印刷・出版・広告制作業の会社を売るときは、「業界の専用ページや支援体制があるか」「成功報酬を何の金額に掛けるか」「最低報酬額がいくらか」の3点で仲介会社を絞り込むのが近道です。 売上数億円以上なら日本M&Aセンター・M&A総合研究所・M&Aキャピタルパートナーズ・ストライクなどの大手、売上1億円前後以下ならインテグループや印刷業特化のアドバイザー、譲渡価格が数千万円規模ならバトンズや事業承継・引継ぎ支援センターも比較の候補に入ります。
印刷・紙の出版は市場の縮小が続いていますが、広告はインターネットを中心に伸びています。そのため買い手側では、印刷持株会社・大手印刷会社・広告/IT企業が業種の垣根をまたいで買収を進めています。売り手にとっては、自社のどの機能(印刷設備・製本・パッケージ・デジタル制作・顧客基盤)が評価されるかを理解し、その価値を買い手に説明できる仲介会社を選べるかが、価格と成約の可能性を左右します。
この記事でわかること:
- 印刷・出版・広告制作業の売却で候補になる仲介会社6社+マッチングサイト・公的窓口の手数料と対応体制の比較
- 設備借入の多い印刷会社で手数料が膨らみやすい理由と、譲渡価格1億円・3億円での試算
- 売上規模と業種(印刷/出版/広告)から決める相談先の選び方
- 印刷機リース・経営者保証、出版契約・取次口座、制作物の著作権など、業種別に売却前に確認しておくこと
- 2023〜2026年の業界のM&A事例と、買い手の顔ぶれ
この記事は次のような方に向けています:
- 商業印刷・出版印刷・パッケージ・製本・DM発送などを手がける印刷会社のオーナー
- 出版社・編集プロダクションのオーナー
- 広告制作会社・広告代理店・販促(SP)会社のオーナー
後継者がいない、設備更新の負担が重い、市場の先行きが不安という理由で売却を考え始めた方の判断材料としてまとめました。
本文中の手数料・統計は、各社公式サイトと公的統計・業界団体の公表資料をもとにしています。出典と確認日は表の下に記載しました。料金体系は改定されることがあるため、契約前に必ず各社の公式料金ページと見積書で最新条件をご確認ください。
印刷・出版・広告制作業の売却で候補になる相談先一覧
印刷・出版・広告の3業種すべてで業界ページを持つのは大手仲介会社で、小規模案件ではインテグループ・印刷業特化アドバイザー・バトンズが現実的な選択肢になります。 まず全体像を一覧で確認してください。
相談先 | タイプ | 印刷・出版・広告への対応(公式で確認できた範囲) | 対象規模の目安 | こんな会社におすすめ |
|---|---|---|---|---|
日本M&Aセンター | 総合大手 | 「印刷業界」「広告・PR・販促業界」の業界別ページあり。印刷業界向け経営者セミナーを開催 | 中堅以上が中心 | 全国・異業種まで幅広く買い手を探したい売上数億円以上の会社 |
M&A総合研究所 | 総合大手 | 印刷業界専用ページあり。広告代理店・Web広告向けページもあり | 譲渡企業の売上約1億〜100億円と記載 | 着手金・中間金なしで進めたい、売上数億円以上の会社 |
M&Aキャピタルパートナーズ | 総合大手 | 「印刷・広告業界のM&A動向」を業界別に掲載 | 中堅以上が中心 | 専任アドバイザーに一貫して担当してほしい中堅の会社 |
ストライク | 総合大手 | 印刷・広告の専用ページは本調査では未確認 | 中堅・中小 | 負債を差し引いた「受取額」基準で手数料を考えたい会社 |
インテグループ | 中堅・中小特化 | 印刷会社のM&A専用ページあり。売上1億円未満の地域密着型印刷会社やノンコア事業の切り離しにも対応と明記 | 小規模〜中堅 | 売上1〜数億円の印刷会社、事業の一部だけを売りたい会社 |
日本財務戦略センター | 印刷業特化の小規模アドバイザー | 印刷業(オフセット・商業印刷)専用ページあり。機械リース承継・取引先継続・技能承継を論点に明示 | 譲渡対価1,000万〜3,000万円帯にも対応と記載 | 小規模の印刷会社で、最低報酬額を抑えたい会社 |
(参考)バトンズ | マッチングサイト | 「広告・出版・放送」1,713件、「印刷業」299件の売却案件を掲載 | 小規模・事業譲渡中心 | 譲渡価格が数千万円規模、まず相場感をつかみたい会社 |
(参考)事業承継・引継ぎ支援センター | 公的機関 | 全都道府県に設置、相談無料 | 小規模中心 | 仲介会社選びの前に選択肢を整理したい会社 |
