M&Aの専任契約とは仲介会社1社だけと独占的に契約する形態、非専任契約は複数社と同時に契約できる形態です。 「どちらを選ぶべきか」は、情報漏洩リスクの許容度・信頼できる仲介会社を見つけているか・自社の案件規模の3つで判断が分かれます。
会社売却を考え始めると、仲介会社との契約形態の選択は避けて通れません。専任契約と非専任契約にはそれぞれ明確なメリット・デメリットがあり、安易に決めると「情報が出回って買い手から敬遠された」「1社に縛られて時間だけが過ぎた」という事態に陥ります。
この記事でわかること:
- 専任契約と非専任契約の違いと3つの類型
- それぞれのメリット・デメリット比較表
- 自社に合う契約形態を判断するチェックリスト
- 中小M&Aガイドライン第3版で強化された専任条項・テール条項の規律
- 契約書で必ず確認すべきチェックポイント一覧
この記事は、会社の売却を検討中で、これから仲介会社と契約を結ぶ段階にある中小企業オーナー・経営者の方に向けて書いています。
専任契約と非専任契約とは?基本的な違いを整理
M&A仲介会社と結ぶ契約形態は、大きく「専任契約」と「非専任契約(一般契約)」の2つに分かれます。不動産取引の媒介契約に似た分類ですが、M&A業界では不動産ほど法的な定義が整備されていないため、会社ごとに契約内容が異なる点に注意が必要です。

3つの契約類型
実務上、M&A仲介の契約形態は以下の3つに分類されます。
契約類型 | 契約先の数 | 自ら見つけた買い手との直接取引 | 特徴 |
|---|---|---|---|
専属専任契約 | 1社のみ | 不可 | もっとも拘束力が強い。仲介会社への依存度が最も高い |
専任契約 | 1社のみ | 可能 | 仲介は1社に絞るが、自社独自のルートでの取引は残せる |
非専任契約(一般契約) | 複数社可 | 可能 | 柔軟だが情報管理の負担が大きい |
(出典:クラリスキャピタル「M&Aの専任契約・一般契約の違い」、確認日2026-04-15)
注意: M&A業界では「専任契約」と呼ぶ場合に「専属専任」と「専任」のどちらを指すかが会社によって異なります。契約前に「自分で見つけた買い手との直接取引は可能か」を必ず確認してください。
【比較表】専任契約と非専任契約のメリット・デメリット
結論から言えば、情報管理の安全性を重視するなら専任契約、マッチングの選択肢を広げたいなら非専任契約が基本方針です。以下の比較表で全体像を把握してください。

比較項目 | 専任契約 | 非専任契約 |
|---|---|---|
情報漏洩リスク | ◎ 低い(窓口が1つ) | △ 高い(複数社に情報提供) |
「出回り案件」化のリスク | ◎ 低い | ✕ 高い(複数社がノンネーム情報を流通) |
買い手候補の探索範囲 | △ 1社のネットワークに依存 | ◎ 複数社が並行して探索 |
仲介会社のサポート優先度 | ◎ 高い(成功報酬が確約) | △ 低い(他社に取られるリスクあり) |
オーナーの工数負担 | ◎ 軽い(やり取り1社のみ) | ✕ 重い(複数社との並行管理) |
仲介会社選びの失敗リスク | ✕ 高い(途中変更が困難) | ◎ 低い(他社へ切り替えやすい) |
重複紹介のリスク | ◎ なし | △ 同一候補に複数社から紹介される恐れ |
成功報酬の水準 | ◎ 標準的 | △ 割増になるケースがある |
コンペ形式の活用 | ✕ 不可 | ◎ 競争で好条件を引き出せる可能性 |
テール条項のリスク | △ 解約後も手数料義務が残りうる | △ 同様(複数社分発生の恐れ) |
(出典:fundbook、日本M&Aセンター、TRANBI、URVグローバルグループ、バトンズ、クラリスキャピタル各社の公開情報を統合。確認日2026-04-15)
専任契約の5つのメリット
専任契約の最大のメリットは、情報管理の一元化と「出回り案件」化の防止です。 特に従業員や取引先への情報漏洩を避けたい経営者にとっては、非専任よりも専任が適しています。
1. 情報漏洩リスクの大幅な軽減
M&Aの検討が従業員や取引先に漏れると、離職・取引停止といった実害につながります。窓口を1社に絞ることで、「どの情報を・誰に・いつ開示するか」を一元的にコントロールできます。
2. 「出回り案件」化を防げる
