M&Aアーンアウト受領時の税務・会計処理ガイド|雑所得か譲渡所得か・税率・手取りまで解説
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M&Aアーンアウト受領時の税務・会計処理ガイド|雑所得か譲渡所得か・税率・手取りまで解説

M&Aのアーンアウト(条件付取得対価)を受け取ったとき、売り手個人は雑所得(総合課税・最高約55%)となるケースが多く、通常の株式譲渡益(20.315%)より税負担が重くなり得ます。所得区分・課税タイミング・手取りシミュレーション・会計処理まで、出典付きで解説します。

M&A比較レビュー編集部2026/7/207分で読める

M&Aのアーンアウト(条件付取得対価)を売り手個人が受け取った場合、その追加対価は「雑所得(総合課税)」として課税されるケースが多く、最高で約55%の税率がかかり得ます。 これは通常の株式譲渡益にかかる申告分離課税20.315%と比べて大幅に重く、手取りに数千万円単位の差が出ることもあります。クロージング時点で追加対価が未確定のため、通常の譲渡所得に含められないのが主な理由です。

この記事でわかること:

  • アーンアウト対価を受け取ったときの所得区分(雑所得か譲渡所得か)と税率
  • いつ課税されるのか(課税タイミング)と確定申告の考え方
  • 譲渡所得課税と雑所得課税で手取りがどれだけ変わるかのシミュレーション
  • 売り手法人・買い手の税務、日本基準とIFRSの会計処理の違い
  • 税負担を踏まえて契約段階で確認すべきこと

この記事は、会社や事業を売却し、アーンアウト条項付きの契約で追加対価を受け取る(または受け取る予定の)オーナー経営者・個人株主に向けた実務ガイドです。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。 アーンアウトの所得区分・課税タイミング・税額は、契約内容や個別の事実関係によって結論が変わります。実際の申告・判断は必ず税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。

結論:アーンアウト受領時の税務・会計処理まとめ

先に全体像を整理します。立場(売り手個人/売り手法人/買い手)と、税務・会計それぞれで扱いが異なります。

立場

税務上の扱い

ポイント

売り手(個人)

追加対価は雑所得(総合課税)となるケースが多い

最高税率は所得税45%+住民税10%+復興特別所得税。課税は原則「受領(支払確定)が確定した年分」

売り手(法人)

追加対価を譲渡益として益金認識

確定した事業年度の他の益金と合算して法人税等が課税。個人のような区分の問題は生じにくい

買い手

支払ったアーンアウト対価は原則損金不算入株式の取得原価に加算

会計処理は日本基準とIFRSで大きく異なる

売り手個人にとって最も重要なのは、追加対価が「雑所得」扱いになりやすく、通常の株式譲渡益(20.315%)より税率が高くなり得る点です。 クロージング時点では追加対価が確定していないため、権利確定主義のもとで譲渡所得に含めにくいことが背景にあります(出典: 森・濱田松本法律事務所ニュースレター2021、マクサス、確認日2026-07-21)。

一方で、契約条項の設計が「実質的に達成が確実」と評価される内容だった場合には、譲渡時点で譲渡所得として認識すべきと判断された裁決事例もあり、区分は一律ではありません。契約段階から税理士に相談し、税負担を織り込んで条件を設計することが重要です。

そもそもアーンアウトとは(受け取る側の視点で整理)

アーンアウト(earn-out/条件付取得対価)とは、M&A実行後の一定期間内に、対象会社・事業が合意した業績目標を達成した場合に、初期対価に加えて追加の対価が支払われる仕組みです。(出典: M&Aキャピタルパートナーズ、確認日2026-07-21)

売り手・買い手の間で会社の将来価値の見方に差があるとき、その価格ギャップを埋める役割を果たします。売り手にとっては「将来の成長を価格に上乗せできる上振れ余地」、買い手にとっては「将来リスクを抑えるヘッジ手段」になります(出典: 日本M&Aセンター、確認日2026-07-21)。

主にスタートアップ、業績変動が大きい企業、異業種参入案件など、将来価値の評価が難しいM&Aで使われます(出典: ZIDAI M&A、確認日2026-07-21)。

契約でよく定められる要素は次の通りです(出典: みつきコンサルティング、確認日2026-07-21)。

  • 評価指標:売上高・EBITDA・営業利益・特定KPI など
  • 評価期間:一般に2〜3年
  • 算定式:目標超過額の◯%、上限(キャップ)ありが多い
  • その他:再売却の可否、支払時期など

受け取る側にとっての要点は、「初期対価」と「後から確定する追加対価」で課税のされ方が変わり得るということです。この点を次章以降で詳しく見ていきます。

アーンアウトはM&Aの対価設計の一部です。売却全体の流れや価格の決まり方から確認したい方は、後述の関連記事もあわせてご覧ください。

【売り手・個人】アーンアウト対価は雑所得?譲渡所得?

