M&Aで会社を売却したときの手取り額は、「売却価格 − 株式の取得費 − 譲渡費用(仲介手数料など) − 譲渡所得税等(個人株主なら20.315%)」で計算します。結論として、売却価格の約7〜8割が手取りとして残るのが一般的な目安ですが、取得費・仲介手数料・退職金スキームの有無によって数千万円単位でブレる点に注意が必要です。
この記事でわかること:
- 手取り額を3ステップで計算する具体的な方法
- 売却価格3,000万〜10億円の金額レンジ別「手取り早見表」
- 役員退職金スキームを併用した場合の節税効果(ビフォー・アフター比較)
- 2027年から導入される「ミニマムタックス」が高額売却に与える影響
- 個人株主と法人株主、株式譲渡と事業譲渡の手取り差
この記事は、会社の売却を検討しているオーナー経営者のなかで、「結局いくら手元に残るのか」を事前に把握したい方に向けて書いています。
ご注意: 本記事の計算例はすべて概算・目安です。実際の手取り額は取得費の実額・繰越欠損金・追加費用など個別事情によって大きく変動します。具体的な試算・節税スキームの選定は、M&A実績のある税理士・公認会計士にご相談ください。

M&A売却の手取り額とは?基本の計算式
手取り額とは、売却価格から取得費・譲渡費用・税金を差し引いて、最終的にオーナーの手元に残る金額のことです。「譲渡価額=手取り」ではない点が、売却検討で最初につまずきやすいポイントになります。
計算式の全体像
手取り額 = 売却価格(譲渡価額)
− 株式の取得費
− 譲渡費用(M&A仲介手数料・弁護士費用等)
− 譲渡所得税・住民税・復興特別所得税課税対象となる譲渡所得の計算は次のとおりです。
譲渡所得 = 譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用
課税額 = 譲渡所得 × 20.315%(個人株主・株式譲渡の場合)出典:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」(確認日:2026年4月17日)
税率20.315%の内訳
個人株主が非上場株式を譲渡した場合、他の所得と分離される「申告分離課税」が適用され、合計税率は20.315%で固定されます。
税目 | 税率 | 備考 |
|---|---|---|
所得税 | 15% | 申告分離課税 |
復興特別所得税 | 0.315% | 所得税額×2.1%(令和19年まで) |
住民税 | 5% | |
合計 | 20.315% | 他の所得と合算されない |
累進課税の対象外のため、給与・役員報酬と合算して税率が跳ね上がる心配はありません。ここが、会社売却で手取りが大きく残る最大の理由です。
手取り額を3ステップで計算する流れ
複雑に見える手取り計算も、次の3ステップに分解すれば個人でも試算できます。
ステップ1:譲渡所得(課税前利益)を出す
譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用
- 取得費:会社設立時の出資額・株式購入代金・名義書換料など
- 譲渡費用:M&A仲介手数料・弁護士/税理士費用・印紙税など売却のために直接要した費用
ステップ2:税金を計算する
税額 = 譲渡所得 × 20.315%
個人株主・株式譲渡の場合は、この式で一発で求まります。
ステップ3:手取り額を出す
手取り = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用 − 税額
別の書き方をすれば、手取り = 譲渡所得 × 79.685% + 取得費 でも同じ答えになります。

金額レンジ別の手取り額早見表
「うちの会社の規模ならおおよそいくら残るのか」を即座につかめるよう、売却価格3,000万円〜10億円のレンジで試算しました。
前提条件:
- 個人株主・株式譲渡
- 取得費は資本金1,000万円(10億円売却時のみ3,000万円)を想定
- 仲介手数料はレーマン方式の標準料率で算出(最低報酬500万円適用)
- 他の譲渡費用(弁護士・税理士・印紙等)は合計100万円と仮定
売却価格 | 取得費 | 仲介手数料(目安) | 譲渡所得 | 税額(20.315%) | 手取り額(概算) | 手取り率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