複数の仲介会社が同時にノンネーム情報(企業名を伏せた概要情報)を市場に流すと、「あの会社は売りに出ている」と業界内で認識されるリスクがあります。こうした「出回り案件」は優良な買い手候補から敬遠される傾向があり、最終的な売却条件にも悪影響を及ぼします。
3. 仲介会社の優先度が上がる
専任契約は成功報酬の獲得が他社と競合しないため、仲介会社にとって工数をかけるインセンティブが強くなります。結果として、より積極的な買い手探索や丁寧なサポートを受けられる傾向があります。
4. やり取りの工数が少ない
本業を続けながらM&Aを進める中小企業オーナーにとって、複数の仲介担当者との進捗確認・資料作成の重複は大きな負担です。1社とのやり取りに集約できるのは実務的なメリットです。
5. 重複紹介を回避できる
同じ買い手候補企業に複数の仲介会社から紹介が行われると、交渉の前提が崩れ、買い手側の印象も悪化します。専任契約ならこの事態は原則として発生しません。
(出典:fundbook「M&Aのアドバイザリー契約とは?」、日本M&Aセンター「M&Aのアドバイザリー契約とは?」、確認日2026-04-15)
専任契約の4つのデメリット・リスク
専任契約の最大のリスクは、仲介会社選びに失敗した場合のリカバリーが難しいことです。 特に「テール条項」の存在を理解しないまま契約すると、解約後にも手数料を請求される事態になりかねません。
1. 仲介会社のミスマッチで時間を浪費するリスク
1社に絞った仲介会社の担当者との相性が合わない、業界の知見が不足している、といった場合でも、契約期間中は他社に切り替えづらくなります。「なんとなく大手だから安心」で専任契約を結び、後悔するケースは少なくありません。
2. マッチングの長期化
1社のネットワークだけで買い手候補を探すため、その会社のネットワークに自社の業種・規模にマッチする相手がいない場合、成約までに想定以上の時間がかかるリスクがあります。
3. 途中解約のハードル
専任契約の解除には、契約書に定められた手続き(通知期間の遵守、違約金の有無の確認等)が必要です。契約終了まで待つか、合意解約を目指すかの判断は慎重に行う必要があります。
4. テール条項による解約後の手数料リスク
多くの専任契約にはテール条項が含まれています。これは、契約終了後の一定期間内に、その仲介会社が紹介した買い手候補とM&Aが成立した場合、元の仲介会社にも成功報酬を支払う義務があるという条項です。
テール条項については、この記事の後半で詳しく解説します。さらに詳細な情報は「M&Aのテール条項とは?期間の目安・注意点・トラブル事例を徹底解説」もあわせてご確認ください。
(出典:M&Aサクシード、URVグローバルグループ、TRANBI、よくわかるM&A、ゴールドオンライン各社記事。確認日2026-04-15)
非専任契約の4つのメリット
非専任契約の最大のメリットは、マッチング候補の拡大と仲介会社の比較検討が同時にできることです。 まだ信頼できる仲介会社を見つけていない段階では、有力な選択肢になります。
1. 買い手候補の選択肢が広がる
複数の仲介会社がそれぞれのネットワークで買い手を探すため、1社では見つからなかった候補企業と出会える可能性が高まります。
2. 仲介会社のミスマッチリスクを分散できる
実際に仲介業務を依頼してみないとわからない部分(担当者の対応力・業界理解度・報告の頻度等)を、複数社で並行して確認できます。
3. 複数の視点から提案を受けられる
バリュエーション(企業価値評価)の見方や買い手候補の提案内容が会社によって異なるため、複数の提案を比較検討して判断の精度を上げることができます。
4. 優良案件ではコンペ形式で好条件を引き出せる
自社が高い収益力や希少性のある事業を持っている場合、複数社に競わせることで、より有利な売却条件を引き出せる可能性があります。
(出典:日本M&Aセンター、TRANBI、fundbook、URVグローバルグループ、メディカルプラス。確認日2026-04-15)
非専任契約の5つのデメリット・リスク
非専任契約の最大のリスクは「出回り案件」化と情報漏洩です。 特にM&A検討の事実が業界内に広まると、取り返しがつかなくなります。
1. 情報漏洩リスクの増大
複数社に自社の財務情報・経営課題・売却希望条件を提供する必要があるため、情報管理が格段に難しくなります。漏洩が発生した場合に「どの仲介会社から漏れたのか」の特定も困難です。
