医療法人のM&A|出資持分・手続きの注意点を売り手オーナー医師向けに解説【2026年最新】
ホームお役立ち記事医療法人のM&A|出資持分・手続きの注意点を売り手オーナー医師向けに解説【2026年最新】
ガイド

医療法人のM&A|出資持分・手続きの注意点を売り手オーナー医師向けに解説【2026年最新】

医療法人のM&Aは、出資持分を譲渡しても経営権は移転しないなど、一般事業会社とは根本的に異なるルールがあります。持分あり・なしのスキーム選択から手続きフロー・税務・認定医療法人制度の2026年12月末期限まで、売り手オーナー医師が知っておくべき注意点をまとめました。

M&A比較レビュー編集部2026/5/29分で読める

医療法人のM&Aで最初に知っておくべき核心的な事実が一つあります。出資持分を100%取得しても、それだけでは経営権は移転しないということです。株式会社のM&Aとはまったく異なる仕組みで動いているため、「株式と同じ感覚」で進めると、手続きのやり直しや想定外の税負担が生じるリスクがあります。

この記事では、後継者不在率が61.8%(2024年・帝国データバンク)と全業種平均を大きく上回る医療業界の現状をふまえ、売り手オーナー医師が医療法人のM&Aを検討する際に知っておくべき出資持分の仕組み・スキームの選び方・手続きの流れ・税務上の注意点を体系的に解説します。

この記事でわかること:

  • 出資持分とは何か、なぜ経営権と分離しているのか
  • 持分あり・持分なし医療法人でM&Aスキームがどう変わるか
  • 出資持分譲渡の手続きフロー(STEP別)
  • 売却価格の算定方法とのれん代の相場(営業利益の3〜5年分)
  • 出資持分譲渡時の税務上の注意点
  • 2026年12月31日が期限の認定医療法人制度とは何か

この記事の対象読者: 診療所・クリニック・病院を運営する医療法人のオーナー医師で、後継者問題や事業承継・売却を検討している方


医療法人M&Aが急増している理由(2026年最新動向)

医療法人M&A市場動向 2024年データ

2024年の医療法人M&A市場は明確な転換点を迎えています。以下の3つのデータがその実態を示しています。

2024年の主要データ(出典: 帝国データバンク・日本M&Aセンター公式サイト等、2025年12月〜2026年5月確認)

指標

数値

備考

医療業の後継者不在率

61.8%

全業種平均52.1%を大きく上回る(2024年・帝国データバンク調査)

病院・医療法人の代表者平均年齢

64.9歳

全企業平均59.7歳より高い(2022年度調査)

医療機関の倒産件数(2024年)

64件

前年比56.0%増・過去20年で最多

後継者不在に加え、診療報酬のマイナス改定・物価上昇・人件費増などの経営環境悪化が重なり、M&Aによる事業承継を選ぶ医師が急増しています。

2026年4月施行の医師偏在対策による影響

2026年4月から、医師偏在指標に基づき都市部等での新規開業に事実上の制限が設けられました(厚生労働省「第8次医療計画における医師偏在対策」に基づく施策、2026年4月施行)。これにより、開業を目指す医師にとって「既存クリニックの承継開業」が実質的な有力選択肢となっています。買い手となる医師の需要増加が、売り手にとっては有利な売却環境を生み出しています。


医療法人の出資持分とは

医療法人の出資持分とは、出資者が医療法人に対して持つ財産上の権利(財産権)です。具体的には、社員が退社するときや法人が解散するときに「出資額に応じた払戻請求権」「残余財産の分配請求権」を行使できる権利を指します。

ここで最も重要な点は、出資持分は財産権のみであり、経営権(議決権)は含まれないということです。

医療法人では社員1人につき1議決権が原則です(出資割合とは無関係)。つまり、出資持分を多く持つ人が理事長に就けるわけではなく、社員総会で過半数の賛成を得られる「社員の地位」こそが経営権の源泉になります。

定款での確認方法

自院の医療法人が「持分あり」か「持分なし」かは、定款の以下の条項で判断できます。

「社員資格を喪失した者は、その出資額の割合に応じて払戻しを請求することができる」

この表記があれば「持分あり」、なければ「持分なし」です。

現在の医療法人数(令和6年時点)