3,000万円 | 1,000万円 | 500万円 | 1,400万円 | 約284万円 | 約2,116万円 | 約71% |
5,000万円 | 1,000万円 | 500万円 | 3,400万円 | 約691万円 | 約3,809万円 | 約76% |
1億円 | 1,000万円 | 500万円 | 8,400万円 | 約1,707万円 | 約7,693万円 | 約77% |
3億円 | 1,000万円 | 1,500万円 | 2億7,400万円 | 約5,566万円 | 約2億1,934万円 | 約73% |
5億円 | 1,000万円 | 2,500万円 | 4億6,400万円 | 約9,426万円 | 約3億7,074万円 | 約74% |
10億円 | 3,000万円 | 4,500万円 | 9億2,400万円 | 約1億8,771万円 | 約7億3,729万円 | 約74% |
※ 金額は概算であり、実際の取得費・仲介会社の料率・最低報酬・追加費用によって変動します。
手取り率はおおむね70〜77%のレンジに収まり、「手取り=売却価格の約3/4」が一つの目安になります。仲介手数料の割合が相対的に大きくなる小規模案件(3,000万円)では手取り率が下がる点に注意してください。
シミュレーション:実例ベースの手取り計算
ケース別に、より具体的な数字で試算します。
ケースA:1億円で株式譲渡するオーナー
- 売却価格:1億円
- 取得費:1,000万円
- 仲介手数料等の譲渡費用:500万円
項目 | 金額 |
|---|---|
売却価格 | 1億円 |
取得費 | 1,000万円 |
譲渡費用 | 500万円 |
譲渡所得 | 8,500万円 |
税額(20.315%) | 約1,727万円 |
手取り額 | 約7,773万円 |
出典:M&Aロイヤルアドバイザリー「会社売却の税金」(確認日:2026年4月17日)
ケースB:2億5,000万円で株式譲渡するオーナー
- 売却価格:2億5,000万円
- 取得費:1,100万円
- 仲介手数料:2,000万円
項目 | 金額 |
|---|---|
売却価格 | 2億5,000万円 |
取得費 | 1,100万円 |
仲介手数料 | 2,000万円 |
譲渡所得 | 2億1,900万円 |
所得税等(15.315%) | 3,354万円 |
住民税(5%) | 1,095万円 |
手取り額 | 約1億8,551万円 |
出典:M&A総合研究所「会社譲渡の税金」(確認日:2026年4月17日)
ケースC(参考):同じ条件を法人株主が譲渡した場合
項目 | 金額 |
|---|---|
売却価格 | 2億5,000万円 |
取得費+仲介料 | 3,100万円 |
譲渡益 | 2億1,900万円 |
法人税等(約30%) | 約6,570万円 |
手取り額(法人ベース) | 約1億5,330万円 |
同じ譲渡益でも、個人株主のほうが約3,200万円有利という結果になります。法人で受け取った後にオーナー個人へ配当する場合はさらに追加課税が発生するため、オーナー個人が直接株を保有しているほうが手取りでは有利になるのが基本パターンです。
個人株主 vs 法人株主の税率比較
株を個人で保有しているか、資産管理会社などの法人で保有しているかで、適用される税目と税率が変わります。
項目 | 個人株主 | 法人株主 |
|---|---|---|
税目 | 譲渡所得(申告分離課税) | 法人税等 |
税率 | 20.315%(一律) | 実効税率約29.74〜31%(資本金・所在地で変動) |
他の所得との合算 | 合算されない | 他の事業所得と合算 |
繰越欠損金の活用 | 不可 | 過去10年分を相殺可能 |
配当時の追加課税 | なし(直接受領) | 個人へ配当するとさらに課税 |
出典:国税庁「No.1463」「No.1464」(確認日:2026年4月17日)
法人で保有している場合でも、過去の繰越欠損金が大きいケースや損益通算できる他事業がある場合は法人株主のほうが有利になるケースもあります。個別の判断は必ず税理士と試算したうえで決めましょう。
株式譲渡 vs 事業譲渡でかかる税金の違い
