化の仲介会社・FA 5社の特徴

プラットフォーム型とは異なり、専任のアドバイザーが相手探しから交渉・契約まで一貫して伴走するのが仲介会社・FA(ファイナンシャルアドバイザリー)です。手数料は高くなりますが、M&A初心者にとっては安心感があります。
ブティックス(M&A支援センター)
東証グロース市場上場のブティックス株式会社が運営するM&A仲介サービスです。業種特化×低手数料で小規模案件にも対応しています。
- 手数料: 完全成功報酬制(着手金・中間金なし)
- 最低報酬: 100万円〜(業界最安水準)
- 対象業種: 介護・障害福祉・保育・医療・調剤・建設・IT
- 成約実績: 1,931件(2025年12月末時点)
- 買いニーズ登録: 1.8万社超
- 特徴: 対象業種に該当する企業にとっては、業界知見と低手数料の両方を得られる選択肢
出典: M&A支援センター公式サイト(https://btix-ma.com/)、確認日2026-04-06
ヒルストン
年商1億円以下の中小企業専門を明記している数少ない仲介会社です。大阪本社のほか東京、名古屋、金沢、札幌、仙台など全国展開しています。
- 手数料: 完全成功報酬制(着手金無料)
- 成功報酬の料率:
- 売買価格1,000万円以下: 150万円
- 売買価格3,000万円以下: 250万円
- 売買価格6,000万円以下: 350万円
- 売買価格1億円以下: 500万円
- 5億円以下の部分: 5%
- 対象企業: 年商1億円以下の中小企業
- 得意分野: 全業種対応。美容業界(美容室・エステ等)にも強み
- 特徴: 明確な固定報酬テーブルでわかりやすい料金体系。最低150万円は仲介会社の中では低水準
出典: ヒルストン公式料金ページ(https://hillstone-ma.com/fee/)、確認日2026-04-06
たからだFP事務所
スモールM&A・マイクロM&Aに特化した個人事務所型のFAです。
- 手数料: 成功報酬制
- 最低報酬: 100万円〜
- 対象: 小規模企業・個人事業
- 特徴: 低価格設定でマイクロM&Aにも対応。中小M&Aガイドライン遵守を宣言
出典: M&Aナビ記事(https://ma-navigator.com/columns/small-ma-proxy)、確認日2026-04-06
かえでファイナンシャルアドバイザリー
2005年設立の独立系M&A仲介・コンサルティング会社です。独立系のため利益相反がない点と、プレM&Aコンサルティングを提供している点が特徴です。
- 手数料: 完全成功報酬制(着手金・中間手数料なし)
- 成功報酬: 株価レーマン方式
- 最低報酬: 500万円
- 対象: 売上1億円前後の中小・ベンチャー企業
- 成約実績: 創業以来400社以上
- 得意分野: 事業承継M&A、事業再生M&A、ベンチャー企業M&A
- 特徴: セカンドオピニオンにも対応。最低報酬500万円のため、譲渡価格3,000万円以上の案件に向いている
出典: かえでファイナンシャルアドバイザリー公式サイト(https://kaedefa.com/)、確認日2026-04-06
日本事業承継支援機構(JBSSO)
事業承継に特化したM&A仲介・投資運営会社です。赤字・債務超過の企業にも対応している点が、他社にはない大きな特徴です。
- 手数料: 完全成功報酬制
- 最低報酬: 500万円
- 対象: 売上高1億円以下の企業。赤字・債務超過企業にも対応
- 特徴: SP9プログラム(株式引き受け+経営サポート9段階プログラム)を提供。他社が敬遠しがちな小規模・財務困難企業にも対応
出典: 各種メディア記事、確認日2026-04-06
レーマン方式の「計算基準」に注意
多くの仲介会社が「レーマン方式」を採用していますが、計算基準が会社ごとに異なるため、同じ料率表示でも実際の手数料額に数百万円の差が出ることがあります。
計算基準 | 内容 | 手数料への影響 |
|---|---|---|
株価レーマン | 株式の譲渡価格が基準 | 売り手にとって最も有利になりやすい |
企業価値レーマン | 株価+有利子負債が基準 | 株価レーマンより高くなる |
移動総資産レーマン | 株価+負債総額が基準 | 最も手数料が高くなりやすい |
一般的なレーマン方式の料率は以下の通りです。
取引金額の部分 | 料率 |
|---|---|
5億円以下 | 5% |
5億円超〜10億円以下 | 4% |
10億円超〜50億円以下 | 3% |
50億円超〜100億円以下 | 2% |
100億円超 | 1% |
年商1億円以下の案件では、ほとんどの場合「最低報酬額」が適用されます。 レーマン方式で計算した金額が最低報酬を下回るためです。面談時には「計算基準はどれか」「最低報酬はいくらか」の2点を必ず確認してください。
