アパレル・繊維業の会社売却や事業承継を検討するなら、「アパレル業界の買い手ネットワークと業界知見を持つ仲介会社」を選ぶことが成否を分けます。理由は、アパレル・繊維業には在庫評価・ブランド価値(のれん)評価・OEMや縫製の取引先承継といった業種特有の論点があり、これを理解した担当者でなければ適正価格での売却が難しいからです。
この記事では、アパレル・繊維業に特化または実績を掲げるM&A仲介会社6社を、業種特化度・手数料体系・対象企業規模・買い手ネットワークの4点で横並び比較します。あわせて、素材メーカー・縫製工場・ブランド・SPA小売など業態別の選び方、アパレル特有の売却チェックリストまで整理しました。
- こんな方向けの記事です:アパレル・繊維(製造・卸・小売・OEM・縫製・生地/素材メーカー等)を営むオーナー経営者で、会社や事業の売却・事業承継の相談先を探している方
- この記事でわかること:アパレル・繊維業に強い仲介会社の違い/手数料の見方/規模・業態別の向き不向き/相談前に押さえるべき業種特有の注意点
本記事の手数料・実績は各社公式サイトの2026年7月18日確認時点の情報です。料金体系や実績数値は改定・更新が頻繁なため、相談前に必ず各社公式ページで最新情報をご確認ください。税務・法務の判断は税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
結論:アパレル・繊維業のM&A仲介会社は「業種特化度×手数料×対象規模」で選ぶ
先に結論をまとめます。アパレル・繊維業の売却相談先は、次の3つの視点で絞り込むのが失敗しない選び方です。
- 業種特化度:アパレル・繊維の買い手ネットワークと業界知見があるか(在庫・ブランド・取引先を評価できるか)
- 手数料体系:着手金・中間金の有無、成功報酬の算定方式(レーマン方式)、最低成功報酬額(ミニマムフィー)
- 対象企業規模:自社の売上・利益規模に合っているか(小規模縫製工場〜中堅ブランドまで最適解が異なる)
規模・業態別のざっくりした目安は次のとおりです。
- 売上数千万円〜の小規模縫製工場・小売店 → マッチングプラットフォーム型(バトンズ・トランビ等)も選択肢
- 売上2億円〜の中堅ブランド・メーカー → アパレル特化型の仲介(インテグループ、アパレルM&A総合センター等)
- 中堅〜大型・グループ再編を伴う案件 → 大手総合仲介(日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ等)
次章から各社を比較していきます。
アパレル・繊維業に強いM&A仲介会社 比較一覧
まず全体像を比較表で示します。アパレル・繊維業への特化度、手数料、対象規模、買い手ネットワークの4点を横並びにしました。
会社名 | 業種特化度 | 着手金・中間金 | 成功報酬 | 対象規模の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
アパレルM&A総合センター | アパレル完全特化 | なし | 売り手0円を標榜 | 中小 | 素材〜縫製〜小売まで対応を標榜 |
インテグループ | アパレル専属コンサル | なし | 完全成功報酬のみ | 売上2億円〜(人気ブランド等は小規模も) | 大手アパレルの買い手ネットワーク |
日本M&Aセンター | 業界セクター専門部隊 | 要確認 | レーマン方式(一般) | 中堅〜 | 全社成約10,000件超・業界事例豊富 |
M&A総合研究所 | 総合(AIマッチング) | なし | 完全成功報酬(レーマン) | 中堅・中小 | 平均6.2か月・最短49日を標榜 |
M&Aキャピタルパートナーズ | 総合(製造業対応) | 着手金なし/中間金あり | 株価レーマン方式 | 中堅〜大型 | 株式価額のみに料率 |
かえでファイナンシャルアドバイザリー | アパレル解説あり | 要確認 | 完全成功報酬を標榜 | 中小〜中堅 | 事業承継対応 |
※出典:各社公式サイト(2026年7月18日確認)。M&Aキャピタルパートナーズの中間報酬は成功報酬の10%。日本M&Aセンター・かえでFAの詳細手数料は公式料金ページで要確認。各社の最低成功報酬額(ミニマムフィー)は本記事執筆時点で未確認のため、相談時に必ず確認してください。
