会社分割とは?分社型・分割型・吸収分割・新設分割の違いをわかりやすく解説
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会社分割とは?分社型・分割型・吸収分割・新設分割の違いをわかりやすく解説

会社分割(分社型・分割型/吸収・新設)の定義・4類型の違い・事業譲渡との使い分け・手続きの流れ・税務上の適格要件・費用の目安まで、中小企業オーナー向けにわかりやすく解説します。

M&A比較レビュー編集部2026/5/208分で読める

会社分割とは、会社が展開する事業の一部または全部を、別の企業に権利義務ごとまとめて移転するM&A・組織再編手法です。事業を「売る」のではなく「切り出して移す」イメージで、手続きの根拠は会社法に基づきます。

この記事でわかること:

  • 会社分割の基本定義と「分社型・分割型」「吸収・新設」4類型の違い
  • 事業譲渡・株式譲渡との使い分け基準
  • 手続きの流れ・所要期間・費用の目安
  • 税務上の適格要件(2025年税制改正を含む)
  • 労働契約承継法(従業員への手続き)
  • 会社分割に向いている企業・向いていない企業

会社を売りたい・事業を切り出したいと検討中の中小企業オーナー、または将来の事業承継を視野に入れているオーナー経営者を対象に解説します。

会社分割の基本定義──「切り出して移す」組織再編手法

会社分割は、会社が持つ事業に関する権利義務(契約・資産・負債・従業員など)を、他の法人へ包括的に承継させる手続きです(会社法第2条第29号・第30号)。

「事業の一部または全部を丸ごと別の会社に移す」と理解するとわかりやすいでしょう。事業を移す際に権利義務を一括でまとめて移転できる点が、個別に手続きが必要な事業譲渡との最大の違いです。

会社分割と事業譲渡・株式譲渡の法的な位置づけ

手法

法的性質

権利義務の移し方

会社分割

組織再編行為(会社法)

包括承継(一括移転)

事業譲渡

取引上の契約

個別承継(個々に手続き必要)

株式譲渡

取引上の契約

株主が変わるだけ(会社の権利義務は変わらない)

株式譲渡が「会社ごとそのまま売る」手法であるのに対し、会社分割は「特定の事業だけを切り出して移す」手法です。中小企業のM&Aでは約9割が株式譲渡で行われており(中小企業庁「中小企業白書2021年版」)、会社分割は少数派ですが、グループ再編・事業承継・経営再建では重要な選択肢になります。

会社分割の概念図:事業を切り出して別の会社に移転するイメージ

会社分割の4類型──2つの軸で整理する

会社分割を理解する際の混乱はほぼ、「軸が2つある」ことへの理解不足から生じます。会社分割には2つの独立した分類軸があり、それぞれの組み合わせで4類型が生まれます。

軸1:承継先の状態(吸収分割 vs 新設分割)

吸収分割は、すでに存在している会社(承継会社)に事業を移転する方法です。

新設分割は、新たに設立する会社(新設会社)に事業を移転する方法です。

吸収分割

新設分割

承継先

既存の法人

新たに設立する法人

手続き

吸収分割契約書の作成

新設分割計画書の作成

活用シーン

他社への事業売却、グループ内再編

子会社の独立設立、スピンオフ

軸2:対価の受取人(分社型分割 vs 分割型分割)

分社型分割(物的分割)は、移転した事業の対価(株式等)を分割会社自身が受け取る方法です。

分割型分割(人的分割)は、対価を分割会社の株主が直接受け取る方法です。

分社型分割(物的分割)

分割型分割(人的分割)

対価の受取人

分割会社

分割会社の株主

分割後の関係

分割会社と承継会社が親子会社

分割会社と承継会社が兄弟会社

一言で言うと

「子会社ができる」

「兄弟会社ができる」

会社法上の扱い

明示規定あり(正式に規定)

規定廃止(実務上は分社型分割+配当で実現)

2×2マトリクス:4類型の組み合わせ

吸収分割

新設分割

分社型(物的分割)

①分社型吸収分割

②分社型新設分割

分割型(人的分割)

③分割型吸収分割

④分割型新設分割

さらに複数の会社が共同で新設会社を設立する共同新設分割もあります。

実務でよく使われるのは①と②です。特に子会社を独立させたい場合や、グループ内の事業を整理したい場合に活用されます。

ポイント:2006年の会社法施行により、分割型分割(人的分割)は会社法上の正式な規定が廃止されました。現在、分割型分割の実務上の効果は「分社型分割+剰余金の現物配当」の組み合わせで実現されます(出典:M&Aキャピタルパートナーズ公式サイト、2026年5月確認)。

