会社売却(M&A)でストックオプション(SO)や新株予約権を残したままにすると、買い手が目指す100%株式取得(完全子会社化)が崩れます。 そのため売却前に「権利行使→株式売却」「買い取り」「放棄」など、いずれかの方法で必ず処理しておく必要があります。
本記事では、オーナー社長が会社売却を検討する段階で押さえておきたいストックオプション・新株予約権の扱いを、処理パターン・課税関係・スキーム別の違い・実務チェックリストまで、令和6年度税制改正(2024年4月施行)後の最新ルールを反映して解説します。
この記事でわかること
- 会社売却時にストックオプション・新株予約権をなぜ処理する必要があるのか
- 主要な6つの処理パターンとそれぞれの課税関係
- 税制適格・非適格・有償・信託型SOの違い
- 株式譲渡/株式交換/合併などスキーム別の扱い
- オーナー社長が売却前に確認すべきチェックリスト
- SPA(株式譲渡契約書)で押さえるべき条項
この記事は次のような方に向けて書いています
- ストックオプションを発行している会社のオーナー社長で売却を検討している方
- 売却交渉でSO処理について買い手から指摘されている方
- M&A前の従業員説明をどう進めるべきか悩んでいる方
- 顧問税理士・弁護士との議論前に論点を整理したい方

結論:売却前に必ず処理する。残すと買い手は100%支配を取れない
会社売却の局面でストックオプション・新株予約権が問題になる理由はシンプルです。買い手は通常100%の株式取得(完全子会社化)を目指すため、行使されると新たに普通株式が発行されてしまう潜在株式が残っていると、譲渡後の支配構造が崩れるからです。
そのため、ほぼすべての株式譲渡型M&Aでは、クロージング前に発行済の潜在株式をすべて消滅または承継しておくことが、SPA(株式譲渡契約書)上の前提条件として要求されます。
選択できる処理パターンは大きく分けて以下の6つです。詳細は後述しますが、まず全体像を押さえてください。
番号 | 処理パターン | 主な使われる場面 |
|---|---|---|
① | 権利行使→株式売却 | 税制適格SOが多い/Vest済みで行使価額が安いケース |
② | 買収会社による買い取り | 譲受企業がインセンティブ目的で承継したい場合 |
③ | 発行会社(売却対象会社)による買い戻し | 売主側で完結させたい/買い手が買い取りを望まない場合 |
④ | 新オプションへの付け替え | 譲受企業がストックオプション制度を持っている場合 |
⑤ | 放棄(無償消滅) | 行使価額が時価を上回り経済的価値がない場合 |
⑥ | 取得条項の発動 | 発行時に取得条項付で設計されているSO |
出典: M&Aにおけるストックオプションの取り扱いを税理士が徹底解説 | M&Aサクシード、M&A時におけるストックオプションの取扱い | Grant Thornton Japan(確認日: 2026-05-11)
ご注意:本記事は一般的な解説です。ストックオプションのM&A時処理は新株予約権発行要項・割当契約・行使条件によって最適解が大きく変わります。実際の判断は必ず弁護士・税理士にご相談ください。
ストックオプション・新株予約権とは何か(基本のおさらい)
ストックオプション(新株予約権)は、あらかじめ定められた価格(権利行使価額)でその会社の株式の交付を受けることができる権利です。役員・従業員へのインセンティブ報酬として付与されるのが一般的で、業績向上で株価が上がれば、行使価額との差額が報酬になります。
会社法上は「新株予約権」が正式名称で、ストックオプションはそのうちインセンティブ目的のものを指す呼称として使われます。さらに、転換社債型新株予約権付社債(CB)なども含めた総称が潜在株式です。
主なストックオプションの種類
種類 | 主な特徴 | 行使時の課税 |
|---|---|---|
税制適格SO | 一定要件を満たすと税優遇 | 非課税(売却時に譲渡所得20.315%のみ) |
税制非適格SO | 要件を満たさない通常のSO | 給与所得課税(最大55.945%) |
有償SO | 公正価額で払い込んで取得 | 給与所得課税なし |
信託型SO | 信託を活用した付与スキーム | 国税庁見解により給与所得課税(2023年5月) |
それぞれの会社売却時の処理と課税は後述しますが、自社が発行しているSOがどの種類かをまず社内で確認しましょう。新株予約権発行要項・取締役会議事録・株主総会議事録に必ず記載されています。
なぜ会社売却時にストックオプションが問題になるのか