出典:日本M&Aセンター 印刷業界、日本M&Aセンター 広告・PR・販促業界、M&A総合研究所 印刷業界、M&Aキャピタルパートナーズ 印刷業界のM&A動向、同 広告業界のM&A動向、インテグループ 印刷会社のM&A、日本財務戦略センター 印刷会社M&A、バトンズ 広告・出版・放送の案件一覧、バトンズ 印刷業の案件一覧(確認日 2026-10-04。バトンズの掲載件数は日々変動します)
比較の前に、前提を2つ押さえておいてください。
- 印刷・出版・広告に限った成約件数は、現時点でどの会社も公表していません。 「業界に強い」かどうかは、業界別ページやセミナーの有無、公開事例、そして面談した担当者が業界の事情(リース残債・取次口座・キーマン依存など)をどこまで理解しているかで判断するのが実務的です。
- 成約率の横並び比較はしていません。 分母(相談件数か受託件数か)の定義が会社ごとに違い、並べても意味のある比較にならないためです。
仲介会社選びの全体像は売り手向けM&A仲介会社おすすめ比較、選び方の基本はM&A仲介会社の選び方ガイドで詳しく解説しています。
手数料の比較|印刷会社は「計算ベース」と「最低報酬額」で差が出る
手数料の差を生むのは料率よりも、「何の金額に料率を掛けるか」と「最低報酬額」です。 主要各社の料率はほぼ同じレーマン方式(5億円以下5%〜100億円超1%)ですが、印刷会社は印刷機の借入やリースで負債が大きくなりがちです。そのため、負債を含む総資産ベースか、負債を除いた株価・譲渡価格ベースかで支払額が大きく変わります。
主要仲介会社の手数料一覧(売り手側)
会社 | 着手金 | 中間金・基本合意報酬 | 成功報酬(計算ベースと料率) | 最低報酬額 |
|---|---|---|---|---|
日本M&Aセンター | あり(金額は公式ページに記載なし) | 公式ページで未確認 | 時価総資産ベースのレーマン方式(〜5億円5%/5〜10億円4%/10〜50億円3%/50〜100億円2%/100億円超1%) | 公式ページに記載なし |
M&A総合研究所 | 無料 | 無料(完全成功報酬) | 譲渡価格ベースのレーマン方式(同じ段階料率) | 2,500万円 |
M&Aキャピタルパートナーズ | 無料 | 中間金あり(報酬総額の約10%) | 株価ベースのレーマン方式(同じ段階料率)。売り手・買い手同額 | 公式ページに記載なし |
ストライク | 無料 | 基本合意報酬あり:資産総額10億円以下100万円/10〜50億円200万円/50億円超300万円(税別) | オーナー受取額ベース:4億円以下の部分2,000万円(定額)、4〜5億円5%、5〜10億円4%、10〜50億円3%、50〜100億円2%、100億円超1%(税別) | 実質2,000万円(4億円以下部分の定額) |
インテグループ | 無料 | 無料(完全成功報酬。報酬はクロージング時に発生) | 株価ベースのレーマン方式(同じ段階料率)。売り手・買い手同一の料金体系 | 1,500万円(税別) |
日本財務戦略センター | 無料(完全成功報酬) | 記載なし | 料率は未確認 | 700万円(印刷業ページの記載) |
(参考)バトンズ | 売り手は無料 | 売り手は無料 | 売り手は成約手数料も無料(オプションは有料、最大5.5%税込)。買い手が成約価格の2%(税込2.2%)、最低38.5万〜165万円(税込)を負担 | — |
出典:日本M&Aセンター 手数料・料金、M&A総合研究所 料金体系、M&Aキャピタルパートナーズ 料金体系、ストライク 料金、インテグループ 料金体系、日本財務戦略センター 印刷会社M&A、バトンズ 利用料金(Ver.010・2026年7月1日以降の実名開示依頼に適用)(いずれも確認日 2026-10-04)。料金は改定されることがあるため、契約前に最新の見積書で必ずご確認ください。
試算①:譲渡価格1億円の印刷会社(設備借入2億円)
前提:株式の譲渡価格1億円、印刷機の借入など負債が2億円ある中小印刷会社(時価総資産は簡略化のため「株価+負債=約3億円」で近似)
料金体系 | 計算 | 成功報酬の目安 | 譲渡価格に対する割合 |
|---|---|---|---|
譲渡価格ベース・最低報酬2,500万円(M&A総合研究所) | 1億円×5%=500万円 → 最低報酬額が適用 | 2,500万円 | 25% |
オーナー受取額ベース(ストライク) | 4億円以下の部分2,000万円+基本合意報酬100万円 | 2,100万円(税別) | 21% |
時価総資産ベース(日本M&Aセンター) | 3億円×5%=1,500万円+着手金 | 1,500万円+着手金(最低報酬額は公式未記載) | 15%超 |
株価ベース・最低報酬1,500万円(インテグループ) | 1億円×5%=500万円 → 最低報酬額が適用 | 1,500万円(税別) | 15% |