【譲渡価格別】手数料シミュレーション

年商1億円以下の企業を売却する場合、譲渡価格は数百万円〜5,000万円程度が一般的です。以下の3パターンで、各サービスの実質手数料率を比較します。
譲渡価格1,000万円のケース
サービス | 売り手の手数料(税抜) | 実質手数料率 | 備考 |
|---|---|---|---|
バトンズ | 0円 | 0% | 売り手無料 |
TRANBI | 0円 | 0% | 売り手完全無料 |
M&Aナビ | 0円 | 0% | 売り手無料 |
M&Aサクシード | 0円 | 0% | 売り手無料 |
ブティックス | 100万円 | 10% | 最低報酬適用 |
ヒルストン | 150万円 | 15% | 固定報酬テーブル |
たからだFP事務所 | 100万円 | 10% | 最低報酬適用 |
かえでFA | 500万円 | 50% | 最低報酬適用。この規模には不向き |
日本事業承継支援機構 | 500万円 | 50% | 最低報酬適用。この規模には不向き |
譲渡価格3,000万円のケース
サービス | 売り手の手数料(税抜) | 実質手数料率 | 備考 |
|---|---|---|---|
バトンズ | 0円 | 0% | 売り手無料 |
TRANBI | 0円 | 0% | 売り手完全無料 |
M&Aナビ | 0円 | 0% | 売り手無料 |
M&Aサクシード | 0円 | 0% | 売り手無料 |
ブティックス | 150万円 | 5% | レーマン方式(5%×3,000万円) |
ヒルストン | 250万円 | 約8% | 固定報酬テーブル |
たからだFP事務所 | 150万円 | 5% | レーマン方式 |
かえでFA | 500万円 | 約17% | 最低報酬適用 |
日本事業承継支援機構 | 500万円 | 約17% | 最低報酬適用 |
譲渡価格5,000万円のケース
サービス | 売り手の手数料(税抜) | 実質手数料率 | 備考 |
|---|---|---|---|
バトンズ | 0円 | 0% | 売り手無料 |
TRANBI | 0円 | 0% | 売り手完全無料 |
M&Aナビ | 0円 | 0% | 売り手無料 |
M&Aサクシード | 0円 | 0% | 売り手無料 |
ブティックス | 250万円 | 5% | レーマン方式 |
ヒルストン | 350万円 | 7% | 固定報酬テーブル(6,000万円以下) |
たからだFP事務所 | 250万円 | 5% | レーマン方式 |
かえでFA | 500万円 | 10% | 最低報酬適用 |
日本事業承継支援機構 | 500万円 | 10% | 最低報酬or レーマン方式 |
※レーマン方式の手数料は「5億円以下の部分×5%」で概算(株価ベース)。計算基準(株価・移動総資産・企業価値)によって実際の金額は変動します。正確な見積もりは各社に直接ご確認ください。
シミュレーションから見える判断基準
- 譲渡価格1,000万円以下: プラットフォーム型(バトンズ・TRANBI・M&Aナビ)一択。仲介会社は最低報酬の負担が重すぎる
- 譲渡価格1,000万〜3,000万円: プラットフォーム型でコストを抑えるか、最低報酬100〜150万円の仲介会社(ブティックス・ヒルストン)でサポートを受けるかの選択
- 譲渡価格3,000万〜5,000万円: 仲介会社のレーマン方式でも実質手数料率は5〜10%に収まるため、フルサポート型の仲介会社が十分選択肢に入る
プラットフォーム型 vs 仲介型|どちらを選ぶべきか
年商1億円以下のM&Aでは、プラットフォーム型と仲介型のどちらを選ぶかが最も重要な判断です。以下の比較を参考に、自社の状況に合ったタイプを選んでください。
比較項目 | プラットフォーム型 | 仲介会社・FA型 |
|---|---|---|
売り手の費用 | 無料〜低額 | 最低報酬100万〜500万円 |
サポート範囲 | 相手探し中心。交渉は自力 or オプション | 相手探しから交渉・契約まで伴走 |
向いている規模 | 譲渡価格数百万円〜数千万円 | 譲渡価格1,000万円以上 |
M&A経験 | ある程度の知識がある方向け | 初めてのM&Aでも対応可 |
スピード感 | 自分次第。数ヶ月〜1年以上 | 平均6ヶ月〜1年 |
買い手の質 | 玉石混交(個人買い手も多い) | 仲介会社が選定・審査 |
秘密保持 | NDAは自分で管理 | 仲介会社が管理 |
こんな企業はプラットフォーム型がおすすめ
- M&Aの基本的な流れを理解している、または学ぶ意欲がある
- 顧問の税理士・弁護士がいて、契約面のチェックを依頼できる
