半導体・電子部品製造業のM&A仲介会社おすすめ9選|手数料・最低報酬・外為法リスクを徹底比較【2026年版】
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半導体・電子部品製造業のM&A仲介会社おすすめ9選|手数料・最低報酬・外為法リスクを徹底比較【2026年版】

半導体・電子部品製造業の売却に強いM&A仲介会社9社を、手数料・最低報酬・成功報酬の計算基準で比較。借入が大きい会社ほど効く「レーマン方式の基準」の違いと、外資への売却で必要な外為法の事前届出まで売り手目線で解説します。

M&A比較レビュー編集部2026/7/1312分で読める

半導体・電子部品製造業の会社を売るなら、仲介会社は「①成功報酬の計算基準(移動総資産か、株価・オーナー受取額か)」「②最低報酬の実額」「③外資買い手を含める場合の外為法対応」の3点で比較するのが結論です。設備投資で借入が大きくなりがちなこの業種は、同じ売却額でも計算基準の違いだけで手数料が数百万〜数千万円変わります。

この記事では、プリント基板・実装(EMS)・電子部品加工・半導体製造装置の部品加工・検査請負といった、年商数億〜数十億円規模のメーカーのオーナーが実際に相談できる仲介会社9社を、公式情報をもとに横並びで整理しました(すべて確認日2026-07-14時点)。

この記事でわかること

  • 半導体・電子部品に対応する主要仲介会社9社の手数料・最低報酬・特化度の比較
  • 譲渡価額のレンジ別(〜1億/1〜5億/5〜30億/30億超)に、どこへ相談すべきか
  • 「移動総資産レーマン」と「株価レーマン」で手数料がどれだけ変わるかの試算
  • 2024年8月に半導体製造関連機器・先端電子部品が外為法のコア業種へ追加された影響
  • 買い手が必ず見る、この業種固有の減額ポイント(顧客集中・設備更新・滞留在庫・土壌汚染)

こんな方に向いています

  • 後継者不在で、電子部品・基板・実装・半導体関連の会社の譲渡を検討しているオーナー
  • 設備更新の投資負担が重く、大手グループ入りを選択肢に入れている経営者
  • すでに1社から提案を受けており、他社と比べる基準がほしい方
  • 技術・図面・顧客リストの流出が怖くて、まだ誰にも相談できていない方
半導体・電子部品製造業のM&A仲介会社を比較するイメージ

結論:半導体・電子部品の売り手は、この3タイプから選ぶ

製造業の後継者不在率は42.4%(出典: 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」、確認日2026-07-14)。全業種平均の50.1%より低いとはいえ、依然として高い水準にあり、事業承継の現実的な選択肢としてM&Aを検討するオーナーは増えています。

半導体・電子部品の売り手が現実的に選べる相談先は、大きく3タイプに分かれます。まず自社がどのタイプを軸に据えるかを決めてから、個別の会社を比べるほうが早く決まります。

タイプ

代表的な会社

向いている売り手

業種特化型(エレクトロニクス・半導体に絞っている)

電気・電子・機械のM&A、M&Aオール

譲渡価額が数千万〜数億円。商流や工程を理解した担当者に相談したい

製造業特化型(製造業全般に強い)

M&Aベストパートナーズ、名南M&A

譲渡価額1億〜30億円。設備・技術の評価をきちんとしてほしい

大手総合型(上場仲介・FA)

ストライク、日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、M&A総合研究所、レコフ

譲渡価額5億円以上。買い手候補の幅(大手電子部品メーカー・EMS・ファンド)を最大化したい

現時点では、「業種特化型1社 + 大手総合型1社」の2社で話を聞き、手数料の総額試算と買い手候補リストを比べるのが、費用と買い手の幅の両方をバランスさせる進め方として合理的です。

製造業全体の仲介会社比較は製造業のM&A仲介会社おすすめ、仲介会社選びの基本はM&A仲介会社の選び方ガイドで解説しています。

半導体・電子部品製造業に対応するM&A仲介会社9社【比較一覧】

各社の公式サイト(料金ページ)で確認できた内容を、売り手(譲渡側)の目線で並べました。「未確認」は各社が公式に金額・料率を開示していない項目で、推測では埋めていません。面談時に必ず書面で確認してください。

