M&A仲介協会とは、上場M&A仲介会社5社が中心となって2021年10月に設立した業界の自主規制団体で、2025年1月1日に「一般社団法人M&A支援機関協会(MAAA)」へ名称を変えています。 会員は272社(2026年9月30日時点)にのぼり、会員の仲介会社に対して、報酬基準の公開、専任期間やテール条項の上限の目安、経営者保証の解除条項などの自主規制ルールを課しています。
売り手の経営者にとって大事なのは、協会そのものよりも、会員が守るべきルールの中身です。これを知っておくと、仲介契約を結ぶ前に「その条件は協会ルールの目安に沿っていますか?」と具体的に確認できます。
この記事でわかること
- M&A仲介協会(現:M&A支援機関協会)の設立経緯・役員・会員数
- 国の「M&A支援機関登録制度」「中小M&Aガイドライン」との違い
- 売り手に関係する自主規制ルールの要点(条番号付き)
- 悪質な買い手の情報を共有する「特定事業者リスト」の仕組み
- 売り手が協会を活用する4ステップと、苦情窓口の限界
こんな方に向けた記事です: 会社の売却を考えていて、これから仲介会社と契約する予定のオーナー経営者の方。仲介会社から営業の電話やDMを受けていて、相手が信頼できるか見極めたい方。
M&A仲介協会(現:M&A支援機関協会)とは

M&A支援機関協会は、M&A仲介会社などの民間事業者が自分たちで作った業界団体です。官公庁ではなく、法律に基づいて業者を監督する機関でもありません。会員が守るルールを自ら定め、それを守らせる「自主規制団体」という位置づけです。
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
正式名称 | 一般社団法人 M&A支援機関協会(英称: M&A Advisors Association/略称: MAAA) |
旧称 | 一般社団法人 M&A仲介協会(2021年10月1日〜2024年12月31日) |
設立 | 2021年10月1日 |
名称変更 | 2024年9月19日に発表、2025年1月1日に変更 |
代表理事 | 三宅 卓 氏(日本M&Aセンター 代表取締役会長)。2025年6月18日就任 |
会員数 | 272社(2026年9月30日時点) |
所在地 | 東京都中央区八重洲1-6-1 TOFROM YAESU TOWER 41階(2026年8月移転) |
公式サイト |
出典: M&A支援機関協会「協会について」、協会リリース(2025年6月19日)(いずれも2026年10月8日確認)
設立の経緯:国の「中小M&A推進計画」がきっかけ
2021年4月、中小企業庁は「中小M&A推進計画」を公表しました。その中に、国の「M&A支援機関登録制度」の創設と並んで、M&A仲介業者による自主規制団体の設立が盛り込まれています。これを受けて、上場仲介会社5社(日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ、オンデック、名南M&A)が中心となり、同年10月に「M&A仲介協会」が設立されました(出典: 日本M&Aセンター 2021年10月1日リリース)。
当時は仲介会社の数が増えるなかで、手数料体系の分かりにくさや、売り手・買い手の双方から報酬を受け取る仲介の利益相反を懸念する声がありました。国の計画を受けて、業界側がルールづくりの受け皿として立ち上げた団体です。
なぜ「M&A支援機関協会」に名称変更したのか
名称変更により、会員の対象が仲介会社だけでなく、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)、M&Aプラットフォーマー、金融機関、士業などにも広がりました。現在の会員には地方銀行・信用金庫・法律事務所・会計事務所も含まれます。ネット上には今も「M&A仲介協会」の名前で書かれた情報が多くありますが、指しているのは同じ団体です。
協会の事業内容
公式サイトでは、事業内容として次の5つを挙げています。
- M&Aの公正かつ円滑な取引の促進
- 中小M&Aガイドラインを含む適正な取引ルールの徹底
- M&A支援人材の育成サポート
- M&A支援機関に関する苦情相談窓口の運営
- 上記に付帯する事業
協会は仲介サービスを提供しておらず、仲介会社の紹介やあっせんもしていません(公式FAQより)。売り手が協会にお金を払う場面は基本的になく、苦情受付窓口なども無料のWebフォームで受け付けています。