2. 「出回り案件」化のリスク
複数の仲介会社が並行してノンネーム情報を流通させると、「この会社は経営が厳しいのでは?」「買い手が見つからない案件なのでは?」と懸念され、有力な買い手候補から敬遠されるリスクがあります。一度「出回り案件」と認識されると、元に戻すのは極めて困難です。
3. 各社からのサポート優先度が下がる
非専任の場合、仲介会社にとって「自社が動いても他社に持っていかれるリスク」があるため、人材リソースの配分が後回しになりやすい傾向があります。
4. オーナーの工数負担が増大する
複数の担当者への資料提供・進捗報告・面談対応を並行して行う必要があり、本業との両立が難しくなるケースがあります。
5. 重複紹介によるトラブル
同一の買い手候補企業に、複数の仲介会社から紹介が行われるリスクがあります。買い手側にも混乱を与え、「管理が甘い売り手」という印象を持たれかねません。
(出典:fundbook、日本M&Aセンター、TRANBI、バトンズ、URVグローバルグループ、クラリスキャピタル。確認日2026-04-15)
【判断チェックリスト】自社に合うのは専任?非専任?
自社にとってどちらが適切かは、以下の5つの項目で判断できます。 すべてに正解があるわけではありませんが、多くの項目で「専任向き」に該当する場合は専任契約、「非専任向き」に該当する場合は非専任契約を検討してください。

チェック項目 | 専任契約が向いている | 非専任契約が向いている |
|---|---|---|
信頼できる仲介会社を見つけているか | すでに信頼できる1社がある | まだ比較検討段階 |
情報漏洩の影響度 | 漏洩すると致命的(従業員離職・取引先離脱のリスク大) | ある程度コントロール可能 |
業界の狭さ | 業界が狭く、情報が回りやすい | 業界が広く、匿名性を保ちやすい |
本業との両立 | 本業が忙しく、複数社対応の余力がない | M&A対応に十分な時間を割ける |
案件の希少性・収益性 | 標準的な規模・収益力 | 高収益・希少性があり、コンペで好条件を狙える |
こんな企業には専任契約がおすすめ
- 従業員・取引先への情報漏洩を絶対に避けたい企業
- 信頼できる仲介会社をすでに見つけ、担当者との相性も確認済みの企業
- 業界が狭く、「出回り案件」化が命取りになりうる企業(製造業の特定ニッチ分野、地域密着型の事業など)
- 本業が多忙で、複数社との並行対応に工数を割けないオーナー
こんな企業には非専任契約がおすすめ
- まだ信頼できる仲介会社を見つけていない・比較検討中の企業
- 高い収益力や成長性を持ち、複数の買い手候補からの競争入札で好条件を引き出したい企業
- 比較的大きな規模の案件で、複数社のネットワークを活用したい企業
非専任でも注意すべきケース
非専任を選ぶ場合でも、以下の点に注意してください。
- 情報管理体制の整備が不可欠:NDA(秘密保持契約)の内容を各社で統一し、情報開示範囲を自分で管理する
- ノンネーム情報の流通範囲を各社と事前に合意する:無制限に情報を流されないよう、開示先の範囲を限定する取り決めを行う
- 重複紹介の防止策を講じる:各社に対して「どの企業に打診するか」を事前にネームクリア(社名開示の許可)で管理する
仲介会社の選び方全般については「M&A仲介会社の選び方ガイド」で詳しく解説しています。
テール条項に注意:専任契約を解約した後のリスク
テール条項は、専任契約を検討する際に最も注意すべきポイントのひとつです。 「契約を解除したから安心」と思っていたら、数ヶ月〜数年後に前の仲介会社から成功報酬を請求された、というトラブルが実際に起きています。
テール条項とは
テール条項とは、仲介契約の終了後も一定期間(テール期間)内に、その仲介会社が紹介した買い手候補企業とのM&Aが成立した場合、元の仲介会社に成功報酬を支払う義務を定めた契約条項です。
実際に起きているトラブル事例
トラブルの類型 | 内容 |
|---|---|
ロングリストへの掲載のみで請求 | 候補リスト(ロングリスト)に名前があっただけで「紹介した実績がある」と主張される |
二重払いの発生 | 別の仲介会社経由で成約した場合でも、前任の仲介会社から手数料を請求される |