- コストを最小限に抑えたい(特に譲渡価格1,000万円以下)
- 自分のペースで複数の候補から選びたい
- 飲食・小売・Webサービスなどプラットフォームに案件が多い業種
プラットフォーム型をおすすめしないケース
- M&Aの知識がなく、交渉や契約書の作成に不安がある
- 財務諸表や決算書の整備ができていない
- 業界の専門知識が必要な案件(医療・介護・建設など許認可が関わる業種)
こんな企業は仲介会社・FA型がおすすめ
- 初めてのM&Aで何から始めればよいかわからない
- 交渉・デューデリジェンス・契約まで一貫して任せたい
- 赤字・債務超過でも売却の可能性を探りたい(日本事業承継支援機構など)
- 介護・福祉・保育・IT業界で、業界特化の知見がほしい(ブティックスなど)
- 事業再生やプレM&Aコンサルティングも併せて相談したい(かえでFAなど)
仲介会社型をおすすめしないケース
- 譲渡価格が500万円以下で、最低報酬の負担が大きすぎる
- すでにM&A経験があり、フルサポートは不要
- 急いでいないので自分のペースで探したい
小規模M&A仲介会社の選び方|5つのチェックポイント

1. 最低報酬額を真っ先に確認する
年商1億円以下の企業にとって最も重要なのは最低報酬額です。最低報酬500万円の仲介会社に譲渡価格800万円の案件を依頼すると、手数料率は62.5%に達します。
目安: 譲渡価格の10〜15%以内に手数料が収まるかどうかを確認してください。
2. M&A支援機関登録の有無を確認する
中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録されているかどうかは、信頼性を判断する一つの目安です。現時点で約3,400の支援機関が登録されています。
登録機関は中小M&Aガイドラインの遵守を宣言しており、手数料体系の事前開示や利益相反管理の義務を負っています。登録状況は中小企業庁のウェブサイト(M&A支援機関登録制度)で検索できます。
3. 着手金・中間金の有無を確認する
成約しなかった場合のリスクを最小化するには、完全成功報酬制(着手金なし・中間金なし)の会社を選ぶのが基本です。
本記事で紹介した9社はいずれも着手金無料ですが、一部の仲介会社は中間金(成功報酬の一部を基本合意時に支払う)を設定していることがあります。契約前に「成約しなかった場合の費用はゼロか」を明確に確認してください。
4. 仲介型かFA(片側助言)型かを理解する
仲介会社は売り手・買い手の双方と契約するため、構造的に利益相反が起こりうることを理解しておく必要があります。FA(ファイナンシャルアドバイザリー)は売り手のみの利益を代弁します。
中小M&Aガイドライン(第3版)では、仲介者に対して利益相反リスクの説明義務が課されています。面談時に「利益相反についてどう管理しているか」を聞いてみてください。
5. 業界・業種の専門性を確認する
小規模M&Aでは、業界の特性を理解したアドバイザーかどうかで成約の質が変わります。
業界 | おすすめの選択肢 |
|---|---|
IT・Web | M&Aナビ、バトンズ |
介護・福祉・保育・医療 | ブティックス |
飲食・小売・サービス | バトンズ、TRANBI |
美容(美容室・エステ) | ヒルストン |
製造業・建設業 | 事業承継・引継ぎ支援センター、ブティックス |
無料で使える公的支援機関
年商1億円以下の企業がM&Aを検討し始めた段階では、無料の公的支援機関を活用するのが合理的な第一歩です。
事業承継・引継ぎ支援センター
項目 | 内容 |
|---|---|
費用 | 無料 |
設置場所 | 全国47都道府県 |
対象 | 後継者不在の中小企業・小規模事業者・個人事業主 |
支援内容 | 相談対応、マッチング支援、士業等の紹介 |
運営 | 中小企業庁(各地の商工会議所等に委託) |
出典: 中小企業庁 事業承継・引継ぎ支援センター公式情報(2026年4月確認)
メリット:
- 相談からマッチングまで完全無料
- 中立的な立場でアドバイスを受けられる
- 地域の士業や支援機関とのネットワークが豊富
注意すべき点:
- マッチング成立後の手続き(デューデリジェンス、契約交渉等)は士業等に引き継がれ、別途費用が発生する場合がある
- 民間サービスと比べてスピードが遅い傾向
- 担当者の経験やスキルに地域差がある
日本政策金融公庫のマッチング支援
日本公庫の取引先であれば、融資先ネットワークを活用した後継候補のマッチング支援を無料で受けられます。ただし、利用できるのは日本公庫の融資取引がある企業に限られます。
事業承継・M&A補助金で手数料を軽減する方法
年商1億円以下の企業がM&A仲介会社に支払う手数料は大きな負担ですが、事業承継・M&A補助金を活用すれば、手数料の一部を国の補助で賄える場合があります。