より網羅的なM&A仲介会社全般の比較は、M&A仲介会社おすすめ比較もあわせてご覧ください。手数料の仕組みそのものを詳しく知りたい方はM&A費用・手数料の相場ガイドが参考になります。
アパレル・繊維業に強いM&A仲介会社6社の特徴
ここからは各社の強み・注意点を個別に解説します。いずれも公式情報にもとづく整理で、評判・口コミなど根拠のない評価は記載していません。
1. アパレルM&A総合センター|アパレル完全特化・売り手0円を標榜
アパレル・服飾関連事業への特化を最も明確に掲げる仲介です。素材・生地メーカー、縫製、卸、小売まで川上〜川下の対応を標榜しており、譲渡企業(売り手)は成功報酬まで含めて0円という料金体系を掲げています(公式トップ、2026年7月18日確認)。
- 向いているケース:アパレル・服飾に完全特化した相談先を探しており、売り手側の費用を抑えたい中小企業
- 注意点:運営会社名・設立年・登録支援機関番号・具体的な成約件数が公式トップに明記されていないため、相談時に会社概要と実績を必ず確認してください。買い手側の課金体系も確認が必要です
2. インテグループ|売上2億円〜・大手アパレルの買い手ネットワーク
アパレル業界に精通した専属コンサルタントが担当し、完全成功報酬制(着手金・中間金なし、成功報酬のみ)を採用しています(公式アパレルページ、2026年7月18日確認)。成立しなければ手数料は一切発生しません。
対象規模は売上2億円程度から支援可能で、人気ブランドや好立地の店舗を保有していればさらに小規模でも対応するとしています。強みは「大手アパレルメーカー等の有力な買い手ネットワーク」を持つ点で、会計士等の専門家が対応します。
- 向いているケース:売上2億円以上の中堅アパレルメーカー・ファッションブランドで、着手金リスクを避けつつ有力な買い手を探したい企業
- 注意点:完全成功報酬制のため、成約価額に応じた報酬額(レーマン方式・最低報酬額)を事前に確認しておくとよいでしょう
3. 日本M&Aセンター|業界セクター専門部隊・全社成約10,000件超
「アパレル・繊維製造業界」専門のセクターページと業界ニュースを運営し、業界に精通したコンサルタントを配置しています。全社のM&A成約実績は10,000件超で、成約件数でギネス世界記録に5年連続認定されています(公式、2026年7月18日確認。アパレル単独の件数は非公表)。
公開事例には、ユニチカガーメンテックのボーケン品質評価機構への譲渡(2025年9月予定)、共和レザー×東宝繊維、シャルレ×オンヨネなどがあります。
- 向いているケース:中堅以上の規模で、業界事例と買い手候補の厚みを重視する繊維製造・アパレル企業
- 注意点:セクターページに手数料の記載はありません。一般に着手金・中間金・成功報酬型(レーマン方式)とされるため、公式料金ページで最新の体系を確認してください
日本M&Aセンターの詳細は日本M&Aセンターとはで個別に解説しています。
4. M&A総合研究所|完全成功報酬・スピード成約を標榜
売り手は完全成功報酬制(着手金・中間金・月額報酬0円)で、成功報酬は譲渡価額ベースのレーマン方式です(公式、2026年7月18日確認)。自社システムを活用し、平均6.2か月・最短49日での成約を掲げています。
AIマッチングと企業データベースを活用した中堅・中小企業のM&Aが特徴です。アパレル特化ページの有無は要確認ですが、繊維製品製造のM&A動向を発信しています。
- 向いているケース:着手金をかけずに、できるだけ早く売却を進めたい中堅・中小企業
- 注意点:スピードを重視する場合でも、在庫評価やブランド価値の精査は丁寧に行う必要があります。担当者のアパレル業界知見を確認しましょう
M&A総合研究所の詳細はM&A総合研究所とはをご覧ください。
5. M&Aキャピタルパートナーズ|株価レーマン方式・中堅〜大型
着手金無料で、株式価額のみに料率をかける「株価レーマン方式」を採用しています。売り手・買い手同一体系で、中間報酬は成功報酬の10%です(公式、2026年7月18日確認)。