M&Aの手法によって、売り手側の課税構造は大きく変わります。
スキーム | 売り手 | 課税される税金 | 消費税 |
|---|---|---|---|
株式譲渡 | 個人株主 | 譲渡所得税等 20.315% | かからない |
株式譲渡 | 法人株主 | 法人税等 約30% | かからない |
事業譲渡 | 法人(会社自体) | 法人税等 約30% | 課税資産に10%かかる |
事業譲渡の場合、建物・棚卸資産・のれん・特許権などの課税資産には消費税10%が上乗せされます。一方、有価証券・土地・金銭債権は非課税資産となり消費税はかかりません。
出典:M&Aキャピタルパートナーズ「事業譲渡における消費税」(確認日:2026年4月17日)
実務上の傾向: 中小企業の会社売却では、手続きがシンプルで税率も低い「個人株主による株式譲渡」が選ばれやすいです。事業譲渡は、不要事業を切り出したい・一部事業のみ承継したい等の明確な目的があるケースで選ばれます。
譲渡費用として差し引ける主な費用
譲渡所得の計算で「譲渡費用」として控除できる費用には、M&A仲介手数料や各種専門家費用が含まれます。譲渡費用が増えれば課税対象額が減るため、領収書・契約書は必ず保管してください。
費用項目 | 相場の目安 | 備考 |
|---|---|---|
M&A仲介手数料(成功報酬) | レーマン方式で取引規模の1〜5% | 最低報酬500万〜2,500万円が一般的 |
着手金 | 無料〜300万円 | 完全成功報酬型なら不要 |
中間金 | 無料〜成功報酬の10〜20% | 基本合意時に発生 |
弁護士費用(法務DD・契約書) | 数十万〜数百万円 | 契約書作成のみなら10〜30万円から |
税理士・会計士費用(税務DD) | 数十万〜数百万円 | 売り手側の税務相談費 |
企業価値算定費用 | 数十万円〜 | 仲介会社が無料で行うケースも |
印紙税 | 数万円 | 契約書の記載金額に応じる |
出典:山田コンサルティンググループ「M&Aにかかる費用」/M&Aキャピタルパートナーズ「M&A手数料」(確認日:2026年4月17日)
M&A仲介手数料の全体像については、M&A費用・手数料の相場ガイドで詳しく解説しています。
レーマン方式の仲介手数料計算
多くのM&A仲介会社では、取引規模に応じて料率が段階的に下がる「レーマン方式」を採用しています。
取引金額 | 料率 |
|---|---|
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超〜10億円以下の部分 | 4% |
10億円超〜50億円以下の部分 | 3% |
50億円超〜100億円以下の部分 | 2% |
100億円超の部分 | 1% |
出典:M&Aキャピタルパートナーズ「レーマン方式とは」(確認日:2026年4月17日)
計算基準に要注意
レーマン方式の「取引金額」を何にするかで、手数料は大きく変わります。
- 株式価額ベース:譲渡する株式の価格のみを基準にする(売り手有利)
- 移動総資産ベース:株式価額+負債の合計を基準にする(手数料が大きくなる)
たとえば売却価格5億円・有利子負債5億円の会社で計算基準が違うと、手数料は2,500万円 vs 4,500万円と約2,000万円の差が出ます。仲介会社と契約する前に、必ず「基準となる金額の定義」を確認してください。

役員退職金スキームによる手取り最大化
手取りを増やす代表的な方法が「役員退職金スキーム」です。売却対価の一部を役員退職金として受け取ることで、退職所得の優遇税制(退職所得控除+1/2課税)を活用できます。
スキームの基本設計
- 総対価を 株式譲渡代金 と 役員退職金 に分ける
- 退職金部分は退職所得控除と1/2課税で税負担を大幅軽減
- 買い手にとっても、退職金分は損金算入できるため法人税負担が軽くなり、交渉余地が生まれる
退職所得の計算式
退職所得 = (退職金の収入金額 − 退職所得控除額) × 1/2退職所得控除額:
- 勤続20年以下:
40万円 × 勤続年数(最低80万円) - 勤続20年超:
800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) - 勤続年数に1年未満の端数があれば切り上げ