仲介会社

着手金

中間金

成功報酬の計算基準

最低報酬(売り手)

業種特化度

電気・電子・機械のM&A

なし

譲渡側は未確認(譲受側は100万円)

譲渡額

300万円(税別)

★★★ エレクトロニクス専業

M&Aオール

なし

基本合意後に発生(額は未確認)

未確認

未確認

★★★ 半導体業界ページを保有

M&Aベストパートナーズ

なし

250万円 または 成功報酬の10%

株式価値

設定あり(額は未確認)

★★ 製造業特化

ストライク

無料

100〜300万円(総資産額に連動)

オーナー受取額

2,000万円(※第三者情報。要確認)

★ 全業種・東証プライム

日本M&Aセンター

あり

未確認

移動総資産

未確認(公式非開示)

★★ 電子部品・機械器具の業種別チーム

M&Aキャピタルパートナーズ

無料

手数料総額の約10%

株価

2,500万円

★ 全業種・東証プライム

M&A総合研究所

無料

無料

譲渡価額

1,500万円(※要確認)

★ 全業種・東証グロース

名南M&A

あり(66〜220万円・税込)

移動総資産

1,100万円(税込)

★★ 東海の製造業

レコフ

無料(要確認)

株価

2,500万円(税別)

★ 大型・クロスボーダー

※すべて各社公式サイトの確認日2026-07-14時点の表記に基づきます。手数料は改定されるため、契約前に必ず最新の料金表と契約書で確認してください。

この表で最も見落とされやすいのが、「成功報酬の計算基準」の列です。半導体・電子部品製造業は実装機・検査装置・クリーンルームなどへの投資で有利子負債が大きくなりやすく、負債を含む「移動総資産」を基準にするか、負債を含まない「株価・株式価値・オーナー受取額」を基準にするかで、支払額が大きく変わります。詳しくは後述の試算で示します。

各社の特徴と、おすすめできる企業/おすすめしない企業

1. 電気・電子・機械のM&A|最低報酬300万円のエレクトロニクス専業

運営はBlue.A.Advisory co.,ltd.。電子部品メーカー・電子部品商社・OEM/ODM・電機/機械メーカーに対象を絞った、数少ないエレクトロニクス専業の仲介です(公式サイト、確認日2026-07-14)。

  • 着手金なし。成功報酬は「譲渡額レーマン」と記載(具体的な料率は公式で確認できず=未確認)
  • 最低報酬は譲渡側300万円(税別)。国内仲介会社の中では際立って低い水準
  • 代表が大手半導体商社出身で、商流・サプライチェーンの理解を明示している
  • 仕入先の移管・集約支援などの周辺サービスも提供

おすすめできる企業:譲渡価額が数千万〜3億円程度で、大手の最低報酬(1,500万〜2,500万円)では手数料負担が重すぎる小規模メーカー。基板・部品・治具など工程が特殊で、業界用語が通じる担当者に話したい会社。

おすすめしない企業:譲渡価額が10億円を超え、国内外の大手やファンドまで買い手候補を広げたい会社。会社規模・成約実績件数・設立年が公式で確認できないため、実績の裏取りを重視する場合は面談で必ず具体的な成約事例(工程・規模)を質問してください。

公式: https://electro-ma.com/price/

2. M&Aオール|半導体業界ページを持ち、事業部単位の切り出しにも対応

運営は株式会社INNOVATION LEADERS(東京都港区)。半導体業界向けの専用ページを持ち、事業部単位のM&A(カーブアウト)にも対応すると明記しています(公式サイト、確認日2026-07-14)。

  • 相談料・着手金は無料。基本合意までは費用が発生しないと公式に記載
  • 中間金・成功報酬は基本合意後に発生。実額・料率は公式で確認できず(未確認)
  • 「最短3ヶ月・平均6ヶ月」を公称。黒字企業の仲介に特化

おすすめできる企業:会社全体ではなく「半導体装置部品の事業だけ」「実装ラインだけ」を切り出して譲渡したい会社。まず費用ゼロで買い手の反応を見たい経営者。

おすすめしない企業:手数料の全体像を最初に確定させたい会社(成功報酬の料率が公式非開示のため、初回面談で料金表の提示を求める必要があります)。成約実績件数の開示を重視する場合も同様です。