株価ベース(M&Aキャピタルパートナーズ) | 1億円×5%=500万円 | 500万円以上(最低報酬額は公式未記載のため、実額は見積もりで確認) | 5%以上 |
最低報酬700万円(日本財務戦略センター) | 料率未確認 | 700万円以上 | 7%以上 |
試算②:譲渡価格3億円の印刷・広告会社(負債3億円)
前提:株式の譲渡価格3億円、負債3億円(時価総資産は約6億円で近似)
料金体系 | 計算 | 成功報酬の目安 |
|---|---|---|
株価ベース(インテグループ/M&Aキャピタルパートナーズ) | 3億円×5%=1,500万円 | 1,500万円(インテグループは最低報酬と同額。M&Aキャピタルパートナーズは別途最低報酬額を確認) |
オーナー受取額ベース(ストライク) | 2,000万円+基本合意報酬100万円 | 2,100万円(税別) |
譲渡価格ベース(M&A総合研究所) | 3億円×5%=1,500万円 → 最低報酬額が適用 | 2,500万円 |
時価総資産ベース(日本M&Aセンター) | 5億円×5%+1億円×4% | 2,900万円+着手金 |
※料率・最低報酬額は上記「主要仲介会社の手数料一覧」の出典(確認日 2026-10-04)をもとにした単純計算です。消費税、中間金、実際の資産評価額による違いは含みません。最低報酬額が公式に記載されていない会社は、試算より高くなる場合があります。実際の報酬額は必ず各社の見積書でご確認ください。
小規模な印刷会社ほど、料率ではなく最低報酬額がそのまま手数料になります。 譲渡価格1億円の試算では、相談先によって1,000万円以上の差が出ました。設備借入の多い会社は、初回相談で「成功報酬は何の金額に掛けますか」「最低報酬額と、着手金・中間金を含めた総額はいくらですか」と必ず確認してください。
なお、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月30日公表)では、仲介者・FAが契約前に手数料の算定基準や提供する業務の内容などを説明することが求められています(出典:経済産業省 2024年8月30日公表資料)。説明があいまいな会社は、その時点で候補から外して構いません。
レーマン方式の計算方法はレーマン方式とは、各社の料金体系はM&A仲介会社 手数料比較ガイド、小規模案件向けは最低報酬が安いM&A仲介会社の比較で詳しく整理しています。
各社の特徴とおすすめできる会社
手数料表だけでは決めきれません。 印刷・出版・広告の買い手は、設備の状態、取引先の構成、人材の定着、デジタル対応力を細かく見ます。その論点を先回りして資料にできる担当者かどうかで、価格も交渉期間も変わります。公式情報で確認できた範囲で各社を整理します。
日本M&Aセンター|印刷・広告の業界ページとセミナー、全国の買い手網

東証プライム上場の日本M&AセンターHD傘下で、「印刷業界のM&Aと事業承継の動向」「広告・PR・販促業界」の業界別ページを常設しています。各業界に精通したコンサルタントの在籍、株価算定シミュレーション・売却先シミュレーションの提供、印刷業界向けの経営者セミナーの開催を公式に掲げています。広告・PR・販促業界ページ(2025年10月9日更新)では、セールスプロモーション関連の成約実績も紹介しています。全体の成約実績は10,000件超で、「M&A成約件数で世界No.1のギネス世界記録™に5年連続認定」と表記しています(出典:日本M&Aセンター公式サイト、2026年10月確認)。
- こんな会社におすすめ:売上数億〜数十億円で、大手印刷・印刷持株会社・広告/IT企業まで含めて広く買い手を探したい会社
- 注意したい点:着手金があり、成功報酬は時価総資産ベースです。印刷機の借入が大きい会社は手数料が膨らみやすいため、見積書で総額を確認しましょう。最低報酬額は公式ページに記載がありません
詳しくは日本M&Aセンターとはをご覧ください。
M&A総合研究所|印刷業界の専用ページ、完全成功報酬

東証プライム上場グループの仲介会社です。印刷業界専用ページでは、対応する譲渡企業の売上規模を約1億〜100億円とし、印刷業界に知見のあるアドバイザーが担当、買い手候補を約500〜1,000社から選定すると記載しています。広告代理店・Web広告向けのページもあります。成約までの期間は「最短43日、平均7.2カ月」と表記しています(全業種の数値。出典:M&A総合研究所公式サイト、2026年10月確認)。
- こんな会社におすすめ:譲渡価格が数億円以上見込め、成約するまで費用を払いたくない会社
