保育園・こども園・幼稚園のM&A仲介会社を選ぶとき、最初に確認すべきなのは「実績数」でも「知名度」でもなく、①自園の運営主体(株式会社/社会福祉法人/学校法人)に対応できるか、②最低報酬額が自園の想定譲渡価額に見合っているか、の2点です。 園の譲渡価額は数百万円〜1億円台に収まるケースが多い一方、仲介会社の最低報酬額は100万円から1,500万円まで15倍の開きがあります。ここを照合せずに相談先を決めると、「売れたのに手元にほとんど残らない」という結果になりかねません。
この記事は、園の譲渡・第三者への引き継ぎを検討している経営者・理事長に向けて、各社公式サイト・行政公表資料から確認できた情報のみを使って整理しています(各数値の確認日は本文に個別記載)。
この記事でわかること
- 保育・幼稚園領域に対応するM&A仲介会社13社の比較(最低報酬・手数料の計算基準・対応法人格)
- 株式会社・社会福祉法人・学校法人それぞれで使えるM&Aの手法
- 想定譲渡価額のレンジ別に「相談すべき会社」「手数料が合わない会社」の対応表
- 成功報酬の計算基準(譲渡価額ベース/株価ベース/移動総資産ベース)で総額が数倍変わる仕組み
- 定員充足率88.4%・こども誰でも通園制度の本格実施といった2026年の事業環境
- 仲介会社に契約前に必ず聞くべき5つの質問
⚠️ 本記事は各社公式サイト・行政公表資料をもとにした一般的な整理です。社会福祉法人・学校法人の承継は法人法制・税務・所轄庁の運用が複雑に絡むため、実際の手続き・税務判断は必ず弁護士・税理士・行政書士などの専門家にご相談ください。 手数料は改定される可能性があるため、契約前に各社へ直接ご確認ください。
結論:相談先は「運営主体」と「想定譲渡価額」の2軸で決まる
保育・幼稚園のM&Aは、一般の中小企業M&Aと違って運営している法人格によって使える手法そのものが変わります。そして小規模案件が多いため、手数料の絶対額が交渉の成否に直結します。この2つを掛け合わせた早見表が、最短の判断材料になります。
自園の状況 | まず相談すべきタイプ | 具体的な候補 |
|---|---|---|
株式会社運営・譲渡価額1,000万円未満/個人〜認可外 | プラットフォーム+小規模対応の特化型 | BATONZ、保育園M&A総合センター、保育M&A支援センター |
株式会社運営・譲渡価額1,000万〜3,000万円 | 保育特化型(最低報酬100万〜300万円クラス) | 保育M&A支援センター、保育園M&A.com、子育て事業承継社 |
株式会社運営・譲渡価額3,000万〜1億円 | 保育特化型+業界チームを持つ仲介 | 保育M&A支援センター、経営承継支援、エムエーウェルフェア |
株式会社運営・譲渡価額1億円超/複数園運営 | 業界チーム型・総合型 | 経営承継支援、インテグループ、M&A総合研究所、日本M&Aセンター |
社会福祉法人が運営する保育園・こども園 | 社福スキームの実務経験がある特化型 | 保育M&A支援センター、みつきコンサルティング、経営承継支援 |
学校法人が運営する幼稚園・幼稚園型こども園 | 学校法人の理事交代・合併の対応経験を確認できた会社 | 保育M&A支援センター、みつきコンサルティング(いずれも改正私立学校法施行後の対応経験を面談で要確認) |
この記事の要点を3つに絞ると次のとおりです。
- 最低報酬額が最大の比較ポイント。 譲渡価額3,000万円の園に最低報酬1,500万円の会社を選ぶと、実質的な手数料率が50%になります。金額が合わない会社は、そもそも案件を受けてもらえないことも多いです。
- 成功報酬の「計算のもと」を必ず確認する。 同じ「レーマン方式5%」でも、譲渡価額にかけるのか、借入や不動産を含む移動総資産にかけるのかで、支払額が数倍変わります。保育は建物を保有・借入している園も多く、影響が大きい領域です。
- 社会福祉法人・学校法人でも承継はできる。 ただし「株式を売る」形にはならず、理事長・理事・評議員の交代や事業譲渡・合併という形をとります。所轄庁の認可・届出が前提になるため、この手続きに慣れた会社を選ぶ必要があります。
保育園・こども園・幼稚園のM&A仲介会社13社 比較一覧

まず全体像です。手数料は各社公式サイトの公表内容(確認日:2026年8月8日)に基づき、公表がないものは「非公開」と明記しています。
保育・幼稚園に特化した仲介会社
会社名(運営) | 着手金・中間金 | 成功報酬 | 最低報酬 | 主な対象 |
|---|---|---|---|---|
保育M&A支援センター(ブティックス株式会社) | 0円 | 成約基本料100万円+レーマン方式(〜2,000万円10%、〜4,000万円9%、〜6,000万円8%、〜8,000万円7%、〜1億円6%、1億〜5億円5%、5億円超3〜1%) | 100万円 | 認可・小規模認可・企業主導型・認可外・こども園・幼稚園・インターナショナルスクール |
エムエーウェルフェア株式会社 | なし | 契約成立時のみ発生(料率は非公開) | 非公開 | 認可・認証・認可外・企業主導型保育、民間学童 |
保育園M&A.com(gf.T株式会社) | なし | 譲渡金額に応じた料率(具体率は非公開) | 300万円 | 認可・認証・認可外保育園 |
子育て事業承継社(株式会社M&Aコンサルティング) | なし(完全成功報酬制) | 譲渡対価×手数料率(料率は非公開) | 非公開 | 保育園・保育所・プリスクール |
保育園M&A総合センター(株式会社M&A Do) | 0円 | 0円(譲渡側は相談料・着手金・中間金・月額・成功報酬すべて0円と公表) | ― | 保育園全般 |
