M&A時の役員退職慰労金:節税スキームの仕組み・計算方法・注意点ガイド
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M&A時の役員退職慰労金:節税スキームの仕組み・計算方法・注意点ガイド

M&A時の役員退職慰労金を使った節税スキームを、功績倍率法による計算方法・株主総会手続き・税務否認リスクまで実務ベースで解説。退職金額別の手取りシミュレーションで、売却手取りを最大化するための判断材料を提供します。

M&A比較レビュー編集部2026/6/18分で読める

株式譲渡によるM&Aでは、売却対価の一部を役員退職慰労金として受け取ることで、株式譲渡益だけで受け取る場合より税負担を大幅に軽減できます。中小企業M&Aで広く活用されている節税スキームですが、「退職金を大きくすればするほど得」という単純な話ではなく、適正額の算定・正しい手続き・実質的な退任が三位一体で求められます。

この記事では、以下の内容を実務ベースで解説します。

  • 退職金スキームの税務上の仕組みと計算方法(国税庁公式情報ベース)
  • 功績倍率法による適正退職金額の算出ルール
  • 退職金額別の手取りシミュレーション(損益分岐点も明示)
  • 株主総会手続きから支払タイミングまでの実行手順
  • 税務否認リスクとNG行動の具体例

対象読者: 自社株の売却を検討している中小企業オーナーで、売却後の手取りを最大化したい方。すでにM&Aの交渉が始まっている段階でも、スキームの判断材料として活用できます。

本記事に記載の税務情報は2026年6月時点の情報をもとにしています。実際の税額・適用可否は個別の状況によって大きく異なります。必ず税理士にご相談のうえ判断してください。

役員退職慰労金とは──M&Aで注目される理由

M&A時の役員退職慰労金スキームの仕組み:株式譲渡と退職所得の分割イメージ

役員退職慰労金とは、取締役・監査役・執行役員などが退任する際に、会社がその在任期間中の功労に対して支給する退職金のことです。一般従業員の退職金が就業規則に基づくのとは異なり、定款の規定または株主総会の決議に基づいて支給されます(会社法第361条)。

M&Aの文脈で注目されるのは、株式譲渡によって会社を売却する際、オーナー社長がその退職のタイミングで退職金を受け取ることができる点です。退職金として受け取った金額は「退職所得」として課税され、通常の給与所得や株式譲渡所得とは異なる優遇税制が適用されます。

退職所得が有利な2つの理由:

  1. 退職所得控除が使える — 勤続年数が長いほど控除額が大きくなる。20年超の場合は「800万円+70万円×(年数−20年)」
  2. 課税対象が1/2になる — 控除後の金額をさらに1/2にした額が課税退職所得(勤続年数5年以下の役員等を除く)

この2段階の優遇措置により、退職金として受け取った場合の実質税率は、株式譲渡益の一律20.315%を下回るケースが多くなります。これが「退職金スキーム」と呼ばれる節税手法の核心です。

退職金スキームの税務上の仕組み

M&Aにおける退職金スキームは、売り手・買い手の双方にメリットをもたらします。

売り手(オーナー社長)のメリット

株式譲渡益はすべて一律20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税の合計)で課税されます。一方、退職金として受け取った部分には退職所得の優遇税制が適用されるため、勤続年数が長く退職金額が適切な範囲であれば、実効税率が5〜15%程度に抑えられることがあります。

たとえば、売却対価3億円のうち5,000万円を退職金として受け取り、残る2.5億円を株式譲渡益とした場合、退職金部分の税率が10%程度であれば、5,000万円をすべて株式譲渡益として受け取るより500〜600万円程度の節税効果が生まれる可能性があります(個別試算が必要です)。

買い手(買収側)のメリット

役員退職慰労金は法人税法上の損金算入が可能です。退職金を支給した期に損金として計上できるため、会社の税負担が減ります。株主総会の決議等により退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度に損金算入するのが原則ですが、実際に支払った事業年度に損金経理した場合はその支払事業年度への算入も認められます(国税庁 No.5208、確認日: 2026-06-02)。

