M&Aの企業価値評価書(バリュエーションレポート/株価算定書)の費用は、用途と依頼先で大きく分かれ、現時点では税理士の税務目的なら10〜30万円、公認会計士の対外用報告書なら70〜200万円程度が公開情報での目安です。M&A仲介会社の評価レポートは多くの場合、中間金や成功報酬に内包されているため、別途請求されない設計が一般的です。
この記事でわかること:
- 評価書の種類(社内検討用/対外用報告書/税務用)と用途の違い
- 依頼先別×用途別の費用マトリクス(税理士・公認会計士・M&A仲介・FA)
- 取得の流れ6ステップと、売り手側が用意すべき書類チェックリスト
- 無料簡易査定で済む段階と、有料の評価書が必要になる段階の見極め方
- 中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月)を踏まえた依頼先選びのポイント
対象読者: 会社売却を検討しているオーナー経営者、または事業承継・自己株買い・増資などで自社の株価を客観的に把握する必要がある中小企業の経営者の方。
ご注意: 本記事の費用レンジは公開情報を集計した一般的な目安です。実際の見積もりは対象会社の規模・関係会社の有無・評価手法・納期で変動するため、必ず複数の依頼先から見積もりを取ってください。税務・法務に関する個別判断は、税理士・公認会計士・弁護士にご相談ください。
結論 — 費用の目安と「いつ取るべきか」の早見表
最初に、売り手オーナーが知りたい結論をまとめます。
費用の目安(公開情報ベース)
評価書の種類 | 用途 | 費用レンジ |
|---|---|---|
税務上の評価明細書 | 相続・贈与・事業承継の税務計算 | 10万〜30万円程度 |
簡易な株価算定(社内用) | 取締役会・株主総会の説明資料 | 30万〜100万円程度 |
対外的な株価算定報告書 | 第三者割当増資・M&A最終契約・公開買付 | 70万〜200万円程度 |
フェアネスオピニオン(大手) | 上場企業案件・対外説明責任が重い場面 | 200万円〜(案件規模で上振れ) |
M&A仲介・FAの評価レポート | 売却交渉用 | 多くは中間金・成功報酬に内包 |
出典: KnowHows「株価算定の料金相場」、M&Aキャピタルパートナーズ「M&Aの企業価値算定費用」(確認日: 2026-05-07)
取得タイミングの早見表
売却プロセスのフェーズ | 推奨する評価の種類 | 想定費用 |
|---|---|---|
検討初期(売却するか迷っている) | M&A仲介会社の無料簡易査定 | 0円 |
仲介会社を比較選定中 | 複数社の無料簡易査定で比較 | 0円 |
仲介契約後・買い手探索前 | 仲介会社内のバリュエーション(中間金内包が多い) | 多くは別途請求なし |
買い手と本格交渉に入る段階 | 第三者の対外用株価算定報告書(必要時のみ) | 70万〜200万円程度 |
相続・贈与税の申告 | 税理士の評価明細書(M&Aとは別物) | 10万〜30万円程度 |
ポイントは、「無料の簡易査定で済む段階」と「有料の正式評価書が必要な段階」を切り分けることです。次章以降で、依頼先別の特徴と判断基準を詳しく解説します。
M&A企業価値評価書とは?「株価算定書」「鑑定書」との違い
企業価値評価書とは、対象企業の株式価値や事業価値を、複数の評価手法で算定し、根拠と結果を文書化したレポートのことです。非上場企業は市場株価が存在しないため、第三者による客観的な評価が売却交渉や税務申告のベースになります。

用途別の3種類
実務では、目的によって作成される文書の名称や水準が変わります。
名称 | 主な用途 | 作成者 |
|---|---|---|
株価算定書(簡易版) | 取締役会・株主総会の社内説明資料、内部検討用 | 公認会計士・税理士 |
株価算定報告書(対外用) | M&A最終契約・第三者割当増資・公開買付意見表明 | 公認会計士・監査法人 |
税務上の株価評価明細書 | 相続・贈与・事業承継時の税額計算 | 税理士 |
フェアネスオピニオン | 取引価格の公正性に関する第三者意見 | 大手会計事務所・FA |
出典: M&Aサクシード「企業価値評価」、M&Aキャピタルパートナーズ「バリュエーション(企業価値評価)とは?」(確認日: 2026-05-07)
M&A目的と税務目的は「別物」
特に重要なのは、M&A目的の評価と税務目的の評価は前提も結果も異なる点です。
- 税務上の株価評価は国税庁の「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」に基づき、相続税・贈与税の課税ベースを算出するもの。原則として保守的(低め)に算定されやすい性格があります。