保育園M&A(office-right.com) | 「着手金・情報料・中間報酬など一切不要」 | 成果報酬(料率は非公開) | 非公開 | 保育園全般 |
保育園M&A総合センターは2026年7月16日に開設されたばかりのサービスです。譲渡側の手数料0円をうたっていますが、公式リリースでは外部専門家の費用は別途発生する可能性が明記されています。実績の蓄積はこれからの段階である点も踏まえて検討してください。
出典:株式会社M&A Do プレスリリース(2026年7月16日)(確認日:2026年8月8日)
保育業界チーム・総合型の仲介会社
会社名 | 着手金・中間金 | 成功報酬 | 最低報酬 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
経営承継支援 | 着手金0円(中間金は要確認) | 譲渡金額の5%(レーマン方式) | 500万円 | 保育業界専門チームを東京・大阪に配置。三井住友トラストグループ傘下 |
インテグループ | 着手金・中間金・月額すべて0円 | 株価レーマン方式(5億円以下5%/5〜10億円4%/10〜50億円3%/50〜100億円2%/100億円超1%) | 1,500万円(税別) | 保育園・保育所の成約事例を公式に多数公開。ただし小規模案件には不向き |
みつきコンサルティング | 無料 | 完全成功報酬制(料率・最低報酬は非公開) | 非公開 | 社会福祉法人スキームの解説実績あり。税理士法人と連携 |
M&A総合研究所 | 0円(譲渡企業) | 完全成功報酬制・譲渡価額ベースのレーマン方式 | 非公開 | 東証グロース上場。譲渡価額ベースを公式に訴求 |
日本M&Aセンター | 企業評価料(着手金)あり・中間金あり | レーマン方式 | 非公開(資産規模により変動) | 業界最大手。買い手ネットワークの広さが強み |
マッチングプラットフォーム
サービス | 売り手手数料 | 買い手手数料 | 保育関連の掲載案件 |
|---|---|---|---|
BATONZ(バトンズ) | 完全無料(登録・掲載・交渉・トップ面談まで) | 成約価格の2%(税別)、最低27.5万円(税込) | 乳幼児向け教育/保育施設・保育園カテゴリで291件(2026年8月8日確認)。「認可保育園」検索では36件 |
M&Aサクシード | 着手金・中間手数料0円、成約時のみ発生 | 中間金あり | 幼稚園・保育園カテゴリあり(件数非公開) |
出典:保育M&A支援センター、エムエーウェルフェア、保育園M&A.com、子育て事業承継社、保育園M&A(office-right.com)、経営承継支援 保育業界、インテグループ 料金体系、M&A総合研究所 手数料、日本M&Aセンター 手数料FAQ、BATONZ 料金体系、M&Aサクシード 幼稚園・保育園(いずれも確認日:2026年8月8日)
先に正直に書いておくべきことがあります。 保育領域では、業種別の累計成約件数を開示している仲介会社がほとんど存在しません。「保育M&A実績No.1」といった表現を見かけても、その分母(保育単独か、介護・医療を含むグループ全体か)が公表されていないケースが大半です。件数の多寡で会社を選ぶより、後述する手数料構造と手続き対応力で比較したほうが、実務上の判断としては確実です。
仲介会社全般の比較の考え方は「M&A仲介会社の比較(売り手向け)」、手数料の横断比較は「M&A仲介会社 手数料比較 完全ガイド」で詳しく整理しています。
まず自園の運営主体を確認する|法人格でM&Aの手法が変わる

保育・幼稚園のM&Aで最初につまずくのがここです。「社会福祉法人だから売れない」と思い込んで相談自体を諦めてしまう理事長が少なくありませんが、承継の手段はあります。 ただし手続きの形はまったく異なります。
運営主体 | 主に使われる手法 | 押さえておくべき点 |
|---|---|---|
株式会社・有限会社 | 株式譲渡、事業譲渡 | 株式譲渡なら法人格が変わらないため、認可・契約・雇用が原則そのまま承継される。最もスムーズ |
社会福祉法人 | 理事長・理事・評議員の交代による経営権の移転、事業譲渡、合併 | 株式や持分の概念がないため「売買」の形をとれない。所轄庁の認可・届出が前提 |
学校法人(幼稚園) | 理事長・理事の交代、事業譲渡、合併(吸収合併が中心) | 退任する理事への退職金が実質的な対価となる例がある。2025年4月施行の改正私立学校法でガバナンス要件が厳格化 |
NPO法人・宗教法人など | 理事交代、事業譲渡 | 持分がない点は社会福祉法人と同様 |
社会福祉法人で特に注意すべき3点
- 持分がないため「株式の売却代金」は発生しません。 経営権は理事長・理事・評議員の交代という形で移ります。
- 社会福祉法第27条により、理事長等に特別の利益を与えることは禁止されています。 承継の対価設計を安易に組むと、この規定に抵触するおそれがあります。必ず専門家を入れてください。
- 国庫補助金を受けて取得した財産を処分する場合、所管官庁の承認が必要です。 また定款変更や基本財産の増減を伴う場合も、所轄庁の認可・届出が必要になります。
※上記は制度の一般的な整理です。個別の対価設計・財産処分の可否は必ず弁護士・税理士にご確認ください。
出典:みつきコンサルティング「保育園のM&A動向」、みつき税理士法人「保育園のM&A」(確認日:2026年8月8日)
学校法人(幼稚園)は2025年4月の法改正後が前提
令和5年改正私立学校法が2025年4月1日に施行され、理事選任機関の設置、監事・評議員の選任基準の厳格化、特別利害関係者の割合制限、内部統制システムの整備などが義務化されました。理事交代による承継は従来より手続きが重くなっており、改正前の実務感覚のまま案内する会社には注意が必要です。契約前に「改正私立学校法施行後の学校法人承継の対応経験があるか」を必ず確認してください。