スキーム実行のイメージ

  1. M&Aの交渉が進み、株式譲渡の方針が固まる
  2. 売り手オーナーが退任するタイミングで退職金を受け取る(M&A前または後)
  3. 株式売却益と退職所得を合算した手取りで節税効果を試算
  4. 税理士の確認のもとで株主総会決議→支払→申告

退職所得の計算方法(国税庁公式情報)

退職所得の計算は、国税庁のタックスアンサー(No.1420)に基づきます。計算式は以下のとおりです。

課税退職所得金額 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2

退職所得控除額(勤続年数別)

勤続年数

退職所得控除額

20年以下

40万円 × 勤続年数(最低80万円)

20年超

800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)

計算例(勤続30年の場合): 800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円の控除

勤続5年以下の役員等は要注意

役員等としての勤続年数が5年以下の場合、1/2計算の優遇措置が適用されません(「特定役員退職手当等」国税庁 No.2737)。この場合、退職金全額(控除後)が課税対象となるため、節税効果が大幅に低下します。

退職金額別・手取りシミュレーション

退職所得の実効税率と株式譲渡所得税率の比較シミュレーション

実際にどの程度の節税効果があるか、具体的な数値で確認しましょう。以下は勤続年数30年・退職所得控除1,500万円を前提とした試算です。株式譲渡の場合の税率(20.315%)との比較も示します。

退職金額

課税退職所得

所得税+住民税(概算)

手取り

実効税率

株譲渡との差

1,500万円

0円

0円

1,500万円

0%

▲305万円節税

3,000万円

750万円

約138万円

約2,862万円

約4.6%

▲471万円節税

5,000万円

1,750万円

約604万円

約4,396万円

約12.1%

▲412万円節税

1億円

4,250万円

約1,888万円

約8,112万円

約18.9%

▲143万円節税

1.5億円

6,750万円

約3,287万円

約1.17億円

約21.9%

+214万円の逆転

※退職所得控除1,500万円(勤続30年)前提。税率は概算値。実際の税額は復興特別所得税・各種控除の適用状況により異なります。

このシミュレーションから読み取れること:

  • 退職金が控除額の範囲内(この例では1,500万円以内)であれば、税金ゼロで受け取れる
  • 退職金が1億円程度までは株式譲渡(20.315%)より実効税率が低い傾向がある
  • 退職金が1億円を超えてくると、株式譲渡所得との実効税率の差が縮まり、1.5億円程度を超えると逆転するケースがある
  • 「退職金を最大化すれば必ず得」という単純な図式ではない

上記は勤続30年の試算です。勤続年数が短いほど控除額が少なくなり、損益分岐点が下がります。必ずご自身の勤続年数・月額報酬・退職金規程をもとに税理士と試算してください。

適正な退職金額の算定──功績倍率法の実務ルール

功績倍率法による役員退職慰労金の計算式:月額報酬×勤続年数×功績倍率

退職金スキームを活用するには、税務上「適正額」の範囲内に収める必要があります。高額すぎると過大役員退職給与として損金算入が否認されるリスクがあります(法人税法第34条第2項)。

功績倍率法(最も一般的な算定方法)

実務でもっとも広く使われているのが以下の計算式です。

役員退職慰労金 = 退職時の直近月額報酬 × 役員勤続年数 × 功績倍率

役職別の功績倍率の目安

税務実務では、昭和55年の判例(東京地裁)などを踏まえた以下の倍率が参考値として使われています。ただし、あくまで目安であり、同業他社の事例に基づく個別判断が必要です。

役職

功績倍率の目安

代表取締役(創業者)

3.0〜3.4倍

代表取締役

3.0倍

専務取締役

2.4倍

常務取締役

2.2倍

平取締役

1.8倍

監査役

1.6倍

出典: 国税庁基本通達 第7款 退職給与(確認日: 2026-06-02)

計算例:

  • 最終月額報酬100万円 × 勤続30年 × 功績倍率3.0 = 9,000万円
  • 最終月額報酬80万円 × 勤続20年 × 功績倍率3.0 = 4,800万円
  • 最終月額報酬60万円 × 勤続15年 × 功績倍率3.0 = 2,700万円