結論として、売り手が個人の場合、アーンアウトの追加対価は「雑所得(総合課税)」に該当するケースが多いと整理されています。(出典: 森・濱田松本法律事務所ニュースレター2021マクサス、確認日2026-07-21)

なぜ株式譲渡益(譲渡所得)に含められないのか

株式を売却した際の譲渡益は、通常「譲渡所得」として申告分離課税(20.315%)の対象になります。しかしアーンアウトの追加対価は、クロージング(株式譲渡)の時点では金額が確定していません。業績目標を達成できるかどうかは将来の結果次第だからです。

所得税には、収入は権利が確定した時点で認識するという考え方(権利確定主義)があります。追加対価はクロージング時点で確定していないため、そのときの譲渡所得に含めることが難しく、後から確定した時点で改めて所得として認識する整理になります(出典: マクサス、確認日2026-07-21)。

所得区分には3つの考え方がある

アーンアウト対価の所得区分については、次の3説が論点として挙げられます(出典: パラダイムシフト岩見直茂 公認会計士税理士事務所、確認日2026-07-21)。

  1. 譲渡所得 … 株式譲渡の対価の一部とみる考え方
  2. 一時所得 … 偶発的・一時的な所得とみる考え方
  3. 雑所得 … 上記いずれにも当てはまらない所得

アーンアウト対価は株式譲渡契約に基づいて支払われ、株式譲渡と密接に関連するため一時所得には該当しにくく、実務上は③雑所得となるケースが多いと整理されています。ただし、この区分は契約内容や事実関係によって変わり得るため、断定はできません。

例外:譲渡所得と判断された裁決事例もある

一方で、アーンアウト条項が「実質的に達成がほぼ確実」といえる内容だった事案について、譲渡時点で対価を(譲渡所得として)認識すべきと判断された裁決事例があるとされています(国税不服審判所 平成29年の裁決とされるもの。出典: 税理士.ch 等、確認日2026-07-21)。

つまり、条項の設計次第で課税区分・タイミングが変わりうるということです。なお、この裁決の正確な事実関係・判断理由は原典で確認する必要があり、本記事では一般的な傾向として紹介するにとどめます。個別の判断は必ず専門家にご確認ください。

譲渡所得と雑所得で手取りはどれだけ変わるか(税率とシミュレーション)

同じ金額の対価でも、譲渡所得として課税されるか雑所得として課税されるかで、手取りに大きな差が生じます。 まず税率を整理します。

区分

課税方式

税率

通常の株式譲渡益(譲渡所得)

申告分離課税

20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

アーンアウト追加対価(雑所得)

総合課税

所得税は累進で最高45%+住民税10%(+復興特別所得税)。合計で最高約55%

(出典: マクサスM&Aキャピタルパートナーズ、確認日2026-07-21)

総合課税は他の所得と合算した累進課税のため、対価が大きいほど高い税率帯が適用されます。株式譲渡益の分離課税(一律20.315%)とは仕組みが根本的に異なります。

手取りシミュレーション(追加対価1億円を受け取った場合の概算)

わかりやすさのため、追加対価1億円をそれぞれの区分で受け取ったと仮定した概算を示します。実際は他の所得との合算・各種控除・累進の刻みで変動するため、あくまで税率差のインパクトを示すイメージです。

前提

譲渡所得(20.315%)の場合

雑所得(最高税率帯・約55%)の場合

追加対価

1億円

1億円

概算の税額

約2,032万円

約5,500万円

概算の手取り

約7,968万円

約4,500万円

手取りの差

約3,468万円少ない

※上記は税率差を示すための単純化した概算です。実際の税額は所得金額・控除・累進税率の適用により異なります。正確な試算は税理士にご依頼ください。

このように、区分が変わるだけで手取りが数千万円規模で動く可能性があります。だからこそ、アーンアウト条項は「いくら受け取れるか」だけでなく「どの区分で課税され、手元にいくら残るか」まで踏まえて設計する必要があります。

