会社を売却しても、経営者の個人保証(連帯保証)は自動的には解除されません。株式譲渡契約と保証契約は別個の契約であるため、金融機関との間で別途解除手続きを行う必要があります。ただし、適切な準備と交渉を行えば、売却と同時またはクロージング後に保証を解除することは十分に可能です。
この記事でわかること
- 会社売却時に個人保証が自動で外れない理由と法的背景
- 保証を解除する3つの方法(切り替え・一括返済・制度活用)の比較
- 保証解除の実務手順と具体的なタイムライン
- 株式譲渡契約書(SPA)に盛り込むべき5つの保護条項
- 保証解除トラブルの実例と防止策
- 2025年〜2026年の最新制度・業界動向
こんな経営者に向けた記事です
- 会社の売却を検討しているが、個人保証が外れるか不安なオーナー
- M&Aの基本合意段階で、保証解除の交渉方法を知りたい方
- 過去のM&Aトラブル事例を踏まえて、自社を守りたい方
注意: 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個人保証の解除は個別の契約内容・金融機関の対応・買い手の信用力により大きく異なります。実際の判断は弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。
経営者保証(個人保証)とは?会社売却との関係

経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が会社の連帯保証人となる慣行のことです。会社が返済不能になった場合、経営者個人の預貯金・不動産・自宅などの個人資産で返済責任を負います。
中小企業の約76%が個人保証を利用
経営者保証は中小企業の融資において非常に一般的な慣行です。
- 中小企業の約76%が経営者の個人保証付き融資を利用している(出典: listing-partners.com、2024年時点)
- 後継者候補の約60%が経営者保証を理由に事業承継を拒否しているとの調査結果もある(出典: fundbook.co.jp、2024年時点)
- 一方、経営者保証に依存しない融資の割合は46.7%まで上昇(2023年4月〜9月、出典: 金融庁)
なぜ会社を売却しても保証は自動で外れないのか
会社売却の契約(株式譲渡契約)と、金融機関との保証契約はまったく別の契約です。株式の所有権が移っても、金融機関が保証解除に応じなければ、旧経営者の保証債務はそのまま残ります。
つまり、「会社を売ったのに、借金の保証人のまま」という状態が起こり得ます。保証解除が完了するまでの間に対象会社が弁済不能になれば、旧経営者に返済義務が生じるリスクがあります。
この問題を解消するために、国は「経営者保証に関するガイドライン」をはじめとする複数の制度を整備しています。
会社売却時に個人保証を解除する3つの方法【比較表】
現時点で、会社売却に伴い個人保証を解除する主な方法は3つあります。自社の状況(借入金額・買い手の規模・財務状態)に応じて最適な方法は異なります。
比較項目 | ① 買い手への保証切り替え | ② 借入金の一括返済→新規借入 | ③ 事業承継特別保証制度の活用 |
|---|---|---|---|
概要 | 買い手(新経営者)が新たに保証人となり、旧経営者の保証を解除 | 既存借入を全額返済して旧保証を消滅させ、買い手が新規借入 | 経営者保証不要の信用保証制度で借り換え |
メリット | 最も一般的でスムーズ。多くのM&Aで採用 | 旧保証が確実に消滅する | 新経営者も保証不要で借り換え可能 |
デメリット | 金融機関の承諾が必要。買い手の信用力に左右される | 買い手に一括返済の資金力が必要 | 要件(資産超過・EBITDA倍率等)を満たす必要あり |
所要期間の目安 | クロージング後1〜3ヶ月 | クロージング時に同時処理も可能 | 事前の要件確認・申請に1〜2ヶ月 |
適したケース | 買い手が売り手より大きい規模の企業 | 買い手の資金力が十分にある場合 | 財務基盤がしっかりしており要件を満たせる場合 |
① 買い手への保証切り替え
最も一般的な方法です。M&Aのクロージング後、買い手企業(または新たに就任する代表者)が金融機関と交渉し、旧経営者の保証を解除して新経営者の保証に切り替えます。
買い手が売り手企業より規模が大きい場合、金融機関との与信が強化されるため、保証解除に応じてもらいやすい傾向があります。
注意点: 金融機関の承諾がなければ解除できません。経営者保証に関するガイドラインはあくまで自主ルールであり、法的拘束力はないため、金融機関が拒否する可能性もゼロではありません。