出典:辻・本郷税理士法人「令和5年私立学校法改正」、レコフ「学校法人のM&A動向」(確認日:2026年8月8日)
株式譲渡と事業譲渡で「認可」の扱いが決定的に違う
保育園M&Aの成否を分ける最大のポイントです。
- 株式譲渡 — 運営法人はそのまま存続するため、認可は原則として継続します。契約・雇用も自動的に引き継がれます。
- 事業譲渡 — 認可は承継されません。 買い手側で運営事業者名義の変更や新規の認可申請が必要になり、資産・債務・契約・労働契約を一つずつ移す作業が発生します。自治体との事前協議が事実上の前提条件です。
つまり、事業譲渡を選ぶと「買い手が認可を取れなければ取引が成立しない」というリスクを抱えることになります。仲介会社にこの実務経験があるかどうかで、案件の進み方がまったく変わります。
スキームごとの違いは「株式譲渡 vs 事業譲渡 どっちがいい 比較」、許認可の承継可否は「会社売却時の許認可・免許の承継可否 一覧ガイド」で業種横断的に整理しています。
保育M&Aで最も効く比較ポイントは「最低報酬額」
保育・幼稚園のM&Aは、譲渡価額が数百万円〜1億円台に収まる案件が中心です。この価格帯では、レーマン方式の料率よりも最低報酬額が実質的な手数料そのものになります。
想定譲渡価額別・相談先の適合表
想定譲渡価額 | 相談が現実的な会社 | 手数料が見合わない可能性が高い会社 |
|---|---|---|
〜1,000万円 | BATONZ(売り手無料)、保育園M&A総合センター、保育M&A支援センター(最低100万円) | 最低報酬300万円以上の会社すべて |
1,000万〜3,000万円 | 保育M&A支援センター、保育園M&A.com(最低300万円)、子育て事業承継社 | 経営承継支援(最低500万円)は要検討、インテグループ(最低1,500万円)は不適 |
3,000万〜1億円 | 保育M&A支援センター、経営承継支援、エムエーウェルフェア、M&A総合研究所 | インテグループ(最低1,500万円)は実質15〜50%の負担になる |
1億〜3億円 | 経営承継支援、M&A総合研究所、日本M&Aセンター、みつきコンサルティング | ― |
3億円超・複数園運営 | インテグループ、日本M&Aセンター、M&A総合研究所 | ― |
具体的に計算してみます。 譲渡価額3,000万円の認可外保育園を売却する場合(各社公表の料金体系にもとづく試算/確認日:2026年8月8日):
- 保育M&A支援センター … 成約基本料100万円+3,000万円×10%=400万円(実質13.3%)
- 経営承継支援 … 3,000万円×5%=150万円 → 最低報酬500万円が適用され500万円(実質16.7%)
- インテグループ … 3,000万円×5%=150万円 → 最低報酬1,500万円が適用され1,500万円(実質50%)
同じ園を売っても、支払額は3.75倍違います。インテグループは保育園M&Aの成約事例を公式に多数公開している会社ですが、最低報酬1,500万円という設計上、小規模園には端的に向きません。会社の良し悪しではなく、対象規模のミスマッチの問題です。
最低報酬の低い会社を横断的に探したい場合は「最低報酬が安いM&A仲介会社 比較」、小規模案件全般は「スモールM&A仲介会社 比較・おすすめ」もあわせてご覧ください。
見落とされがちな「レーマン方式の計算のもと」の違い

「成功報酬はレーマン方式で5%」と説明されても、それだけでは金額が決まりません。何に対して5%をかけるのかが会社によって違うためです。
計算のもと | 何にかけるか | 保育園M&Aでの影響 |
|---|---|---|
譲渡価額ベース | 実際に受け取る株式・事業の対価 | 支払額が最も小さくなりやすい。M&A総合研究所が公式に採用を訴求 |
株価(株式価値)ベース | 株式の評価額 | 譲渡価額ベースとほぼ同水準。インテグループが採用 |
移動総資産ベース | 譲渡価額+引き継がれる負債(借入金など) | 園舎の取得のための借入がある園では支払額が跳ね上がる |
たとえば譲渡価額3,000万円、園舎建設のための借入残高が1億円ある園の場合、移動総資産は1億3,000万円になります。5%をかけると650万円。譲渡価額ベースなら150万円ですから、4倍以上の差です。
保育・幼稚園は園舎という不動産を持ち、そのための長期借入を抱えている園が珍しくありません。「レーマン方式です」と言われたら、必ず「何に対する料率ですか」と聞き返してください。 これは口頭説明ではなく、仲介契約書の条文で確認すべき事項です。
計算方法そのものは「レーマン方式とは わかりやすく計算例付き解説」で詳述しています。手取り額の全体像は「M&A 売却 手取り額シミュレーション・計算ガイド」をご覧ください。
保育・幼稚園に特化した仲介会社6社の詳細
保育M&A支援センター(ブティックス株式会社)|最低報酬100万円で小規模園にも対応
保育園・幼稚園を運営する各法人(民間・NPO法人・社会福祉法人など)を対象に、簡易査定からマッチング、成約までを支援するサービスです。運営元のブティックス株式会社は東証グロース上場(証券コード9272)で、介護(2015年)、医療(2017年)、障害福祉(2020年)と領域を広げ、2021年に保育・建設分野へ参入しました。
項目 | 内容 |
|---|---|
運営会社 | ブティックス株式会社(東証グロース・9272) |
