M&Aスキームとは?種類・選び方を売り手視点で徹底解説【2026年最新】
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M&Aスキームとは?種類・選び方を売り手視点で徹底解説【2026年最新】

M&Aスキーム(取引手法)の種類と選び方を解説。株式譲渡・事業譲渡・会社分割など主要スキームの違い、売り手の税負担、2025年ミニマムタックスの影響まで、中小企業オーナー向けに実務的な判断軸を提示します。

M&A比較レビュー編集部2026/5/219分で読める

M&Aスキームとは、会社や事業を売却・承継する際に採用する「法的な取引手法」のことです。どのスキームを選ぶかによって、売り手の税負担・手続き期間・許認可の扱い・従業員への影響が大きく変わるため、M&Aの成否を左右する最初の重要な選択になります。

この記事では、株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併など主要スキームの仕組みと違いを横断比較し、売り手オーナーが「自社にどのスキームが合うか」を判断できる実務的な選び方フローを解説します。2025年1月から適用が始まったミニマムタックスの影響や、2027年3月まで適用可能な優遇税制の最新情報も含めてまとめました。

この記事でわかること:

  • M&Aスキームの種類(株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併など)と各スキームの違い
  • 売り手視点でのスキーム選び方フロー(意思決定の手順)
  • スキーム別の税金・課税(2026年最新・ミニマムタックス含む)
  • 業種別のスキーム適性と、補助金・優遇税制の最新情報

対象読者: 会社売却・事業承継を検討している中小企業のオーナー社長。M&Aを初めて検討する方でも理解できるよう構成しています。

本記事の情報は2026年5月時点のものです。スキーム選択や税務上の判断には、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。


M&Aスキーム(取引手法)とは何か

M&Aスキームの概念図:取引手法の種類と仕組みを図解

M&Aにおける「スキーム」とは、会社・事業の権利義務をどのような法的手続きで移転・統合するかを定めた「取引方式」のことです。英語の "scheme"(計画・仕組み)に由来し、M&A実務では「どの手法で取引を組み立てるか」という意味で使われます。

スキーム選択は、単なる手続きの問題ではありません。以下の4つが、スキームの選択によって大きく変わります。

  • 税負担:売り手個人に課税される税率が約20〜28%の幅で変わる
  • 手続き期間:最短数週間〜数か月の差が生まれる
  • 許認可・契約の引き継ぎ:業種によっては許認可が承継できないスキームがある
  • 従業員・取引先への影響:個別同意が必要か、包括的に引き継がれるかが異なる

スキームは大きく以下の3カテゴリに分けられます。

カテゴリ

主なスキーム

経営権の移転

買収系

株式譲渡、事業譲渡、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付、第三者割当増資、TOB

あり

合併系

吸収合併、新設合併、三角合併

あり(法人の統合)

提携系

資本提携、業務提携、資本業務提携、合弁会社設立、MBO

なし(またはグループ内)

中小企業の売却案件では、株式譲渡が約9割を占めます(出典: 日本M&Aセンター 成約実績1,000件調査、確認日: 2026-05-22)。残りの約1割が事業譲渡・会社分割・株式交換等です。


主要スキームの種類と特徴

株式譲渡・事業譲渡などM&Aの主要スキームの種類と特徴概要

株式譲渡(中小企業の約9割が採用)

株式譲渡は、売り手オーナー(株主個人)が保有する株式を買い手に譲渡することで、会社の経営権を移転するスキームです。中小企業のM&Aで最も多く使われる標準的な手法です。

仕組み:

売り手株主個人 → 株式を譲渡 → 買い手企業

対価(現金)は売り手株主個人に直接支払われます。会社の法人格はそのまま存続するため、契約・許認可・従業員雇用は原則として変更なく継続します。

売り手にとってのメリット:

  • 手続きが最もシンプルで、クロージングまでの期間を短縮しやすい
  • 個人株主への課税は申告分離課税(約20.315%)で、他のスキームより税負担が低い(※2025年以降の注意点は後述)
  • 許認可・取引先契約・従業員雇用がそのまま引き継がれ、事業継続性が高い
  • 経営者保証(個人保証)の解除交渉が行いやすい