② 借入金の一括返済→新規借入
買い手が既存の借入金をすべて一括返済し、旧経営者の保証契約を消滅させた上で、必要に応じて買い手名義で新規に借り入れる方法です。
旧保証が確実に消滅する点で最も安全ですが、買い手側に一括返済できるだけの資金力が求められます。LBO(レバレッジド・バイアウト)ファイナンスを活用するケースもあります。
③ 事業承継特別保証制度の活用
信用保証協会が運営する制度で、一定の要件を満たす融資について経営者保証なしで借り換えが可能です。
主な要件(全て充足が必要):
- 資産超過状態であること
- EBITDA有利子負債倍率が15倍以内(2022年8月に10倍から緩和)
- 法人と個人の資産分離が実施されていること
- 返済緩和借入金がないこと
保証限度額は2億8,000万円で、既存借入金の借り換えにも利用できます。専門家の確認により保証料率が大幅に軽減される制度もあります。
※当初の対象要件では「2025年3月31日までに事業承継を実施した法人」が含まれていましたが、制度の延長・見直しが行われている可能性があります。最新の要件・対象期間は信用保証協会に直接お問い合わせください。
(出典: fundbook「事業承継での経営者保証とは?」/ 各都道府県信用保証協会公式サイト、2024年時点の情報に基づく)
【4ステップ】保証解除の実務手順とタイムライン

保証解除の手続きは、M&Aプロセスの中で段階的に進めます。クロージング当日に全てが完了するわけではなく、数週間〜数ヶ月のタイムラグが発生する点に注意が必要です。
ステップ1: 基本合意後 — 金融機関への事前打診
M&Aの基本合意が成立した段階で、買い手が取引先金融機関に事前打診を行います。M&Aの概要を伝え、保証の切り替え(または借入金の一括返済)が可能かどうかを確認します。
この段階で金融機関の反応を把握しておくことで、クロージング後にスムーズな保証解除が期待できます。
売り手がやるべきこと:
- 借入金の残高・保証内容の一覧を整理する
- 担保差し入れの有無(不動産等)も確認する
- 仲介会社やFAと連携して、買い手側の対応スケジュールを確認する
ステップ2: クロージング(株式譲渡の実行)
代金決済と株式の移転を行います。この時点では保証はまだ解除されていないケースが大半です。
株式譲渡契約書(SPA)には、保証解除に関する義務条項を明記しておくことが重要です(詳細は後述の「契約書に入れるべき5つの保護条項」を参照)。
ステップ3: 役員変更登記・必要書類の取得
商業登記簿謄本上の代表者名を新経営者に変更します。金融機関での保証切り替え手続きには、変更後の登記簿謄本が必要になるため、クロージング後速やかに変更登記を行います。
ステップ4: 金融機関での保証解除手続き
新経営者の保証差し入れと旧経営者の保証解除を同時に実施します。金融機関の内部審査が必要なため、完了までに数週間かかることが一般的です。
重要: ステップ2〜4の間にタイムラグが発生します。この期間中に対象会社が倒産した場合、旧経営者が保証履行を求められる可能性があります。この空白期間のリスクをカバーするための契約上の手当てが不可欠です。
(出典: みつきコンサルティング「個人保証とM&A」)
株式譲渡と事業譲渡で保証の扱いはどう違う?
M&Aのスキーム(株式譲渡か事業譲渡か)によって、個人保証の取り扱いは大きく変わります。売り手の立場からは、保証解除のしやすさも含めてスキーム選択を検討する必要があります。
比較項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
法人格 | そのまま存続(買い手に移転) | 売り手に残る |
借入金 | 実質的に買い手が引き継ぐ | 基本的に売り手に残る |
個人保証 | 買い手への切り替えが一般的 | 原則として売り手に残り続ける |
保証解除の難易度 | 比較的スムーズ | ハードルが高い |
担保(不動産等) | 買い手主導で解除交渉 | 売り手側で個別交渉が必要 |
株式譲渡の場合
会社の法人格がそのまま存続し、借入金も実質的に買い手企業が引き継ぎます。買い手企業が金融機関と交渉して、旧経営者の保証を解除する流れが一般的です。
特に買い手が売り手より規模が大きい場合は、金融機関との与信が強化されるため、保証解除に応じてもらいやすい傾向があります。
事業譲渡の場合
法人格は売り手に残るため、会社の借入金・経営者保証も基本的にそのまま継続します。事業譲渡の対価を借入金返済に充当し、金融機関に保証解除を交渉することは可能ですが、株式譲渡と比較して保証解除のハードルは高くなります。