功労加算について

特に功績が顕著な役員に対し、功績倍率法で算出した金額に上乗せ支給する「功労加算」が認められることがあります。一般的な目安は功績倍率法による算出額の10〜30%程度ですが、50%を超える加算は税務調査で問題になるケースがあります。過大な功労加算は損金否認リスクを高めるため、税理士との慎重な協議が必要です。

1年当たり平均法(補完的手法)

功績倍率法と合わせて、同業他社の1年あたり退職金の平均額×勤続年数で計算する「1年当たり平均法」も活用されます。どちらの算定でも「不当に高額」と判断されないことが重要です。

株式譲渡 vs 事業譲渡で退職金の扱いはどう違うか

M&Aの手法によって、退職金スキームの活用しやすさは大きく異なります。

比較項目

株式譲渡

事業譲渡

経営者の退職

退任タイミングで退職金支給が可能。スキーム活用に最適

経営者が残るケースが多く、スキーム活用は限定的

スキームの活用

最も活用しやすい

難しいケースが多い

従業員への影響

雇用関係が継続。勤続年数・退職金規程もそのまま引き継ぎ

雇用関係が一旦終了。転籍前に精算または買い手が引き継ぎ

退職金の原資

譲渡前の会社の純資産から支払う

買い手が新たに負担するケースも

税務処理

売り手会社の損金として算入可能

個別に要確認

結論: 退職金スキームを最大限活用したい場合は、株式譲渡スキームが前提です。事業譲渡の場合は、経営者が退任しないケースが多く、退職金として受け取れる状況を作るのが難しくなります。

M&A時の退職金スキーム実行手順

退職金スキームを安全に実行するための標準的な手順です。各ステップで専門家の確認を得ながら進めることが重要です。

ステップ1|役員退職慰労金規程の整備・確認

退職金規程が整備されていると、税務調査での否認リスクが低下します。規程がない場合は、M&A決定前(できれば半年以上前)に整備しておくことを強く推奨します。

規程に盛り込むべき主な内容:

  • 退職金の支給対象(役職)
  • 退職金の算定方式(功績倍率法の計算式)
  • 役職別の功績倍率
  • 支給時期・方法
  • 功労加算の条件(設ける場合)

規程のM&A直前の急造は「恣意的」と判断されるリスクがあります。

ステップ2|適正な退職金額の決定(税理士との協議必須)

功績倍率法で適正額を算定します。過大でも過小でも問題が生じます。

  • 過大: 損金否認リスク(法人税の追徴課税)
  • 過小: 節税効果が十分に得られない

同業他社の退職金水準・月額報酬・勤続年数を変数に入れて、個別にシミュレーションします。

ステップ3|株主総会での決議と議事録作成

定款に退職金支給の定めがない場合、株主総会の決議が法的に必要です(会社法第361条)。決議なしに支給すると、金額が適正であっても否認リスクが発生します。

必須確認事項:

  • 株主総会の招集手続き・通知(定款所定の方法で)
  • 議事録の書面作成・押印・保管(必ず紙で残す)
  • 金額を明確に決定(「相当額を取締役会に一任」は否認リスクあり)

ステップ4|支払タイミングの決定(M&A前 vs M&A後)

タイミング

メリット

注意点

株式譲渡前に支給

会社の純資産が減少するため、株式売却価格が下がる(その分、退職金を多く受け取る構造)。法人の損金に計上できる

株式価格への影響を買い手と事前に調整が必要

株式譲渡後に支給

退任のタイミングに合わせて支給。新株主(買い手)が関与する

金額・タイミングについて買い手との合意が前提

実務的には、M&Aの交渉過程で買い手と退職金の扱いについて合意しておくことが一般的です。

ステップ5|資金繰りの確認

役員退職金の支払原資は会社の現預金です。借入で賄うスキームは現実的でなく、また税務上も問題になる可能性があります。現時点で会社に十分な現金があるか確認することが前提条件です。