会社分割の2×2マトリクス:分社型・分割型と吸収・新設の組み合わせ

分社型分割と分割型分割を詳しく比較

2つの軸のうち、「分社型か分割型か」の選択が実務・税務の両面で特に重要です。

項目

分社型分割(物的分割)

分割型分割(人的分割)

対価の受取人

分割会社

分割会社の株主

分割後の関係

親子会社関係

兄弟会社関係

会社法上の明示規定

あり

なし(2006年廃止。実務上は分社型+配当で代替)

税務区分

物的分割

人的分割

課税対象者(非適格時)

分割会社のみ

分割会社+株主(みなし配当が発生する可能性)

適格要件の取りやすさ

相対的に取りやすい

「案分型要件」が加わるため複雑

主な活用シーン

グループ内の子会社独立、事業の外部売却

完全なスピンオフ、複数の後継者への事業分割

案分型要件(分割型分割のみに課せられる追加要件)とは、「承継会社から交付される対価が、各株主の持株比率に応じて按分されること」を指します。この要件がクリアできない場合は適格扱いにならず、株主に課税負担が生じます。

会社分割と事業譲渡の違い──どちらを選ぶか

中小企業オーナーがM&Aを検討するとき、会社分割か事業譲渡かの選択は実務的に最も重要な判断の一つです。

項目

会社分割

事業譲渡

法的性質

組織再編行為(会社法)

取引上の契約

権利義務の移し方

包括承継(一括移転)

個別承継(個々に手続き必要)

対価

株式が中心(現金も可)

現金が中心

消費税

非課税

課税対象(土地除く)

従業員の承継

包括承継(個別同意は不要。ただし労働契約承継法の手続きは必要)

個別同意が必要

許認可

一部承継可能な場合あり

原則として再取得が必要

債権者の扱い

債権者保護手続き(官報公告・個別催告)が必要

債務譲渡に債権者の同意が必要

簿外債務リスク

承継されてしまうリスクあり

選択承継のため回避可能

税優遇(適格要件)

あり(法人税の繰延べ等)

なし

手続きの複雑さ

複雑(登記・公告・労働者通知等)

比較的シンプル

(出典:M&Aキャピタルパートナーズ公式サイト・M&A総合研究所公式サイト・fundbook公式サイト、2026年5月確認)

「消費税が非課税」は大きなポイント

会社分割では消費税が課税されません。一方、事業譲渡では原則として消費税がかかります(土地・有価証券等の非課税資産を除く)。事業規模が大きいほど消費税の差が取引金額に与える影響は大きくなるため、この点は見落とせません。

会社分割を選ぶべきケース

  • 従業員を一括で移転したい(個別同意取得の負担を下げたい)
  • 関連する契約・取引関係をまとめて移したい
  • 株式を対価として受け取るグループ再編を行いたい
  • 適格要件を満たして税務コストを最小化したい

事業譲渡を選ぶべきケース

  • 簿外債務リスクを回避したい(承継する資産・負債を選べる)
  • 許認可の再取得が不要なビジネスモデルである
  • 現金での対価受け取りを優先したい
  • 手続きのシンプルさを重視する
  • 相手が法人以外(個人事業主へ売却など)

中小企業のM&Aでは、手続きのシンプルさや簿外債務リスクの回避を理由に事業譲渡が選ばれることが多いです。会社分割は大企業・上場企業のグループ再編や、事業承継時の複雑な構造設計に適しています。

会社分割のメリット

1. 資金不要で買収・承継できる

承継会社が新株を発行して対価とするため、現金での買収資金を用意する必要がありません。グループ内の組織再編では特にこのメリットが大きく活用されます。

2. 権利義務の包括承継でスムーズに移転できる

契約・雇用・資産・負債が一括で移転するため、個別の同意取得・手続きが不要です。取引先契約の一つひとつを引き継ぐ作業が不要になる点は、事業規模が大きいほど効果を発揮します。

3. 消費税が非課税

事業譲渡と異なり、会社分割は消費税の課税対象になりません(消費税法上の「資産の譲渡等」に該当しないため)。

4. 適格要件を満たせば税務コストを抑えられる

一定の要件を満たす適格分割では、資産・負債が簿価で移転し、譲渡損益への課税が繰り延べられます。非適格となる事業譲渡・会社売却と比べて税負担が大きく軽減される場合があります。

5. 選択と集中・シナジー獲得がしやすい

コア事業に経営資源を集中させながら、非コア事業だけを切り出して他社に承継させる用途に向いています。業種が似た会社に事業を移転することでシナジー効果も見込みやすいです。