理由は2つあります。
1. 100%株式取得が崩れる
買い手は税務上のメリット(連結納税・グループ通算)や経営の機動性のために100%取得を目指します。SOが残ったまま譲渡後に行使されると、買い手の持株比率が希薄化し、当初の取得目的が崩れます。
2. SPAの表明保証・前提条件違反になる
売主の表明保証条項として「発行済株式・潜在株式の全数開示」が一般的に求められ、SOの未開示・未処理はクロージング前提条件違反になります。最悪の場合、損害賠償請求や売買契約解除のリスクがあります。
出典: 株式譲渡契約書(SPA)とは? | M&Aキャピタルパートナーズ(確認日: 2026-05-11)
そのため、売却を本格検討する段階で潜在株式の棚卸しと処理方針決定を必ず行う必要があります。
売却時のストックオプション処理 — 6つのパターン詳細
① 権利行使→株式売却(最も多いパターン)
SO保有者が事前に権利を行使して株式を取得し、その株式を譲受企業へ売却するパターンです。税制適格SOの場合に最も多く採用されます。
- メリット: 税制適格SOなら従業員の手取りが最大化(譲渡所得20.315%のみ)
- デメリット: 行使に必要な現金(権利行使価額×株数)を従業員が一時的に準備する必要がある
- 注意点: 非適格SOで行使すると、行使時に給与所得課税(最大55.945%)+売却時に譲渡所得課税の二重課税となり、手取りが大幅減
② 買収会社による買い取り
譲受企業がSO自体を時価で買い取る方法です。インセンティブとして従業員に承継させたい場合や、行使実務が煩雑な場合に採用されます。
国税庁の文書回答事例(所得税法28条、36条、41条第2項、所得税法施行令84条第3項)によると、買収会社が買い取る場合、被買収会社と買収会社の間の雇用関係に基づいて付与されたものとみなし、譲渡制限解除時に時価が給与所得として課税されます。
出典: 被買収会社の従業員に付与されたストックオプションを買収会社が買い取る場合の課税関係 | 国税庁(確認日: 2026-05-11)
③ 発行会社(売却対象会社)による買い戻し
売却対象会社が自社のSOを買い戻すパターンです。買い手が買い取りを望まないケースや、売主側で完結させたいケースで採用されます。
- 譲渡対価から取得価額を控除した金額が給与所得とみなされる
- 自己新株予約権の取得は会社法上のルール(取得方法・手続き)に従う必要がある
④ 新オプションへの付け替え
譲受企業のストックオプション制度に組み込む形で代替付与、または組織再編税制(株式交換・株式移転)で適格的に引き継ぐパターンです。
- 適格引き継ぎなら課税繰延(実際に行使するまで税金は発生しない)
- 非適格なら時価評価で課税
- 実務は複雑で、新株予約権の交付に関する定めを再編契約に明記する必要がある
⑤ 放棄(無償消滅)
SO保有者が無償で権利を放棄して消滅させるパターン。行使価額が譲渡時時価を上回る(含み損状態)の場合に多く選ばれます。
- 原則として課税関係は生じない
- ただし放棄に至る経緯次第では寄附課税の論点が浮上することがあるため、専門家への確認が必要
⑥ 取得条項の発動
新株予約権の発行時に「組織再編が行われた場合は会社が強制取得する」等の取得条項を付けておけば、定められた事由に基づき会社が強制取得できます。発行時の設計次第のため、すでに発行済のSOに後付けはできません。
出典: 自己新株予約権の取得と処分に関する会社法のルール | TMI総合法律事務所(確認日: 2026-05-11)

種類別の課税関係 — 適格・非適格・有償・信託型
税制適格ストックオプション
要件を満たすと、権利行使時は非課税、株式売却時に譲渡所得20.315%(申告分離課税)のみで済む税優遇制度です。
令和6年度税制改正(2024年4月施行)で年間権利行使価額の上限が大幅引き上げ
会社区分 | 改正前上限 | 改正後上限 |
|---|---|---|
設立5年未満 | 1,200万円 | 2,400万円 |
設立5年以上20年未満 かつ 非上場 or 上場後5年未満 | 1,200万円 | 3,600万円 |
その他の会社 | 1,200万円 | 1,200万円(据置) |
他にも、社外高度人材への付与要件緩和、保管委託要件の柔軟化(譲渡制限株式は会社による管理可)など、スタートアップ・成長企業にとって追い風となる改正が行われました。
M&A時の注意点:税制適格要件のうち「譲渡制限株式」要件を満たすか確認が必要です。非公開のまま売却ならOKですが、公開会社化後にM&Aするとリスクがあります。