区分

件数

割合

医療法人社団(持分あり)

36,393件

約62%

医療法人社団(持分なし)

22,115件

約38%

合計

58,508件

100%

出典: M&Aキャピタルパートナーズ公式サイト(令和6年時点)

全体の約62%がいまも「持分あり」として存続しています。2007年(平成19年)の医療法改正以降に設立された法人はすべて「持分なし」のため、持分あり法人の多くは改正前に設立された比較的歴史のある医療法人です。


持分あり・持分なしの違いとM&Aへの影響

M&Aスキームの選択肢と税務上の取り扱いは、持分の有無で大きく異なります。自院がどちらに該当するかを先に確認してから戦略を立てることが重要です。

医療法人 持分あり・持分なし M&A比較

比較項目

持分あり医療法人

持分なし医療法人

財産権

出資額に応じた払戻請求権あり

なし

解散時の残余財産

出資割合に応じて出資者へ分配

国庫帰属

買取請求権

社員退社時に発生

なし

相続税

出資持分は相続財産(高額になるリスクあり)

原則課税なし

主なM&Aスキーム

持分譲渡・社員入れ替え・事業譲渡・合併

社員入れ替え・事業譲渡・合併

対価支払いの選択肢

多い(持分の買取対価を支払える)

限定的(退職金・基金返還等)

持分あり法人の最大の特徴は「対価の支払い方法が多い」点です。買い手が出資持分を直接買い取る形で売却代金を得られるため、売り手にとって手取り金額を明確に設計しやすいメリットがあります。一方、相続税の課税リスクが生前から存在するのが持分あり法人特有の課題です。

持分なし法人の場合、社員を入れ替えて経営権を移転するスキームが主流ですが、売り手が直接「持分売却益」として対価を受け取る仕組みがなく、退職金・役員報酬・基金返還などで実質的な対価を設計する必要があります。


M&Aスキームの種類と選び方

医療法人のM&Aには5つの主要スキームがあります。自院の持分の有無・規模・行政手続きに要する期間・引き継げる許認可の範囲を総合的に判断して選択します。

医療法人M&Aスキーム選択フロー図

スキーム

対象法人

経営権の移転

許認可の扱い

手続き難易度

目安期間

出資持分譲渡

持分あり

別途社員入替が必要

包括承継

比較的容易

数ヶ月

社員入れ替え(経営権承継)

全種類

移転する

包括承継

比較的容易

数ヶ月

事業譲渡

全種類

移転する

個別取得が必要

中程度

数ヶ月〜半年

合併(吸収・新設)

全種類

包括承継

包括承継

難(都道府県認可必要)

6ヶ月〜1年以上

分割

原則持分なしのみ

事業一部を移転

個別判断

中〜難

中〜長期

スキーム①:出資持分譲渡(持分あり医療法人のみ)

持分あり医療法人において最も多く使われるスキームです。出資持分を第三者に譲渡することで法人格ごと承継します。

最重要の注意点: 持分の譲渡だけでは経営権は移転しません。別途「社員の入退社手続き」を行い、新経営者が社員総会で過半数の議決権を持てる状態にして初めて、実質的な経営権の引き渡しが完了します。

  • 雇用契約・取引先契約をそのまま継続できる
  • 病床数を保持したまま引き継げる
  • 手続きが比較的短期間(届出のみで可能なケースもある)

スキーム②:社員入れ替え(経営権承継)

旧社員が退社し、新社員が入社することで経営権を移転する手法です。持分なし医療法人のM&Aではこの方法が主流になります。

  • 法人格が維持されるため、病床数や既存許認可をそのまま引き継げる
  • 債務(潜在債務・簿外債務)も引き継ぐため、デューデリジェンスが重要

スキーム③:事業譲渡

診療所・病院等の事業の全部または一部を、別の法人(または個人)に譲渡する手法です。

  • 最大の注意点: 病院開設許可等の許認可は包括承継されず、買い手が個別に新たな許可を取得する必要があります
  • 病床数の維持には都道府県への申請が別途必要
  • 譲渡する資産・負債の範囲を自由に選べる(選別承継が可能)

スキーム④:合併(吸収合併・新設合併)