役員構成(2026年10月8日時点の公式サイト掲載)
役職 | 氏名(所属) |
|---|---|
代表理事 | 三宅 卓(日本M&Aセンター) |
理事 | 荒井 邦彦(ストライク) |
理事 | 梅原 弘充(静岡銀行/全国地方銀行協会) |
理事 | 久保 良介(オンデック) |
理事 | 佐上 峻作(M&A総合研究所) |
理事 | 篠田 康人(名南M&A) |
理事 | 渋佐 寿彦(虎ノ門有限責任監査法人/日本公認会計士協会) |
理事 | 中村 悟(M&Aキャピタルパートナーズ) |
理事 | 渡辺 章博(公認会計士) |
監事 | 菊地 裕太郎(弁護士・菊地綜合法律事務所) |
出典: M&A支援機関協会「協会について」(2026年10月8日確認)。2026年6月17日に「理事交代のお知らせ」が出ているため、最新の構成は公式サイトでご確認ください。
代表理事は、設立時が三宅卓氏、2022年3月から荒井邦彦氏(ストライク)、2025年6月から再び三宅卓氏が務めています。2022年3月の交代は、日本M&Aセンターの売上不正計上問題を受けた三宅氏の辞任によるものと報じられています(出典: MARR Online)。
国の制度・ガイドラインとの違い
協会の自主規制ルールは、国の「中小M&Aガイドライン」を土台に、会員向けにより具体的な数値や手続きを定めた上乗せルールです。 国の「M&A支援機関登録制度」とは別の仕組みで、協会に入っていない登録業者も多数あります。
比較項目 | M&A支援機関登録制度 | 中小M&Aガイドライン | M&A支援機関協会の自主規制 |
|---|---|---|---|
運営主体 | 中小企業庁(国) | 中小企業庁(国) | 一般社団法人(民間の業界団体) |
性格 | 登録制度 | 行政の指針(法的拘束力なし) | 会員の内部ルール |
対象 | 登録したFA・仲介業者 | 支援機関全般・経営者 | 協会の会員のみ |
違反した場合 | 登録取消・再発防止の指示など | 登録制度を通じて対応 | 協会による調査・改善報告の要求・除名 |
規模感 | 登録FA・仲介業者は数千件規模(最新件数は登録機関データベースで確認可能) | — | 会員272社(2026年9月30日時点) |
売り手の使い道 | 依頼先が登録済みかを確認/補助金の利用要件 | 契約条件が妥当かを判断する基準 | 契約前の確認項目/苦情窓口 |
国の登録制度では、2024年10月に登録支援機関15者への再発防止の指示、2025年1月に1者の登録取消と6者への指示が行われたと報じられています(出典: TDB REPORT ONLINE 2025年4月28日、原本は中小企業庁公表資料)。協会の自主規制は、こうした国の制度を補う業界側の取り組みです。
ガイドラインの詳細は「中小M&Aガイドラインとは?第3版の改訂ポイント」、国が進める制度見直しの全体像は「中小M&A市場改革2026」で解説しています。
注意点: 協会の会員は登録業者全体のごく一部です。地域のFAや士業事務所など、協会に入っていなくても国の登録制度に登録し、ガイドラインを守って誠実に支援している事業者は多くあります。「協会の会員ではない=悪質」とは言えません。
売り手に関係する自主規制ルールの要点

協会の自主規制ルールは「倫理規程」と3つの規程(広告・営業規程、コンプライアンス規程、契約重要事項説明規程)で構成されています。 2024年1月に施行され、その後も改正が続いています。
規程 | 施行 | 主な改正 | 売り手に関係するポイント |
|---|---|---|---|
倫理規程 | 2024年1月1日 | — | 中小M&Aガイドライン遵守、利益相反のおそれの開示、誤解を与える広告の禁止 |
広告・営業規程 | 2024年1月1日(一部4月1日) | 2025年1月1日施行(経営者保証・買い手の資力調査など) | 強引な営業の禁止、テール条項の不当利用禁止、成立後リスクの説明 |
コンプライアンス規程 | 2024年1月1日(一部4月1日) | 2024年6月12日、2026年6月16日 | 報酬基準の公開、利益相反行為の禁止、協会による調査・除名 |
契約重要事項説明規程 | 2024年1月1日〜(遅くとも4月1日) | 2024年9月1日施行(相手方報酬の説明) | 契約前の重要事項説明、専任期間・テール条項の目安 |
出典: M&A支援機関協会「自主規制ルール」および各規程PDF(2026年10月8日確認。以下、本章の条番号・数値はすべて同出典)