ステップ6|実質的な退任の徹底

退任後に経営に関与し続けると、退職金が「給与」として課税されるリスクがあります。特に税務調査では「実質的退職かどうか」が厳しくチェックされます。

税務否認リスクと回避ポイント

退職金スキームの最大のリスクが税務否認です。以下のケースで税務調査の指摘を受けやすくなります。

否認リスクが高い状況

リスク要因

内容

実質的退職なし

表面上退任しているが、実際の経営判断に関与し続けている

過大な金額

同業他社比較で不当に高額と判断された

手続き不備

株主総会決議なし・議事録の形式不備・金額の事後決定

支給タイミングの問題

退任前にM&Aと同時に支給し、実質的に株式売却の対価の一部とみなされる

規程の事後作成

M&A直前に規程を急いで作成した(恣意的と判断されるリスク)

実質的退職が否定されるNG行動

以下の行動は、退任後も「実質的に経営している」とみなされる可能性があります。

  • 退任後も取締役会に出席・発言する
  • 銀行融資交渉に代表者として関与する
  • 採用面接で最終決定権を持つ
  • 週複数回出社し、専用個室・決裁権を持つ
  • 登記上は退任しても「最高顧問」「会長顧問」として重要な経営判断を行う

特に、M&Aのクロージング後に一定期間「アドバイザー」として関与を求められるケースでは、その関与の内容と報酬の性格を事前に明確にしておく必要があります。

こんな経営者に向いている / 向いていないケース

退職金スキームが特に有効なケース

以下の条件が多く当てはまるほど、節税効果が高くなる傾向があります。

  • 役員勤続年数が20年以上 — 退職所得控除額が大きく、1/2課税の効果も最大化される
  • 月額報酬が一定水準以上(50万円以上) — 功績倍率法で算出できる退職金額が大きくなる
  • 退職後に完全に経営から離れる意向がある — 実質的退職の要件を満たしやすい
  • 会社に十分な現金がある — 退職金の支払原資が確保されている
  • 退職金規程が事前に整備されている — 税務調査のリスクが低い

退職金スキームを活用しにくいケース

以下に該当する場合は、スキームの活用に制限があるか、効果が限定的になります。

  • 役員勤続年数が5年以下 — 特定役員退職手当の適用で1/2課税の優遇がなくなる
  • M&A後も会社に残って経営に関与する予定 — 実質的退職の要件を満たせない
  • 退職金の算定根拠となる月額報酬が低い — 功績倍率法で計算しても退職金額が小さくなる
  • 会社の資金繰りが厳しい — 退職金の支払原資が確保できない
  • 事業譲渡スキームを採用している — 株式譲渡に比べてスキーム活用が難しい
  • 退職金規程が整備されていない、かつM&A直前に作成しようとしている — 税務上の否認リスクが高い

向いているか向いていないかは、最終的には個別の状況によります。「自分は活用できるか」を判断するためにも、M&A検討の早い段階で税理士に相談することが重要です。

2025年税制改正(ミニマムタックス)との関係

令和7年度税制改正により、2025年1月1日から年間の合計所得金額が3.3億円を超える超高所得者を対象とした所得税の最低負担制度(いわゆる「富裕層ミニマムタックス」)が施行されています(出典: 財務省 令和7年度税制改正大綱、2026年6月確認)。株式譲渡益を含む合計所得が3.3億円を超えると、実質的な税率が最大27.5%程度(所得税22.5%+住民税5%)まで引き上げられる設計です。

この改正が退職金スキームに与える影響については、次の点を正確に理解しておく必要があります。

適用条件を正確に把握すること:

  • 適用されるのは「年間所得が3.3億円を超える場合」のみ
  • 計算式: (年間所得 − 3.3億円)× 22.5%
  • 中小企業の売却規模では、多くのオーナーがこの基準を下回る

中小企業オーナーへの実際の影響:

年間所得3.3億円というのは、相当規模の売却(数十億円規模)を行う場合に初めて関係する水準です。年商数億円規模の中小企業の株式売却では、多くのケースでこの改正は直接関係しません。

ただし、大型M&Aを検討している場合は、売却益がミニマムタックスの対象になると株式譲渡の実質税率が27.5%に近づくため、退職金スキームの相対的な節税価値が高まる可能性があります。この点は税理士・M&A専門家と個別に確認してください。

税理士・M&A仲介への相談タイミング

退職金スキームは、知識として知っているだけでは不十分です。実行するタイミングと相談するタイミングを誤ると、節税どころか税務否認のリスクが生じます。

専門家への相談の優先順位

相談先

担当する判断

最適な相談タイミング

税理士(M&A・相続対応経験あり)