出典: 税制適格ストックオプション(令和6年度税制改正を含む) | 山田&パートナーズ、ストックオプション税制 | 経済産業省、ストックオプションに対する課税(Q&A)令和6年11月改訂 | 国税庁(確認日: 2026-05-11)
税制非適格ストックオプション
要件を満たさない通常のSO。M&A時の処理インパクトが最も大きい種類です。
- 権利行使時に「行使時時価 − 権利行使価額」が給与所得として総合課税(累進・最大55.945%、地方税含む)
- 株式売却時にも「売却時時価 − 行使時時価」が譲渡所得(20.315%)
- 結果として実質二重課税となり、手取りが大幅に減る
ただし最大税率は所得規模・地方税率で変動するため、「必ず55.945%」とは限りません。具体的な税額は税理士にシミュレーションを依頼してください。
有償ストックオプション
公正価額で払い込んで取得するため、「役員・従業員の労働対価」ではなく「投資」と整理されます。
- 行使時の給与所得課税はなし
- 売却時に「譲渡収入 −(払込価額+権利行使価額)」が譲渡所得(20.315%)
- M&A時はVest済み部分は行使して株式売却、未Vest部分は無償取得・引継ぎを検討
出典: 信託型ストックオプション/有償ストックオプションのM&A時の取り扱い | 飯島隆博弁護士(確認日: 2026-05-11)
信託型ストックオプション
受託者にSOを発行し、信託期間終了時に役職員へ配分するスキーム。2023年5月に国税庁が権利行使時に給与所得課税との見解を表明し、業界が大きく揺れた論点です。
- M&A時は無償取得が基本だが、委託者・受託者・受益者間の金銭返還の問題、未確定の配分ルール処理など実務が複雑
- 必ず税務・法務専門家と事前協議が必要
数値シミュレーション:同じ条件で処理方法を比較する
前提条件
- 権利行使価額:500円
- 譲渡時時価(M&A時の1株価格):5,000円
- 保有株数:10,000株
- 給与所得課税率(給与所得が高い役員想定):50%(簡略化、住民税含む実効税率)
- 譲渡所得課税率:20.315%
処理方法 | 売主従業員の手取り(概算) | 差分 |
|---|---|---|
①税制適格SO行使→株式売却 | 5,000円×10,000株 −500円×10,000株 −譲渡所得税(差額の20.315%) = 約3,591万円 | 基準 |
①税制非適格SO行使→株式売却 | 行使時:給与所得課税(4,500円×10,000株×50%)= 2,250万円課税/売却時:5,000円×10,000株 −500円×10,000株 −2,250万円 = 約2,250万円 | ▲約1,341万円 |
②買収会社による買い取り(買取価格=時価−行使価額の4,500円×10,000株) | 給与所得課税後:4,500万円×(1−50%)= 約2,250万円 | ▲約1,341万円 |
⑤放棄 | 0円 | ▲約3,591万円 |
注意:上記は税率を50%で簡略化した概算です。実際の税額は他の所得・配偶者控除・地方税率で変動します。個別の試算は必ず税理士に依頼してください。
このシミュレーションからわかるのは、税制適格SOの行使→株式売却が、従業員の手取りを最大化するという事実です。M&A交渉と並行して、SO保有者にとってベストな処理方法を検討する価値は大きいといえます。
スキーム別の扱い — 株式譲渡・株式交換・合併・会社分割
スキーム | SOの扱い |
|---|---|
株式譲渡 | 既発行のSOはそのまま残存。前述6パターンのいずれかで処理必要 |
株式交換・株式移転 | 子会社となる側のSOは消滅または親会社SOへの承継。承継には新株予約権の交付に関する定めが必要 |
合併 | 消滅会社のSOは合併効力発生日に原則消滅。存続会社のSO交付または金銭補償 |
会社分割 | 分割契約・計画に基づき承継の有無を決定 |
つまり最も多い「株式譲渡」スキームでは、SOは自動消滅しないため必ず処理が必要です。一方で合併スキームではSOが原則消滅するため、別途の手当が要らないケースもあります。
出典: M&Aでストックオプションはどうなる? | 船井総研グループ(確認日: 2026-05-11)
スキーム自体の選び方については、関連記事「株式譲渡 vs 事業譲渡 比較」もあわせてご参照ください。
オーナー社長向け:売却前のチェックリスト
会社売却を検討し始めた段階で、ストックオプションについて以下を必ず棚卸ししてください。
1. 発行済の潜在株式の棚卸し
- 登記事項証明書で「新株予約権」の登記状況を確認