レーマン料率は、株式価額5億円以下5%/5〜10億円4%/10〜50億円3%/50〜100億円2%/100億円超1%です。負債を含む「移動総資産」ではなく株式価額のみを基準とするため、負債の大きい企業では総額を抑えやすい特徴があります。対象は中堅〜比較的大型で、アパレルは製造業セクターの中で言及されています。
- 向いているケース:株式価額ベースでの報酬体系を重視する、中堅〜大型のアパレル・繊維企業
- 注意点:中間報酬(成功報酬の10%)が発生する点、最低成功報酬額を事前に確認してください
M&Aキャピタルパートナーズの詳細はM&Aキャピタルパートナーズとはで解説しています。
6. かえでファイナンシャルアドバイザリー|事業承継対応・完全成功報酬を標榜
アパレル業界のM&A(事業承継)検討向けの解説を発信し、完全成功報酬制を掲げるM&A・事業承継仲介です。事業承継のニーズに対応する体制を持ちます。
- 向いているケース:後継者不在で事業承継型のM&Aを検討している中小〜中堅のアパレル・繊維企業
- 注意点:詳細な手数料体系・対象規模・アパレル実績は公式で個別に確認してください
【業態・規模別】あなたの会社に向いている仲介会社の選び方
アパレル・繊維業は業態によって論点が大きく異なります。自社の業態・規模に合わせて相談先を絞り込みましょう。
業態・規模 | 重視すべき点 | 向いている相談先の型 |
|---|---|---|
小規模縫製工場・個人店(売上数千万円台) | 技術・取引先の承継、コストを抑えた売却 | マッチングプラットフォーム型(バトンズ・トランビ等) |
中堅アパレルメーカー・ブランド(売上2億円〜) | ブランド価値評価、買い手ネットワーク | アパレル特化型仲介(インテグループ、アパレルM&A総合センター) |
素材・生地メーカー、OEM(技術資産あり) | 技術・設備・取引先の評価、業界事例 | 業界セクター部隊を持つ大手(日本M&Aセンター) |
SPA・小売チェーン(店舗網あり) | 立地・在庫・EC資産の評価 | 特化型+大手の複数比較 |
中堅〜大型・グループ再編 | 大型案件の実績、料金の透明性 | 大手総合仲介(日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ) |
小規模・自分で買い手を探したい場合はプラットフォームも選択肢
売上規模が小さい縫製工場や小売店で、コストを抑えて自分でも買い手を探したい場合は、バトンズ・トランビ(TRANBI)・M&Aサクシードなどのマッチングプラットフォームも選択肢になります。アパレル・繊維・雑貨の売却案件カテゴリがあり、スモールM&Aに向いています。バトンズの詳細はバトンズとはを、小規模M&A全般は中小企業・小規模M&Aガイドをご覧ください。
アパレル・繊維業のM&Aで特に注意すべき3つのポイント
アパレル・繊維業の売却では、他業種にはない評価の難しさがあります。仲介会社を選ぶ際は、次の3点を理解した担当者かを確認してください。
1. 在庫評価の難しさ
アパレルは流行・季節性によって在庫価値が大きく変動します。デューデリジェンス(DD)時点の評価と買収後の実態が乖離しやすく、在庫の評価方法と価格への反映をどう扱うかが交渉の要点になります。滞留在庫・季節外れ在庫の扱いを明確にできる仲介が望ましいです。
2. ブランド価値(のれん)の評価
ブランドという無形資産の評価が売却価格を大きく左右します。アパレルの売却相場は、営業利益・EBITDAの2〜4倍が多く、EBITDA倍率のボリュームゾーンは3〜5倍とされます(出典:トランビ・M&Aリード・M&Aロイヤルアドバイザリー、2026年7月18日確認)。ブランド力・EC成功・海外展開のある企業は高倍率になる傾向があります。統合後のブランド毀損・組織文化の衝突リスクにも配慮が必要です。
3. 技術・取引先ネットワークの承継
OEM・縫製工場・素材メーカーでは、技術者や取引先との関係そのものが企業価値です。キーパーソンの引き継ぎや取引先との契約承継をどう設計するかが、譲渡後の事業継続を左右します。