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(確認日:2026年4月17日)
功績倍率法で適正額を算定
税務否認を避けるため、退職金額は「功績倍率法」で適正額を算定するのが一般的です。
役員退職金 = 最終月額報酬 × 役員在任年数 × 功績倍率- 中小企業オーナー社長の功績倍率の目安は2.0〜3.0
- 功労加算は退職金額の10〜30%以内が許容範囲とされる
出典:ストライク「M&Aにおける売り手の節税」/船井総合研究所「M&Aの税金と節税」(確認日:2026年4月17日)
ビフォー・アフター比較シミュレーション
同じ6,000万円を「役員報酬」で受け取った場合と「役員退職金」で受け取った場合の比較例です(船井総研公表データをもとに構成)。
受け取り方 | 手取り額(概算) | 税負担 |
|---|---|---|
通常報酬(給与)で6,000万円 | 約3,000万円 | 給与所得として累進課税 |
役員退職金で6,000万円 | 約4,900万円 | 退職所得控除+1/2課税 |
差額(節税効果) | +約1,900万円 | — |
※ 勤続年数・最終月額報酬・他の所得によって実際の節税額は変動します。
退職金スキームを使う際の注意点
- 退職金額が4,000万円を超える部分は所得税率45%+住民税10%で実効55%になり、過度に退職金に寄せると逆効果
- 勤続5年以下の役員(特定役員退職手当等)は1/2課税の適用がない
- 不相当に高額な役員退職金は損金不算入とされ、法人税の追徴課税リスクあり
- 2026年1月施行:iDeCo等との受給調整期間が5年→10年に拡大されたため、退職金を受け取る時期とiDeCo受給のタイミングを合わせると控除が減る可能性あり
最適な配分は個別事情で変わります。必ずM&A経験のある税理士と併せて試算してください。
取得費がわからない場合の「概算取得費5%ルール」
会社設立が古い、相続で引き継いだ株式で取得費の資料が残っていない、といったケースでは「概算取得費の特例」を使えます。
概算取得費 = 譲渡収入金額 × 5%出典:国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」(確認日:2026年4月17日)
選択の判断基準
- 実際の取得費が 売却代金の5%未満 なら、概算取得費を使ったほうが手取りが増える
- 実際の取得費が 売却代金の5%以上 あるなら、実額で計上したほうが有利
- 一度概算取得費を選択すると、後から実額に変更することは難しい
資本金1,000万円で設立し、1億円で売却するケースでは、実額(1,000万円)のほうが概算(500万円)より有利です。一方、10億円で売却する場合は概算5%(5,000万円)のほうが有利になります。「売却代金の5%」を一つの分岐点として覚えておきましょう。
2027年から始まる「ミニマムタックス」の影響
2026年度税制改正大綱では、高額所得者への追加課税(いわゆる「ミニマムタックス」)の基準が大きく引き下げられる予定です。2027年1月以降の株式譲渡が対象になるため、高額売却を検討中のオーナーは必ず確認してください。
項目 | 改正前(〜2026年分) | 改正後(2027年分〜/予定) |
|---|---|---|
基準所得金額 | 3.3億円 | 1.65億円 |
税率 | 22.5% | 30% |
発動ライン(株式譲渡のみの場合) | 譲渡所得約10.3億円超 | 約3.4億円超 |
計算式(改正案):
追加納税額 =(基準所得金額 − 1.65億円)× 30% − 基準所得税額出典:マクサス・コーポレートアドバイザリー「2026年度税制改正速報」(確認日:2026年4月17日/法案成立前の情報です)
影響試算
- 譲渡所得5億円のケース:追加納税額は約2,400万円
- 高額案件では、改正前と比べて 1億円以上の負担増 になるケースもあり得ます
2026年12月末までにできる対策
- 2026年12月末までに株式譲渡契約を締結・譲渡実行を完了した分は、従来基準の20.315%のみ
- 譲渡所得が3.4億円を超える見込みのある案件では、年内クロージングを目標にスケジュールを逆算することが重要