NDAへのテール条項組み込み | 秘密保持契約にテール条項が意図的に組み込まれ、気づかないまま署名してしまう |
ネームクリアが不徹底 | 仲介会社がどの買い手に打診したかを売り手が把握できず、後から広範なテール条項の適用を主張される |
(出典:ゴールドオンライン「テール条項のリスク」、みつきコンサルティング「テール期間条項の解説」、確認日2026-04-15)
中小M&Aガイドライン第3版での規律強化
2024年8月に改訂された中小M&Aガイドライン第3版では、テール条項に関する規律が大幅に強化されました。
規律内容 | 詳細 |
|---|---|
対象範囲の限定 | ロングリスト・ショートリスト段階の掲載は対象外。少なくともネームクリアが行われ、売り手に対して紹介された買い手に限定すべき |
テール期間の上限 | 最長でも2〜3年以内が目安 |
重要事項説明の義務化 | 契約前にテール条項の内容を書面で説明すること |
非専任での請求制限 | 専任条項が設けられていない場合、「テール条項を根拠として手数料を請求すべきではない」(第3版で新設) |
(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」2024年8月30日公表。確認日2026-04-15)
※テール条項を含む契約条項の解釈や交渉については、M&A実務に精通した弁護士への相談をおすすめします。
テール条項の仕組み・期間・トラブル対策については「M&Aのテール条項とは?期間の目安・注意点・トラブル事例を徹底解説」でさらに詳しく解説しています。
契約書の確認ポイント一覧【チェックリスト】
仲介契約書を締結する前に、以下のポイントを必ず確認してください。 仲介会社が用意する契約書をそのまま署名するのではなく、不明点は質問し、必要に応じて弁護士やM&A専門家のアドバイスを受けることを強くおすすめします。

専任条項のチェックポイント
- 契約形態の種類:「専属専任」か「専任」かを明確にする。自ら見つけた買い手との直接取引が可能かどうか
- 契約期間:一般的には6ヶ月〜1年(出典:TRANBI、クラリスキャピタル)。長すぎないか、更新条件は何か
- 中途解約の条件:解約の申し出方法、通知期間、違約金の有無・金額
- 自動更新条項の有無:契約期間満了後に自動更新される規定がないか
テール条項のチェックポイント
- テール期間の長さ:ガイドラインでは2〜3年以内が目安。それを超える場合は交渉の余地あり
- 対象範囲:ネームクリア済みの買い手に限定されているか。ロングリスト段階の候補まで含まれていないか
- 紹介実績の記録方法:仲介会社がどの企業に打診したかの記録を売り手にも共有する仕組みがあるか
報酬体系のチェックポイント
- 着手金の有無と金額:相場は50万〜200万円程度。着手金無料の会社も増加傾向
- 中間報酬の条件:基本合意時に発生するケースが多い。成功報酬の10〜20%、または100万〜250万円程度が目安
- 成功報酬の算定基準:レーマン方式の適用対象が「株式価格」か「移動総資産」か「企業価値」かで金額が大きく変わる
- 最低報酬額:小規模案件の場合、最低報酬の設定が手数料負担に大きく影響する
その他のチェックポイント
- 直接交渉制限条項:候補先企業との直接の連絡・交渉を制限する条項の範囲と条件
- 秘密保持の範囲:NDA(秘密保持契約)の適用範囲と期間。テール条項がNDAに組み込まれていないか
- 報告義務:仲介会社から売り手への定期報告の頻度・内容の取り決め
(出典:M&Aロイヤルアドバイザリー「アドバイザリー契約の解説」、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」。確認日2026-04-15)
仲介契約全般の注意点については「M&A仲介契約の注意点・チェックリスト|締結前に確認すべき9条項を徹底解説」もあわせてご確認ください。
報酬体系の相場:専任と非専任で費用は変わるか
報酬体系の基本構造は専任・非専任で共通ですが、非専任の場合は成功報酬が割増になるケースがある点に注意してください。
M&A仲介の一般的な報酬体系
費目 | 相場 | 備考 |
|---|---|---|
着手金 | 50万〜200万円程度 | 無料の会社も増加傾向 |