以下、売り手にとって特に影響が大きいポイントを規程ごとに整理します。
1. 報酬(手数料)のルール
会員は、報酬基準(報酬基準額・報酬率・報酬が発生する時点・最低手数料を含む)を自社ウェブサイトで公開しなければなりません(コンプライアンス規程 第5条2項)。また、仲介契約を結ぶ前に報酬基準を説明し、具体的に計算した報酬の推定額を示す義務があります(同条3項)。その際、企業価値の評価額は確定的なものではないこと、セカンドオピニオンを求められることも伝える必要があります。
さらに、仲介会社が買い手から受け取る報酬の基準も売り手に説明しなければなりません。買い手側の報酬を合意水準(少なくとも10%を超えてはならない)を超えて増額する場合は、開示・説明したうえで書面での確認が必要です(契約重要事項説明規程 第14条、2024年9月1日施行)。
手数料の相場や各社の比較は「M&A仲介会社の成功報酬・手数料比較」をご覧ください。
2. 契約条件のルール(専任・直接交渉・テール条項)
項目 | 協会ルールの目安 | 根拠 |
|---|---|---|
専任契約の期間 | 最長でも6か月〜1年以内が目安。会員が義務を果たさない場合に中途解約できる条項を設ける | 契約重要事項説明規程 第9条 |
セカンドオピニオン | 推奨・許容する。専任契約を理由に妨げることは禁止 | 同 第9条、広告・営業規程 第15条1号 |
直接交渉の制限 | 対象は会員が紹介した候補先のみ、期間は契約終了まで | 契約重要事項説明規程 第10条 |
テール条項の期間 | 最長でも2〜3年以内が目安 | 同 第11条 |
テール条項の対象 | 会員が関与・紹介した買い手のみ | 同 第11条 |
テール条項の不当な使い方も禁止されています。具体的には、企業概要書の提示など実質的な紹介がないのに手数料を請求する、非専任契約で他社経由で成約したのに請求する、親族内承継・従業員承継に切り替えた場合に報酬を請求する、といった行為です(広告・営業規程 第15条2〜4号)。
なお、上記の期間は「目安」であり、法律上の上限ではありません。テール条項の詳細は「M&Aのテール条項とは?」、専任・非専任の選び方は「M&Aの専任契約と非専任契約の違い」で解説しています。
3. 契約前の重要事項説明
仲介契約を結ぶ前に、一定の経験・実績がある担当者が書面(電子でも可)で重要事項を説明し、売り手に十分な検討時間を与えることが求められています(契約重要事項説明規程 第3〜4条)。説明事項には、仲介とFAの違いや、仲介には構造的に利益相反のおそれがあることも含まれます(同 第5条)。
仲介とFAの違いや利益相反の問題は「M&A仲介の利益相反問題とは」で詳しく扱っています。
4. 営業・広告のルール
DM・電話・メールなどによる営業で、次のような行為は禁止されています(広告・営業規程 第5条、第14条)。
- その場で決めるよう迫る
- 断った後も勧誘を続ける
- 深夜や長時間の対応を求める
- 実際にはいないのに「買い手候補がいる」と言う
- 契約や着手金を取る目的で、根拠のない高い評価額を示す
断られた場合には勧誘を止める措置をとる義務もあります(同 第18条)。広告で「自社が安い」と誤解させる不正確な比較や、根拠のない満足度表示、実績の誇張も禁止です(同 第5条1項)。
5. 進捗報告と交渉の進め方
売り手から求められれば、すみやかに進捗を報告します。専任契約の場合は、求められなくても必要な頻度で報告しなければなりません。成約の見込みがないときは、その旨と理由を説明する義務があります(広告・営業規程 第9条)。
利益相反行為の具体例として、買い手から追加の手数料を受け取って特定の買い手を優先する・価格を低く誘導する、売り手の希望価格を超えた分の一定割合を成功報酬として求める、リピーターの買い手を優遇する、といった行為が禁止されています(コンプライアンス規程 第4条)。
6. 経営者保証の解除とM&A成立後のリスク説明
中小企業のM&Aで問題になりやすいのが、売却後も経営者の個人保証が外れないケースです。中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月)でも最終契約後のトラブルとして取り上げられ、協会でも2025年1月1日施行の改正でルールが大きく強化されました。