2つ以上の医療法人が統合するスキームです。都道府県知事の認可(医療法58条の2)と医療審議会の審議が必要なため、時間と手続きの複雑さが最大のネックです。

  • 東京都の例: 年1〜2回の申請機会。申請から認可書交付まで約6ヶ月以上かかるケースが一般的(東京都保健医療局・令和6年度スケジュール参照)
  • 債権者保護手続き(官報公告等)が必要
  • 許認可は包括的に承継されるメリットあり

スキーム⑤:分割

事業の一部を別の法人に切り出して承継させる手法です。原則として持分なし医療法人のみ利用でき、持分あり医療法人には認められていません。


出資持分譲渡の手続きフロー(STEP別)

持分あり医療法人のM&Aで最も多く使われる「出資持分譲渡」の手続きを、STEP別に解説します。

医療法人 出資持分譲渡の手続きフロー 全7ステップ

STEP 1:専門家への相談・候補先の選定

医療法人M&Aに精通した仲介会社またはM&Aアドバイザーへ相談し、秘密保持契約(NDA)を締結します。医療業界は特有の規制が多く、一般事業会社のM&A経験のみでは対応が難しいケースがあります。医療専門チームの有無を確認することが重要です。

STEP 2:価格算定・企業価値評価

医療法人の売却価格は「時価純資産+のれん代(営業権)」で算定するのが一般的です(詳細は次節参照)。財務・税務のデューデリジェンス前の概算評価がここで行われます。

STEP 3:基本合意書の締結

M&Aの大枠の条件(譲渡価格・スケジュール・独占交渉権など)を合意する段階です。通常、独占交渉権の期間が設定され、並行して複数の買い手と交渉することが制限されます。

STEP 4:デューデリジェンス(詳細調査)

医療法人のM&Aでは、一般事業会社のDDに加え、以下の医療特有の調査が必要です:

  • 財務DD: 収支計算書・貸借対照表・未収診療報酬の実態
  • 法務DD: 定款・社員名簿・役員構成・労使関係
  • 税務DD: 過去の税務申告の適正性、みなし役員報酬の状況
  • 医療特有DD(重要): 診療報酬の請求適正性・保険指定の状況・許認可の有効性・行政処分歴

⚠️ 診療報酬不正請求リスクの注意: 過去に診療報酬の不適切請求があった場合、引き継いだ買い手が返還を求められるリスクがあります。DD段階での入念な確認が必須です。

STEP 5:最終合意・出資持分譲渡契約書の締結

以下の内容を記載した出資持分譲渡契約書を締結します:

  • 譲渡対象医療法人名
  • 譲渡人・譲受人
  • 出資持分の金額・割合
  • 譲渡価格・支払い方法
  • クロージング日
  • 表明保証条項(虚偽がないことの保証)

STEP 6:クロージング(実行)

出資持分の移転と同時に、以下の手続きを行います:

  1. 旧社員の退社手続き
  2. 新社員の入社手続き(← 経営権移転の核心)
  3. 旧役員の辞任・新役員の就任(役員変更手続き)

⚠️ 経営権移転の注意: このSTEPで社員入替を確実に完了させることが、実質的な経営権移転の要です。持分の移転だけで完結させないよう注意が必要です。

STEP 7:行政届出・登記変更(クロージング後)

クロージング後、以下の届出・登記を速やかに完了させます:

手続き

提出先

期限・タイミング

役員変更届出

都道府県

変更後遅滞なく

変更登記(理事長氏名・住所)

法務局

変更後2週間以内

保険医療機関の変更届出

厚生局

速やかに

社会保険関係の変更届出

社会保険事務所

速やかに

その他許可変更

保健所等

個別に確認


出資持分の価格算定・売却相場

医療法人の売却価格は「時価純資産+のれん代(営業権)」で算定するのが業界標準です。

売却価格の算定式(目安)

売却価格 ≒ 時価純資産額 + のれん代(直近正常営業利益 × 3〜5年分)

のれん代の相場: 一般事業会社では営業利益の1〜3年分が目安とされますが、医療法人は非営利で剰余金の配当ができない分、利益が内部に蓄積されやすく、のれん代は営業利益の3〜5年分が目安とされています(複数のM&A専門会社の情報を総合)。