- M&A目的の評価は「実際の売却交渉でいくらが妥当か」を示すもので、将来収益や類似上場企業との比較を反映するため、税務評価より高くなるのが一般的です。
顧問税理士の評価書をそのままM&Aの売却価格交渉に使うと、本来得られる売却額より低い金額に誘導されるリスクがあるため、目的に応じた専門家を選ぶことが大切です。
評価手法そのものの詳細(DCF法・類似会社比較法・年買法)を知りたい方は、「M&Aバリュエーション手法比較|DCF法・類似会社比較法・年買法の違いと選び方」をあわせてご覧ください。
依頼先別の費用相場 — 税理士・公認会計士・M&A仲介の比較
評価書の費用は、依頼先と用途の組み合わせで決まります。公開情報を整理すると、おおむね以下のレンジに収まります。
依頼先×用途の費用マトリクス
依頼先 | 社内検討用 | 対外用報告書 | 税務目的 |
|---|---|---|---|
税理士事務所 | — | — | 10万〜30万円 |
公認会計士事務所(小規模) | 30万〜50万円 | 70万〜100万円 | — |
公認会計士事務所(中堅) | 50万〜100万円 | 100万〜200万円 | — |
公認会計士事務所(大手・監査法人) | 100万円〜 | 200万円〜 | — |
M&A仲介会社(標準的) | 中間金・成功報酬に内包 | 別途依頼が必要 | — |
M&A仲介会社(個別請求型) | 数十万円程度 | — | — |
出典: KnowHows「株価算定の料金相場」、KnowHows「バリュエーション専門家とその相場」、M&Aキャピタルパートナーズ(確認日: 2026-05-07)
料金が変動する3つの要因
公認会計士業界では、料金の変動要因として以下の3つが挙げられます。
- 業務リスク — 用途が対外的(取引所・税務当局・株主への説明)ほど高額。社内用は比較的安価。
- 業務難易度 — DCF法・マルチプル法・純資産法を併用するほど工数が増えて高額になる。
- 納期 — 短納期(2〜3週間以内など)は割増になることがある。
逆に言えば、用途が社内検討に限られ、評価手法を1〜2種類に絞り、納期を1〜2ヶ月確保できれば、費用は抑えやすいということです。
依頼先ごとの特徴
税理士事務所(10万〜30万円)
- 強み: 顧問税理士に依頼できればコミュニケーションコストが低い。税務目的なら最適。
- 注意点: M&A目的の評価には対応していない事務所も多い。M&A実務経験のある税理士か事前に確認が必要。
公認会計士事務所(小規模・30万円〜)
- 強み: 中小企業の規模感に合った評価が期待でき、コストも比較的抑えやすい。
- 注意点: 大手機関投資家・上場企業向けのフェアネスオピニオンには対応できないことがある。
公認会計士事務所(中堅・大手/監査法人・100万円〜)
- 強み: 対外説明責任の重い案件、上場会社・準上場規模の案件で信頼性が高い。
- 注意点: 中小M&Aの規模では費用対効果が見合わないケースが多い。
M&A仲介会社・FA(多くは内包)
- 強み: 売却交渉の前提となる評価をワンストップで実施。多くは中間金や成功報酬に組み込まれており別途請求されない。
- 注意点: 仲介者は中小M&Aガイドライン上「確定的なバリュエーションを提示してはならない」とされているため、提示される金額は参考値(レンジ)として理解する必要があります。
取得の流れ — 6ステップで完結
評価書の取得プロセスは、依頼先を問わずおおむね同じ流れです。

ステップ1: 目的の確認
何のために評価書を取るのかを明確にします。M&A交渉用・自己株買い用・相続税申告用・増資用・ストックオプション設計用など、目的によって必要な評価水準と手法が変わります。
ステップ2: 評価手法の選定
依頼先と相談のうえ、コストアプローチ(純資産法)/マーケットアプローチ(類似会社比較法)/インカムアプローチ(DCF法)の3アプローチから、案件特性に合わせて手法を選定します。中小M&Aでは「時価純資産+営業権法(年買法)」が併用されることが多いです。
ステップ3: 必要書類の準備・提出
決算書・事業計画・株主名簿などを整理して提出します(詳細は次章のチェックリスト)。書類の精度が低いと、依頼先からの追加質問が増えて期間と費用が膨らむため、事前準備の質が重要です。
ステップ4: 評価実施・試算
依頼先が選定した手法に基づいて評価を実施します。中小企業の場合は、役員報酬や節税保険などの「正常収益力に戻すための調整」が並行して行われます。
ステップ5: ドラフト確認・フィードバック
評価結果のドラフトを受領し、前提条件の認識違いがないか売り手側で確認します。気になる前提(事業計画の達成可能性、類似会社の選定理由など)は、この段階でフィードバックします。
ステップ6: 最終納品