- 注意したい点:最低報酬額が2,500万円と、比較した中では高めです。譲渡価格1億円前後の印刷会社では実質の料率が20%を超える計算になります
詳しくはM&A総合研究所とはをご覧ください。
M&Aキャピタルパートナーズ|株価ベースの報酬、印刷・広告の業界解説

東証プライム上場の仲介会社で、「印刷業界のM&A動向」「広告業界のM&A動向」を業界別に掲載しています。広告業界のページでは、M&Aの評価でプランナー・デザイナーなど人材の離職リスクや、デジタル領域の運用技術・分析基盤の質が論点になると解説しています。着手金・月額報酬は無料で、専任アドバイザーが初期検討から成約まで担当します。
- こんな会社におすすめ:負債が大きく株価ベースで報酬を考えたい中堅の印刷会社、デジタル化を進めている広告制作会社
- 注意したい点:相手先候補が決まった段階で中間金(報酬総額の約10%)が発生します。最低報酬額は公式ページで確認できませんでした
詳しくはM&Aキャピタルパートナーズとはをご覧ください。
ストライク|オーナー受取額ベースで、基本合意まで無料

東証プライム上場の仲介会社です。基本合意までは無料で、成功報酬はオーナー受取額を基準に計算します。負債の大小に左右されにくく、他社の見積もりと比べやすい料金体系です。印刷・広告業界の専用ページは本調査では確認できませんでした。
- こんな会社におすすめ:譲渡価格が4億円を超える見込みで、受取額ベースで手数料を考えたい中堅の会社
- 注意したい点:4億円以下の部分は2,000万円の定額のため、譲渡価格1〜2億円の案件では実質の負担率が高くなります。基本合意報酬(100万〜300万円、税別)も別途かかります
詳しくはストライクとはをご覧ください。
インテグループ|売上1億円未満の印刷会社やノンコア事業にも対応

東証グロース上場の仲介会社で、印刷会社のM&A専用ページを持っています。中小〜中堅規模に対応し、売上高1億円未満の地域密着型印刷会社や、ノンコア事業の切り離しにも対応すると明記しています。無料の企業価値算定やMBO支援もあります。公開事例には「譲渡企業売上2億円→買い手売上4億円(中国地方、ノンコア事業の切り離し)」「譲渡企業売上1億円→買い手売上10億円(近畿→中部、業界の先行き不安による譲渡)」があります。
- こんな会社におすすめ:売上1〜数億円の印刷会社、印刷部門だけ・DM発送部門だけなど事業の一部を売りたい会社
- 注意したい点:着手金・中間金は無料で報酬はクロージング時のみですが、最低報酬額1,500万円(税別)は、譲渡価格が1億円を下回る案件では負担が大きくなります(出典:インテグループ料金ページ、2026年10月確認)
日本財務戦略センター|印刷業に特化した小規模アドバイザー
2020年設立の非上場の会社で、オフセット印刷・商業印刷に特化したページを設けています。中小企業庁のM&A支援機関登録事業者であること、中小M&Aガイドライン(第3版)の遵守宣言をしていることを公式に記載しています。完全成功報酬制で、最低手数料は700万円、譲渡対価1,000万〜3,000万円帯の小規模案件にも対応すると記載しています(出典:同社印刷会社M&Aページ、2026年10月確認)。印刷機のリース承継、取引先の継続、職人の技能承継を論点として明示している点が特徴です。
- こんな会社におすすめ:譲渡価格が数千万円規模の小さな印刷会社で、大手の最低報酬額では割に合わない会社
- 注意したい点:設立から日が浅く、成約実績の件数は公式サイトで確認できませんでした。料率も未確認のため、面談時に実績と見積もりを確認してください
バトンズ・事業承継・引継ぎ支援センター|小規模案件の比較先

バトンズ(日本M&AセンターHDグループ)には、「広告・出版・放送」で1,713件、「印刷業」で299件の売却案件が掲載されています(確認日 2026-10-04)。印刷業の掲載例には、東京都の印刷・製本業(売上5,000万〜1億円、希望額2,500万円)、埼玉県のオフセット印刷工場(売上2〜3億円、希望額6,000万円)などがあります。これらは売り手の希望額であり、成約価格ではありませんが、自社に近い案件を見るだけでも相場感の参考になります。なお、同社が表記する「5年連続No.1」はM&Aプラットフォーム市場全体の指標で、広告・出版業界に限ったものではありません。
事業承継・引継ぎ支援センターは国の事業として各都道府県に設置され、相談は無料です。仲介会社の最低報酬額が重く感じる規模の会社は、まずここで選択肢を整理するのが現実的です。
- こんな会社におすすめ:譲渡価格が数千万円程度の見込みで、手数料をできるだけ抑えたい会社