- 最終契約書の草案に、買い手に経営者保証の解除を義務づける条項を入れる(広告・営業規程 第12条の2)。附則には、株式譲渡後2か月以内に買い手の費用と責任で保証を解除させる条文案が示されています
- 買い手がこの条項を「努力義務」に弱めたり削除しようとした場合、売り手にリスクを説明し、交渉について助言する
- 経営者保証が外れないおそれ、分割払い・アーンアウト・退職慰労金の後払い、表明保証の上限がない、最終契約からクロージングまで2か月以上空く、外部専門家によるデューデリジェンスが一切ない、といったケースでは最終契約の前にリスクを説明する(同 第12条)
- 経営者保証に関する説明は、書面を渡し、保証人本人の署名で理解を確認する(同 第12条3項)
個人保証の外し方は「会社売却時の個人保証・連帯保証の解除方法」で解説しています。
7. 悪質な買い手への対策
会員は、意向表明や基本合意の協議に入る前に、買い手の決算書や税務申告書などの資力資料を入手・調査しなければなりません。売り手自身が資力を調べる場合も最大限協力する義務があります(広告・営業規程 第17条の2、2025年1月1日施行)。
また、次に説明する「特定事業者リスト」に参加していない会員は、仲介契約の時点で、参加していないことと、その理由を説明する必要があります。
※ご注意: 契約条項の有効性や経営者保証の扱いは個別の事情で大きく変わります。実際の判断は、M&Aに詳しい弁護士等の専門家への相談をおすすめします。
特定事業者リストとは:悪質な買い手の情報共有
特定事業者リストは、会社を買った後に経営者保証を外さない、代金を払わないなどの不適切な買い手の情報を、協会の参加会員の間で共有する仕組みです。 2024年10月1日に運用が始まり、2025年4月1日に中小企業庁の資料に沿って大きく改訂されました。
背景には、中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月)で、不適切な譲り受け側を市場から排除するための情報共有の仕組みが求められたことがあります。
登録される5つのケース
No. | 登録事由 | 期限の目安 |
|---|---|---|
1 | クロージング後(または把握していなかった保証が見つかった後)も、経営者保証・担保が解除されない | 60営業日経過 |
2 | 金融機関に保証解除の相談をしない | 10営業日以内に相談なし |
3 | 金融機関が解除を拒んだり条件をつけたりした後、自己資金等で解除しない | 20営業日以内に解除なし |
4 | 分割払いや退職慰労金の後払いなどが、支払期日を過ぎても支払われない | 支払期日経過 |
5 | 資金不足、売り手情報の不正な抜き取りなど、その他の重大な行為 | 協会が調査し、弁明の機会を与えたうえで判断 |
1〜4号は客観的な要件で自動的に登録され、登録期間は最低10年とされています。
出典: M&A支援機関協会「特定事業者リスト」(2026年10月8日確認)
売り手がリストを使うときの注意点
- リストは一般公開されていません。 照会できるのは、協会に入会し、制度への参加を申し込んだ会員・利用者だけです。公式サイト上に売り手が直接閲覧できるという記載は見当たりません
- リスト利用者は135社(2026年10月5日時点、出典: 同上「特定事業者リスト」ページ、2026年10月8日確認)です。これは「リストを使える事業者の数」であり、登録された悪質な買い手の数ではありません。登録件数は公表されていません
- 協会会員でもリストに参加していない場合があります。そのため、売り手は「あなたの会社はリストに参加していますか?」と依頼先に聞くのが現実的な使い方です
2026年2月27日には、異議申立ての手順なども含むFAQ(35項目)が公開されています(出典: 協会リリース(2026年2月27日))。
加盟社(会員)の顔ぶれと会員数の推移
会員数は2026年9月30日時点で272社です。 名称変更で会員の対象が広がってから、金融機関や士業事務所の入会が続いています。
会員区分の内訳(2026年9月30日時点)
会員区分 | 社数 | 主な会員 |
|---|---|---|
幹事会員 | 3社 | 日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ |
正会員(支援機関) | 222社 | M&A総合研究所、オンデック、名南M&A、レコフ、TKC、東急リバブル、マイナビM&A ほか(法律事務所・会計事務所を含む) |