ドラフト確認後、最終版の評価書が納品されます。納期は依頼先や案件難度により2週間〜2ヶ月程度が現時点での目安ですが、業界横断の統計データはなく、事務所ごとに大きく異なります。
出典: mastory「株価算定方法」、日本M&Aセンター(確認日: 2026-05-07)
必要書類チェックリスト — 売り手側で先に整えておくべき資料
評価書の依頼前に、売り手側で以下の書類を揃えておくと、見積もり精度が上がり、評価期間・追加コストを圧縮できます。
基本書類(全ケース共通)
- 直近3〜5期分の貸借対照表
- 直近3〜5期分の損益計算書
- 直近3〜5期分のキャッシュフロー計算書(または該当年度のCF推定資料)
- 勘定科目内訳書
- 株主名簿
- 会社登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 定款
- 直近の試算表(評価基準日に近いもの)
DCF法を使う場合に追加で必要
- 事業計画書(5年程度の予測損益・投資計画)
- 設備投資計画
- 資金繰り計画
- 中期経営計画書(あれば)
マルチプル法を使う場合に追加で必要
- 業界・事業セグメントが特定できる事業概要資料
- 類似上場会社のリスト(依頼先が準備するケースが多い)
中小企業特有の調整資料
- 役員報酬・退職金規程
- 節税保険・生命保険の契約内容
- オーナー個人と会社の取引関係(不動産賃貸借など)
- 簿外資産・負債の有無を示す資料(ある場合)
出典: mastory「株価算定方法」(確認日: 2026-05-07)
準備のコツ: 決算書はPDFと併せてExcelデータ(または会計ソフトのバックアップ)で渡すと、依頼先側の作業効率が上がり、見積もりも下がりやすくなります。書類の不足や追加質問が多発すると、追加費用が請求されるケースもあるため要注意です。
無料簡易査定 vs 有料評価書の使い分け

ここが本記事でもっとも重要なテーマです。「いつ無料で済ませ、いつ有料の評価書を取るか」を間違えると、不要な費用がかかったり、逆に必要な場面で評価書がなく交渉が不利になったりします。
無料簡易査定で済む段階
以下のケースでは、M&A仲介会社が提供する無料簡易査定で十分です。
- 売却するかどうか自体を検討している段階
- 「いくらで売れるのか」のおおよそのレンジだけ知りたい段階
- 仲介会社を比較選定している段階(複数社の査定を見比べる)
- 仲介契約直後の社内説明資料として使う段階
無料簡易査定は通常、年買法やマルチプル法のいずれか1〜2手法でざっくりとした金額レンジを提示するもので、対外説明責任を負う水準ではありません。ただし、複数社に依頼することで「相場感」をつかむ材料としては十分です。
無料相談・査定の活用方法は「M&A無料相談の選び方・注意点」も参考にしてください。
有料の評価書が必要になる段階
以下のケースでは、第三者の有料評価書を取得する価値があります。
- 買い手と最終契約直前の価格交渉 — 仲介会社の評価とは独立した第三者意見が、交渉の根拠として機能する
- 第三者割当増資・自己株買い — 株主・取締役会への説明責任があり、対外用報告書が事実上必須
- 公開買付(TOB)の意見表明 — フェアネスオピニオンが求められる
- 相続・贈与税の申告 — 税理士による税務上の評価明細書が必要
- 複数の買い手候補が競合し、価格根拠を強化したい場面 — 対外用報告書で交渉力を高める
仲介会社内バリュエーションと第三者評価書の併用
中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月)では、仲介者は中立性の観点から確定的なバリュエーションを提示してはならないとされています。そのため、仲介会社が出す金額は「目安レンジ」であり、最終契約直前の段階で第三者の対外用報告書を取得するケースが増えています。
費用対効果の観点では、
- 売却額が1〜3億円程度: 仲介会社内バリュエーションのみで完結することが多い
- 売却額が5億円以上: 第三者評価書を取得しても、評価書費用(70万〜200万円)に対する交渉メリットが上回りやすい
- 売却額が10億円以上: 対外用報告書または簡易フェアネスオピニオンの取得を検討する価値が高い
この判断は最終的に、案件特性と買い手側の要請(買い手側のDDで「第三者評価書を提示してほしい」と求められるケースもあります)で変わります。
中小M&Aガイドライン第3版を踏まえた依頼先選びのポイント
中小企業庁が2024年8月に公表した「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、バリュエーション実務に関する要点が明確化されました。依頼先を選ぶ際は、以下のポイントを押さえているかを確認しましょう。

ガイドラインの要点