- M&Aは交渉開始から成約まで通常6〜12ヶ月かかるため、ミニマムタックス適用前に間に合わせたい場合は2026年前半のうちに仲介会社選定を開始したほうが安全
売却タイミング戦略について詳しくは、M&A売却の流れ・タイムライン解説も併せて参考にしてください。
その他の節税対策とスキーム比較
役員退職金以外にも、ケースに応じて検討すべき節税対策があります。
対策 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
概算取得費の特例 | 実際の取得費<売却代金の5%なら取得費を5%まで引き上げ可能 | 一度選択すると変更不可 |
第三者割当増資 | 支配権を移転しつつ譲渡益を圧縮 | 贈与認定リスクあり |
会社分割(分割型分割) | 不要資産を切り出して売却対象を絞る | スキーム組成に税理士関与必須 |
繰越欠損金の活用 | 過去10年以内の繰越欠損金と譲渡益を相殺 | 法人株主ケースのみ有効 |
事業譲渡で対象を絞る | 売却対象資産を限定し益金を縮小 | 株式譲渡スキームでは使えない |
出典:M&A総合研究所「会社売却・M&Aの税金」(確認日:2026年4月17日)
どのスキームが適しているかは、会社の保有資産・株主構成・事業計画・売却理由によって変わります。「節税ありき」で動くとトラブルの原因になるため、まずM&A経験のある税理士にシミュレーションを依頼するのが安全です。
申告タイミングと必要書類
譲渡所得が発生した場合、個人・法人ともに申告義務があります。
個人株主の場合
- 申告時期:譲渡した年の翌年2月16日〜3月15日(確定申告)
- 申告方法:申告分離課税(他の所得とは別計算)
- 住民税:所得税の確定申告により自動的に計算・課税(翌年6月から納付開始)
- 主な必要書類:
- 株式譲渡契約書(写し)
- 取得費を証明できる書類(設立時の払込証明・株式購入時の契約書など)
- 譲渡費用の領収書(仲介手数料・弁護士費用・印紙税など)
- 特定口座年間取引報告書(該当する場合)
法人株主の場合
- 申告時期:事業年度終了から2ヶ月以内に法人税申告
- 譲渡益は本業の所得と合算されて法人税等が計算される
- 繰越欠損金がある場合は併せて相殺
出典:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」(確認日:2026年4月17日)
手取り最大化のための意思決定フロー
ここまでの内容を踏まえ、手取りを最大化するための検討順序をまとめます。
- 現状の取得費を確認する(払込証明・旧株主名簿をチェック/不明なら概算5%)
- 想定売却価格 × 5%と実際の取得費を比較し、概算取得費を使うかどうかを判断
- 個人株主か法人株主かで譲渡スキームを決定(個人保有が基本的に有利)
- 株式譲渡か事業譲渡かを検討(事業譲渡なら消費税の影響を計算に入れる)
- 役員退職金スキーム併用の可否を税理士と試算
- 2027年ミニマムタックスの影響を確認(譲渡所得3.4億円超の見込みなら年内クロージングを検討)
- 仲介手数料の計算基準(株式価額ベース or 移動総資産ベース)を契約前に必ず確認
おすすめな売り手・再検討したい売り手
このような売り手にはシミュレーションが特に有効
- 売却価格が1億円以上になりそうで、手取りと税負担の概算を先に把握したい
- 資産管理会社と個人保有のどちらが得か迷っている
- 役員退職金との組み合わせで節税したい
- 2027年以降のミニマムタックスを回避するため、売却時期の意思決定を急いでいる
- 仲介手数料の計算方法が各社で異なることを知らず、複数社の見積もりを比較したい
事前に別の準備を優先したい売り手
- 直近で大幅な設備投資や事業再編を予定している(譲渡益が変動しやすい)
- 個人保証・連帯保証の解除方針が未整理(手取り以前に取引成立条件に影響)
- 取得費を証明できる書類が一切残っておらず、概算5%でも納得いかない
- 後継者候補がまだ社内に残っている(親族内承継や従業員承継を先に検討すべき可能性)
後継者・保証まわりの準備から整えたい方は、会社売却時の個人保証・連帯保証解除方法も併せてご覧ください。
手取り計算でよくある質問(FAQ)
Q1. 取得費が本当にわからない場合、最終的にいくらで計算されますか?