公式: https://ma-all.net/business/semiconductor/

3. M&Aベストパートナーズ|製造業特化+株式価値ベースの成功報酬

M&Aベストパートナーズ 製造業向けM&Aページ

製造業・建設業・不動産・医療などに特化した仲介会社で、金属加工・精密機械・化学製品といった専門性の高い製造業に実績があります。全国8拠点。

  • 着手金・月額報酬なし。中間金は基本合意時に250万円 または 成功報酬の10%
  • 成功報酬は株式価値ベースのレーマン方式(5億円以下5%/5億超〜10億4%/10億超〜50億3%/50億超〜100億2%/100億超1%・公式、確認日2026-07-14)
  • 最低報酬の設定はあるが、公式ページで金額は確認できず(未確認)

おすすめできる企業:譲渡価額1億〜30億円で、設備投資の借入が大きい電子部品・基板メーカー。負債を含めない株式価値ベースのため、移動総資産ベースの会社より手数料が抑えられる可能性があります。

おすすめしない企業:中間金を一切払いたくない会社。中間金は成約に至らなくても原則返還されないのが業界慣行のため、契約書の返還条項を必ず確認してください。

公式: https://mabp.co.jp/rate/

4. ストライク|オーナー受取額ベースで、借入が大きくても手数料が膨らみにくい

ストライク公式サイト

東証プライム上場。着手金無料で、基本合意までの交渉が無料(相談・企業評価・仲介契約・買い手提案まで)と公式に明記しています。

  • 中間金(基本合意報酬)は総資産額に応じて100万円(総資産10億円以下)/200万円(10億超〜50億)/300万円(50億超)
  • 成功報酬はオーナー受取額ベースのレーマン方式(4億円以下の部分2%/4億超〜5億5%/5億超〜10億4%/10億超〜50億3%/50億超〜100億2%/100億超1%・公式、確認日2026-07-14)
  • 4億円以下の部分が2%と低いのが特徴。オーナーが実際に受け取る額を基準にするため、有利子負債が大きくても手数料が受取額を上回りにくい設計
  • 最低報酬2,000万円は中小企業庁公表データ経由の第三者情報。公式での再確認が必要

おすすめできる企業:譲渡価額5億〜30億円で、設備投資の借入が重い電子部品・半導体関連メーカー。上場企業の透明性を重視するオーナー。

おすすめしない企業:譲渡価額が1〜2億円程度の小規模案件(最低報酬の負担が相対的に重くなります)。

公式: https://www.strike.co.jp/feature/fee.html

5. 日本M&Aセンター|買い手ネットワークの広さと業種別チーム

日本M&Aセンター 製造業向けM&Aページ

業界最大手。「電子部品・機械器具製造業界」の業種別M&A動向ページを公開しており、データセンター・EVパワーエレクトロニクスを成長ドライバーとする業界分析を発信しています。

  • 着手金あり(譲渡側は調査・資料作成の開始時。企業評価料を含む)。中間金の有無・額は公式手数料ページで確認できず(未確認)
  • 成功報酬は移動総資産ベースのレーマン方式(5億以下5%/5億超〜10億4%/10億超〜50億3%/50億超〜100億2%/100億超1%・公式、確認日2026-07-14)
  • 最低報酬は公式非開示(未確認)
  • 2026年3月期のグループ成約組数は1,061組(前期比17組減)。同社は成約可能性を重視した意図的な絞り込みと説明しています(確認日2026-07-14/IR原典での再確認を推奨)

おすすめできる企業:譲渡価額5億円以上で、大手電子部品メーカー・EMS・PEファンドまで買い手候補を広げたい会社。地銀・信金経由の候補も含めて幅広く当てたいオーナー。

おすすめしない企業:着手金を払いたくない会社。また、有利子負債・買掛金が大きい会社は、移動総資産ベースのレーマン方式で手数料が膨らみやすい点に注意が必要です(次章の試算参照)。

公式: https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/

6. M&Aキャピタルパートナーズ|着手金無料・株価レーマン、ただし最低報酬2,500万円

M&Aキャピタルパートナーズ公式サイト

東証プライム上場。着手金無料かつ、負債を含めない株価レーマン方式を採用しています(公式、確認日2026-07-14)。

  • 中間金は譲渡先候補の決定後に、手数料総額の約10%(残り約90%が成功報酬)
  • 最低報酬は2,500万円(売り手・買い手共通)
  • 中堅規模(譲渡価額数億〜数十億円)の案件に強み