売り手が個人保証の解除を重視するなら、原則として株式譲渡のスキームを選択した方が有利です。ただし、税務面・事業面の事情もあるため、会社売却の税金・節税ガイドや株式譲渡とはも参考にしながら総合的に判断しましょう。
※スキーム選択は税務・法務の判断を含むため、税理士・弁護士等の専門家への相談をおすすめします。
(出典: バトンズ「借入金や連帯保証はM&A後も引き継がれる?」/ みつきコンサルティング「個人保証とM&A」)
経営者保証に関するガイドラインと保証解除の3要件
「経営者保証に関するガイドライン」は、合理的な保証契約のあり方を示した自主ルールです。2014年2月に適用が開始され、全国銀行協会・日本商工会議所が策定しました。法的拘束力はありませんが、金融機関はこのガイドラインを尊重した対応が求められています。
保証解除のための3つの要件
ガイドラインでは、以下の3要件を充足することで経営者保証の解除を求めることができるとしています。
要件 | 内容 | 具体的な取り組み例 |
|---|---|---|
① 法人と経営者の明確な区分・分離 | 事業用資産の個人所有を解消し、法人と経営者個人の資金の流れを明確に分離する | 役員貸付金の解消、個人名義の事業用資産を法人に移転、私的経費の混入防止 |
② 財務基盤の強化 | 法人の資産・収益力だけで借入返済が可能な状態にする | 十分なキャッシュフローの確保、内部留保の充実、継続的な好業績の維持 |
③ 経営の透明性確保 | 金融機関に対して適時適切に財務情報を開示する | 月次試算表・資金繰り表の定期報告、公認会計士や税理士による検証結果の提出 |
これら3要件は、M&Aの売却検討段階から意識して取り組むことで、売却時の保証解除がスムーズになります(詳しくは「売却検討段階から始める保証解除の準備」で後述)。
事業承継に焦点を当てた特則(2020年4月適用)
2020年4月からは、上記ガイドラインの「特則」として、事業承継時の保証に関する追加ルールが適用されています。
- 前経営者・後継者の双方から保証を取る「二重徴求」を原則禁止
- 後継者との保証契約は事業承継の阻害要因となり得ることを考慮し、柔軟に判断
- 前経営者との保証契約は適切に見直す
- 金融機関は内部規定を整備し、職員への周知徹底を行う
(出典: M&Aキャピタルパートナーズ「経営者保証を解除する方法」/ 中小企業庁「事業承継に焦点を当てた特則」)
株式譲渡契約書(SPA)に入れるべき5つの保護条項

保証解除を確実に実現するためには、株式譲渡契約書(SPA)に具体的な保護条項を盛り込むことが不可欠です。口約束や「努力義務」だけでは、クロージング後に買い手が動かないリスクを排除できません。
① 保証解除義務条項
「買い手はクロージング後○ヶ月以内に、売り手の経営者保証を解除する」と明記します。「努力義務」ではなく「法的義務」として規定することが重要です。
② 代金留保(エスクロー)条項
保証解除が完了するまで、売却代金の一部を留保する条項です。たとえば「保証解除完了まで2,000万円をエスクローに預託」とすることで、買い手に解除手続きを進めるインセンティブを与えます。
③ 求償権放棄・補償条項
保証解除完了前に旧経営者が保証履行を求められた場合、買い手が全額を補償する旨を明記します。クロージングから解除完了までの空白期間のリスクをカバーするための条項です。
④ 保証解除スケジュール条項
具体的な解除期限と条件を明記します。「クロージング後30日以内に金融機関に申入れ」「クロージング後90日以内に解除手続き完了」など、アクションと期日をセットで規定します。
⑤ 解除不能時の代替措置条項
金融機関が保証解除に応じない場合の代替策を規定します。借入金の一括返済、代替担保の提供、別の金融機関への借り換えなど、想定されるシナリオに応じた対応策をあらかじめ定めておきます。
これらの条項は、弁護士に依頼して個別の事情に合わせた文言に仕上げることを強くおすすめします。 M&AのSPA(株式譲渡契約書)とはも参考にしてください。
(出典: 弁護士法人「買主が経営者保証の解除手続きをしてくれない問題」/ アクセルパートナーズ「M&Aで個人保証を確実に外すための交渉術」)
【実例】保証解除のトラブル事例と対策
経営者保証の解除に関するトラブルは、近年大きな社会問題になっています。以下の実例を知っておくことで、自社を守るための準備ができます。
事例1: 買い手が保証解除手続きを放置
買い手がクロージング後に金融機関との保証解除交渉を行わず、旧経営者の保証がそのまま残り続けるケースです。その後、会社の業績が悪化し、金融機関から旧経営者に返済請求が届く事態に発展することがあります。