課税されるタイミングと確定申告の考え方

アーンアウト対価(雑所得)の課税タイミングは、原則として「追加対価の受領=支払いが確定した年分」です。 業績目標の達成が確定し、支払額が確定した時点で、その年の雑所得として確定申告する整理が実務上定着しています(出典: マクサス、確認日2026-07-21)。

実務上の流れを整理すると、次のようになります。

  1. クロージング年:初期対価を株式譲渡益(譲渡所得)として申告分離課税で申告する
  2. アーンアウト評価期間(一般に2〜3年):業績目標の達成状況を待つ
  3. 追加対価の確定・受領年:確定した追加対価を、その年分の雑所得として総合課税で申告する

つまり、株式譲渡から数年後に、まとまった雑所得が発生し、その年の他の所得と合算して高い税率帯で課税される可能性があります。受領年に納税資金を確保しておくこと、その年の他の所得とのバランスを事前に見ておくことが重要です。

なお、前述のとおり条項設計によっては譲渡時点で全額を譲渡所得として認識すべきと判断される余地もあります。課税タイミングも一律ではないため、申告方法は必ず税理士に確認してください。

【売り手・法人】アーンアウト対価の税務

売り手が法人の場合、アーンアウトの追加対価は譲渡益として益金に認識され、確定した事業年度の他の益金と合算して法人税等が課税されます。(出典: M&Aキャピタルパートナーズ、確認日2026-07-21)

法人の場合は、個人のような「譲渡所得か雑所得か(分離課税か総合課税か)」という区分の問題は生じにくいのが特徴です。追加対価が確定した事業年度の益金として、通常の法人所得の計算に組み込まれます。

ただし、どの事業年度で益金認識するか(確定時期の判断)は契約内容によって変わり得るため、法人であっても顧問税理士との事前確認が欠かせません。

【買い手】アーンアウト対価の税務と会計処理

買い手側の扱いは、税務と会計で整理が分かれます。売り手(個人オーナー)にとっては直接の負担ではありませんが、交渉相手の事情を理解するうえで押さえておくと役立ちます。

買い手の税務処理

買い手が支払ったアーンアウト対価は、原則として損金不算入となり、株式の取得原価に加算されます。(出典: M&Aキャピタルパートナーズ、確認日2026-07-21)その事業年度の費用として一度に落とせるわけではない点がポイントです。

会計処理:日本基準とIFRSで大きく異なる

会計上の扱いは、適用する会計基準によって大きく変わります。主に上場企業・IFRS適用企業で問題になる論点ですが、対比で理解すると分かりやすくなります。

項目

日本基準(企業結合会計基準)

IFRS(IFRS3)

取得時の扱い

条件付取得対価は取得時点では原則計上せず、交付が確実になった時点で処理

取得日に条件付対価を公正価値で評価し、M&A対価に含めてのれんを計算

追加対価が確定したとき

取得原価に追加算入し、のれんを追加計上。過年度分の償却額を確定年度に一括費用処理(遡及的な調整)

のれんは事後に変動させない

取得日後の価値変動

公正価値の変動は当期損益(PL)に計上

(出典: マクサスパラダイムシフト日本M&Aセンター、確認日2026-07-21)

数値例でみる違い(マクサス掲載例)

M&A対価500・時価純資産300・アーンアウト条件100・取得日の公正価値60・のれん償却5年、という前提での整理は次の通りです(出典: マクサス、確認日2026-07-21)。

  • 日本基準:取得時(X0期)はのれん200。目標達成のX2期に100を追加認識し、過年度分の償却を遡って調整するため、その期の償却費が大きく増える
  • IFRS:取得時(X0期)にのれん260(500+60-300)とアーンアウト負債60を計上。以後、公正価値の変動を各期のPLで評価損益として処理し、のれんは動かさない

このように、日本基準は「のれんが後から増える」、IFRSは「取得時にのれんが確定し、その後の変動はPLに出る」という違いがあります。買い手の財務諸表への影響を理解するうえで重要な論点です。

税負担を踏まえてアーンアウト契約で確認すべきこと

アーンアウトは「追加でいくら受け取れるか」だけでなく、「どの区分・税率で課税され、手取りがいくらになるか」まで見て設計することが重要です。 契約段階で以下を確認しておきましょう。