6. 事業承継の設計自由度が高い

後継者が複数いる場合に事業ごとに分割してそれぞれに承継させる、または特定事業だけを後継者の会社に移転するなど、事業承継の構造設計に活用できます。

会社分割のデメリット・注意点

1. 簿外債務を引き継ぐリスクがある

包括承継の性質上、分割対象の事業に関連する潜在的な債務(未払い残業代・訴訟リスク・租税債務等)を引き継いでしまう可能性があります。事前のデューデリジェンス(DD)を徹底することが不可欠です。

2. 株主総会の特別決議が必要(通常)

会社分割には原則として株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)が必要です。ただし、以下の場合は省略できます:

  • 簡易分割:分割する事業の資産が総資産の5分の1以下の場合 → 分割会社の株主総会を省略可
  • 略式分割:承継会社が分割会社の議決権の90%以上を保有する場合 → 当該会社の株主総会を省略可

3. 手続きが複雑で時間がかかる

登記申請・官報公告・債権者保護手続き・労働者への通知など、多数の手続きが必要です。通常は完了まで2〜6ヶ月かかります。

4. 税務処理の難解さ

適格要件の判定ミスは多額の税負担につながります。支配関係の程度によって要件が異なり、分割型分割ではさらに複雑な案分型要件が加わります。必ず税理士・弁護士への相談が必要です。

5. 株価下落リスク(上場企業の場合)

上場企業が新株を発行して対価とする場合、株式の希薄化により株価下落が起きる可能性があります。

6. 許認可は原則として再取得が必要

業種によっては(建設業・飲食業・不動産業など)、承継会社での許認可の再取得が必要なケースがあります。事前の確認が不可欠です。

会社分割(吸収分割)の手続きフロー図

会社分割が活用されるシーン

シーン1:グループ再編・持株会社化

大企業・上場企業が事業部門を子会社として独立させる際に、分社型吸収分割または分社型新設分割が活用されます。グループ内で経営資源を再配置したい場合に広く使われます。

シーン2:選択と集中(不採算事業の切り離し)

コア事業にリソースを集中させるため、不採算事業や非中核事業だけを切り出して他社に移転または売却するケースです。

シーン3:事業承継の設計

  • 後継者が複数いる場合:事業A・事業Bを別々の会社に分割し、それぞれの後継者に承継
  • 後継者が1人の場合:後継者が引き継ぐ特定事業だけを分割して承継会社に移転し、残りは別処理

シーン4:経営再建・企業再生

採算のとれる優良事業だけを新会社に分割して再出発させ、不採算事業や負債を元会社に残す手法です。ただし、債権者の利益を害する目的での利用は違法となりうるため注意が必要です。

シーン5:スピンオフ(完全独立)

分割型分割(分社型分割+配当の組み合わせ)を使い、特定事業を完全に独立した兄弟会社として切り離す手法です。2017年度の税制改正でスピンオフ型分割の適格要件が整備され、活用例が増えています。

会社分割の手続きの流れ

吸収分割の手続きフロー

  1. 吸収分割契約書の作成(分割会社・承継会社の両当事者で締結)
  2. 取締役会での承認決議
  3. 事前開示書類の備置(分割の効力発生日の2週間前から本店に備置)
  4. 労働者への事前通知(労働契約承継法に基づく第5条協議・第7条措置・第2条通知)
  5. 株主総会での特別決議(3分の2以上の賛成 ※簡易・略式分割は省略可)
  6. 反対株主の株式買取請求への対応
  7. 債権者保護手続き(官報公告 + 知れたる債権者への個別催告。異議申立期間:1ヶ月以上)
  8. 効力発生日(登記申請)
  9. 事後開示書類の備置(効力発生日から6ヶ月間)

新設分割の手続きフロー

  1. 新設分割計画書の作成(分割会社が単独で作成)
  2. 取締役会での承認決議
  3. 事前開示書類の備置
  4. 労働者への事前通知(労働契約承継法に基づく)
  5. 株主総会での特別決議
  6. 反対株主の株式買取請求への対応
  7. 債権者保護手続き
  8. 新設会社の設立登記(分割会社の変更登記と同時申請)
  9. 事後開示書類の備置

所要期間の目安

分割の種類

所要期間の目安

通常の吸収分割・新設分割

2〜6ヶ月

簡易分割(分割資産が総資産の5分の1以下)

最短2〜3週間(分割会社の株主総会省略可)

略式分割(承継会社が90%以上の議決権保有)

最短2〜3週間(承継会社の株主総会省略可)

(出典:M&A総合研究所公式サイト「会社分割の手続きとスケジュール」、2026年5月確認)

労働契約承継法──従業員への手続き(重要)