主な評価方法3つ

評価方法

概要

特徴

時価純資産価額方式(修正純資産法)

資産・負債を時価評価して純資産を算出

最も基礎となる方法。相続税評価でも使用

収益還元方式(DCF法)

将来のキャッシュフロー予測で算定

収益力が高い法人に有効

取引事例比較方式

類似M&A取引事例との比較

医療法人の情報は入手しにくい場合がある

売却価格の幅: 実際の成約事例では1,000万円未満〜1億円超まで幅広く、法人の規模・収益力・立地・病床数などによって大きく異なります。

相続税評価における注意点

医療法人は配当が禁止されているため、相続税評価で一般的に使われる「配当還元方式」は利用できません。代わりに「類似業種比準方式(業種分類番号113:その他の産業)」または「純資産価額方式」が使用されます。

類似業種比準方式では、配当要素がゼロになるため比準要素が「利益」と「純資産」の2つのみとなり、一般的な中小企業より評価額が1.5倍程度高くなる傾向があります。内部留保が蓄積された持分あり医療法人ほど相続税負担が重くなるリスクがあり、これがM&A検討のきっかけになるケースも多く見られます。


税務上の注意点(売り手オーナー医師向け)

出資持分のM&Aには複数の課税ポイントがあります。税理士・公認会計士への相談なしに手続きを進めることは避けてください。

医療法人M&A 税務課税パターンの整理

① 出資持分譲渡時の課税(売り手オーナー)

出資持分を売却して得た譲渡益は「譲渡所得」として課税されます(約20%の申告分離課税)。課税される金額は「出資時の金額(取得費)」と「売却時の時価評価額」の差額です。

退職金と組み合わせて税負担を軽減する方法もありますが、退職金の適正額を超える部分は税務上否認されるリスクがあります。役員退職金の適正額の計算は、医療法人専門の税理士に相談することをおすすめします。

② 持分払戻し(退社)時の課税

出資者が退社して持分の払戻しを受ける場合(M&Aではなく法人内部での退社)、払戻額と出資額の差額が「みなし配当」として総合課税される可能性があります。最高税率は45%+復興特別所得税で、譲渡所得課税(約20%)より大幅に税率が高くなります。

持分払戻しと持分譲渡のどちらを選ぶかは、税額計算をした上で判断することが重要です。

③ 持分放棄時のみなし贈与税(注意)

出資者が持分を放棄する場合、放棄した本人への直接課税はありませんが、他の出資者の持分価値が上昇するため、他の出資者にみなし贈与税が課税される可能性があります。また、法人そのものにもみなし贈与税が課税される場合があります。

安易に「持分を放棄すれば税金がかからない」と考えることは危険です。

④ 相続税(持分あり医療法人の場合)

オーナー医師が存命中に事業承継を完了しなかった場合、出資持分は相続財産として相続税の課税対象になります。内部留保が多い持分あり医療法人ほど評価額が高くなり、相続人に多額の相続税負担が生じるリスクがあります。

専門家への相談のご案内: 出資持分の税務は非常に複雑で、個々の法人の状況によって最適解が異なります。実際の手続きは必ず医療法人専門の税理士または公認会計士にご相談ください。


認定医療法人制度|2026年12月31日が期限

持分あり医療法人を持つオーナー医師にとって、今すぐ検討すべき制度が「認定医療法人制度」です。

制度の概要

「持分あり医療法人」が「持分なし医療法人」への移行計画を作成し、厚生労働大臣の認定を受けることで、持分放棄に伴う税負担を大幅に軽減できる制度です。

認定を受けた場合の主な税制優遇:

優遇内容

詳細

医療法人へのみなし贈与税非課税

持分放棄時に医療法人に課されるみなし贈与税が非課税

相続税納税猶予

相続発生時に相続人への相続税納税を猶予

贈与税納税猶予

持分放棄に伴う贈与税の納税猶予(移行後6年経過で免除)

延長後の期限(令和5年度税制改正)

  • 認定申請期限: 2026年(令和8年)12月31日まで
  • 移行期限: 認定後「3年以内」→「5年以内」に緩和(より柔軟な対応が可能に)