おすすめできる企業:譲渡価額10億円以上で、負債の影響を受けない手数料体系を望む会社。

おすすめしない企業:譲渡価額1〜3億円規模の会社。最低報酬2,500万円は本領域では高い部類で、実質的な手数料率が跳ね上がります。

公式: https://www.ma-cp.com/about/fee/

7. M&A総合研究所|売り手は完全成功報酬

東証グロース上場。譲渡企業は着手金・中間金ともに無料の完全成功報酬制で、製造業(メーカー)専任アドバイザーによる支援を掲げています。

  • 成功報酬は譲渡価額ベースのレーマン方式
  • 最低報酬1,500万円(売買金額3億円以下の場合に適用との記載/同社関連メディア経由。公式手数料ページでの再確認が必要
  • 「最短3ヶ月成約」を公称

おすすめできる企業:成約するまで一切費用を払いたくないオーナー。短期間で決着させたい会社。

おすすめしない企業:半導体・電子部品の工程理解が深いアドバイザーを最優先する会社(業種特化度は専業型より低め)。譲渡価額が1〜2億円の案件も最低報酬の負担が重くなります。

公式: https://masouken.com/

8. 名南M&A|東海の車載電子部品・基板メーカーに強い

名証上場。名古屋を基盤に、中部圏の自動車・電子部品サプライチェーンに近い位置にいます。拠点は名古屋・東京・静岡・大阪・高松。

  • 着手金あり(簿価総資産5億円以下66万円/5億超〜20億110万円/20億超220万円・税込)
  • 成功報酬は移動総資産額ベースのレーマン(5億以下5.5%/5億超〜10億4.4%/10億超〜50億3.3%/50億超〜100億2.2%/100億超1.1%・税込)。移動総資産額=時価総負債+譲渡額+役員退職金
  • 最低報酬1,100万円(税込)

おすすめできる企業:愛知・静岡・三重の車載電子部品/基板/実装メーカー。地元の買い手・金融機関ネットワークを重視するオーナー。

おすすめしない企業:全国・海外まで買い手候補を広げたい会社。着手金を避けたい会社。負債が大きい会社(移動総資産ベースのため手数料が膨らみやすい)。

公式: https://www.meinan-ma.com/business/ma/support/fee.html

9. レコフ|大型案件・海外への売却を視野に入れるなら

1987年創業の老舗FA。創業以来1,000件以上の成約支援、約2万社の顧客基盤を持ち、半導体業界のM&A動向コラムも自社で公開しています。

  • 成功報酬は株価レーマン方式(負債を含めない)
  • 最低報酬2,500万円(税別)
  • 着手金は基本合意まで無料との記載(公式での再確認を推奨)

おすすめできる企業:譲渡価額10億円超、または海外企業への売却(クロスボーダー)を視野に入れる会社。

おすすめしない企業:譲渡価額5億円未満の中小・小規模案件(最低報酬が重すぎます)。

公式: https://www.recof.co.jp/fee/

譲渡価額のレンジ別|どこに相談すべきか

自社の譲渡価額のおおよそのレンジがわかれば、相談先はかなり絞れます。下表は各社の最低報酬・公表している対象レンジをもとにした編集部の整理で、各社の公式な受託基準ではありません。

譲渡価額の目安

現実的な相談先

〜1億円(小規模・事業譲渡を含む)

電気・電子・機械のM&A/M&Aオール/マッチングプラットフォーム(バトンズ等)/事業承継・引継ぎ支援センター

1億〜5億円

電気・電子・機械のM&A/M&Aベストパートナーズ/名南M&A(東海)/M&A総合研究所

5億〜30億円

M&Aベストパートナーズ/ストライク/日本M&Aセンター/M&Aキャピタルパートナーズ

30億円〜・クロスボーダー

レコフ/日本M&Aセンター/証券系・大手FA

譲渡価額の見当がつかない場合は、まず会社売却はいくらで売れる?相場・算定方法で目安を掴んでから相談先を選ぶと、最低報酬で損をしにくくなります。

手数料で失敗しない最重要ポイント:レーマン方式の「基準」を確認する

同じ「成功報酬5%」でも、5%を掛ける金額(基準)が会社によって違います。 半導体・電子部品製造業は設備投資の借入が大きい会社が多いため、この違いが手数料額を大きく動かします。