中間報酬 | 成功報酬の10〜20%、または100万〜250万円程度 | 基本合意時に発生するのが一般的 |
月額報酬(リテイナーフィー) | 50万〜200万円程度 | 設定しない会社も多い |
成功報酬 | レーマン方式で段階的(5%〜1%) | 算定基準の違いに要注意 |
(出典:M&Aロイヤルアドバイザリー。確認日2026-04-15)
非専任契約で費用が高くなる理由
非専任契約の場合、仲介会社にとっては成約の確実性が下がる(他社に取られるリスクがある)ため、成功報酬を通常より高く設定するケースが報告されています。具体的な割増率は公開されていませんが、契約前に費用条件の詳細を確認することが重要です。
M&A仲介の手数料体系の詳細は「M&A仲介会社の手数料比較ガイド」で解説しています。
中小M&Aガイドライン第3版が定める専任条項の規律
中小企業庁が2024年8月に改訂した中小M&Aガイドライン第3版では、専任条項に関する留意点が明示されています。 登録M&A支援機関はこのガイドラインの遵守が義務付けられているため、仲介会社を選ぶ際の判断材料になります。
ガイドラインの主な規定
規定内容 | 詳細 |
|---|---|
専任条項自体は否定していない | 専任条項の設定は認められている。ただし留意点が複数明示されている |
テール条項との関係 | 専任条項がない場合、テール条項を根拠とした手数料請求は行うべきでない(第3版で新設) |
直接交渉制限条項 | 候補先企業との直接交渉を制限する場合、範囲・条件を明確にすべき |
手数料の透明性 | 手数料・提供業務内容の事前開示を強化 |
重要事項説明の義務化 | 契約前に専任条項・テール条項等の重要事項を書面で説明すること |
(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」2024年8月30日公表、経済産業省プレスリリース。確認日2026-04-15)
仲介会社がガイドラインを遵守しているか確認する方法
中小企業庁が運営するM&A支援機関登録制度に登録されている仲介会社は、ガイドラインの遵守が義務付けられています。登録の有無は中小企業庁の公式サイトで確認できます。
ただし、登録があるからといってすべての契約条件が適正であるとは限りません。契約書の個別条項は自分の目で確認し、不明点は専門家に相談することが大切です。
中小M&Aガイドラインの全体像は「中小M&Aガイドラインとは?第3版の改訂ポイント・活用法をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
専任契約で失敗した場合のリカバリー手順
「専任契約を結んだが、仲介会社の対応に不満がある」「成約の見込みが立たない」という場合は、以下の手順で対応を検討してください。
ステップ1:契約書の精読
まず、業務委託契約書を読み直し、以下を確認します。
- 中途解約の条件(通知期間・違約金の有無)
- テール条項の対象範囲とテール期間
- 契約期間の残りと更新条件
ステップ2:セカンドオピニオンの取得
M&Aの専門家(別のM&Aアドバイザー、弁護士等)に、現在の契約内容と状況についてセカンドオピニオンを求めます。専任契約中であっても、相談自体は多くの場合問題ありません(ただし、契約書に「他の支援機関への相談を禁止する」条項がないか確認してください)。
ステップ3:仲介会社との協議
いきなり解約通知を送るのではなく、まず現在の仲介会社に対して不満・改善要望を伝え、対応の改善を求めます。担当者の変更で解決するケースもあります。
ステップ4:正式な解約手続き
改善が見込めない場合は、契約書に定められた手続きに従って正式に解約の意思を通知します。その際、テール条項の適用範囲を明確にし、「どの買い手候補にネームクリア済みか」の記録を書面で残しておくことが重要です。
(出典:よくわかるM&A「M&A仲介契約の解除方法」。確認日2026-04-15)
注意: 契約の解除に関する判断は、弁護士やM&Aの専門家に相談の上で進めることを強くおすすめします。自己判断での解約は、違約金やテール条項のトラブルにつながるリスクがあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 専任契約の一般的な契約期間はどのくらいですか?