出典: 厚生労働省「持分なし医療法人への移行に関する手引書(令和5年5月改訂)」

制度を使うべき法人の特徴

以下に該当する持分あり医療法人は、この制度の活用を優先的に検討することをおすすめします:

  • 内部留保が大きく、出資持分の相続税評価が高い
  • オーナー医師が高齢で後継者が子・親族(医師)にいる
  • M&Aではなく親族内承継を希望している

重要な注意事項

厚生労働省は令和8年度(2026年度)税制改正要望で本制度のさらなる延長を要望しています(財務省への要望書で確認済み、2026年5月時点)。ただし、2026年5月現在、さらなる延長の確定はされていません。現行の申請期限である2026年12月31日を前提に行動計画を立ててください。

専門家への相談: 認定医療法人制度の活用可否・要件充足・手続きは医療法人専門の税理士または公認会計士にご相談ください。


医療法人M&Aでよくある失敗・リスク

実務上よく発生するリスクを整理します。

リスク①:出資持分の取得だけで手続きを終わらせる

最も多い失敗パターンです。買い手が出資持分を全て取得したにもかかわらず、社員入替の手続きを失念・後回しにした結果、旧社員が実質的な経営権を持ち続けるケースがあります。持分の移転と社員の入退社手続きは必ずセットで完了させてください。

リスク②:診療報酬不正請求の引き継ぎ

買収した医療法人が過去に診療報酬を不適切に請求していた場合、買い手が返還を求められるリスクがあります。法務DDおよび医療特有DDの段階で、過去5〜7年分の診療報酬請求内容・保険指定履歴・行政指導歴を確認することが不可欠です。

リスク③:患者・従業員の流出

M&Aの情報が早期に漏れると、患者の転院・スタッフの離職が増加します。情報管理を徹底し、クロージング後の患者・スタッフへの適切なタイミングでの情報共有が重要です。オーナー医師が一定期間引き続き関与する「アーンアウト条項」を設けるケースも多くあります。

リスク④:合併の行政スケジュールを見誤る

合併を選択する場合、都道府県ごとに申請受付のタイミングが年1〜2回に限定されています(東京都の例)。申請機会を逃すと、クロージングが半年以上遅れることがあります。合併を選ぶ場合は、都道府県の年間スケジュールを最初に確認することが必須です。

リスク⑤:MS法人の扱いの見落とし

多くの医療法人は、関連するMS法人(メディカルサービス法人。医療周辺業務を担う営利法人)を一緒に運営しています。医療法人本体とMS法人は別法人のため、M&Aの際にどちらをどう扱うかを明確に取り決める必要があります。MS法人を一緒に売却する場合は、MS法人のM&Aスキームを別途設計してください。


こんな医療法人に向いている・おすすめしないケース

M&Aが特に有効なケース

以下の状況にある医療法人のオーナー医師には、M&Aによる事業承継を積極的に検討することをおすすめします:

  • 後継者が親族にいない(医師免許を持つ子がいない等)
  • 自院の立地や病床数を残したい(廃院より承継で地域医療を継続させたい)
  • 経営の限界を感じている(単独では設備投資・人材採用が難しい)
  • オーナー医師が引退・転居を考えている(60〜70代の方)
  • 持分あり法人で内部留保が大きく、相続税リスクが高まっている

M&Aよりも他の手段が適しているケース

以下のケースでは、M&A以外の選択肢(親族内承継・医師の従業員承継・廃院整理等)を先に検討することをおすすめします:

  • 医師免許を持つ子・後継者がすでにいる(後継者候補への承継が最優先)
  • 法人規模が非常に小さく、のれん代が付かない可能性が高い(事業価値が相対的に小さい場合)
  • 財務状態が悪化しており、買い手がつきにくい(経営再建が先決)
  • 持分なし医療法人で、オーナーが売却益より社会的使命を優先している(NPO的な運営継続を希望する場合)

医療法人M&Aの相談先の選び方

医療法人M&Aは特殊な法制度・税制・許認可の知識が必要なため、一般事業会社のM&Aと同じ仲介会社・税理士では対応しきれないケースがあります。以下の観点で専門家を選んでください。