主な基準は3つです。

  • 移動総資産:譲渡額 + 引き継がれる負債(=負債を含む。日本M&Aセンター、名南M&Aなど)
  • 株価/株式価値/譲渡価額:株式の売買代金のみ(=負債を含まない。M&Aキャピタルパートナーズ、M&Aベストパートナーズ、レコフ、M&A総合研究所など)
  • オーナー受取額:オーナーが実際に受け取る金額(ストライク)

試算:譲渡価額3億円・有利子負債3億円の基板メーカーの場合

実装機・検査装置の更新で借入3億円を抱える会社が、株式を3億円で譲渡するケースを、レーマン方式の第1段階(5億円以下5%)で単純計算すると次のようになります。

計算基準

計算式

成功報酬(概算)

株価/譲渡価額ベース

3億円 × 5%

1,500万円

移動総資産ベース

(3億円+3億円)× 5%

3,000万円

差額は約1,500万円。設備産業である半導体・電子部品では、この差はさらに開くこともあります。

※上記は1段階のみの単純計算で、最低報酬や複数段階の累積計算、税は反映していません。実際の金額は必ず各社の正式見積もりで確認してください。税務上の取り扱いについては税理士へのご相談をおすすめします。

確認すべき質問はシンプルです。「御社の成功報酬は、何に対して何%を掛けますか。当社の借入を含みますか」——この一問で、手数料の構造はほぼ判明します。

レーマン方式の計算の詳細はレーマン方式とは|計算例付き解説、各社の手数料の横並びはM&A仲介会社 手数料比較 完全ガイドで解説しています。

半導体・電子部品固有の論点:外為法の「コア業種」に該当する可能性

この業種の売り手が、他業種の記事では絶対に読めない注意点がこれです。

2024年8月16日、財務省は外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づく対内直接投資審査のコア業種に、半導体製造関連機器・先端電子部品の製造業を追加しました(工作機械部品、船舶用機関、光ファイバーケーブル、複合機の製造業も同時追加。出典: Bloomberg 2024年8月16日、財務省「対内直接投資審査制度」、確認日2026-07-14)。

売り手にとっての実務的な影響は、次のとおりです。

  • 買い手が「外国投資家」に該当する場合(外資系企業、外資が一定比率入るファンド、外国法人の日本子会社など)、コア業種に属する事業を営む会社の株式取得等には、原則として事前届出が必要になります。コア業種は事前届出の免除制度を原則利用できません
  • 非上場企業も対象です。事業譲渡・会社分割による指定業種の事業移転も、審査の対象になり得ます
  • 届出から審査完了までには一定の期間を要し、クロージングまでのスケジュールが延びる可能性があります

つまり、外資やファンドを買い手候補に含めるなら、外為法の届出実務を理解している仲介会社・FAを選ぶ必要があるということです。初回面談で「外為法のコア業種に当社が該当する可能性はありますか。外資が買い手になった場合、事前届出の対応経験はありますか」と質問してください。この問いに具体的に答えられない担当者は、外資案件では避けたほうが無難です。

注記:該当性の判断は事業内容ごとに個別に異なります。断定的な自己判断は避け、必ず仲介会社および弁護士を通じて財務省・経済産業省の見解を確認してください。※法務の詳細は弁護士等の専門家への相談をおすすめします。

買い手が必ず見る、この業種の減額ポイント

半導体・電子部品のデューデリジェンス(DD)では、他業種にはない論点が価格を動かします。売り手が事前に潰しておくほど、価格の下振れを防げます。

価格が上がりやすい要素

  • EV向けパワー半導体、車載センサー、高周波部品、パッケージ基板関連など、成長分野の技術を持っている
  • 大手セットメーカーの認定サプライヤー資格(監査通過実績、IATF16949/ISO9001などの品質認証)がある
  • 生産技術者・熟練技能工が在籍し、定着している
  • 実装機・検査装置が更新済みで、稼働率が高い

価格が下がりやすい要素(=事前に対策すべき論点)