正会員(金融) | 23社 | 大垣共立銀行、沖縄銀行、鹿児島銀行、佐賀銀行、三十三銀行、肥後銀行、長野信用金庫、西武信用金庫、オリックス ほか |
協賛会員 | 24社 | 三井住友銀行、三菱UFJ銀行、常陽銀行 ほか |
合計 | 272社 |
出典: M&A支援機関協会「協会について」「会員一覧」(2026年10月8日確認)
会員数の推移
時点 | 会員数 | 会員による年間M&A支援件数 | 出典 |
|---|---|---|---|
2025年1月 | 133社 | 約2,400件 | 名称変更時の会員社リリース(M&A総合研究所ほか) |
2026年2月 | 242社 | 約3,400件 | |
2026年7月 | 261社 | 約3,700件 | |
2026年9月30日 | 272社 | — | 協会公式サイト |
出典確認日: いずれも2026年10月8日
会員一覧は毎月のように更新されます。依頼を考えている会社が会員かどうかは、公式の会員一覧で直接ご確認ください。
主な会員各社の特徴は、「日本M&Aセンターとは」など各社の解説記事にまとめています。
売り手が協会のルールを活用する4ステップ

協会のルールは、売り手が「確認の物差し」として使うことで初めて役に立ちます。 会員かどうかを確かめて終わりにせず、契約の各段階で具体的に質問するのがポイントです。
ステップ1:依頼先が会員かを確認する
会員一覧で、依頼を検討している会社の名前と会員区分を確認します。あわせて、国のM&A支援機関登録制度に登録しているかも見ておくと安心です。会員でない場合は、協会ルールではなく中小M&Aガイドラインに沿っているかを基準に確認します。
ステップ2:仲介契約の前に質問する
次の質問リストは、協会のルールをもとに作ったものです。いずれも、会員であれば規程上説明が求められている内容です。
確認項目 | 質問例 | 協会ルール上の根拠 |
|---|---|---|
報酬基準 | 「報酬基準はWebサイトのどこに載っていますか?最低手数料も含めて、当社の場合の推定額を出してください」 | コンプライアンス規程 第5条 |
買い手側の報酬 | 「買い手からはどのような基準で報酬を受け取りますか?」 | 契約重要事項説明規程 第14条 |
専任期間と解約 | 「専任期間は何か月ですか?御社が義務を果たさない場合に中途解約できる条項はありますか?」 | 同 第9条 |
テール条項 | 「テール期間は何年で、対象は御社が紹介した買い手だけですか?親族・従業員承継に切り替えた場合はどうなりますか?」 | 同 第11条、広告・営業規程 第15条 |
セカンドオピニオン | 「契約中に弁護士や会計士に意見を求めても問題ありませんか?」 | 契約重要事項説明規程 第9条 |
特定事業者リスト | 「特定事業者リストに参加していますか?参加していない場合、その理由は?」 | 広告・営業規程 第17条の2 |
買い手の資力調査 | 「買い手の決算書や税務申告書は、いつの段階で確認しますか?」 | 同 第17条の2 |
契約書全体のチェック項目は「M&A仲介契約の注意点・チェックリスト」もご活用ください。
ステップ3:最終契約の前に確認する
- 最終契約書の草案に、買い手に経営者保証の解除を義務づける条項が入っているか(目安は株式譲渡後2か月以内、買い手の費用と責任で)
- 分割払い・アーンアウト・退職慰労金の後払いがある場合、未払いリスクについて説明を受けたか
- 経営者保証に関する説明を書面で受け取り、署名で確認したか
- 弁護士など外部の専門家に最終契約書を見てもらったか
ステップ4:トラブルが起きたら相談窓口を使う
協会には売り手が使える窓口が2つあります。
窓口 | 使える人 | できること | できないこと |
|---|---|---|---|
幹事会員・正会員と契約済み/予定の売り手(株主)、買い手の担当者、営業を受けた人 | Webフォームで苦情を伝え、協会から会員に伝達して対応の検討を促してもらう | 紛争の解決、あっせん、法的助言、ADR(裁判外紛争解決) | |
売り手本人を含む | 不適切な買い手の情報を提供する | リストへの反映は協会の審査しだいで保証されない |
不適切な買い手の情報を提供する際、提供者は情報の正確性を表明する必要があり、買い手との秘密保持義務に違反するなどの法的リスクは自分で負うことになります。情報を出す前に弁護士へ相談することをおすすめします。