上記の相場や評価はあくまで一般的な目安です。実際の企業価値評価・税務・契約の判断は、税理士・弁護士・M&A専門家に個別にご相談ください。
仲介会社に相談する前のチェックリスト
複数社に相談する前に、次の点を整理・確認しておくと比較がスムーズです。
- 手数料の内訳:着手金・中間金の有無、成功報酬のレーマン方式(株価基準か総資産基準か)、最低成功報酬額(ミニマムフィー)
- アパレル・繊維の実績:自社と近い業態(縫製・素材・ブランド・小売等)の成約事例があるか
- 買い手ネットワーク:自社が想定する買い手層(同業・異業種・投資ファンド等)にアクセスできるか
- 在庫・ブランドの評価方針:業種特有の論点をどう価格に反映するか
- 秘密保持と情報開示の段階設計:従業員・取引先に知られずに進められるか
- 専任契約か非専任契約か:契約形態と解約条件
M&A売却の全体の流れを知りたい方はM&A・会社売却の流れを、事業承継の基礎は事業承継とはで確認できます。
こんなアパレル・繊維企業はこの相談先がおすすめ
最後に、タイプ別のおすすめをまとめます。
- アパレルに完全特化した相談先で費用を抑えたい中小企業 → アパレルM&A総合センター
- 売上2億円以上・有力な買い手ネットワークを重視する中堅ブランド/メーカー → インテグループ
- 業界事例と買い手候補の厚みを重視する中堅以上の企業 → 日本M&Aセンター
- 着手金なしで早く売却を進めたい中堅・中小企業 → M&A総合研究所
- 株式価額ベースの報酬体系を重視する中堅〜大型企業 → M&Aキャピタルパートナーズ
- 後継者不在で事業承継型M&Aを検討する企業 → かえでファイナンシャルアドバイザリー
- 売上数千万円規模で自分でも買い手を探したい小規模事業者 → バトンズ・トランビ等のマッチングプラットフォーム
あえて選ばない方がよいケース
- 売上規模が小さいのに、最低成功報酬額の高い大手だけに相談すると、報酬負担が売却額に見合わない場合があります。規模に合った相談先を選びましょう
- アパレル業界の知見がない担当者に、在庫やブランド評価の重要な案件を任せると、適正価格での売却が難しくなることがあります
- 1社だけの提案で即決せず、必ず複数社を比較してから判断することをおすすめします
よくある質問(FAQ)
Q. アパレル・繊維業の売却相場はどのくらいですか?
A. 一般的には営業利益・EBITDAの2〜4倍程度が多く、EBITDA倍率のボリュームゾーンは3〜5倍とされます(2026年7月18日確認)。ブランド力・EC・海外展開のある企業は高倍率になる傾向があります。ただし個別の企業価値は在庫・ブランド・取引先の状況で大きく変わるため、正確な評価は専門家にご相談ください。
Q. 手数料はどこで差が出ますか?
A. 着手金・中間金の有無、成功報酬のレーマン方式(株式価額基準か移動総資産基準か)、最低成功報酬額(ミニマムフィー)で総額が変わります。売り手完全成功報酬を掲げる会社でも、最低報酬額が設定されている場合があるため、相談時に必ず確認してください。
Q. アパレル特化の仲介と大手総合仲介、どちらがよいですか?
A. 中堅ブランドや業種特有の評価が重要な場合は特化型が、業界事例と買い手候補の厚み・大型案件の実績を重視する場合は大手総合仲介が向いています。両方に相談して提案内容を比較するのが安全です。
Q. 従業員や取引先に知られずに売却できますか?
A. 秘密保持契約と段階的な情報開示を前提に進めるのが一般的です。仲介会社の秘密保持体制と開示のタイミング設計を、相談時に確認してください。
Q. 2026年にアパレル・繊維業のM&Aは増えますか?
A. 2025年で事業承継税制の特例計画の提出期限が終了したことなどを背景に、出口戦略としての繊維製品製造M&Aが2026年にかけて増加するとの予測があります(出典:M&A総合研究所/mastory、2026年7月18日確認)。ESG・再生素材対応が無形資産評価を押し上げる要因とも指摘されています。
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