対策:
- SPA に保証解除義務を法的義務として明記する
- 代金留保(エスクロー)条項で買い手の動機づけをする
- クロージング時に金融機関での手続きを同時処理する
事例2: 悪質な買い手による計画的倒産
2021年前後に、短期間で中小企業約30社を買収し、会社の資産を持ち出した上で計画的に倒産させた事例が報道されました。旧経営者が保証債務の返済に苦しみ、訴訟に発展しています。
対策:
- 買い手の信用調査を徹底する(財務状況・M&A実績・業界での評判)
- M&A支援機関協会に加盟している仲介会社を利用する
- 買い手の過去のM&A後の企業存続状況を確認する
事例3: M&A仲介業者による不適切な助言
「クロージングまで金融機関にM&Aの話はしないように」と指示する仲介業者の存在も報告されています。金融機関への事前協議は保証解除をスムーズに進めるために重要であり、これを止める助言は不適切です。
対策:
- 金融機関との事前協議は原則として必要と認識する
- 仲介業者の対応に疑問を感じたら、弁護士など他の専門家に必ず相談する
- M&A仲介トラブル事例・対処法も参考にする
(出典: ベリーベスト法律事務所「経営者保証を外すには?」/ 弁護士法人「買主が経営者保証の解除手続きをしてくれない問題」)
売却検討段階から始める保証解除の準備

保証解除の成否は、M&A実行前の準備段階で大きく左右されます。売却を検討し始めた時点から、ガイドラインの3要件を満たす取り組みを始めることで、実際のM&A交渉がスムーズになります。
法人と個人の資産分離を徹底する
- 経営者個人名義の事業用資産(車両・不動産等)を法人名義に移転する
- 役員貸付金・役員借入金を解消する
- 経営者個人の生活費と会社の経費を明確に分離する
- 個人のクレジットカードで事業経費を立て替える運用をやめる
財務基盤を強化する
- 借入金の計画的な圧縮(可能な範囲で繰り上げ返済)
- 営業利益率・キャッシュフローの改善
- 不採算事業・資産の整理
- 内部留保の積み上げ
金融機関への情報開示を充実させる
- 月次試算表・資金繰り表を定期的に提出する体制を構築する
- 公認会計士や税理士による決算書の検証を受ける
- 金融機関との定期的なコミュニケーション(半期に1回程度の面談)
これらの取り組みは、保証解除だけでなく、会社の売却価格を高める効果もあります。会社売却の準備チェックリストと合わせて確認してください。
2025年〜2026年の最新制度・業界動向
経営者保証の解除に関する制度は、近年急速に整備が進んでいます。特に2024年〜2025年にかけて重要な制度変更がありました。
M&A支援機関協会の自主規制ルール(2025年1月〜)
2025年1月から、M&A仲介協会(現・M&A支援機関協会)が新たな自主規制ルールを施行しました。
- M&Aの最終契約書に「買収後に売り手経営者の連帯保証を解除するよう買い手に義務付ける条文」を盛り込むことをルール化
- 契約通りに解除されない場合、協会は調査を通じて悪質な買い手を「特定事業者リスト」に登録
- 加盟社に当該業者と取引しないよう呼びかけ
売り手の立場からは、M&A支援機関協会に加盟している仲介会社を利用することで、保証解除に関する一定の保護が受けられることになります。
(出典: 日本経済新聞「M&A仲介協会、企業買収後の連帯保証の解除を義務化」2024年9月報道)
経営者保証改革プログラム(2022年12月〜)
経済産業省・金融庁・財務省が策定した「経営者保証改革プログラム」により、以下の取り組みが進んでいます。
- 2023年4月〜: 金融庁の監督指針改正により、金融機関が保証契約を締結する場合、「なぜ保証が必要か」「どう改善すれば解除の可能性が高まるか」を個別具体的に説明し記録することを義務化
- 2024年3月〜: 保証料率の上乗せにより、経営者保証を提供しないことを選択できる新たな信用保証制度を開始
新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合は46.7%に達しており(2023年4月〜9月、金融庁公表)、保証に頼らない融資慣行の確立が進みつつあります。
改正民法と前経営者の「第三者」としての扱い
2020年4月施行の改正民法により、第三者保証の利用が制限されました。金融機関は「経営者以外の第三者に保証を求めない」ことを基本とする融資慣行の確立を求められています。
M&Aで経営権を手放した前経営者は法的に「第三者」として扱われ得るため、保証の継続がより慎重に判断される方向にあります。