  • 顧客集中リスク:売上の過半が特定セットメーカー1社に依存している。さらに主要顧客との契約にチェンジ・オブ・コントロール条項(支配権の異動で解約できる条項)があると、買い手は取引解消リスクを織り込みます
  • 設備の老朽化・更新投資の先送り:将来の設備投資(CAPEX)として、価格から控除されます
  • 在庫の陳腐化:シリコンサイクルに起因する長期滞留在庫・デッドストック
  • 土壌汚染リスク:メッキ・洗浄工程を持つ電子部品工場では、有機溶剤・重金属による土壌汚染が偶発債務としてDDで論点化しやすい領域です(土壌汚染対策法)
  • 技術の属人化:創業者や特定の熟練工に工程条件・ノウハウが属していて、承継後に再現できない

DDの準備手順はM&A DD 売り手の準備チェックリスト、価格を上げる打ち手はM&A 売却価格を上げる方法で詳しく解説しています。

技術情報の流出をどう防ぐか(この業種で最も重い論点)

半導体・電子部品の売り手にとって、DDで開示する図面・工程条件・歩留まりデータ・顧客リストは、買い手候補(多くは同業=競合)にとって最も価値のある情報です。買収に至らなかった場合の情報流出リスクは、他業種より格段に高いと考えるべきです。

仲介会社を選ぶときは、次の3点を必ず確認してください。

  1. 同業他社を買い手候補に入れるかどうかを、こちらの判断で除外できる契約になっているか(ネームクリア=候補企業名を売り手が事前承認する運用があるか)
  2. 段階的開示の設計があるか。NDA締結後でも、歩留まりデータや図面は最終段階まで開示を留保できるか
  3. 仲介会社自身の情報管理体制(データルームの権限管理、閲覧ログ、印刷・ダウンロード制限)

具体的な対策はM&A 秘密保持・情報漏洩リスク対策にまとめています。

売却価格の相場感(EBITDA倍率)

電子部品業界の売却価格は、EBITDAの5〜8倍程度が一つの目安とされます(出典: M&A総合研究所「電子部品業界のM&A」、確認日2026-07-14)。保有技術の独自性によって上下します。

ただし、年商数億円規模の中小メーカーでは、実務上は時価純資産+営業利益の3〜5年分(年買法)で算定されるケースのほうが多く、EV/EBITDA換算では概ね3〜5倍に収まることも珍しくありません。

市場環境は追い風です。JEITA/WSTSの2026年春季予測では、AI・データセンター向け需要の拡大を背景に、世界半導体市場・日本市場ともに前年から大きく伸びる見通しが示されています(出典: JEITA/WSTS「2026年春季 世界半導体市場予測」2026年6月2日公表、確認日2026-07-14)。ただし市場予測は改定が繰り返されるため、具体的な予測値をそのまま売却判断の根拠にするのは避け、「買い手の投資意欲が高まりやすい局面である」という文脈で捉えてください。

重要:実際の価格は、買い手の戦略・技術の独自性・顧客構成で大きく振れます。相場はあくまで交渉の出発点として捉えてください。株価算定や税務上の評価については、税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。

算定方法の詳細はEBITDA倍率とは|M&A企業価値算定の基本を参照してください。

仲介会社の初回面談で聞くべき質問リスト

半導体・電子部品セグメントに限定した成約件数を公表している仲介会社は、本記事の調査時点では確認できませんでした。業種別実績はどの会社も開示していないというのが実態です。だからこそ、面談の場で口頭で確認するしかありません。

  1. 「当社と同じ工程・同じ規模(年商◯億円)の成約実績は、直近何件ありますか」 — 「製造業に強い」だけでは判断材料になりません
  2. 「成功報酬は何に何%を掛けますか。当社の借入は含まれますか」 — 移動総資産か、株価・受取額か
  3. 「最低報酬はいくらですか」 — 小規模案件では実質手数料率がこれで決まります
  4. 「専任契約ですか。テール条項の期間は何年ですか」 — 契約後、他社に相談できなくなる期間の確認
  5. 「外為法のコア業種に該当する可能性はありますか。外資が買い手の場合の事前届出の経験は」 — この業種固有の必須質問
  6. 「候補企業名は、開示前にこちらが承認できますか(ネームクリア)」 — 競合への情報流出防止
  7. 「中間金は、成約しなかった場合に返還されますか」 — 契約書の返還条項を確認
  8. 「登録M&A支援機関ですか」 — 補助金の利用要件に直結します