損害の回復や契約の争いには、弁護士への相談が必要です。あわせて、国のM&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口や、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センター(無料相談。詳しくは「事業承継・引継ぎ支援センターとは」)も利用できます。トラブルの具体例は「M&A仲介のトラブル事例と対処法」で紹介しています。
協会の限界と注意点

協会は行政機関ではないため、強制力には限界があります。 「会員だから安心」と考えて比較検討を省くのは避けてください。
- 非会員にはルールが及ばない: 自主規制は会員にしか適用されません。倫理規程では非会員への啓発に努めるとしていますが、拘束力はありません
- 処分は調査・改善要求・除名まで: 規程違反の疑いがあれば監事が独立した立場で調査し、改善がなければ除名できます(コンプライアンス規程 第15条)。ただし、除名などの処分実績は公表されていません
- 苦情窓口は紛争を解決しない: 会員に苦情を伝えて対応を促すのが主な役割です。苦情の件数などの統計も公式サイトでは確認できません
- 特定事業者リストは「最後の砦」: リストは問題が起きた後の情報共有です。悪質な買い手を防ぐ第一の手段は、依頼先による買い手の審査と、最終契約書の条項です(協会の荒井邦彦氏も代表理事当時のインタビューで同趣旨を述べています。出典: TDB REPORT ONLINE 2025年4月28日)
- 会員であることは成約や法令遵守を保証しない: 協会ルールに沿っているかは、契約ごとに自分で確認する必要があります
悪質な業者の見分け方は「悪質なM&A仲介業者の手口と見分け方」もあわせてご覧ください。
協会のルールを特に活用したい経営者・注意が必要なケース
こんな経営者に特に役立ちます
- 初めて仲介会社と契約する方: 専任期間・テール条項・報酬の推定額など、何を確認すればよいかが条番号つきでわかります
- 会社の借入に個人保証をつけている方: 経営者保証の解除条項と、成立後リスクの書面説明は、売却後のトラブルを防ぐうえで最も重要なポイントです
- 営業電話やDMを多く受けている方: 断った後の勧誘継続や「買い手がいる」という虚偽の営業は禁止されており、苦情窓口に伝えることもできます
- 分割払いやアーンアウトを提案されている方: 未払いリスクの説明を受け、特定事業者リストへの参加状況を確認する価値があります
協会頼みにしないほうがよいケース
- 「会員だから大丈夫」と比較検討を省こうとしている方: 会員でも条件は会社ごとに違います。複数社から推定報酬額と契約条件を取り寄せて比べてください
- 地域のFA・税理士・会計士に依頼する予定の方: 協会に入っていない支援者も多くあります。その場合は国の登録制度と中小M&Aガイドラインを基準に確認します
- すでに紛争になっている方: 協会は紛争解決をしません。早めに弁護士へ相談してください
- 年商が小さく、M&Aプラットフォームで売り手が自ら買い手を探す方: 協会ルールの多くは仲介会社との契約を前提にしています。プラットフォーム利用時は、各サービスの規約と買い手の資力確認を自分で行う必要があります
仲介会社選び全体の進め方は「M&A仲介会社の選び方ガイド」で解説しています。
2025〜2026年の主な動き
時期 | 内容 |
|---|---|
2025年1月1日 | 「M&A支援機関協会」に名称変更。資格制度検討委員会・自主規制ルール検討委員会が発足。広告・営業規程の改正施行(経営者保証条項・買い手の資力調査・成立後リスクの説明) |
2025年4月1日 | 特定事業者リストの規約を大幅改訂(自動登録の導入、登録期間最低10年) |
2025年6月18日 | 三宅卓氏が代表理事に就任 |
2026年2月27日 | 特定事業者リストのFAQ(35項目)を公開 |
2026年5月15日 | 新人M&Aアドバイザー向け「実務クイックガイド」を制作 |
2026年6月16日 | コンプライアンス規程を改訂(宗教法人格の不正利用につながる広告・営業の禁止、金融機関会員の特例) |
2026年8月3日 | 事務所を八重洲に移転 |
2026年9月24日 | 特定事業者リスト有識者会議を開催 |
2026年9月30日 | 会員が272社に |
出典: M&A支援機関協会 公式サイト・プレスリリース(2026年10月8日確認)