専門家活用枠の概要
項目 | 内容 |
|---|---|
補助対象 | M&A仲介・FAへの手数料(着手金・成功報酬等) |
補助上限 | 最大600万円 |
補助率 | 2/3 |
対象企業 | 中小企業・小規模事業者 |
公募状況 | 第14次公募は2026年4月3日締切済み。次回公募の発表を待つ |
出典: 事業承継・M&A補助金公式サイト(https://jsh.go.jp/)、確認日2026-04-06
補助金活用時の手数料シミュレーション
例えば、譲渡価格3,000万円の案件でヒルストン(成功報酬250万円)に依頼した場合を想定します。
- 仲介手数料: 250万円
- 補助金(2/3補助): 約166万円
- 実質負担額: 約84万円(実質手数料率2.8%)
最低報酬100万円のブティックスなら、補助金で実質負担34万円程度まで下がる計算です。
注意: 補助金は公募期間内に申請が必要で、採択されなければ受給できません。また、事前に事業承継・引継ぎ支援センターへの相談が要件になる場合があります。実際の申請にあたっては、税理士や中小企業診断士等の専門家にご相談ください。
スモールM&Aとは?年商1億円以下の企業が知っておくべき基礎知識
スモールM&Aとは、一般的に譲渡価格が1億円未満のM&A取引を指します。法律上の厳密な定義はありませんが、業界では広く使われている呼称です。譲渡価格1,000万円以下のさらに小さな取引は「マイクロM&A」と呼ばれることもあります。
スモールM&A市場が拡大している3つの背景
- 後継者不在問題の深刻化: 中小企業庁の推計では、後継者が不在の中小企業・小規模事業者は約127万社に上る(2025年時点)
- マッチングプラットフォームの普及: バトンズ・TRANBI等のオンラインサービスにより、小規模案件でもM&Aが身近に
- 制度面の整備: 中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月改訂)で手数料の透明性が向上。M&A支援機関登録制度の審査も厳格化が進む
出典: M&A総合研究所「スモールM&Aとは」(https://masouken.com/)、確認日2026-04-06
年商1億円以下の企業がM&Aで直面しやすい4つの課題
- 大手仲介会社の最低報酬が高すぎる: 譲渡価格数千万円の取引に最低報酬1,500万〜2,500万円は見合わない
- 財務資料の未整備: 小規模企業では決算書や資料の整備が不十分なケースが多く、買い手候補の信頼を得にくい
- 仲介会社にとって採算が合いにくい: 手数料が低い案件は対応を後回しにされるリスクがある
- デューデリジェンスの簡略化: 小規模案件では手続きが簡素化されがちだが、簿外債務の見落とし等につながりうる
小規模M&Aを進める際の5つの注意点
1. 最低報酬額の「罠」に注意する
譲渡価格800万円の案件で最低報酬500万円の仲介会社に依頼すると、手数料率は62.5%です。仲介会社との面談では「最低報酬はいくらか」「この規模の案件は受けてもらえるか」を真っ先に確認してください。
2. 利益相反リスクを理解する
仲介会社は売り手・買い手双方から手数料を受領するため、構造的に中立性に限界があることを理解しておく必要があります。中小M&Aガイドラインでは仲介者に利益相反の説明義務が課されていますが、不安がある場合はFA(片側助言)型のアドバイザーを検討してください。
3. 情報漏洩リスクに備える
M&Aの検討中であることが従業員や取引先に漏れると、事業運営に支障が出る可能性があります。秘密保持契約(NDA)の締結を必ず行い、情報開示の範囲を限定してください。プラットフォーム型の場合、NDAの管理は自分で行う必要がある点にも注意が必要です。
4. デューデリジェンスを省略しない
小規模案件では「簡易的な調査で十分」と判断されがちですが、簿外債務・未払い残業代・係争案件の見落としは買い手にとって致命的なリスクです。売り手側も、DDがきちんと行われる体制を整えておくことがスムーズな成約につながります。
5. 複数のサービスを段階的に活用する
プラットフォーム型と仲介型は、必ずしもどちらか一方に絞る必要はありません。
- まず公的支援(事業承継・引継ぎ支援センター)で無料相談 → 方向性を固める
- プラットフォームに掲載して反応を見る → 買い手候補の数や質を確認
- 必要に応じて仲介会社に正式依頼 → 具体的な交渉・契約をプロに委ねる
ただし、専任契約(他社への同時依頼を禁止する条項)がある場合は併用できないため、契約内容を事前に確認してください。
※M&Aの具体的な進行にあたっては、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