売り手にとってのデメリット:

  • 簿外債務(未発覚の借入・係争リスク等)ごと買い手に移転するため、DDで厳しく調査される
  • 不要な資産・負債も含めて移転するため、買い手が値引き交渉に使うケースがある

どんなケースに向いているか:

  • オーナー社長が株式の大半を保有する中小企業の完全売却
  • 飲食・建設・運送・医療など許認可が必要な業種の事業承継
  • 早期クロージングを希望する場合(2〜6か月が目安)

事業譲渡(特定の事業・資産だけを売却)

事業譲渡は、会社が保有する事業の全部または一部(資産・負債・契約・従業員)を選別して買い手に譲渡するスキームです。「株式」ではなく「事業そのもの」を売るため、売り手法人は存続します。

仕組み:

売り手法人 → 選定した事業資産を移転 → 買い手企業

対価(現金)は売り手法人に支払われます(株主個人に直接入らない点が株式譲渡との大きな違い)。

売り手にとってのメリット:

  • 売りたい事業・資産を選べる(不採算部門だけ売却、優良部門を残す等の選別が可能)
  • 将来の偶発債務リスクを切り離して売却できる

売り手にとってのデメリット:

  • 対価は法人に入るため、オーナー個人が現金を得るには配当・清算などの追加手続きが必要
  • 法人に課される法人税(実効税率約30〜34%)+消費税10%(課税資産に対して)がかかり、手取りが大幅に減る
  • 許認可の多くが買い手に承継されない → 買い手が再取得を要する
  • 取引先契約・従業員雇用は個別の同意取得が必要

どんなケースに向いているか:

  • 特定の事業部門・ブランドだけを売却したい場合
  • 偶発債務リスクが高く、特定資産だけを切り離す必要がある案件
  • スモールM&A(低価格帯の事業売却)

会社分割(吸収分割・新設分割)

会社分割は、売り手企業が特定の事業部門を切り出し、別会社(既存または新設)に包括的に承継させるスキームです。

2種類の会社分割:

  • 吸収分割:既存の別会社(買い手)が事業を受け入れる
  • 新設分割:新たな会社を設立して事業を承継させる(その後、新設会社の株式を売却するなど)

事業譲渡との最大の違い: 許認可・取引先契約・従業員が包括的に承継される点です。事業譲渡のように個別の再手続きが不要なため、許認可が多い業種や取引先が多い事業の切り離しに向いています。

売り手にとってのメリット:

  • 許認可・契約・従業員を包括的に引き継げる(事業譲渡との大きな差)
  • 株式対価での受け取りなら、売り手側の現金負担がない
  • 消費税が発生しない(事業譲渡との違い)

売り手にとってのデメリット:

  • 債権者保護手続きが必要で、最短でも約1か月半の期間を要する
  • 手続きが複雑で、法務・税務の専門家関与が不可欠
  • 適格・非適格の要件判定が難しく、課税関係が複雑

どんなケースに向いているか:

  • 事業部門ごとに分割して売却・再編したい場合
  • 許認可が多く、事業譲渡では許認可承継が困難な業種

合併(吸収合併・新設合併)

合併は、複数の会社を1つの法人に統合するスキームです。M&Aの文脈では、買い手が売り手を吸収する形(吸収合併)が実務の大半を占めます。

2種類の合併:

  • 吸収合併:1社(存続会社)が残り、もう1社は消滅。最もよく使われる
  • 新設合併:すべての会社が消滅し、新会社を設立(許認可の再取得が必要なため実務上は少ない)

メリット:

  • 完全な組織統合により、シナジーの最大化が期待できる
  • 適格合併の場合、繰越欠損金の活用や課税繰延が可能

デメリット:

  • 統合手続きが複雑で、債権者保護手続き等の期間が必要
  • 簿外債務をすべて承継するリスク
  • 組織文化・システムの統合(PMI)コストが大きくなりやすい