- 注意したい点:マッチングサイトでは、資料作成や条件交渉を自分で進める場面が増えます。リース承継や契約の引き継ぎは、別途専門家の支援を検討してください
詳しくはバトンズとは、M&Aマッチングプラットフォーム比較、事業承継・引継ぎ支援センターとはをご覧ください。
売上規模・業種別のおすすめ相談先
相談先は「売上規模(譲渡価格の見込み)」と「印刷・出版・広告のどれが主力か」で絞り込めます。 以下は公式の料金体系と対応体制から整理した目安です。
会社の規模・状況 | 主な相談先 | 選ぶ理由 |
|---|---|---|
売上1億円未満の印刷・製本・編集プロダクション(譲渡価格数千万円) | 事業承継・引継ぎ支援センター、バトンズ、日本財務戦略センター | 大手の最低報酬額(1,500万〜2,500万円)が譲渡価格に対して重すぎる |
売上1〜数億円の地域の印刷会社 | インテグループ、日本財務戦略センター、ストライク + 公的センター | 小規模の印刷会社への対応を明記。最低報酬額と計算ベースで総額を比べる |
売上数億〜数十億円の印刷会社(パッケージ・商業印刷など) | 日本M&Aセンター、M&A総合研究所、M&Aキャピタルパートナーズ | 印刷業界ページ・セミナーなどの支援体制と、印刷持株会社・大手印刷への買い手網 |
広告制作会社・広告代理店・SP会社 | 日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、M&A総合研究所 | 広告・PR・販促やWeb広告の業界ページがあり、人材・デジタル資産の評価論点を理解している |
出版社(書籍・雑誌・電子) | 大手仲介2〜3社に並行相談 + 弁護士 | 出版専用ページは確認できず。出版契約・取次口座の論点を理解しているか面談で見極める |
印刷部門だけ・DM発送部門だけを切り離したい | インテグループ、大手仲介 + 税理士 | 事業譲渡・会社分割の設計が必要。スキームと税務の提案力で比べる |
- 上記はあくまで目安です。2〜3社に相談し、提案内容と見積もりを比べるのが安全です。
- 依頼先が中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録しているかも確認しましょう。2026年2月20日時点の登録数は3,235件(法人2,488・個人事業主747)です(出典:中小企業庁 2026年2月20日公表、2026年10月確認。最新の件数は中小企業庁サイトでご確認ください)。登録の有無は、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の対象可否にも関係するため、補助金を使う場合は最新の公募要領で要件をご確認ください。
小規模案件の比較は年商1億円以下の小規模M&A仲介会社比較、製造業全般の比較は製造業のM&A仲介会社おすすめ、Web広告・デジタル系が主力の会社はIT・Web業界のM&A仲介会社おすすめも参考になります。
印刷・出版・広告業界でM&Aが増えている背景(最新統計)
印刷と紙の出版は縮小が続く一方、広告はインターネット広告を中心に過去最高を更新しています。 この差が、印刷・出版会社の売却や、広告・デジタル機能を取り込もうとする買収の増加につながっています。
業界 | 最新の数値 | 前年比 | 出典 |
|---|---|---|---|
印刷(製造品出荷額等・2024年実績) | 4兆9,780億円。3年ぶりに5兆円割れ。事業所数1万2,766、従業者数23万5,064人 | 出荷額2.3%減、事業所数4.5%減、従業者数3.9%減 | 総務省・経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」(JAGAT解説) |
出版(紙+電子・2025年) | 1兆5,462億円。紙は9,647億円で約半世紀ぶりに1兆円割れ(雑誌3,708億円は10.0%減)。電子は5,815億円 | 1.6%減(4年連続減)。電子は2.7%増 | 全国出版協会・出版科学研究所(カレントアウェアネス・ポータル) |
広告(総広告費・2025年) | 8兆623億円。インターネット広告費4兆459億円で構成比50.2%と初めて過半数 | 105.1%(4年連続で過去最高) | 電通「2025年 日本の広告費」(共同通信PRワイヤー) |
確認日 2026-10-04。印刷の出荷額には、パッケージ印刷の需要や原材料費上昇分の価格転嫁が含まれるため、JAGATは「印刷物の実需要の変化とは区別して解釈する必要がある」と注記しています。また印刷業界の数値は、「製造品出荷額等」と「売上高(経済構造実態調査)」など統計ごとに定義が異なるため、他の資料と比べる際はご注意ください。