- 新株予約権発行要項・取締役会議事録・株主総会議事録の保管確認
- 新株予約権原簿の整備状況確認(保有者一覧)
- 各SOの種類(適格/非適格/有償/信託型)を判定
2. 行使条件の確認
- Vest(権利確定)スケジュール
- 行使可能期間(始期・終期)
- 取得条項の有無(組織再編発生時の条項)
- 譲渡制限の内容
- 行使価額と現在の株式時価の比較
3. 保有者との事前協議
- 保有者リストの整備(氏名・保有数・SOの種類)
- 退職者・元役員が保有していないか確認
- M&A時の処理方針の事前説明準備(口頭NG、書面ベース)
- 想定される手取りシミュレーションの提示準備
4. SPA(株式譲渡契約書)の準備
- 表明保証条項:発行済株式・潜在株式の全数開示
- 前提条件条項:クロージング前にSO処理完了
- 損害賠償条項:SO未開示・未処理時の補償範囲
- エスクロー(一部代金留保)の必要性
5. 税務・法務専門家との連携
- 税理士に課税シミュレーション依頼
- 弁護士に処理スキームのリーガルレビュー依頼
- M&A仲介会社・FAとの情報共有
このチェックリストはあくまで網羅的な確認項目であり、自社の状況によって追加項目が発生します。実際のM&A対応では、関連記事「M&A DD 売り手の準備チェックリスト」もあわせてご活用ください。

SPA(株式譲渡契約書)における具体的な記載例
実務上、SPAでは以下のような形でSO処理が条文化されます。具体的な文言は案件ごとに大きく異なるため、必ずM&A実務に精通した弁護士のドラフトを使用してください。
表明保証条項(例)
売主は、本契約締結日およびクロージング日において、対象会社が発行している株式および新株予約権が別紙Xに記載のものに限られ、それ以外の潜在株式(転換社債、新株予約権付社債を含む)が存在しないことを表明し保証する。
前提条件条項(例)
買主の本件株式譲渡実行義務は、クロージング日において以下の事項がすべて成就していることを条件とする。
(1)対象会社の発行済新株予約権について、別紙Yに記載の処理方法(買い取り・放棄等)が完了していること
(2)処理完了を証する書面(新株予約権買取契約書・放棄書等)が買主に交付されていること
損害賠償条項のポイント
- 未開示SOが発覚した場合の補償上限額
- 補償請求期間(一般的にクロージング後1〜2年)
- 補償対象から除外される範囲(既知の事項等)
出典: 株式譲渡契約書(SPA)とは? | M&Aキャピタルパートナーズ(確認日: 2026-05-11)
従業員対応の進め方 — 離反リスクを最小化する
ストックオプション保有者にとって、M&Aは「将来の値上がり期待」が確定する重要なイベントです。処理方針の説明を誤ると主要メンバーの離反リスクが一気に高まります。
説明のタイミング
- 基本合意(LOI)締結前:主要キーパーソン(CTO・COO等)には個別ヒアリング
- デューデリジェンス開始時:保有者全員に守秘義務契約のうえ説明
- SPA締結後・クロージング前:処理方法と手取り見込みを書面で正式通知
説明資料に含めるべき要素
- 処理方法(買い取り/行使/放棄等)の選択肢と理由
- 各処理方法での税引前・税引後の手取り額シミュレーション
- 処理完了までのスケジュール
- M&A後の継続雇用条件・新たなインセンティブ設計
- 質疑応答用のFAQ
特に買い手側との継続雇用・新たなインセンティブ設計(リテンション・ボーナス、買収会社SO付与等)をセットで提示すると、離反リスクが大きく下がります。
関連記事「M&A ロックアップ条項とは(売り手の制約)」もキーパーソン拘束の観点で参考になります。
こんな企業はストックオプション処理を急ぐべき
- 直近1〜3年での売却検討企業:DD段階で必ず指摘されるため事前整理必須
- 複数種類のSOを発行している企業:処理方針が複雑化しやすい
- 退職済み元従業員・元役員にSOが残っている企業:保有者との連絡確保が難しくなる前に
- 信託型SOを発行している企業:2023年国税庁見解後の実務対応が要検討
- 税制適格SOの行使価額が現在の時価を大きく下回っている企業:行使タイミング次第で従業員手取りが大きく変わる
こんな企業は急ぎの対応不要だが棚卸しは必要
- そもそもSO・新株予約権を発行していない企業:登記事項証明書で念のため確認
- 発行済SOがすべて取得条項付で組織再編時に自動消滅する設計:それでも保有者への事前告知は必要
ストックオプション処理に関するよくある質問
Q1. ストックオプションは絶対に売却前に処理しないといけませんか?