- 複数アプローチでの評価が必須 — 仲介者・FAは純資産法・マルチプル法・DCF法など複数手法に基づく財務分析でバリュエーションを実施することが求められる。
- 仲介者は確定的なバリュエーションを提示してはならない — 中立性の観点から、価格を確定させる行為は不適切とされ、必要に応じ専門家の意見を求めるべきとされる。
- 過大なバリュエーション提示の禁止 — 売り手の期待を過剰に煽る譲渡額提示は禁じられている。
- 手数料・業務内容の透明性 — 仲介者・FAは手数料計算根拠と工程別の業務内容(バリュエーション、交渉支援等)、担当者の資格・実績を詳細に説明する義務がある。
出典: 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」令和6年8月(確認日: 2026-05-07)
依頼先選定のチェックリスト
- 複数の評価手法(純資産法・マルチプル法・DCF法)で評価できるか
- 評価の前提条件(割引率・成長率・類似会社の選定根拠)を明示するか
- 最終的な金額を「1点」で断定せず、レンジで提示するか
- 担当者のM&A実務経験(年数・案件数)を開示するか
- 中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録しているか(仲介・FAの場合)
- 工程別の業務内容と費用内訳を提示するか
仲介会社選びの全体像は「M&A仲介会社の選び方|失敗しない比較ポイント」、ガイドラインの解説は「中小M&Aガイドラインとは?仲介会社が守るべきルールを解説」もあわせてご確認ください。
評価結果のレンジが乖離した場合の対処
複数手法で評価した結果、金額レンジが大きく乖離するケースがあります。例えば、純資産法では3億円、マルチプル法では8億円、DCF法では12億円といったケースです。
乖離が出る主な要因
- DCF法の事業計画が楽観的 — 中小企業では事業計画の精度が低く、DCF法の結果が極端に振れやすい
- マルチプル法の類似会社選定 — 類似会社の選び方によって倍率が大きく変わる
- 純資産法は資産価値のみ反映 — 将来収益力やのれんが反映されないため低めに出やすい
売り手としての向き合い方
- 複数手法のレンジを「交渉のレンジ」として活用 — 最低ラインは純資産法、上振れ余地はDCF法やマルチプル法、と整理して買い手と対話する
- 前提条件の妥当性を依頼先と議論 — 事業計画の前提・割引率・類似会社の選び方をすり合わせる
- 第三者評価書の取得を検討 — 仲介会社の評価と乖離が大きい場合、第三者の意見で根拠を補強する
評価結果は「絶対的な正解」ではなく、買い手との交渉のスタート地点である点を理解しておくと、過度な期待や落胆を避けられます。
評価書の有効期間と再取得タイミング
評価書には実務上の「賞味期限」があります。一般的な目安は評価基準日から3〜6ヶ月で、それ以降は業績変動・市場環境変化を反映して再評価が必要になることがあります。
再評価が必要になる典型ケース
- 評価書発行後に決算をまたいだ場合
- 業績が±10%以上変動した場合
- 業界の上場会社株価(マルチプル法のベース)が大きく変動した場合
- M&A交渉が長期化(1年超)した場合
- 大型受注・大型損失など特殊事情が発生した場合
再評価コストの目安
再評価は「ゼロから作り直す」ケースもあれば、「数値の差し替えだけ」で対応できるケースもあります。後者であれば、当初費用の3〜5割程度で再発行できる事務所が多い印象です(事務所により異なるため要確認)。
評価書の有効期間に関する明文化された業界基準は現時点では確認できていません。実務慣行として、上記の目安が広く使われています。
こんな企業におすすめ・おすすめしない
評価書の取得を積極的に検討すべき企業
- 売却額が5億円以上を見込んでいる中小企業
- 複数の買い手候補が競合しており、価格根拠を強化したい
- 第三者割当増資・自己株買いを実施する予定がある
- ストックオプション設計で公正な株価が必要
- 相続・事業承継で税務上の評価が必要
- 少数株主との関係調整で客観的な株価根拠が必要
無料簡易査定で十分な企業
- 売却するかどうかを検討中で、まずは目安だけ知りたい
- 売却額が1億円未満の小規模M&A
- 仲介会社の選定段階で、複数社の査定を比較したい
- オーナー1人株主で、社内の合意形成プロセスがシンプル
- 特定の買い手と相対交渉で、競争入札型ではない
売却を検討中の方は「会社売却とは・流れ完全ガイド」、価格相場をまず知りたい方は「会社売却 いくらで売れる?相場・算定方法」もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 評価書の費用は売り手と買い手のどちらが負担するのですか?