(出典: 金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」/ 中小企業庁「経営者保証」/ クレジオ・パートナーズ「会社を売却したら経営者保証はどうなる?」)
こんな売り手は要注意!保証解除がスムーズなケース・難しいケース
保証解除がスムーズに進みやすいケース
- 買い手が大手企業・上場企業の場合: 買い手の信用力が高く、金融機関が保証切り替えに応じやすい
- 借入金の残高が少ない場合: 買い手が一括返済しやすく、保証消滅が容易
- 法人と個人の資産分離が明確にできている場合: ガイドラインの3要件を満たしやすい
- 金融機関との関係が良好な場合: 日頃から情報開示を行っていれば、保証解除の交渉がスムーズ
- M&A支援機関協会加盟の仲介会社を利用する場合: 2025年の自主規制ルールにより保護条項が標準化
保証解除が難しくなりやすいケース
- 事業譲渡スキームの場合: 法人格が売り手に残るため、借入金・保証もそのまま残りやすい
- 買い手が小規模企業・個人の場合: 金融機関が新経営者の保証力に不安を感じ、旧保証の解除を拒む可能性
- 債務超過・業績不振の場合: 金融機関にとって保証人を外すリスクが高く、解除に消極的になりやすい
- 役員貸付金・個人との資金混在が多い場合: 法人と個人の区分・分離が不十分と判断されやすい
- 100%未満の株式譲渡の場合: 株式の一部譲渡では旧経営者の影響力が残るため、保証解除が認められにくい
保証解除が難しいケースに該当する場合でも、事前の準備と適切な契約条項の設計で対処は可能です。まずはM&A仲介会社の選び方ガイドを参考に信頼できる仲介会社を選び、弁護士への相談も検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 会社を売却すれば個人保証は自動的に外れますか?
いいえ、自動的には外れません。株式譲渡契約と保証契約は別個の契約であるため、金融機関との間で別途解除手続きを行う必要があります。
Q. 金融機関に保証解除を拒否された場合はどうすればよいですか?
まず、ガイドラインの3要件(法人と個人の区分・分離、財務基盤の強化、経営の透明性確保)のどれが不足しているかを確認し、不足部分の改善に取り組みます。それでも拒否される場合は、借入金の一括返済による保証消滅、事業承継特別保証制度を活用した借り換えなど、代替手段を検討します。弁護士を通じた交渉も選択肢です。
Q. 保証解除が完了するまでにどのくらいかかりますか?
一般的には、クロージング後1〜3ヶ月程度です。ただし、金融機関の審査状況や必要書類の準備状況によっては、それ以上かかることもあります。クロージング前から金融機関に事前打診しておくことで、期間を短縮できます。
Q. 連帯保証だけでなく、不動産担保(自宅等)も解除できますか?
連帯保証と同様に、不動産担保も自動では解除されません。金融機関との交渉が必要です。M&Aの契約書には「連帯保証および担保の差し入れの解除に責任を持つ」旨を明記することが重要です。
Q. 二重徴求(前経営者と後継者の両方に保証を求めること)は禁止されていますか?
2020年4月適用の「経営者保証に関するガイドラインの特則」で、前経営者・後継者の双方からの二重徴求は原則禁止されています。ただし、相続確定までの一時的な二重徴求や、金融支援実施中・延滞先等は例外として認められています。
Q. 事業承継特別保証制度はいつまで使えますか?
当初公表されていた対象要件では、2020年1月1日から2025年3月31日までに事業承継を実施した法人等が対象に含まれていました。2026年4月現在、制度の延長や要件変更の可能性もあるため、最新の情報は信用保証協会に直接ご確認ください。
まとめ:個人保証の解除は「準備」と「契約」が成功の鍵
会社売却時の個人保証解除で押さえるべきポイントを整理します。
- 保証は自動で外れない — M&Aと保証は別契約。金融機関との手続きが必須
- 3つの解除方法を理解する — 買い手への切り替え、一括返済、制度活用。自社の状況に合った方法を選ぶ
- SPA(株式譲渡契約書)に保護条項を入れる — 解除義務・代金留保・求償権放棄の3点は最低限盛り込む
- 売却前から3要件を整える — 法人・個人の分離、財務基盤の強化、情報開示の充実
- M&A支援機関協会加盟の仲介会社を選ぶ — 2025年の自主規制ルールで保証解除が標準的な義務に
個人保証の問題は、M&A仲介会社の選定段階から対策を講じることが重要です。会社売却の流れ全体を理解した上で、信頼できる専門家に早めに相談しましょう。