スキームによります。株式譲渡型M&Aでは原則必須です。合併や株式交換では消滅・承継のルールが会社法上明確にあるため、別途の手当が要らないケースもありますが、株式譲渡では自動消滅しないため必ず処理が必要です。
Q2. 税制適格SOを買い取ってもらうと適格でなくなりますか?
買い取りの場合は権利行使を伴わないため、税制適格要件の論点とは別の課税関係(国税庁見解により給与所得課税)が生じます。「適格/非適格」の枠組みではなく、「経済的利益への給与所得課税」と整理するのが正確です。具体的な課税の判断は税理士にご相談ください。
Q3. 信託型ストックオプションのM&A時処理が複雑と聞きました
はい、2023年5月の国税庁見解により「行使時に給与所得課税」と整理されたことで、M&A時の処理スキーム選択が以前より慎重な検討を要します。委託者・受託者・受益者間の金銭返還、未配分残高の処理など論点が多く、信託型SOを扱うM&A実務の経験が豊富な税理士・弁護士の関与が不可欠です。
Q4. 退職した元従業員のSOはどう扱えばいいですか?
新株予約権発行要項・割当契約で「退職時に失効」と定められていればすでに消滅していますが、定めがなければ残存しています。売却前に新株予約権原簿で確認し、残存している場合は連絡を取って処理方針を協議してください。連絡が取れない元従業員のSO処理は実務上の頭痛のタネで、放置すると売却が遅延します。
Q5. ストックオプション処理にどれくらいの時間がかかりますか?
ケースバイケースですが、保有者全員との合意形成・処理書面の作成・実行までに通常1〜3ヶ月程度を見込みます。退職者・元役員が含まれる場合や、税務スキームの組み立てが必要な場合はさらに時間がかかります。M&Aクロージングから逆算して早めに着手してください。
専門家への相談を強くおすすめします
ストックオプション・新株予約権の処理は、会社法・税法・労務・M&A実務が複雑に交差する論点です。本記事の内容は一般論であり、自社の状況に応じた最適解は新株予約権発行要項・割当契約・行使条件の詳細を確認しなければ判断できません。
特に以下に該当する場合は、必ず専門家に相談してください。
- 税制非適格SOまたは信託型SOを発行している
- 複数種類のSOが混在している
- 退職した元従業員・元役員にSOが残存している
- M&Aスキームが株式交換・合併・会社分割を含む
- 海外子会社・海外従業員にSOを付与している
M&A仲介会社・FAの選定については、関連記事「M&A仲介会社 おすすめ比較」をご覧ください。売却全体の流れは「M&A 売却 流れ」、費用感は「M&A費用相場」をあわせてご確認いただけます。
まとめ:早期着手と専門家連携がカギ
- 会社売却前にストックオプション・新株予約権は必ず処理が必要(株式譲渡スキームの場合)
- 処理パターンは6つ。税制適格SOの行使→株式売却が従業員の手取りを最大化しやすい
- 令和6年度税制改正で税制適格SOの年間権利行使価額上限が最大3,600万円に引き上げ
- 信託型SOは2023年国税庁見解後の実務対応が複雑、専門家関与必須
- SPAでは表明保証・前提条件・損害賠償の3条項にSO論点を必ず反映
- 保有者との事前協議・リテンション設計で離反リスクを最小化
- オーナー社長は売却検討開始時点でチェックリストに沿って棚卸し、早期に弁護士・税理士・M&Aアドバイザーに相談
ストックオプション処理は売却交渉開始後ではなく、売却を本格検討する初期段階での棚卸しが成否を分けます。本記事のチェックリストを活用しつつ、必ず専門家と連携して進めてください。
関連記事
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- M&Aクロージングとは 手続き・流れ
- 株式譲渡 vs 事業譲渡 比較
- M&A ロックアップ条項とは
- M&A費用相場
主な出典(確認日:2026-05-11)
- 国税庁 ストックオプションに対する課税(Q&A)令和6年11月改訂
- 国税庁 被買収会社の従業員に付与されたストックオプションを買収会社が買い取る場合の課税関係
- 経済産業省 ストックオプション税制
- Grant Thornton Japan: M&A時におけるストックオプションの取扱い
- 山田&パートナーズ: 税制適格ストックオプション(令和6年度税制改正を含む)
- M&Aサクシード: M&Aにおけるストックオプションの取り扱い
- M&Aキャピタルパートナーズ: 新株予約権とは
- fundbook: M&Aを行う際のストックオプション(新株予約権)の取り扱い
- TMI総合法律事務所: 自己新株予約権の取得と処分に関する会社法のルール