対象施設 | 認可保育園、小規模認可保育園、企業主導型保育園、認可外保育園、インターナショナルスクール、認定こども園、幼稚園 |
着手金・中間金 | 0円 |
成功報酬 | 成約基本料100万円+レーマン方式(〜2,000万円10%〜) |
最低報酬 | 100万円 |
公表実績 | 案件成約実績2,119件(2026年3月31日現在)、保育専門アドバイザー67名、買い手ニーズ登録1.9万社以上 |
強み: 対応施設の幅が最も広く、認可・認可外・企業主導型・こども園・幼稚園を横断して扱えます。最低報酬100万円は今回比較した中で最も低く、譲渡価額1,000万円前後の小規模園でも現実的に依頼できる水準です。上場企業が運営しているため、契約条件や情報管理の面で一定の透明性が期待できます。
注意点: 公表されている「2,119件」が保育分野単独の数字か、介護・医療・障害福祉を含むグループ全体のM&A仲介実績かは、公式ページ上で明示されていません。保育単独の実績を知りたい場合は、面談時に直接確認してください。 また拠点は限られるため、地方案件での訪問頻度は事前に確認しておくのが無難です。
こんな園におすすめ: 認可外・小規模認可・企業主導型など譲渡価額が1,000万〜5,000万円規模で、手数料の絶対額を抑えたい園。こども園や幼稚園も含めて相談したい場合。
出典:保育M&A支援センター 公式、ブティックス M&A仲介事業(確認日:2026年8月8日)
エムエーウェルフェア株式会社|保育+学童をワンストップで
「保育・学童専門M&Aパートナーズ」を掲げ、認可・認証・認可外保育園、企業主導型保育、民間学童・学童保育の譲渡/譲受を支援しています。着手金・中間金はなく、契約成立時のみ費用が発生する体系です。
強み: 学童保育を含めて扱える点は、放課後事業を併営している園にとって実務的なメリットがあります。自社メディアでこども家庭庁のデータを整理した業界統計コラムを継続的に発信しており、業界データの読み込みには一定の蓄積がうかがえます。
注意点: 成功報酬の料率・最低報酬額が公式サイトに記載されていません。 設立年・累計成約件数も公表されていないため、初回面談で「料率」「最低報酬」「保育案件の対応件数」の3点を確認したうえで判断してください。
こんな園におすすめ: 保育園と学童保育を併せて運営しており、まとめて引き継ぎ先を探したい事業者。
出典:エムエーウェルフェア 公式(確認日:2026年8月8日)
保育園M&A.com(gf.T株式会社)|最低報酬300万円を明示
認可・認証・認可外保育園を対象に、保育事業とM&Aの専門家が売買をサポートするサービスです。運営元のgf.T株式会社は2015年4月設立、東京都台東区に所在します。
強み: 最低報酬300万円を公式に明示している点が評価できます。保育の小規模案件で現実的な水準であり、事前に総額の見当がつけられます。
注意点: 譲渡金額に応じた料率は公式サイトの図表のみで、具体的な数値の記載がありません。掲載事例は3件で、累計成約件数の公表もありません。
こんな園におすすめ: 譲渡価額1,000万〜3,000万円程度の認可外・小規模園で、手数料の上限感を先に把握しておきたい経営者。
出典:保育園M&A.com 公式(確認日:2026年8月8日)
子育て事業承継社(株式会社M&Aコンサルティング)|公認会計士が在籍
保育園・保育所の事業承継とM&Aを支援するサービスで、公認会計士が在籍しています。着手金・企業評価料・月額報酬がない完全成功報酬制です。公開されている事例には、Cheer plus株式会社への認可外保育園・プリスクールの売却、株式会社城南進学研究社への譲渡などがあります。
強み: 会計の専門家が関与するため、企業価値評価や財務面の整理に一定の期待ができます。譲渡先として教育系の事業会社が並んでいる点も、買い手の裾野を示す材料になります。
注意点: 成功報酬の料率・最低報酬額は非公開です。累計成約件数の記載もありません。
こんな園におすすめ: プリスクール・認可外保育園など、教育系事業会社への譲渡を視野に入れたい経営者。
出典:子育て事業承継社 公式(確認日:2026年8月8日)
保育園M&A総合センター(株式会社M&A Do)|譲渡側の手数料0円をうたう新サービス
2026年7月16日に開設された保育園専門のM&A支援サービスです。譲渡企業については相談料・着手金・中間金・月額報酬・成功報酬をすべて0円とする方針を公表しています。運営元の株式会社M&A Doは2021年4月設立、東京都港区に所在します。
強み: 譲渡側の費用負担がゼロという設計は、譲渡価額が小さい園にとって最大の魅力です。手数料が売却代金を食い潰す心配がありません。
注意点: 公式リリースでも「外部専門家費用は別途発生の可能性」が明記されています。 弁護士・税理士・司法書士への報酬は自己負担になる前提で見積もってください。また2026年7月開設の新しいサービスであり、保育案件の成約実績はこれから蓄積される段階です。認可の承継や自治体協議といった重い手続きを伴う案件では、実務経験の有無を面談で確認することをおすすめします。
こんな園におすすめ: 譲渡価額1,000万円未満で、手数料負担をとにかく抑えたい園。ただし他社と並行して相談し、対応力を比較したうえで決めるのが安全です。
出典:株式会社M&A Do プレスリリース(2026年7月16日)(確認日:2026年8月8日)
保育園M&A(office-right.com)|ネットワーク500社以上を公表
着手金・情報料・中間報酬などが一切不要で、成果報酬のみとする体系です。ネットワーク500社以上、国内外で成約80件以上と公表しています。