この状況から、売り手には次のような傾向が見えてきます(一般的な傾向であり、個別の評価を保証するものではありません)。
- 紙媒体だけの会社より、パッケージ・デジタル制作・広告企画など伸びている機能を持つ会社のほうが評価されやすい
- 印刷会社は設備更新の時期が売却判断の分かれ目になりやすい。高額な印刷機を入れ替える前に、一度評価額を把握しておくのが合理的
- 広告制作会社は市場が伸びていても人材の確保と定着が課題で、体力のある会社の傘下に入る選択が増えている
「今売るべきか」の判断は会社の売り時 判断基準、廃業との比較はM&Aか廃業か 比較・判断基準で整理しています。
業種別|売却前に確認しておきたいポイント
印刷・出版・広告では、買収監査(DD)で確認される論点が業種ごとに違います。 仲介会社に相談する前、または並行して、次の項目を整理しておくと価格交渉で不利になりにくくなります。
印刷会社:設備・リース・保証・取引先
確認項目 | 何を確認するか |
|---|---|
印刷機のリース・借入 | リース残債・残期間・中途解約条件、借入の返済予定。印刷業特化の日本財務戦略センターは「中堅印刷会社は機械の70〜80%がリース」との見解を示しています(同社の見解で、業界統計ではありません) |
チェンジ・オブ・コントロール条項 | 株式譲渡ならリース・融資契約は会社に残りますが、株主変更時に解除・通知が必要な条項がないかを確認。事業譲渡ならリース会社の承諾が必要です |
経営者保証・連帯保証 | 設備借入の多い業種のため、売却時に経営者保証を外せるかが大きな論点になります |
取引先の集中度 | 出版社・広告代理店・大手印刷の下請けなど、上位取引先への依存度。上位数社に売上が集中している場合は、取引継続の見通しを説明できるようにしておきます |
熟練オペレーター・製版技術者 | 継続雇用の見込みと、技能の引き継ぎ体制 |
設備の評価 | 古い印刷機は簿価・時価が低いことが多く、価格では設備よりも顧客基盤・人材・付加価値機能(パッケージ、デジタル、物流)が評価されやすい傾向があります |
保証の外し方は会社売却時の個人保証・連帯保証の解除方法、金融機関・リース会社への対応は会社売却時の銀行・金融機関への対応で解説しています。
出版社:出版契約・取次口座・在庫
確認項目 | 何を確認するか |
|---|---|
著者との出版契約・出版権 | 株式譲渡なら契約の当事者(会社)は変わりません。一方、事業譲渡で契約を移す場合は著者の同意が必要になりうるほか、出版権の譲渡には複製権等の保有者の承諾が必要とされています(著作権法87条)。契約書の有無と内容を棚卸ししておきましょう |
取次口座・流通ルート | 取次との取引口座を持つ出版社を求める買い手もいるため、口座の維持がスキーム選びに影響します |
在庫・返品 | 返品・断裁の見込み、返品調整に関する会計処理など、在庫の評価を財務面で整理しておきます |
広告制作会社・広告代理店:人材・取引口座・著作権
確認項目 | 何を確認するか |
|---|---|
キーマン依存 | プランナー・デザイナー・営業の離職は評価に直結します。オーナー自身の引き継ぎ期間(ロックアップ)や、キーマンの継続を条件にする条項が交渉の論点になります |
取引口座の継続性 | 媒体社・大口クライアントとの取引口座が株主変更後も続くか、特定の大口顧客に依存していないか |
デジタル資産 | 運用ノウハウ、分析基盤、運用実績データなど、デジタル領域の資産の質 |
制作物の著作権の帰属 | 受託した制作物の権利が顧客に移転しているか、外注クリエイターとの契約で権利処理が済んでいるか。不明確だと表明保証の対象になります |
出版権・著作権の承継、リース契約の承継、経営者保証の解除、売却時の税金などは、個別の契約内容や状況によって結論が変わります。最終判断は弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。 本記事は一般的な情報の整理であり、個別の案件への適用を保証するものではありません。
スキームの違いは株式譲渡と事業譲渡の違いと会社分割とは、著作権に関する表明保証のリスクは著作権表明保証違反の判例解説、引き継ぎ期間はロックアップ条項とはで詳しく解説しています。
印刷・出版・広告業界の主なM&A事例と買い手の顔ぶれ
買い手は大きく「印刷持株会社」「大手印刷会社」「広告・IT企業」に分かれます。 自社がどの層に評価されそうかを考えると、仲介会社に求める買い手網も見えてきます。
時期 | 買い手 | 対象 | 概要 |