会社分割では、労働契約承継法(2000年施行)に基づき、従業員への手続きが義務付けられています。この手続きを怠ると、会社分割の有効性に影響する可能性があります。

主要な3つの手続き

手続き

対象

内容

第5条協議

分割対象事業に主として従事する労働者

分割について個別協議を行う

第7条措置

全従業員

分割に関する情報提供・意見聴取

第2条通知

対象労働者

分割計画書・契約書の作成後、2週間以内に書面で通知

従業員の承継はどうなるか

  • 分割対象事業に主として従事する従業員:原則として承継会社に移籍(異議申立は可能)
  • 分割対象外の業務の従業員:原則として分割会社に残る
  • 両社への従事がある従業員:分割計画書・契約書の記載内容によって強制移籍の可能性あり

厚生労働省「労働契約承継法概要」(https://www.mhlw.go.jp/)に詳細な手続きが示されています。労務の専門家(社会保険労務士・弁護士)への確認を強くおすすめします。

税務上の適格要件(組織再編税制)

会社分割の税務処理は「適格分割か非適格分割か」で大きく異なります。

適格分割と非適格分割の違い

区分

資産・負債の移転価額

分割会社への課税

適格分割

簿価で移転(譲渡損益は発生しない)

課税なし(繰延べ)

非適格分割

時価で移転(譲渡損益が発生)

法人税が課される

非適格分割では、時価と簿価の差額に対して法人税が課されます。特に含み益のある資産(不動産・有価証券等)を多く抱える会社にとっては、非適格分割は大きな税負担になります。

適格要件(支配関係の段階別)

支配関係

主な適格要件

完全支配関係(100%)

①金銭等不交付要件(対価に金銭を使わない)②継続保有要件

支配関係(50%超〜100%未満)

上記+③主要資産・負債の移転④従業員80%以上の継続従事⑤事業継続要件

支配関係なし(50%以下)

上記すべて+⑥事業関連性要件⑦規模同等性要件または経営参画要件

支配関係が強いほど(完全支配に近いほど)適格要件は取りやすく、完全に無関係な会社間の分割では最も厳しい要件が課せられます。

分割型分割特有の追加要件(スピンオフ的な分割)

分割型分割(人的分割)では、上記に加えて以下の要件が必要です。

  • 非支配継続要件:分割後も新設・承継会社の支配関係を保たないこと
  • 株主の継続保有要件:交付された株式を一定期間保有し続けること

⚠️ 2025年4月の税制改正(必ず確認を)

2025年4月1日以降に開始する事業年度から、適格分割における欠損金(繰越欠損金)の承継に制限が加わりました。欠損金を抱える事業を分割で移転する場合は、旧来の計算とは異なる取り扱いになります(出典:M&A総合研究所公式サイト、2026年1月更新情報)。

重要:税務の適格要件の判定は個別案件によって異なり、判断を誤ると多額の課税負担が発生します。必ず税理士・弁護士に相談してください。財務省・国税庁の最新公式資料の確認もあわせておすすめします。

適格分割と非適格分割の税務フロー図

会社分割にかかる費用の目安

会社分割そのものにかかる費用は主に以下の3種類です。M&A仲介手数料とは別に発生する点に注意してください。

登録免許税

手続き

登録免許税

吸収分割(分割会社の変更登記)

3万円

吸収分割(承継会社)資本金増加分

増加した資本金額 × 0.7%(最低3万円)

新設分割(新設会社の設立登記)

新会社の資本金額 × 0.7%(最低3万円)

不動産移転が伴う場合

不動産価額 × 2%(適格要件充足時は軽減措置あり)

官報公告費用

公告の種類

費用の目安

分割公告のみ

7〜8万円程度

決算公告も含む場合

約17万円前後

専門家費用

専門家

費用の目安

司法書士(登記代行)

20〜30万円程度

弁護士・税理士(全体サポート)

案件規模・難易度による(数十万〜数百万円以上)

M&A仲介会社・FA

別途成功報酬(案件規模により大きく異なる)

(出典:M&A総合研究所公式サイト・レバレジーズM&Aアドバイザリー公式サイト、2026年5月確認)

登録免許税や公告費用は比較的固定的な費用ですが、不動産を含む分割では不動産取得税・登録免許税の負担が大きくなります。事前にシミュレーションすることをおすすめします。

こんな企業に向いている・向いていない

会社分割が向いているケース

以下のような状況・目的がある企業に適しています。

  • グループ内の組織再編を行いたい:子会社設立・持株会社化・グループ会社間の事業移転
  • 事業承継の設計が複雑な場合:複数の後継者に異なる事業を分けて承継させたい
  • 従業員を一括で移転したい:取引先との契約・雇用関係をまとめて承継したい
  • 消費税コストを下げたい:事業譲渡ではなく非課税で事業を移転したい
  • 株式を対価として受け取れる状況にある:現金よりも株式での対価が目的に合う
  • 適格要件を満たせる見込みがある:税務コストの抑制を優先したい