A. 売り手が自社評価のために取得する場合は売り手負担、買い手がDDの一環として取得する場合は買い手負担が原則です。仲介会社内のバリュエーションは多くの場合、売り手の中間金・成功報酬に内包されています。
Q2. 顧問税理士に依頼してもよいですか?
A. 税務目的なら問題ありませんが、M&A目的の評価には注意が必要です。税務評価は保守的に算定されやすく、そのままM&A交渉に使うと売却額が低く誘導されるリスクがあります。M&A実績のある税理士か、別途公認会計士・M&A仲介会社の評価を併用することをおすすめします。
Q3. 評価書を取らずにM&Aを進めても問題ありませんか?
A. 法律上の必須要件ではないため、評価書なしでM&Aを進めることは可能です。ただし、買い手との価格交渉で根拠が弱くなったり、株主・税務当局への説明責任を果たせなかったりするリスクがあります。売却額が大きいほど、評価書取得のメリットが大きくなります。
Q4. 仲介会社の評価と第三者評価で金額が違ったらどうしますか?
A. 中小M&Aガイドラインでは、仲介者は確定的なバリュエーションを提示してはならないとされており、仲介会社の評価はあくまで参考レンジです。第三者評価との乖離がある場合、両方の前提条件を比較し、買い手との交渉材料として整理するのが実務的な対応です。
Q5. 評価書の納期はどれくらいですか?
A. 事務所と案件難度により、2週間〜2ヶ月程度が現時点での目安です。業界横断の統計データはなく、依頼先ごとに大きく異なります。短納期は割増料金になることがあるため、早めに依頼するのがおすすめです。
Q6. 評価書はM&Aが破談になっても残しておくべきですか?
A. はい、保管をおすすめします。次のM&A機会、相続・事業承継、増資など、別の場面で参考情報として活用できます。ただし、評価基準日から時間が経つと再評価が必要になる点には留意してください。
まとめ — 評価書取得の判断軸
M&A企業価値評価書の費用と取得方法のポイントを整理します。
- 費用は依頼先と用途で決まる: 税理士の税務目的なら10〜30万円、公認会計士の対外用報告書なら70〜200万円、M&A仲介会社は中間金・成功報酬に内包されることが多い
- 無料簡易査定と有料評価書を使い分ける: 検討初期や小規模案件は無料、5億円以上の案件や対外説明責任が重い場面は有料の対外用報告書
- 税務目的とM&A目的は別物: 顧問税理士の評価書をそのままM&A交渉に使わない
- 中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月)に準拠した依頼先を選ぶ: 複数手法で評価し、確定額ではなくレンジで提示する依頼先を選定する
- 書類準備の質が見積もり精度を左右する: 決算書・事業計画・株主名簿などを事前に整えておく
- 評価書には3〜6ヶ月の「賞味期限」がある: 案件が長期化した場合は再評価コストを見込む
評価書はM&Aの価格交渉や事業承継の出発点ですが、最終的な売却価格は買い手との交渉で決まります。複数の依頼先から見積もりを取り、自社の状況に合った費用感と評価水準を選ぶことが、結果的に最もコストパフォーマンスの高い選択になります。
次に読むべき関連記事:
免責事項: 本記事は公開情報をもとに作成しています。費用相場・制度内容は各事務所・公的機関の最新情報をご確認ください。M&Aの企業価値評価や税務・法務に関する具体的な判断は、必ずM&A実績のある公認会計士・税理士・弁護士にご相談ください。