|---|---|---|---|
2026年7月 | 日本創発グループ | シテイー・ロード | 完全子会社化 |
2026年5月 | 日本創発グループ子会社リングストン | 村上の製袋事業 | 事業譲受 |
2026年5月 | 大日本印刷 | AUSTRIACARD HOLDINGS(オーストリア) | TOB |
2026年4月 | 三光産業 | — | MBOが成立し上場廃止 |
2025年2月 | ノバセル(ラクスル子会社) | オールマーケ | 広告領域の買収 |
2024年10月 | フリークアウト | VAAS | 広告領域の買収 |
2023年9月 | 日本創発グループ | 飯島製本 | 株式交換による子会社化。印刷〜製本のワンストップ化 |
2023年7月 | 大日本印刷 | ハコスコ | 51%取得、XR領域への展開 |
出典:日本M&Aセンター 印刷業界のM&Aニュース、M&Aキャピタルパートナーズ 印刷業界のM&A動向、同 広告業界のM&A動向(確認日 2026-10-04)。時期・スキームはこれらの掲載情報によるもので、詳細は各社の適時開示でご確認ください。
事例から見える買い手の動きは次の4つです。
- 印刷持株会社による連続買収:日本創発グループのように、中小の印刷・製本・パッケージ会社を傘下に加えてワンストップ体制を広げる動き。地域の中小印刷会社にとって最も身近な買い手層です
- 大手印刷会社のグループ再編と多角化:海外企業やXRなど非印刷領域への投資
- 広告・IT企業による広告代理店・制作会社の買収:印刷EC発のラクスル系やアドテク企業が広告機能を取り込む動き
- MBO・非上場化:経営陣による買収で事業を継続する選択肢
売却価格の考え方は会社売却 いくらで売れる?相場・算定方法をご覧ください。具体的な価格・税額の算定は、税理士やM&Aアドバイザーへの相談が前提です。
仲介会社を選ぶときの5つの確認ポイント
一般的な選び方に、「印刷・出版・広告の事情を理解しているか」という視点を加えるのがポイントです。 面談でそのまま使える質問も添えました。
- 業界の支援体制と経験があるか:業界別ページやセミナーの有無に加え、担当者自身の経験を確認します。
- 質問例:「印刷会社(または出版社・広告制作会社)の支援経験はありますか。どんな買い手に譲渡しましたか」
- 成功報酬の計算ベースと最低報酬額が明確か
- 質問例:「料率は何の金額に掛けますか」「最低報酬額と、着手金・中間金を含めた総額の見込みはいくらですか」
- 自社の強みを価格に反映する提案ができるか:設備の価値が低くても、顧客基盤・パッケージ対応・デジタル制作・物流機能などをどう評価に乗せるかを説明できるかを見ます。
- 質問例:「当社の設備の古さや、紙の売上比率は価格にどう影響すると見ていますか」
- スキームを業種の論点まで踏まえて提案できるか:リース承継、出版契約、取次口座、事業の一部切り離しなどを踏まえ、株式譲渡・事業譲渡・会社分割の選択肢を示せるかを確認します。
- 想定する買い手の層を具体的に示せるか:印刷持株会社・大手印刷・同業の地域印刷会社・広告/IT企業のどこにアプローチするかで、評価される点が変わります。
仲介契約を結ぶ前の確認事項はM&A仲介契約の注意点・チェックリスト、ガイドラインの内容は中小M&Aガイドラインとはで解説しています。
売却を前向きに検討したい会社・急がなくてよい会社
次のいずれかに当てはまる会社は、早めに評価額を確認しておく価値があります。
- 後継者がおらず、廃業か売却かを決めかねている
- 印刷機の入れ替えなど、数千万〜数億円規模の設備投資の判断が数年以内に迫っている
- 紙の売上が減っており、パッケージ・デジタル・広告など伸びている分野を持つ会社と組みたい
- 従業員の雇用や取引先との関係を、体力のある会社のもとで続けたい
- 広告制作会社で、人材採用や大口クライアント依存に限界を感じている
一方、次のような場合は急いで決めないほうがよいこともあります。
- 親族や社内に承継候補がいて、育成を優先したい
- 大口取引先との契約更新や価格改定の交渉が控えており、結果が企業価値を左右する
- 出版契約や制作物の権利関係が未整理で、整理すれば評価が上がる見込みがある
どちらの場合も、2〜3社の仲介会社や公的センターに相談して評価額と選択肢を把握してから判断するのが、後悔を避ける近道です。
従業員への影響はM&Aで従業員はどうなる?、準備の全体像は会社売却 準備チェックリストをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 赤字の印刷会社でも買い手は見つかりますか?