よくある質問
Q. 「M&A仲介協会」と「M&A支援機関協会」は別の団体ですか?
同じ団体です。2021年10月に「M&A仲介協会」として設立され、2025年1月1日に「M&A支援機関協会」へ名称を変えました。変更の発表は2024年9月19日です。公式サイトのURLも現在は maa-a.or.jp です。
Q. 協会に依頼すれば、信頼できる仲介会社を紹介してもらえますか?
紹介はしていません。協会は仲介会社の紹介やあっせんを行っておらず、公開しているのは会員一覧のみです。仲介会社探しの無料の公的窓口としては、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターがあります。
Q. 依頼先の仲介会社を辞めたいのですが、協会が間に入ってくれますか?
協会は契約解除の交渉や紛争の仲裁はしません。苦情受付窓口で会員に苦情を伝えてもらうことはできますが、解約の可否や違約金の判断は契約書の内容しだいです。解約の進め方は「M&A仲介会社の断り方・契約解除の方法」を参考にしつつ、実際の判断は弁護士にご相談ください。
Q. 協会の会員になるのに条件はありますか?
入会には理事会の審査があります。正会員(支援機関)・金融会員は、入会金・年会費とも「M&A支援業務の専従者数×2万円」、協賛会員は入会金・年会費とも10万円です(出典: M&A支援機関協会「入会案内」、2026年10月8日確認)。入会案内には、国の登録制度に登録していることを入会要件とする記載は見当たりません。
Q. 会員の仲介会社は、広告で「協会会員」と名乗ってよいのですか?
広告・営業規程 第4条2項で、会員は広告で協会の会員であることを明示できるとされています。ただし、会員であることは国のお墨付きではなく、成約や品質を保証するものでもありません。
Q. 仲介会社の担当者が持つ資格について、協会の制度はありますか?
協会は2025年1月に資格制度検討委員会を立ち上げ、会員向けに研修や講座の割引を提供しています。国の側では中小M&Aに関する資格試験の準備が進んでいますが、協会の検討との関係は公表されていません。最新状況は「中小M&Aアドバイザー資格制度」で追っています。
まとめ
- M&A仲介協会は、2025年1月1日に「M&A支援機関協会(MAAA)」へ名称変更した業界の自主規制団体。会員は272社(2026年9月30日時点)
- 会員には、報酬基準の公開と推定額の提示、専任期間(6か月〜1年以内)・テール期間(2〜3年以内)の目安、経営者保証の解除条項、買い手の資力調査などのルールが課されている
- 悪質な買い手の情報を共有する特定事業者リストがあるが、売り手は直接見られない。依頼先に参加状況を質問する形で使う
- 協会は行政機関ではなく、苦情窓口も紛争解決はしない。会員かどうかより、契約条件が協会ルールの目安に沿っているかを確認することが大切
協会のルールは、仲介会社を比べるときの確認項目としても使えます。各社の手数料や特徴は「M&A仲介会社おすすめ比較(売り手向け)」で比べられます。
※本記事の数値・規程内容は、各出典に記載した確認日時点の公式情報にもとづいています。契約条項・経営者保証・税務などの判断は個別の事情によって異なるため、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。