契約条件の注意点はM&A専任契約 vs 非専任契約M&A テール条項とはで解説しています。

費用を抑える公的支援:事業承継・M&A補助金

仲介手数料・DD費用の一部は、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)で補助を受けられる可能性があります。

  • 補助率:2/3
  • 補助上限:600万円(DD費用を計上する場合は800万円
  • 2026年度からは小規模売り手支援類型(上限150万円)が新設
  • 対象経費:FA・仲介手数料、DD費用、セカンドオピニオン、表明保証保険料など
  • 利用条件:登録M&A支援機関に依頼していること

(出典: 中小企業庁「事業承継・M&A補助金 十五次公募」2026年5月22日公表、事業承継・M&A補助金 公式サイト。確認日2026-07-14)

公募回次によって要件・上限は変わります。申請を検討する場合は、必ず最新の公募要領を確認し、依頼先が登録M&A支援機関データベースに掲載されているかを照合してください。

補助金の詳細は事業承継・M&A補助金(2026年最新)、支援機関制度は登録M&A支援機関とはで解説しています。

半導体・電子部品の売り手向け|最終的な選び分けまとめ

自社の状況

第一候補

理由

譲渡価額1億円前後・小規模

電気・電子・機械のM&A

最低報酬300万円(税別)と、業界特化の理解

事業部単位で切り出したい

M&Aオール、日本M&Aセンター

カーブアウト対応の明示、買い手の幅

借入が大きい設備型メーカー

M&Aベストパートナーズ、ストライク

株式価値/オーナー受取額ベースで手数料が膨らみにくい

買い手候補を最大化したい

日本M&Aセンター

大手電子部品メーカー・EMS・ファンドまで届く

東海の車載電子部品・基板

名南M&A

中部圏サプライチェーンと金融機関網

海外企業への売却も視野

レコフ

クロスボーダー実績と株価レーマン

とにかく成約まで無料で進めたい

M&A総合研究所

売り手は完全成功報酬

おすすめしないケースも明記しておきます。

  • 譲渡価額が1〜3億円なのに、最低報酬2,500万円の会社(M&Aキャピタルパートナーズ、レコフ)を第一候補にする
  • 有利子負債が譲渡価額と同規模以上あるのに、移動総資産ベースの会社しか比較しない
  • 外資・ファンドを買い手に想定しているのに、外為法の事前届出に触れない仲介会社と専任契約を結ぶ
  • 同業を買い手候補に入れる前提なのに、ネームクリアの運用を確認しないまま資料を出す

よくある質問(FAQ)

Q1. 取引先(セットメーカー)に知られずに売却できますか?

A. 実務上は可能ですが、この業種では特に慎重な設計が必要です。主要顧客との基本契約にチェンジ・オブ・コントロール条項がある場合、株式譲渡の際に顧客への通知・承諾が必要になることがあります。契約書の当該条項を事前に洗い出し、いつ・誰に・どう伝えるかを仲介会社と設計するのが先決です。契約解釈は弁護士へのご相談をおすすめします。

Q2. 赤字ですが、売却できますか?

A. 技術・設備・認定サプライヤー資格・人材のいずれかに買い手の目的が合えば、赤字でも成約するケースはあります。この業種の買い手は「規模拡大」より「技術・設備・人材の獲得」を目的にすることが多いためです。ただしM&Aオールのように黒字企業に特化する会社もあるため、受託基準は初回に確認してください。

Q3. クリーンルームや実装機は、価格にどう反映されますか?

A. 簿価ではなく時価・稼働状況で評価されるのが一般的です。減価償却が終わった設備でも稼働率が高ければプラス評価になる一方、更新時期が迫っている設備は将来の設備投資額として価格から控除される傾向があります。設備リスト(購入年・更新履歴・稼働率)を早期に整えておくと交渉が有利になります。

Q4. 外資に売ると、必ず外為法の届出が必要ですか?

A. 買い手が外国投資家に該当し、かつ自社の事業がコア業種(2024年8月に半導体製造関連機器・先端電子部品の製造業が追加)に該当する場合、原則として事前届出が必要です。該当性は事業内容ごとに個別判断となるため、自己判断せず、仲介会社・弁護士を通じて財務省・経済産業省に確認してください。

Q5. 手数料が最も安いのはどこですか?