事業譲渡・その他の手法の方が向いているケース

以下の状況では、会社分割より他の手法を検討する方がよい場合があります。

  • 簿外債務リスクを回避したい:承継する資産・負債を選びたい(事業譲渡が有利)
  • 手続きのシンプルさを優先したい:株主総会・債権者保護手続き等を避けたい
  • 現金での受け取りを希望:対価が株式のみだと換金性の問題が生じる可能性
  • 中小企業で規模が小さく簡易スキームで十分:株式譲渡で全体を売る方がシンプル
  • 許認可の引き継ぎが多い:許認可の再取得負担が大きい業種(建設業・飲食業等)
  • 急いで手続きを完了させたい:通常2〜6ヶ月かかるため、短期完了が難しい場合

中小企業のM&Aにおける現実:中小企業白書(中小企業庁2021年版)によれば、中小企業M&Aのスキームは約9割が株式譲渡です。会社分割は手続きの複雑さ・税務の専門性が高く、専門家サポートなしでは難易度が高い手法です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 会社分割に消費税はかかりますか?

かかりません。 会社分割は消費税法上の「資産の譲渡等」には該当しないため、課税対象になりません。この点は事業譲渡(課税対象)との大きな違いです。ただし、不動産移転が伴う場合は不動産取得税が別途かかります。

Q2. 会社分割で従業員は必ず新会社に移りますか?

原則として、分割対象事業に主として従事する従業員は承継会社に移籍します。ただし、従業員は異議申立てを行い、分割会社に残ることを主張できます。手続きは労働契約承継法に基づいて進める必要があり、個別協議・情報提供・書面通知が義務づけられています。

Q3. 適格要件を満たさないとどうなりますか?

非適格分割になると、分割する事業の資産・負債が時価で移転したものとみなされ、時価と簿価の差額に対して法人税が課されます。含み益のある不動産・有価証券等を多く抱える事業では、非適格になると多額の納税義務が発生する場合があります。

Q4. 会社分割と事業譲渡、中小企業ではどちらが多いですか?

中小企業のM&Aでは事業譲渡の方が多く選ばれる傾向があります。手続きのシンプルさと承継範囲の選択可能性(簿外債務リスク回避)が主な理由です。会社分割は主にグループ再編・大企業・上場企業の組織再編、または複雑な事業承継設計が必要なケースで活用されます(出典:中小企業庁「中小企業白書2021年版」)。

Q5. 会社分割はどの会社形態でも使えますか?

株式会社・合同会社・合名会社・合資会社は分割会社になれます。承継会社・新設会社も同様の会社形態が対応します。ただし、有限会社は会社分割の当事者になれない点に注意が必要です。

Q6. 吸収分割と新設分割、どちらを選ぶべきですか?

既存の会社に事業を移転する場合は吸収分割、新たに会社を設立して事業を移転する場合は新設分割です。外部の会社に事業を売却する際は吸収分割が必要になります。グループ内で子会社を新たに独立させる場合は新設分割が多く使われます。

Q7. 2025年の税制改正で何が変わりましたか?

2025年4月1日以降に開始する事業年度から、適格分割における繰越欠損金の承継に制限が加わりました。欠損金を持つ事業を会社分割で移転する際の取り扱いが変わったため、従来の計算や前例を基にした判断は危険です。最新の税制は必ず税理士に確認してください。

専門家への相談をおすすめするタイミング

会社分割は法務・税務・労務が複雑に絡み合う手続きです。以下のタイミングで専門家に相談することをおすすめします。

タイミング

相談する専門家

確認すべき内容

分割スキームの検討段階

M&A仲介会社・FA・弁護士

会社分割が最適なスキームか、他手法との比較

適格要件の判定

税理士・税務専門の弁護士

適格分割の要件を満たせるか、課税シミュレーション

労働者への対応方針

社会保険労務士・弁護士

労働契約承継法に基づく手続きの設計

登記申請

司法書士

分割登記の申請手続き

許認可の確認

行政書士・専門の弁護士

業種ごとの許認可の承継可否

重要な注意事項:この記事の内容は一般的な解説であり、個別の法的・税務的アドバイスではありません。会社分割の実施にあたっては、必ず税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。特に税務上の適格要件の判定は個別案件によって異なり、専門家の関与なしに判断することはリスクを伴います。

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