概算取得費の特例で、譲渡収入金額の5% が取得費とみなされます。ただし、一度概算取得費を選択すると後から実額に切り替えるのは難しいため、税理士に相談のうえ、本当に記録が残っていないかを確認してから判断してください。
Q2. 手取りが事前のシミュレーションより少なかった場合、何が原因として考えられますか?
よくある要因は次の4つです。
- 仲介手数料の計算基準が「移動総資産ベース」で想定より高額だった
- 想定より譲渡費用(弁護士・税理士費用、印紙税)が増えた
- 契約後の表明保証違反による補償金が差し引かれた
- 取得費の証拠書類が揃わず、想定より低い金額しか計上できなかった
事前に仲介会社と「総額の内訳」を書面で合意しておくことが最大の予防策です。
Q3. 役員退職金スキームは誰でも使えますか?
基本的には、オーナーがM&A実行に合わせて役員を退任するケースで活用できます。ただし、退職金額が「功績倍率法」で算定した適正額を大幅に超えると、税務調査で損金否認される可能性があります。勤続5年以下の役員は1/2課税の適用が受けられない点にも注意が必要です。
Q4. 2026年中に売却を急ぐべきかどうかの判断基準は?
譲渡所得が約3.4億円を超える見込みのある案件は、2026年12月末までにクロージングできれば従来の20.315%で済みます。一方、小規模案件(譲渡所得1億円以下程度)はミニマムタックスの対象外なので、焦って売却スケジュールを縮める必要はありません。
Q5. 手取り額を事前に正確に知るには、どこに相談すればよいですか?
M&A実績のある税理士・公認会計士、もしくはM&A仲介会社の税務アドバイザーに相談するのが一般的です。仲介会社を選ぶ段階で、税務アドバイザーとの連携体制や税金シミュレーションの提示有無も確認しましょう。仲介会社の比較についてはM&A仲介会社おすすめランキング・比較を参考にしてください。
Q6. 株式譲渡と事業譲渡、どちらが手取りベースで有利ですか?
一般的には、個人株主による株式譲渡が最も手取りが残りやすいスキームです。事業譲渡は法人税+消費税が課されるうえ、法人で受け取った対価をオーナー個人へ配当する際にさらに課税されるため、同じ売却価格でも手取りは2〜3割以上下がるケースがあります。ただし、簿外債務を引き継ぎたくない・一部事業のみ売却したいなどの目的がある場合は事業譲渡が選ばれます。
まとめ:シミュレーションは「売却決断の出発点」
M&A売却の手取り額は、売却価格の約70〜77%が手元に残るのが一般的な目安です。税率は個人株主なら20.315%で固定されるため、給与所得と合算して高税率にはなりません。一方で、仲介手数料の計算基準・取得費の扱い・役員退職金スキームの有無・2027年ミニマムタックスの影響によって、最終的な手取りは数千万〜数億円単位で変動します。
次に取るべきアクション:
- 自社の売却価格の仮説を立て、本記事の早見表で「概算手取り」を確認する
- 取得費の証憑書類を洗い出し、実額か概算5%かを判断する
- 複数の仲介会社から見積もりを取り、手数料計算基準の違いを比較する
- M&A実績のある税理士に、退職金スキーム・ミニマムタックス影響のシミュレーションを依頼する
- 譲渡所得が3.4億円を超える見込みなら、2026年12月末までのクロージングを視野にスケジュール逆算する
関連して読んでおきたい記事:
- M&A費用・手数料の相場ガイド — レーマン方式や諸費用の全体像
- M&A売却の流れ・タイムライン解説 — スケジュール感と各ステップの実務
- M&A仲介会社おすすめランキング・比較 — 主要仲介会社の比較
- 事業承継の税金・節税まとめ — 親族内承継・税制特例の解説
最後にもう一度: 本記事のシミュレーションはすべて概算です。実際の手取り額は個別事情で大きく変動します。具体的な試算・スキーム選定は、必ずM&A実績のある税理士・公認会計士にご相談ください。税制改正の最新情報は国税庁公式サイトでも確認できます。