退職金額の適正範囲・税額シミュレーション・申告

M&A検討開始時(売却の意思決定と同時)

M&A仲介会社

スキームの交渉における買い手との調整・タイミング設計

仲介会社選定時に退職金スキームへの対応確認

弁護士

株主総会議事録・株式譲渡契約書での退職金条項の確認

契約書作成時

早期相談が重要な理由

退職金規程の整備・月額報酬の水準・実質的退任の準備は、M&Aの交渉が始まってから急いでも遅いケースがあります。

  • 退職金規程がない場合は最低でも1年以上前から整備しておくのが理想
  • 月額報酬が低い場合は引き上げを検討するが、直前の急激な引き上げは「計画的な節税」と指摘されることも

M&A仲介会社を選ぶ際は、退職金スキームの設計について経験のある税理士を紹介・連携しているかも確認ポイントの一つです。

M&A仲介会社の選び方については「M&A仲介会社おすすめ比較ガイド」もご参照ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 退職金の支払原資が会社にない場合はどうすればいいですか?

退職金の支払原資がない場合、スキームの実行は困難です。会社の現預金・内部留保が不足している場合に借入で賄う方法は、現実的でなく税務上も問題が生じる可能性があります。売却前に計画的に内部留保を積み上げておくか、退職金の規模を支払可能な範囲に抑えることが現実的な選択肢です。

Q2. 退職金スキームは事業承継(親族承継)でも使えますか?

はい、活用できます。後継者への株式の贈与・相続による事業承継においても、先代オーナーが退任するタイミングで退職金を受け取ることが可能です。ただし、事業承継税制(特例措置)との組み合わせは複雑になるため、税理士への事前相談が必須です。

Q3. 功績倍率3.0倍を超えることはできますか?

功績倍率3.0倍はあくまで「目安」であり、絶対的な上限ではありません。同業他社の事例において3.0倍を超える退職金支給が認められているケースもあります。ただし、倍率を高く設定するほど「過大退職給与」として否認されるリスクが高まります。税理士が同業他社比較を行ったうえで判断することが必要です。

Q4. M&A後も「相談役」として関与を求められた場合、退職金を受け取れますか?

退職後の関与の性格・報酬内容によって異なります。実質的に経営に関与しない顧問・アドバイザー的な関与であれば、退職金受給と矛盾しない場合もあります。ただし、実質的な経営判断・意思決定に関与し続ける場合は、退職金が「給与」とみなされるリスクがあります。関与の内容と報酬体系を事前に明確にし、弁護士・税理士に確認することを強くおすすめします。

Q5. 退職金の税務申告はどのように行うか?

退職金を受け取った場合、通常は会社が源泉徴収を行い、受給者は「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出します。退職所得は他の所得と分離して課税され、原則として確定申告は不要ですが、他の所得との関係で確定申告が必要になるケースもあります。詳細は税理士に確認してください。

Q6. M&Aを検討中です。いつ税理士に相談すれば良いですか?

M&Aを検討し始めた段階、できるだけ早く相談することをおすすめします。 退職金規程の整備・月額報酬の設定・退職金スキームの設計は、売却交渉が始まってからでは間に合わないことがあります。早期に相談するほど選択肢が広がります。

まとめ:退職金スキームを活用するための3つのポイント

M&A時の役員退職慰労金スキームは、正しく実行すれば売却後の手取りを大幅に増やせる有効な手法です。ただし、次の3点を必ず確認してください。

1. 「大きければ大きいほど得」ではない

退職金が過大になると、実効税率が株式譲渡の20.315%を超えるケースがあります。適正額の算定と個別シミュレーションが必須です。

2. 手続きと実質的退任が前提条件

株主総会決議・議事録作成・退職金規程の整備はセットで必要です。また、退任後の実質的な経営関与を断つことも重要な要件です。

3. 早期に税理士と連携する

退職金規程の整備・月額報酬の設計は、M&A交渉が始まる前から計画的に行う必要があります。売却意思が固まった段階で、M&A経験のある税理士に相談を始めてください。

税務処理・退職金の適正額については、必ず税理士・税務の専門家にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスを構成するものではありません。

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