どんなケースに向いているか:

  • グループ内再編や、規模の近い企業同士の経営統合
  • 中小企業単独の売却案件では比較的少なく、大企業・グループ会社の再編で多用される

株式交換・株式移転・株式交付

株式交換は、買い手が自社株式を対価として売り手の発行済株式全部を取得し、売り手を完全子会社化するスキームです。株式移転は、既存会社が共同で新設の親会社(持株会社)を設立する手法です。

2021年3月に施行された株式交付制度は、買い手が自社株を対価に他社の株式を取得できる新しいスキームで、完全子会社化でなくても(51%超の取得でも)利用できます。現金を使わずにM&Aを実現できる点が特徴で、上場企業だけでなく非上場企業も利用可能です。

活用場面:

  • 現金を持たない企業が自社株式を対価にM&Aを行う場合
  • 上場企業が非上場企業を完全子会社化する場合(株式交換)
  • 持株会社体制への移行(株式移転)

第三者割当増資(資本参加型)

第三者割当増資は、既存株主以外の特定の第三者に新株を発行するスキームです。売り手法人への資本注入が目的で、既存株主の持ち株比率が希薄化します。

完全売却には使えないスキームですが、資本増強や提携関係の構築を目的とする場合や、段階的に関係を深める場合(アライアンスの第一歩)に活用されます。


主要スキームの横断比較表

スキーム選択で重要な比較ポイントを一覧にまとめます(2026年5月現在、各公式情報・中小企業庁資料を基に整理)。

比較ポイント

株式譲渡

事業譲渡

会社分割

吸収合併

手続きの簡便さ

◎ 最もシンプル

△ 複雑

△ 複雑

クロージングまでの目安

数か月〜6か月

数か月〜6か月

1.5か月以上の債権者保護手続き

1.5か月以上

対象の選別

× 全部のみ

◎ 選別可能

○ 事業ごと

× 全部のみ

売り手の税負担(個人株主)

◎ 約20.315%(分離課税)※1

△ 法人税30〜34%+消費税

複雑(適格要件次第)

複雑(適格要件次第)

許認可の承継

◎ 承継可

△ 原則不可(再取得必要)

○ 包括承継

○ 包括承継

取引先契約の承継

◎ 包括承継

△ 個別巻き直し

○ 包括承継

◎ 包括承継

従業員の承継

◎ 雇用関係継続

△ 個別同意が必要

○ 労働契約承継法に基づく手続き

◎ 雇用関係継続

簿外債務リスク(売り手)

△ ごと引き渡す

◎ 回避可能

△ リスクあり

△ 全て承継

消費税

なし

課税資産に発生

なし

なし

債権者保護手続き

不要

不要

一定の場合は必要

必要

中小企業での利用頻度

◎ 約9割

△ 約数%

△ 少数

△ 少数

※1 2025年1月以降、年間合計所得が3.3億円を超える個人は最大27.5%になる可能性があります(ミニマムタックス。詳細は後述)。

事業譲渡と会社分割の違い(要点):

比較項目

事業譲渡

会社分割

契約の承継

個別巻き直しが必要

包括承継(一括で引き継ぎ)

許認可の承継

原則不可(再取得必要)

原則可(引き継ぎ)

従業員の承継

個別同意が必要

労働契約承継法に基づく手続き

消費税

課税資産に発生

発生しない

対価の形態

現金が原則

株式対価も可能

債権者保護手続き

不要

一定の場合は必要


売り手のためのスキーム選び方フロー

中小企業オーナーが会社を売却する際に、スキームを選ぶための実務的な判断ステップを整理します。

ステップ1:「誰が対価を受け取るか」を確認する

まず「誰がお金を受け取るのか」を明確にします。

  • 個人株主(オーナー自身)が現金を得たい → 株式譲渡・株式交換が基本
  • 法人(会社)にお金を入れたい → 事業譲渡・会社分割

事業譲渡の場合、対価は法人に入るため、オーナー個人が現金化するには配当・清算の追加手続きが必要です。その過程で法人税・配当課税が重なり、手取りが大幅に減ることがあります。