M&A仲介会社を選ぶポイント

確認事項

理由

医療業界の成約実績があるか

許認可・行政手続きの知識が必要

医療専門チームまたは担当者がいるか

税理士・弁護士との連携体制が重要

買い手候補のネットワークが医師中心か

理事長は医師・歯科医師に限定されるため

費用体系が透明か(着手金・中間金・成功報酬)

高額取引のため事前確認が必須

現時点で医療法人M&Aを取り扱う主な仲介会社(2026年5月時点・公式サイト確認済み)

  • 日本M&Aセンター(医療・介護業界専門チームあり)
  • エムステージ医業承継(医療業界特化)
  • CBパートナーズ(介護・医療専門)
  • 名南M&A(医療承継サポート)
  • みつきコンサルティング

※各社の具体的な手数料は公式サイトおよび個別相談でご確認ください。

M&A仲介会社を選ぶ際の詳しい比較は「M&A仲介会社の選び方・おすすめ比較」をご参照ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 医療法人の出資持分を全部買い取れば、すぐに理事長になれますか?

なりません。出資持分を全て取得しても、それだけでは経営権(社員の地位)は移転しません。別途、社員の退社・入社手続きを行い、新理事長の就任登記と役員変更届出を都道府県へ提出して初めて、法的・実務的な経営権の移転が完了します。また、理事長になるためには医師または歯科医師の資格が必要です(医療法46条の6)。

Q2. 持分なし医療法人でも売却で対価を得ることはできますか?

直接的な「持分売却益」という形での対価は得られませんが、M&Aを通じて社員・役員を引き渡す前提で、退職金・役員報酬・基金の返還などを実質的な対価として設計することが一般的に行われています。具体的な設計は医療法人専門の税理士・M&Aアドバイザーに相談してください。

Q3. 認定医療法人制度の認定申請を今から間に合わせることはできますか?

現行の認定申請期限は2026年12月31日です(令和5年度税制改正により延長)。移行計画の作成から認定申請、都道府県・厚生労働省の審査まで一定の時間がかかるため、できるだけ早めに医療法人専門の税理士・行政書士に相談することをおすすめします。延長のさらなる確定は2026年5月時点では未定です。

Q4. 医療法人M&Aにかかる期間はどれくらいですか?

スキームによって大きく異なります。出資持分譲渡・社員入れ替えのスキームであれば、案件発見からクロージングまで数ヶ月〜半年程度が目安です。合併を選択する場合は都道府県知事の認可手続きが必要なため、6ヶ月〜1年以上かかることがあります。案件の複雑さやデューデリジェンスの範囲によっても変わります。

Q5. 営利法人(株式会社)が医療法人を買収することはできますか?

営利法人は医療法人の社員・理事になれないという制約があるため、直接的な経営参画はできません。ただし、MS法人(メディカルサービス法人)を経由して医療周辺業務に関わることや、医師個人が代表となった医療法人を実質的な傘下に置く形での間接的な関与は行われています。いずれも法的制約の確認が必要です。

Q6. 医療法人のM&Aで最も注意すべき点は何ですか?

「出資持分の移転だけで経営権は移らない」という点と、「診療報酬不正請求リスクの引き継ぎ」の2点が最も重要です。前者は手続き上の失念で発生し、後者は事前のDDで防げます。いずれも医療法人M&A経験のある専門家のサポートなしに進めることはリスクが高いと言えます。


まとめ|医療法人M&Aで最初に確認すべき3点

医療法人のM&Aは、株式会社のM&Aと異なる特殊なルールで動いています。まず以下の3点を確認することが、スムーズな承継の第一歩です。

  1. 自院は「持分あり」か「持分なし」か — 定款を確認する。これによりスキームの選択肢が変わる
  2. 持分ありの場合は認定医療法人制度の活用を検討 — 申請期限は2026年12月31日(現行)
  3. 出資持分の移転と社員入替はセットで完了させる — 持分だけ移転しても経営権は移らない

M&Aの全体設計・価格算定・税務・手続きは医療法人専門の仲介会社・税理士・弁護士と連携して進めることが、後悔のない承継につながります。


関連記事

M&A比較レビュー編集部 のプロフィール画像

M&A比較レビュー編集部

M&A仲介会社の選び方・費用・実績を徹底調査する専門編集部です。