  • 所得区分の見込み:受け取る追加対価が雑所得(総合課税)となる前提か、譲渡所得と整理できる余地があるか
  • 受領年の納税資金:受領年に高い税率帯で課税される前提で、納税資金を確保できるか
  • 受領年の他の所得:総合課税は他の所得と合算されるため、受領年に所得が集中しないか
  • 仲介手数料の算定基礎:アーンアウト対価が仲介会社の成功報酬(レーマン方式)の取引金額に含まれるか。契約書で要確認
  • アーンアウト期間中の関与:役員として残る・個人保証が継続するなど、期間中の立場と税務・リスクの関係

これらは契約書の文言や個別事情で結論が変わります。必ず税理士・弁護士に契約ドラフトの段階で相談し、税負担を織り込んだ条件交渉を行ってください。

こんな場合はアーンアウトに注意が必要/向いているケース

アーンアウトを慎重に検討したほうがよいケース

  • 手取りを最大化したいオーナー … 雑所得課税になると通常の株式譲渡益より税負担が重くなり得る
  • 売却後すぐに引退したい … 評価期間中の業績に対価が連動するため、関与を求められることがある
  • 業績目標の達成をコントロールしにくい事業 … 買い手の経営方針次第で目標未達となり、追加対価を受け取れないリスクがある
  • 納税資金に余裕がない … 受領年にまとまった税負担が発生する可能性がある

アーンアウトが有効に働きやすいケース

  • 将来の成長性に自信があり、価格に反映させたいオーナー … 目標達成で上振れ対価を得られる
  • 売り手と買い手で価格評価に差があり、初期対価だけでは折り合わない案件
  • 一定期間、経営に関与し続ける意向がある … 評価期間中の業績づくりに主体的に関われる

いずれのケースでも、課税区分と手取りのシミュレーションを事前に行い、条件を数字で比較することが判断の前提になります。

よくある質問(FAQ)

Q. アーンアウト対価は必ず雑所得になりますか?

いいえ、必ずではありません。売り手が個人の場合は雑所得(総合課税)と整理されるケースが多いものの、条項が「実質的に達成が確実」と評価される内容だと譲渡所得と判断された裁決事例もあります。契約内容・事実関係で結論が変わるため、税理士にご確認ください。

Q. なぜ最初の株式譲渡益と同じ20.315%にならないのですか?

クロージング時点で追加対価が確定しておらず、権利確定主義のもとで譲渡所得に含めにくいためです。後から確定した時点の雑所得(総合課税)となる整理が実務上多く見られます。

Q. アーンアウト対価にはいつ課税されますか?

原則として、業績目標の達成が確定し支払額が確定した年分に課税されます。株式譲渡から数年後にまとまった雑所得が発生し得るため、受領年の納税資金の確保が重要です。

Q. 法人が売り手の場合も雑所得の問題はありますか?

法人の場合は個人のような分離課税・総合課税の区分の問題は生じにくく、追加対価は確定した事業年度の益金として法人税等の対象になります。

Q. 買い手が支払ったアーンアウト対価は費用にできますか?

原則として損金不算入で、株式の取得原価に加算されます。会計上は日本基準とIFRSで扱いが大きく異なります。

Q. アーンアウト対価は仲介会社の成功報酬の対象になりますか?

契約によって異なります。アーンアウト対価が成功報酬(レーマン方式)の取引金額に含まれるかは、仲介契約書の文言を必ず確認してください。

まとめ:受領前に税理士へ、契約段階で手取りを試算する

アーンアウト受領時の税務・会計処理の要点を振り返ります。

  • 売り手個人の追加対価は雑所得(総合課税・最高約55%)となるケースが多く、通常の株式譲渡益(20.315%)より重くなり得る
  • 課税タイミングは原則追加対価が確定・受領した年分
  • 条項設計次第で譲渡所得と判断された裁決事例もあり、区分は一律ではない
  • 売り手法人は益金認識、買い手は損金不算入・取得原価加算。会計は日本基準とIFRSで大きく異なる
  • 契約段階で手取りをシミュレーションし、税理士・弁護士に相談することが最重要

アーンアウトは上振れの魅力がある一方で、税負担が手取りを大きく左右します。契約に署名する前に、区分・タイミング・受領年の資金繰りまで含めて専門家と確認してください。

免責:本記事は一般的な情報提供であり、税務・法務の助言ではありません。個別の課税区分・税額・会計処理の判断は、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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参照ソース一覧(確認日:2026-07-21)

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