ステップ2:「会社全体を売るか、一部だけ売るか」を決める

  • 会社全体を売却したい → 株式譲渡(最もシンプル)
  • 特定の事業部門・ブランドだけ売りたい、残したい事業がある → 事業譲渡または会社分割を検討

ステップ3:「許認可が重要な業種か」を確認する

  • 許認可が事業の核になっている(建設業許可、医療法人、運送業など) → 株式譲渡か会社分割を選ぶ(事業譲渡では許認可が引き継がれないケースが多い)
  • 許認可がない、または再取得が容易 → 事業譲渡も選択肢に入る

ステップ4:「売り手の税負担」を試算する

スキームによって税負担が大きく変わります。特に「株式譲渡(個人)」と「事業譲渡(法人)」の差は顕著です。

  • 個人株主が株式譲渡する場合:約20.315%(分離課税)。3.3億円超の所得がある場合は最大27.5%の可能性(2025年〜ミニマムタックス)
  • 事業譲渡(法人)の場合:法人税実効税率30〜34%+消費税10%(課税資産分)

この試算は税理士に依頼することをおすすめします。スキームの組み合わせや会社分割の「適格要件」によっては課税が繰り延べられる場合もあり、実務上の計算は複雑です。

ステップ5:「どのくらいの期間でクロージングしたいか」を確認する

  • 早期クロージングを希望(数か月以内) → 株式譲渡
  • 期間に余裕がある(半年〜1年) → 会社分割・合併も検討可能(債権者保護手続きで時間がかかる)

スキーム別の税金・課税(2026年最新)

税率情報は2026年5月時点の情報です。税制改正により変更される可能性があります。実際の税額計算・スキーム選択の判断は、必ず税理士へご相談ください。

売り手側の課税(2026年最新)

スキーム

課税主体

課税の種類

税率目安

株式譲渡(個人株主)

売り手個人

申告分離課税(譲渡所得)

約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)※ミニマムタックス注意

株式譲渡(法人株主)

売り手法人

法人税

実効税率約30〜34%

事業譲渡(法人)

売り手法人

法人税+消費税

実効税率約30〜34%+消費税10%(課税資産)

合併・会社分割(適格)

課税繰延(資産の簿価承継)

課税なし(繰り延べ)

合併・会社分割(非適格)

譲渡法人

法人税(時価課税)

実効税率約30〜34%

2025年〜ミニマムタックスの影響(売り手オーナー要注意)

2025年1月1日以降の株式譲渡から、個人の「ミニマムタックス(国内最低課税)」が適用されています。

  • 対象:年間合計所得が3.3億円を超える個人
  • 税率の変化:現行20.315% → 最大27.5%(所得税22.5%+住民税5%)に引き上げ
  • 影響が出るケース:会社を10億円前後以上で売却し、売却益が大きくなる個人オーナー

(出典: 令和6年度税制改正大綱・国税庁資料、参考: マクサス・コーポレートアドバイザリー記事、確認日: 2026-05-22)

会社の売却価額が10億円を超えるような案件では、ミニマムタックスの適用有無が手取り額に数千万円単位で影響することがあります。売却を検討している方は、事前に税理士へ影響試算を依頼することを強くおすすめします。

買い手側の税務メリット(参考)

  • 事業譲渡・非適格分割の場合:のれん(営業権)を計上し、5年間で税務上の損金算入が可能(非適格の場合)
  • 経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金):株式取得金額の一部を準備金として積立・損金算入できる。詳細は後述。

業種別スキーム適性ガイド

業種別のM&Aスキーム適性ガイド:建設業・飲食業など推奨手法の一覧

許認可の有無や事業の特性によって、適切なスキームは変わります。

業種・事業特性

推奨スキーム

理由

飲食業(飲食店・フランチャイズ)