強み: 初期費用が発生しないため、まず相談してみる段階で金銭的な負担が生じません。買い手ネットワークの規模を公表している点も、候補の広さを測る一つの材料になります。
注意点: 成功報酬の料率・最低報酬額の公式記載がありません。また公表されている成約80件について、保育分野単独の内訳は示されていません。
こんな園におすすめ: 複数社に相談したうえで比較検討したい場合の選択肢のひとつ。単独で決め打ちするより、他社の条件と並べて判断するのが現実的です。
出典:保育園M&A(office-right.com)(確認日:2026年8月8日)
業界チーム型・総合型5社の詳細
経営承継支援|手数料を公式に明示している数少ない一社
保育業界に特化したチームを持ち、株式譲渡・事業譲渡・資本業務提携に対応します。東京・大阪に業界チームリーダーを配置しており、公式サイトでは東京のリーダーが累計30件以上、大阪のリーダーが累計50件以上の実績と記載されています(いずれも個人の累計)。
項目 | 内容 |
|---|---|
設立 | 2015年4月16日 |
資本金 | 4億8,933万円 |
従業員 | 80名 |
資本関係 | 三井住友トラストグループ(三井住友信託銀行が23.8%保有) |
着手金 | 0円 |
成功報酬 | 譲渡金額の5%(レーマン方式) |
最低報酬 | 500万円 |
強み: 着手金0円・最低報酬500万円・成功報酬5%と、金額をすべて公式に開示している数少ない会社です。見積もりを取る前から総額の見当がつきます。信託銀行グループ傘下という資本背景も、体制面を重視する経営者にとっては判断材料になります。
注意点: 最低報酬500万円のため、譲渡価額が2,000万円を下回る園では手数料率が25%を超えます。中間金の有無は公式に明示されていないため、契約前に確認してください。
こんな園におすすめ: 譲渡価額3,000万円以上、複数園を運営している法人。手数料の透明性を最重視する経営者。
出典:経営承継支援 保育業界向けページ(確認日:2026年8月8日)
インテグループ|保育案件の事例は豊富だが小規模園には不向き
2007年設立。着手金・月額・中間金すべて0円の完全成功報酬制で、株価レーマン方式(移動総資産ではなく株式価値をもとに計算)を採用しています。公式サイトでは保育園・保育所を「社会福祉法人により運営されている零細組織が多い典型的な断片的市場」と位置づけ、経営に行き詰まった社会福祉法人から大手保育事業者への事業譲渡が増えると予想しています。
強み: 保育園・保育所の成約事例を公式に多数公開しており、専属アドバイザーが売却可能性の判定と売却見込額の査定を担当します。株価レーマン方式のため、借入が大きい園でも手数料が膨らみにくい設計です。
注意点: 最低成功報酬1,500万円(税別)。この水準を負担なく吸収できるのは、譲渡価額がおおむね3億円以上の案件です。単独園の譲渡では、まず手数料が合いません。
こんな園におすすめ: 複数園を展開する法人、譲渡価額3億円以上が見込める規模の事業者。
出典:インテグループ 保育園・保育所M&A、料金体系(確認日:2026年8月8日)
みつきコンサルティング|社会福祉法人スキームの解説実績
着手金無料・中間金不要の完全成功報酬制です。料率と最低報酬額は公式に明示されていません。同グループの税理士法人とあわせて、社会福祉法人が運営する保育園のM&Aについて具体的な解説を公開しており、持分のない法人の承継スキームに関する知見がうかがえます。
注意点: 料率・最低報酬額が非公開のため、総額の見当を事前につけることができません。初回面談で必ず金額条件を確認してください。
こんな園におすすめ: 社会福祉法人が運営する園で、理事交代型の承継について整理された説明を受けたい理事長。
出典:みつきコンサルティング 手数料解説(確認日:2026年8月8日)
M&A総合研究所|譲渡価額ベースのレーマン方式を明示
東証グロース上場。譲渡企業については相談料・着手金・中間金・企業価値評価レポート作成費がすべて無料で、成功報酬は譲渡価額ベースのレーマン方式です。「総資産ベースではない」ことを公式に訴求している点は、借入のある園にとって実質的な差になります。
注意点: 最低報酬額は公表されていません。また全業種対応の総合型であり、保育専門チームの有無は公式に確認できませんでした。保育・幼稚園の担当実績があるアドバイザーが付くかどうかを面談で確認してください。
こんな園におすすめ: 譲渡価額3,000万円以上で、園舎の借入残高が大きい園。手数料の計算基準を重視する経営者。
出典:M&A総合研究所 手数料(確認日:2026年8月8日)/個別の特徴は「M&A総合研究所 評判・特徴・手数料」も参考にしてください。
日本M&Aセンター|買い手ネットワークは最大だが小規模園には合いにくい
業界最大手で、買い手候補のネットワークの広さが最大の強みです。ただし譲渡企業にも企業評価料(着手金)が発生する着手金+成功報酬方式で、各種手数料は譲渡企業の資産規模により変動します。
注意点: 具体的な金額は公式に開示されていません。大手仲介の最低報酬は数千万円規模とされることが多く、譲渡価額が数千万円の単独園では手数料水準が合わない可能性が高いと考えたほうが現実的です。実際の水準は必ず面談で確認してください。
こんな園におすすめ: 複数園・数十園を展開する事業者、異業種を含む幅広い買い手を検討したい大規模法人。
出典:日本M&Aセンター 手数料FAQ(確認日:2026年8月8日)/詳細は「日本M&Aセンター 評判・特徴・手数料」で解説しています。
マッチングプラットフォームという選択肢
BATONZ(バトンズ)|売り手は完全無料、保育案件291件