2026年の制度変更と小規模M&Aへの影響
中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月改訂)
中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン」はM&A仲介者・FAの行動規範です。第3版では以下の点が強化されました。
- 手数料体系の事前開示の義務化: 着手金・中間金・成功報酬のすべてを契約前に説明する義務
- 利益相反管理の厳格化: 仲介者は売り手・買い手双方の利益が対立するリスクを事前に説明する義務
- テール条項の制限: 仲介契約終了後に一定期間内に成約した場合の手数料請求(テール条項)について、不当に長い期間設定を制限
出典: 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月公表)
M&Aアドバイザー資格制度(2026年度開始の見込み)
2026年度から「M&Aアドバイザー資格制度」の開始が見込まれています。個人レベルでの倫理観と知識水準を担保する仕組みで、今後は「資格保有者が在籍しているか」が仲介会社選びの新たな判断材料になる可能性があります。
出典: 中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(2025年5月公表)
よくある質問(FAQ)
Q. 年商1億円以下の企業でもM&Aは成立する?
近年はマッチングプラットフォームの普及により、譲渡価格数百万円〜数千万円の案件でもM&Aが活発に成立しています。バトンズでは買い手登録30万人超、掲載案件10,000件超という規模で小規模案件のマッチングが行われています。個人事業の売買も日常的に成立しています。
Q. 売り手の手数料が完全無料のサービスはどれ?
バトンズ・TRANBI・M&Aナビ・M&Aサクシードは、いずれも売り手の手数料が無料です。ただし、バトンズは買い手側の手数料(成約額の2%)で収益を得ているため、買い手にとっての手数料負担が成約のハードルになる場合がある点は理解しておいてください。
Q. 赤字・債務超過の会社でも売却できる?
赤字や債務超過でも売却できるケースはあります。日本事業承継支援機構は赤字・債務超過企業への対応を明記しています。買い手が評価するのは財務状況だけではなく、技術・ノウハウ・顧客基盤・立地・許認可・従業員のスキルなど、財務以外の無形資産です。
Q. 仲介会社とFA(ファイナンシャルアドバイザリー)の違いは?
仲介会社は売り手・買い手の双方と契約し、中間の立場で成約をまとめます。FAは売り手(または買い手)の片方のみと契約し、依頼者の利益を最大化するアドバイスを行います。小規模M&Aでは仲介型が多いですが、利益相反リスクについて事前に説明を受けておくことが重要です。
Q. M&A支援機関登録制度に登録されていない会社は避けるべき?
未登録だからといって必ずしも質が低いとは限りません。ただし、登録機関は中小M&Aガイドラインの遵守を宣言しており、手数料の事前開示・利益相反管理の義務を負っています。初めてのM&Aであれば、登録機関を選ぶ方がトラブルのリスクを下げられます。確認先: M&A支援機関登録制度
Q. 事業承継・M&A補助金を使えば手数料はどのくらい安くなる?
専門家活用枠では仲介手数料の2/3(最大600万円)が補助されます。例えば仲介手数料250万円の場合、補助金で約166万円が補填され、実質負担は約84万円になります。ただし公募期間内の申請と採択が必要です。詳しくは税理士や中小企業診断士にご相談ください。
まとめ|年商1億円以下の企業が取るべき3つのステップ
年商1億円以下の企業がM&Aを検討する場合、大手仲介会社に依頼する前に、自社の譲渡価格帯に合ったサービスを選ぶことが手数料の無駄を防ぐ最大のポイントです。
ステップ1: 自社の譲渡価格の目安を把握する
顧問税理士や事業承継・引継ぎ支援センター(無料)に相談し、自社がいくらで売れそうかの感触をつかんでください。
ステップ2: 譲渡価格に見合ったサービスを2〜3社選ぶ
本記事の手数料シミュレーションを参考に、実質手数料率が15%以内に収まるサービスを候補にしてください。
ステップ3: 複数のサービスに相談・面談する
手数料だけでなく、担当者の経験・対応姿勢・業界知見・利益相反の管理体制を比較してください。
M&Aは経営者にとって一生に一度の重大な判断です。コストを抑えることも大切ですが、信頼できるサポート体制のもとで進めることが、満足のいく結果への近道です。
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