株式譲渡

飲食店営業許可・食品衛生責任者は事業譲渡後の再取得が必要なケースが多い。株式譲渡なら許認可が自動継続

建設業

株式譲渡

建設業許可(国土交通大臣許可・知事許可)は事業譲渡・会社分割では原則承継されない。株式譲渡が基本

運送業(一般貨物・旅客)

株式譲渡

運送業許可は会社の許可であり、株式譲渡なら継続。事業譲渡は再取得が必要

医療・介護(クリニック・老人ホーム等)

株式譲渡(医療法人は特殊処理)

医療法人の場合は知事認可が必要な別手続き。専門家への相談が必須

IT・ソフトウェア(許認可なし)

株式譲渡または事業譲渡

許認可がなければ選択肢が広い。不採算事業の切り離しなら事業譲渡も有効

小売・ECサービス

株式譲渡または事業譲渡

特定の商品ブランドや顧客リストだけ売る場合は事業譲渡。会社丸ごとなら株式譲渡

製造業(許認可あり:産業廃棄物・薬局等)

株式譲渡

許認可の多い製造業は株式譲渡で許認可を引き継ぐのが安全

不採算部門の切り離し・選択売却

事業譲渡または会社分割

残したい事業・資産と切り離せる唯一の選択肢

許認可の承継可否は業種・所管省庁・個別の許認可内容によって例外があります。必ず専門家(弁護士・行政書士・M&Aアドバイザー)に事前確認することをおすすめします。


補助金・優遇税制の最新情報(2026年5月時点)

経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)

M&Aを行う買い手側の中小企業向けに、株式取得額の一部を準備金として積立・損金算入できる税制優遇です。売り手が相手先(買い手)の選択に影響する可能性があるため、知っておくべき制度です。

  • 内容:株式取得金額の一定割合を準備金として積立(損金算入可)
  • 対象:株式取得価額1億円以上100億円以下
  • 積立率:1回目のM&Aは取得価額の90%まで、2回目以降は100%まで
  • 適用期限2027年3月31日まで(2024年税制改正で延長・拡充)

(出典: 中小企業庁資料、確認日: 2026-05-22)

事業承継・M&A補助金(令和7年度補正予算)

事業承継やM&Aに伴う設備投資・PMI(統合後プロセス)費用等を補助する制度が現在公募中です(2026年時点)。

補助金の詳細な申請要件・スケジュールは変更される場合があります。採択要件の判断は専門家または中小企業診断士にご相談ください。


こんな企業に向いているスキーム・向いていないスキーム

株式譲渡が向いている企業

  • オーナー社長が株式の大半を保有する中小企業で、会社を丸ごと売却したい
  • 許認可ビジネス(飲食・建設・運送・医療・介護)で許認可の引き継ぎが必須
  • 早期クロージング希望(6か月以内に成約したい)
  • 従業員・取引先への影響を最小化したい
  • 売り手個人の手取りを最大化したい(分離課税約20〜28%が最も税効率が良い)

事業譲渡が向いている企業

  • 一部の事業だけを売りたい(複数事業を持つ会社で、特定部門だけ売却)
  • 特定の資産・ブランド・顧客リストだけ売りたい
  • 簿外債務・偶発債務リスクが高く、切り離して売りたい
  • スモールM&A(数千万円以下の小規模な事業売却)

事業譲渡・会社分割をおすすめしないケース

  • 許認可が必須な業種で、買い手が許認可を再取得できない状況(事業継続のリスクが高い)
  • 売り手個人がすぐに現金を得たい場合(法人への入金→配当・清算が必要で時間と税金がかかる)
  • 手続き期間を短くしたい案件(会社分割は債権者保護手続きで1.5か月以上かかる)

合併・株式交換が向いている企業

  • グループ内再編や、経営統合で組織を完全統合したい
  • 上場企業・大企業が非上場企業を完全子会社化したい
  • 現金を持たず、自社株を対価にM&Aしたい(株式交換・株式交付)

M&Aスキームを選んだあとは仲介会社に相談を

スキームの種類がわかっても、「自社の状況に最適なスキームはどれか」「税務上どの手法が有利か」の判断は、専門知識が必要です。一般的にM&A仲介会社・FAが初回相談の中でスキームの方向性を提案してくれます。

M&A仲介会社を選ぶ際の比較ポイント・おすすめ会社については、以下のページで詳しく解説しています。

M&A仲介各社がどのスキームを得意とするかや、手数料体系については上記の比較記事をご参照ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 中小企業のM&Aで最もよく使われるスキームは何ですか?