登録・掲載・交渉・トップ面談まで売り手は完全無料です。買い手手数料は成約価格の2%(税別)、最低27.5万円(税込)。乳幼児向け教育/保育施設・保育園カテゴリには291件の売却案件が掲載されています(2026年8月8日確認)。「認可保育園」で絞り込むと36件です。
強み: 費用がかからないため、まず市場の反応を見たい段階で使いやすい選択肢です。小規模・認可外・個人運営の園の受け皿として、現実的な数の買い手が動いています。
注意点: プラットフォームは仲介の伴走支援が薄いという構造的な特性があります。認可の承継や自治体との事前協議が絡む認可園では、別途、行政書士・弁護士・税理士などの専門家を自分で起用する必要が出てきます。契約書の作成・チェックも自己責任の領域が広くなります。
こんな園におすすめ: 認可外保育園・企業主導型保育園など、認可承継の手続きが軽い案件。まず買い手の有無を確認したい段階の経営者。
出典:BATONZ 料金体系、保育案件一覧(確認日:2026年8月8日)/サービスの詳細は「バトンズとは 評判・特徴・手数料」で解説しています。
M&Aサクシード
着手金・中間手数料0円で、成約時に費用が発生する完全成功報酬型です。幼稚園・保育園のカテゴリが用意されています。掲載件数は公表されていません。事業譲渡では認可がそのまま引き継がれず、買い手側で運営事業者名義の変更・新規認可申請が必要になる点を、同社も業界解説で明示しています。
出典:M&Aサクシード 幼稚園・保育園カテゴリ(確認日:2026年8月8日)/プラットフォーム全体の比較は「M&Aマッチングプラットフォーム比較」をご覧ください。
2026年の事業環境|買い手が何を見ているかが変わってきている

譲渡条件の交渉に入る前に、買い手側の目線がどこにあるかを把握しておくと、準備すべき資料が変わります。
定員充足率88.4%|空き定員は構造的に拡大している
こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」(2025年8月28日公表)によると、状況は次のとおりです。
指標 | 令和7年4月1日 | 前年比 |
|---|---|---|
保育所等の利用定員 | 303万人 | ▲1.5万人 |
利用児童数 | 268万人 | ▲2.7万人 |
待機児童数 | 2,254人 | ▲313人(8年連続減少・過去最少) |
定員充足率 | 88.4% | ▲0.4ポイント |
待機児童のピークは2017年の26,081人で、現在はその10分の1以下です。定員充足率は令和3年90.9% → 令和4年89.7% → 令和5年89.1% → 令和7年88.4%と一貫して低下しています。施設数も保育所等は令和4年の23,899か所をピークに減少に転じました(令和6年は23,561か所)。
つまり「保育園は必ず高く売れる」局面ではありません。 買い手は定員充足率を厳しく見ています。逆に言えば、充足率が高い園・立地が良い園・保育士の定着率が高い園は、この環境下でも相対的に評価されます。
出典:こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」(確認日:2026年8月8日)。なお令和8年4月1日時点の取りまとめは例年8月下旬に公表されるため、現時点では未公表です。
また、都市部の充足率が約91.6%であるのに対し、過疎地では約76.2%との指摘もあります。この数値は民間の解説記事にもとづく参考値ですが、地域によって買い手の付きやすさに差が出ている点は、譲渡の期待値を考えるうえで踏まえておくべきでしょう。
出典:M&A Capital Design「保育所・保育園M&A 2026年版」(確認日:2026年8月8日/二次情報)
こども誰でも通園制度が2026年4月から全国で本格実施
2025年度に制度化され、2026年4月から全国で本格実施されました。0歳6か月〜満3歳未満の未就園児が、保護者の就労要件なしで月一定時間まで時間単位で利用できる仕組みです。
M&Aの文脈では、空き定員を収益化する新たな手段として買い手が注目しています。一方で、職員の半数以上を保育士とするなどの配置要件があり、人員面の負担は増えます。自園の空き定員と職員体制が、この制度に対応できる状態かどうかは、買い手が必ず確認してくる論点です。
出典:ほいくis「こども誰でも通園制度」、日本クレアス税理士法人「2026年度本格実施の重要ポイント」(確認日:2026年8月8日)
買い手は同業だけではない
同業の保育事業者だけでなく、住宅メーカー、学習塾、物流、産業廃棄物処理業など、異業種からの参入も続いています。2022年にはミダックホールディングス(産廃)が保育事業運営会社を買収した事例もあります。「保育の会社にしか売れない」という前提は現在の市場実態と合いません。 買い手の幅を広く取れる仲介会社かどうかも、確認しておく価値があります。
出典:経営承継支援「保育園業界の動向およびM&Aについて」、M&A総合研究所(確認日:2026年8月8日)
譲渡価格の目安と、価格を左右する要因
先に断っておくと、園の譲渡価格に「相場表」は存在しません。 以下は各社が公表している目安であり、実際の価格は個別査定で決まります。
主に使われる算定の考え方は次の2つです。
- 年買法 … 譲渡価格 = 時価純資産 + 営業利益 × 2〜5年分
- EBITDA倍率法 … EBITDA × 3〜6倍程度(例:EBITDA 3,000万円の認可保育所なら9,000万円〜1億8,000万円)
各社が公表しているレンジ感には幅があります。「ゼロ〜5,000万円が平均的」(みつきコンサルティング)、「小規模園で2,000万円前後、大規模園では1億円超」(M&A比較ナビ)、「公開案件の平均は2,500万円前後、低価格帯は500万円前後」(M&A総合研究所)といった具合です。いずれも各社の解説記事にもとづく参考値で、一次データではありません。