A. 譲渡価額によって答えが変わります。1〜3億円なら最低報酬300万円の「電気・電子・機械のM&A」が最も安くなる可能性が高く、10億円超なら最低報酬より計算基準(株価か移動総資産か)の影響が大きくなります。「安い会社」ではなく「自社の財務構造で総額が安くなる会社」を、複数社の見積もりで比べてください。

Q6. 仲介会社は何社に相談すべきですか?

A. 専任契約を結ぶ前であれば、2〜3社に相談して見積もりと買い手候補リストを比較するのが基本です。ただし専任契約後は他社への相談ができなくなるため、契約書にサインする前に比較を終えておく必要があります。

Q7. 業種特化型と大手、どちらが高く売れますか?

A. 売却額は買い手が誰かで決まるため、一概には言えません。特定技術に高い価値を認める買い手(大手電子部品メーカー・海外勢・ファンド)に届くかどうかが鍵で、その点では大手総合型の買い手ネットワークが有利に働くことがあります。一方、手数料の総額では業種特化型が有利になるケースが多く、「売却額 − 手数料」の手取りで比較するのが実務的です。

まとめ:この3つを確認すれば、選択を大きく間違えない

  1. 成功報酬の計算基準(移動総資産か、株価・オーナー受取額か)— 借入の大きいこの業種では、手数料が数百万〜数千万円変わります
  2. 最低報酬の実額 — 譲渡価額が小さいほど、ここで実質手数料率が決まります
  3. 外為法コア業種への対応経験 — 外資・ファンドを買い手候補に含めるなら必須の確認項目

そのうえで、業種特化型と大手総合型の2社から見積もりを取り、「売却額 − 手数料」の手取りベースで比較する。これが、半導体・電子部品製造業のオーナーにとって現時点で最も合理的な進め方です。

重要な注記:本記事の手数料・実績情報は、各社が公式サイト等で公開している情報を確認日2026-07-14時点で整理したものです。「未確認」と記載した項目は各社が金額・料率を公表していないもので、推測での記載はしていません。実際の契約条件・支払総額は案件ごとに変動するため、必ず複数社の正式見積もりで確認してください。また、外為法の該当性判断、税務・法務に関する判断は、弁護士・税理士等の専門家へのご相談をおすすめします。

M&A全体の流れはM&Aとは|売り手向け完全ガイド、製造業全般の仲介会社比較は製造業のM&A仲介会社おすすめ、費用相場はM&A費用・手数料相場ガイドで解説しています。

出典・参考資料(すべて確認日2026-07-14)

  • 電気・電子・機械のM&A「料金設定」: https://electro-ma.com/price/
  • M&Aオール「半導体業界のM&A」: https://ma-all.net/business/semiconductor/
  • M&Aベストパートナーズ「料金体系」: https://mabp.co.jp/rate/
  • ストライク「報酬・料金体系」: https://www.strike.co.jp/feature/fee.html
  • 日本M&Aセンター「手数料・料金について」: https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/ /「電子部品・機械器具製造業界のM&A動向」: https://www.nihon-ma.co.jp/sector/electricApplianceManufacturing.php
  • M&Aキャピタルパートナーズ「弊社の手数料」: https://www.ma-cp.com/about/fee/
  • M&A総合研究所: https://masouken.com/
  • 名南M&A「料金体系」: https://www.meinan-ma.com/business/ma/support/fee.html
  • レコフ「料金体系」: https://www.recof.co.jp/fee/
  • 財務省「対内直接投資審査制度について」: https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm
  • 経済産業省「投資管理」: https://www.meti.go.jp/policy/anpo/toushikanri/invest-control.html
  • Bloomberg「安全保障審査のコア業種、半導体製造関連機器など追加-財務省」(2024年8月16日)
  • JEITA/WSTS「2026年春季 世界半導体市場予測」(2026年6月2日公表)
  • 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」
  • 中小企業庁「事業承継・M&A補助金(十五次公募)」: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260522001.html
  • 中小企業庁「M&A支援機関登録制度」/登録支援機関データベース: https://ma-shienkikan.go.jp/search
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