一般的には6ヶ月〜1年です(出典:TRANBI、クラリスキャピタル)。契約期間終了後は更新するか、別の仲介会社と新たに契約するかを選べます。契約前に「自動更新条項」が含まれていないかを確認することが重要です。
Q. 専任契約中に他の仲介会社に相談してもよいですか?
セカンドオピニオンとしての相談は多くの場合問題ありませんが、契約書に「他の支援機関への相談を禁止する」条項が含まれている場合があります。契約前に確認し、こうした条項が含まれている場合は交渉して削除を求めることも検討してください。
Q. 非専任契約のほうが買い手が見つかりやすいですか?
複数社が並行して探索するため、候補企業の「数」は増えやすい傾向があります。ただし、「出回り案件」化による買い手候補の離脱リスクや、各社のサポート優先度の低下を考慮すると、候補の数が増える=成約しやすいとは限りません。 情報管理を徹底した上で非専任を選ぶ必要があります。
Q. 途中で専任から非専任(またはその逆)に切り替えられますか?
契約期間中の切り替えは原則困難です。契約期間の満了時に更新せず、新たな契約形態で別の仲介会社と契約するのが一般的な方法です。ただし、仲介会社との合意があれば契約条件の変更も不可能ではありません。
Q. 不動産の媒介契約と同じように考えてよいですか?
同じ感覚で考えるのは危険です。不動産業界では宅建業法により3つの媒介契約(専属専任・専任・一般)が法定され、契約期間(最長3ヶ月)・報告義務・レインズ登録義務が明確に定められています。一方、M&A仲介業界には同等の法規制がなく、契約内容は各社の契約書に依存します。仲介会社が用意した契約書を鵜呑みにせず、必ず自分で確認してください。
(出典:URVグローバルグループ「M&Aの仲介 専任と非専任 どっちが有利?」、クラリスキャピタル「M&Aの専任契約・一般契約の違い」。確認日2026-04-15)
Q. 登録M&A支援機関ならテール条項のトラブルは起きませんか?
登録M&A支援機関は中小M&Aガイドラインの遵守が義務付けられていますが、具体的な契約条件はすべて自動的にガイドライン準拠になるわけではありません。登録の有無は信頼性の一つの指標ですが、契約書の個別条項は必ず確認してください。
まとめ:契約形態の選択は「情報管理」と「信頼関係」で決まる
専任契約と非専任契約のどちらが優れているかは一概には言えません。自社の状況に応じて適切な契約形態を選ぶことが重要です。
判断のポイントを再整理すると:
- 情報漏洩リスクを最小限にしたい → 専任契約
- 信頼できる仲介会社が見つかっている → 専任契約
- まだ比較検討中で、仲介会社を見極めたい → 非専任契約
- 高収益案件でコンペ形式を活用したい → 非専任契約
どちらの契約形態を選ぶにしても、テール条項・直接交渉制限条項・報酬算定基準の3点は契約前に必ず確認してください。 不明な点があれば、弁護士やM&Aの専門家に契約書のレビューを依頼することをおすすめします。