価格を左右する主な要因:
- 定員規模(認可20名以上か、小規模保育6〜19名か)
- 定員充足率(現在の市場環境で最も重視される指標)
- 立地(駅からの距離、周辺の未就学児人口)
- 保育士の定着率と有資格者の人数
- 認可種別(認可/認証/認可外/企業主導型)
- 園舎の所有か賃借か、借入残高
- 処遇改善等加算をはじめとする各種加算の取得状況
出典:みつきコンサルティング「保育園のM&A動向」、M&A比較ナビ「保育園のM&A」、M&A総合研究所(確認日:2026年8月8日/いずれも二次情報)
算定手法そのものは「M&A バリュエーション手法比較(DCF・類似会社・年買法)」、価格の考え方全般は「会社売却 いくらで売れる?相場・算定方法」で解説しています。
仲介会社に必ず聞くべき5つの質問
面談で聞くべきことを、そのまま使える形にまとめました。この5問への回答が曖昧な会社は、保育・幼稚園の実務に慣れていない可能性があります。
- 「認可の承継を伴う案件の対応実績はありますか。直近で何件ですか」 → 事業譲渡では認可が承継されません。買い手による新規認可申請をどう設計するかが案件の生命線です。
- 「自治体との事前協議に同席していただけますか」 → 認可保育所・認定こども園は自治体が実質的な承認権を持ちます。同席経験の有無が進行速度を左右します。
- 「最低報酬額はいくらですか。契約書のどの条項に書かれていますか」 → 口頭説明ではなく条文で確認します。想定譲渡価額と照らして納得できるかを必ず判断してください。
- 「レーマン方式の料率は、何に対してかかりますか」 → 譲渡価額ベースか、株価ベースか、移動総資産ベースか。借入のある園ほど差が大きくなります。
- 「M&A支援機関登録制度への登録はありますか」 → 中小企業庁のM&A支援機関登録制度で、読者自身が登録の有無を確認できます。後述の補助金を使う場合は登録が必須条件です。
社会福祉法人・学校法人の場合は、これに加えて 「所轄庁への認可・届出手続きの経験はありますか」「改正私立学校法施行後の学校法人承継の実務経験はありますか」 を追加してください。
契約前の確認事項全般は「M&A 仲介契約の注意点・チェックリスト」、登録制度の詳細は「登録M&A支援機関とは 一覧・選び方ガイド」で解説しています。
手数料負担を軽くする|事業承継・M&A補助金の活用
中小企業庁の事業承継・M&A補助金には「専門家活用枠」があり、M&A仲介会社への手数料が補助の対象になります。
2026年5月22日に公表された十五次公募の公募要領では、専門家活用枠の補助上限は次のとおりです。
類型 | 補助上限 |
|---|---|
買い手支援類型 | 600〜800万円(DD費用を申請する場合は上限800万円に200万円加算) |
売り手支援類型 | 600〜800万円 |
小規模売り手支援類型 | 450万円 |
保育・幼稚園の小規模案件では、小規模売り手支援類型の450万円が手数料の大部分をカバーしうる水準です。最低報酬100万〜500万円クラスの仲介会社を使う場合、実質負担が大きく変わります。
ただし重要な条件があります。 対象となる費用は、M&A支援機関登録制度に登録されたFA・仲介業者への手数料に限られます。登録のない業者に依頼すると補助の対象外です。相談先を決める前に登録の有無を確認してください。
また、補助金額・要件は公募回ごとに変動します。上記は十五次公募時点の内容であり、申請の際は必ず最新の公募要領を確認し、要件の判断は認定支援機関や専門家にご相談ください。
出典:中小企業庁 事業承継・M&A補助金(十五次公募)、M&A支援機関登録制度(確認日:2026年8月8日)/制度の全体像は「事業承継・M&A補助金(2026年最新)」で整理しています。
保育・幼稚園M&Aで押さえておくべき注意点

自治体との事前協議は「後から」では間に合わない
認可保育所・認定こども園は、自治体が実質的な承認権を握っています。買い手が決まってから協議を始めると、自治体の判断次第で条件が覆るリスクがあります。仲介会社に自治体折衝の経験があるかどうかは、この領域で最も重要な確認項目です。
保育士の一斉退職が最大の価値毀損リスク
事業譲渡では労働契約が自動的には承継されず、職員一人ひとりの個別同意が必要になります。保育士の一斉退職は、園の価値を最も大きく毀損する要因です。 買い手が最も懸念する点でもあります。株式譲渡を選べる法人格であれば、雇用が原則そのまま維持されるという意味でも有利です。
保護者・職員への説明タイミングは設計が要る
早すぎる開示は退園・退職を招き、遅すぎる開示は信頼を損ないます。この開示設計こそ、仲介会社の実力が出る部分です。 「いつ、誰に、どの順番で、何を伝えるか」の具体案を提示できるか、面談で確認してください。
従業員への伝え方は「会社売却 従業員への説明タイミング」で詳しく整理しています。
企業主導型保育事業は別途の手続きがある
企業主導型保育事業では、助成決定機関(児童育成協会)の手続きが別途必要になります。手続きの詳細は年度ごとの実施要綱で変わるため、必ず最新の要綱と、仲介会社および児童育成協会への確認を行ってください。
税務は法人格ごとにまったく異なる
株式会社の株式譲渡なら譲渡所得課税、事業譲渡なら法人税と消費税、社会福祉法人・学校法人なら持分がないため課税関係の考え方自体が変わります。保育・幼稚園のM&Aにおける税務は、必ず税理士に個別に相談してください。 一般論では判断できない領域です。