A. 見つかる可能性はあります。印刷持株会社や同業の印刷会社は、設備よりも顧客基盤や熟練した人材、地域の取引網を目的に買収することがあるためです。ただし価格は低くなりやすく、借入金の扱いや経営者保証の解除が交渉の中心になります。廃業した場合の手残りと比べて判断しましょう。※借入金・保証・税務の扱いは個別事情で変わるため、税理士・弁護士などの専門家への相談をおすすめします。
Q. 取引先の出版社や広告代理店に、売却の検討を知られずに進められますか?
A. 仲介会社は通常、社名を伏せた資料(ノンネームシート)で買い手を探し、秘密保持契約を結んだ相手にだけ詳しい情報を開示します。ただし、主要取引先との取引継続を買い手が確認したい場合や、事業譲渡で契約を移す場合は、最終段階で取引先への説明が必要になります。伝える時期と方法は仲介会社と事前に決めておきましょう(参考:ノンネームシートとは)。
Q. 印刷部門は売って、不動産や別の事業は手元に残せますか?
A. 事業譲渡や会社分割を使えば、特定の部門だけを売ることは可能です。インテグループのように、ノンコア事業の切り離しへの対応を明記している仲介会社もあります。ただし、スキームによって税金・許認可・契約の引き継ぎ方が変わるため、税理士を交えて比較することをおすすめします。
Q. 編集プロダクションや小さな広告制作会社でも、仲介会社に相談できますか?
A. 相談はできますが、大手仲介会社の最低報酬額(1,500万〜2,500万円程度)は、譲渡価格が数千万円規模の会社には重すぎることがあります。その場合は、バトンズなどのマッチングサイトや事業承継・引継ぎ支援センターを並行して検討するのが現実的です。
Q. 印刷業界団体の事業承継支援は使えますか?
A. 業界団体による事業承継・M&Aの支援制度や提携仲介会社の有無は、本記事の調査では確認できませんでした。所属している団体があれば、窓口に直接問い合わせてみてください。公的な無料窓口としては、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターがあります。
まとめ:業界理解と手数料の計算方法で2〜3社を比べる
印刷・出版・広告制作業の売却で仲介会社を選ぶときは、①業界の支援体制と担当者の経験、②成功報酬の計算ベースと最低報酬額、③設備・契約・人材の論点を価格に反映する提案力の3点で比較しましょう。
- 全国・異業種まで広く買い手を探したい中堅以上:日本M&Aセンター
- 完全成功報酬で、譲渡価格が数億円以上見込める:M&A総合研究所
- 株価ベースで報酬を考えたい中堅の印刷・広告会社:M&Aキャピタルパートナーズ
- 受取額ベースで、譲渡価格4億円超の見込み:ストライク
- 売上1〜数億円の印刷会社、事業の一部を切り離したい:インテグループ
- 譲渡価格が数千万円規模の小さな印刷会社:日本財務戦略センター、バトンズ、事業承継・引継ぎ支援センター
手数料や実績の数値は改定・更新されるため、最終的には各社の公式ページと見積書で確認してください。出版権・著作権の承継、リース契約、経営者保証、税務の判断は、弁護士・税理士などの専門家への相談をおすすめします。
次に読む:売り手向けM&A仲介会社おすすめ比較|M&A仲介会社 手数料比較ガイド|製造業のM&A仲介会社おすすめ|M&Aとは