株式譲渡です。日本M&Aセンターの成約実績1,000件調査(確認日: 2026-05-22)によると、中小企業のM&Aの約9割が株式譲渡によるものです。手続きがシンプルで、許認可や従業員雇用がそのまま引き継がれる点が多くの案件で採用される理由です。

Q2. 事業譲渡と会社分割は何が違うのですか?

最大の違いは「許認可・取引先契約・従業員の引き継ぎ方」です。事業譲渡では許認可は原則引き継がれず、取引先契約・従業員雇用も個別に巻き直し・同意取得が必要です。一方、会社分割では許認可・契約・従業員が包括的に承継されます(ただし、会社分割では債権者保護手続きが必要で、時間がかかります)。

Q3. スキームによって手取り額はどう変わりますか?

スキームによって税負担が大きく変わります。個人株主が株式譲渡する場合の税率は約20.315%(分離課税)ですが、事業譲渡(法人への入金)では法人税30〜34%+消費税10%がかかり、さらに個人への配当課税も重なるため、手取りが大きく減ることがあります。どのスキームが有利かは個別の状況によるため、税理士への相談をおすすめします。

Q4. 2025年から株式譲渡の税率が上がったと聞きました。何が変わったのですか?

2025年1月1日から「ミニマムタックス(国内最低課税)」が適用されました。年間合計所得が3.3億円を超える個人については、株式譲渡益も含めた所得に対し、従来の20.315%から最大27.5%の税率が適用される可能性があります。会社を高額(10億円前後以上)で売却するオーナーは特に注意が必要で、事前に税理士への相談をおすすめします。

Q5. 許認可のある業種でもスキームは選べますか?

はい。ただし、許認可がある業種では基本的に株式譲渡か会社分割を選ぶことになります。事業譲渡では許認可の多くが買い手に引き継がれず、買い手が再取得しなければなりません。再取得に時間がかかる場合や、そもそも取得できない業種では事業継続リスクになります。許認可の承継可否は業種・所管省庁によって異なるため、専門家への事前確認が必須です。

Q6. スキームはM&A仲介会社が提案してくれるのですか?

はい。一般的に、M&A仲介会社やFAとの初回相談の中で「どのスキームが適切か」の方向性を提案してもらえます。ただし、具体的な税務上の判断は税理士・弁護士との連携が必要です。複数の仲介会社に相談して比較することをおすすめします。


まとめ

M&Aスキームは「株式譲渡」「事業譲渡」「会社分割」「合併」など複数の手法があり、どれを選ぶかで税負担・手続き期間・許認可の扱いが大きく変わります。

中小企業の売却案件では約9割が株式譲渡を採用していますが、「特定の事業だけ売りたい」「許認可のある業種か」「売り手の税負担をどう抑えるか」といった状況によって最適なスキームは変わります。

スキーム選択のポイントまとめ:

  • 会社全体を売る → 株式譲渡が最もシンプルで税効率も良い
  • 事業の一部だけ売る → 事業譲渡または会社分割
  • 許認可が必須な業種 → 株式譲渡会社分割(事業譲渡は原則不可)
  • 高額売却で所得3.3億円超の可能性がある → ミニマムタックスの影響を税理士に確認

スキームの最終決定は、M&A仲介会社・FA・税理士・弁護士と連携して進めることをおすすめします。まずはM&A仲介会社への無料相談から始めてみてください。

M&A仲介会社おすすめ比較・選び方ガイドで、売り手向けに信頼できる仲介会社を比較しています。


参考情報:

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M&A比較レビュー編集部

M&A仲介会社の選び方・費用・実績を徹底調査する専門編集部です。