こんな園におすすめ/おすすめしないケース
保育特化型の仲介会社が向いているケース
- 譲渡価額が1,000万〜1億円程度と見込まれる単独園・数園の運営者
- 認可・認可外・企業主導型など、施設種別ごとの手続きに慣れた担当者に任せたい
- 手数料の絶対額を抑えたい(最低報酬100万〜500万円クラス)
- 社会福祉法人・学校法人で、持分のない法人の承継スキームを整理してもらいたい
業界チーム型・総合型が向いているケース
- 複数園・十数園を展開しており、譲渡価額が1億円以上見込める
- 同業だけでなく、異業種の大手企業を含めて買い手を広く探したい
- 上場企業・金融グループ傘下という体制面の信頼性を重視する
マッチングプラットフォームが向いているケース
- 認可外保育園・企業主導型など、認可承継の手続きが比較的軽い
- まず買い手の反応を確かめたい段階で、費用をかけたくない
- 契約書チェックなどを自前の専門家に依頼できる体制がある
おすすめしないケース(安易に選ばないほうがよい組み合わせ)
- 譲渡価額3,000万円未満の単独園に、最低報酬1,000万円超の仲介会社 … 手数料率が30〜50%になり、譲渡の意味が失われます
- 認可保育所の事業譲渡を、自治体折衝の経験がない会社に依頼する … 認可が下りず、案件そのものが不成立になるリスクがあります
- 社会福祉法人・学校法人の承継を、持分あり法人の感覚で進める会社に任せる … 特別利益供与の禁止や所轄庁の認可要件に抵触するおそれがあります
- 手数料の計算基準を書面で示さない会社と契約する … 成約後に想定の数倍を請求される事態を招きます
よくある質問
Q. 社会福祉法人が運営する保育園でも譲渡できますか?
A. 可能です。ただし株式や持分の概念がないため「売却」という形にはならず、理事長・理事・評議員の交代によって実質的に経営を承継する形、または事業譲渡・合併という形をとります。所轄庁の認可・届出が前提になり、社会福祉法第27条により理事長等に特別の利益を与えることは禁止されています。対価設計は必ず専門家を交えて検討してください。
Q. 認可保育所の認可は買い手にそのまま引き継げますか?
A. スキームによります。株式譲渡であれば運営法人が存続するため、認可は原則としてそのまま継続します。一方、事業譲渡では認可は承継されず、買い手による運営事業者名義の変更や新規認可申請が必要です。自治体との事前協議が実質的な前提条件になります。
Q. 定員割れしている園でも買い手はつきますか?
A. 定員充足率が全国平均で88.4%まで下がっている現状では、充足率は買い手が最も重視する指標のひとつです。定員割れが即座に「買い手がつかない」を意味するわけではありませんが、価格には影響します。ただし2026年4月から全国で本格実施された「こども誰でも通園制度」により、空き定員を活用する選択肢が生まれています。空き枠の活用余地を整理して提示できるかどうかで、評価が変わる可能性があります。
Q. 幼稚園(学校法人)の承継は保育園と何が違いますか?
A. 学校法人には持分がないため、理事長・理事の交代や合併(吸収合併が中心)という形をとります。退任する理事への退職金が実質的な対価となるケースもあります。加えて2025年4月1日施行の改正私立学校法により、理事選任機関の設置や監事・評議員の選任基準厳格化などガバナンス要件が強化され、手続きが従来より重くなっています。施行後の実務経験がある会社を選ぶことが重要です。
Q. 譲渡を保護者・職員にいつ伝えるべきですか?
A. 一律の正解はありませんが、実務では最終契約の締結が確実になった段階以降に、職員 → 保護者の順で開示するのが一般的です。早すぎる開示は退園・退職につながり、遅すぎれば信頼を損ないます。開示の順番と説明内容の設計を、仲介会社と最終契約前に詰めておいてください。
Q. 仲介会社に払う手数料は補助金の対象になりますか?
A. 事業承継・M&A補助金の専門家活用枠が該当します。ただし対象となるのは、M&A支援機関登録制度に登録されたFA・仲介業者への手数料に限られます。補助上限・要件は公募回ごとに変動するため、申請前に最新の公募要領を必ず確認してください。
Q. 複数の仲介会社に同時に相談してもいいのでしょうか?
A. 専任契約を締結する前であれば、複数社に相談して条件を比較するのが一般的です。特に保育領域は最低報酬額の差が大きいため、2〜3社から見積もりを取ることをおすすめします。専任契約後は他社との並行交渉が制限されるため、契約条件をよく確認してください。
まとめ|保育・幼稚園M&Aの相談先選びで外してはいけない2点
保育園・こども園・幼稚園のM&A仲介会社選びは、次の2点に集約されます。
- 自園の運営主体(株式会社/社会福祉法人/学校法人)に対応した実務経験があるか。 持分のない法人の承継、認可の扱い、所轄庁・自治体との協議は、経験の有無がそのまま案件の成否に出ます。
- 最低報酬額と成功報酬の計算基準が、自園の想定譲渡価額に見合っているか。 最低報酬100万円の会社と1,500万円の会社では、同じ園を売っても支払額が15倍違います。
そのうえで、譲渡価額1,000万〜1億円程度の単独園であれば保育特化型を軸に、1億円超・複数園であれば業界チーム型・総合型を軸に、認可外で費用をかけたくない段階ならプラットフォームを、というのが現実的な進め方です。
最後にもう一度お伝えします。社会福祉法人・学校法人の承継、そして税務の取り扱いは、法人格ごとにまったく異なります。必ず弁護士・税理士・行政書士など専門家にご相談のうえで進めてください。
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